アルツハイマー病のリスク因子

アルツハイマー病は最も一般的な認知症であるが、その原因はいまだ不明である。その理由として、多因子疾患であるアルツハイマー病に関する研究が十分に行われていない可能性が挙げられる。オーストラリア・シドニー大学のMichael Allwright氏らは、UK Biobankのデータセットを用いて、アルツハイマー病に関連する既知のリスク因子をランク付けし、新たな変数を模索するため本研究を実施した。その結果、アルツハイマー病の最も重大なリスク因子は、APOE4対立遺伝子の保有であることが再確認された。APOE4キャリアにおける新たなリスク因子として肝疾患が抽出された一方で、「不眠/不眠症」は、APOE4のステータスとは無関係にアルツハイマー病の予防効果が確認された。著者らは、肝疾患を含む併存疾患の将来的な治療により、アルツハイマー病のリスクが同時に低下する可能性があるとしている。Aging Brain誌2023年6月17日号の報告。
高次元データに対するカスタム機械学習アプローチを用いて、後にアルツハイマー病と診断された2,090例以上を含む60~70歳のUK Biobank参加者15万6,209例のサブコホートにおいて、アルツハイマー病との関係をプロスペクティブに調査した。
主な結果は以下のとおり。
・APOE4対立遺伝子の保有の次に高ランクのリスク因子は、TOMM40-APOE-APOC1遺伝子座内の他の遺伝的変異であった。
・APOE4キャリアのステータス別に層別化すると、APOE4キャリアにおける最大のリスク因子は「AST:ALT比」「治療/投薬の数」「入院期間」であり、保護因子は「不眠/不眠症」であった。
・非APOE4キャリアでは、「社会経済的地位の低さ」「教育年齢の少なさ」が上位であったが、エフェクトサイズはAPOE4キャリアよりも小さかった。
(鷹野 敦夫)
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