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1.

アルツハイマー病への抗アミロイドβ抗体薬、日本での導入実態は?/長寿研

 アルツハイマー病(AD)の病態に直接作用する抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬であるレカネマブとドナネマブが、日本でも2023~24年にかけて実臨床に導入された。東京都健康長寿医療センター研究所の井原 涼子氏らの研究グループは、日本の国民皆保険制度下におけるこれら薬剤の導入実態と、患者の意思決定要因に関する調査を実施した。その結果、本治療を希望して受診した患者のうち、実際に投与を開始したのは約20%にとどまり、高額療養費制度によって経済的障壁が低い環境下でも、治療適格性や副作用への懸念が大きなハードルとなっている現状が浮き彫りになった。Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring誌オンライン版2026年3月24日号に掲載。 本研究では、2023年12月~2025年5月に東京都健康長寿医療センターを受診した患者のデータを解析した。同センターでは、「もの忘れ外来」「疾患修飾療法(DMT)外来」を設置し、2段階のスクリーニング体制を構築している。(第1段階:「もの忘れ外来」での鑑別・重症度評価[MMSEを含む]、第2段階:「DMT外来」でのインフォームドコンセントとMRIによる禁忌確認、アミロイドPETまたは脳脊髄液検査)。抗Aβ抗体薬による治療を希望して「もの忘れ外来」を受診した456例、および「DMT外来」を受診した312例を対象に、抗Aβ抗体薬治療開始に至った割合と、至らなかった理由を解析した。 主な結果は以下のとおり。・自ら抗Aβ抗体薬治療を希望して受診した人(「もの忘れ外来」受診者456例)のうち、実際に投与を開始したのは87例(19.1%)であった。・「DMT外来」受診者312例のうち、自ら抗Aβ抗体薬治療を希望して受診した人は205例、医師の紹介で受診した人は107例であった。そのうち抗Aβ抗体薬治療を開始したのは131例(42.0%)であった。・「もの忘れ外来」での抗Aβ抗体薬治療の除外理由で最も多かったのは「疾患の進行(中等度以上の認知症)」であった。・「DMT外来」では、93例が説明後の同意段階で除外された。このうち86.0%は「本人・家族の希望による辞退」であり、主な理由は「副作用(ARIA)への懸念」や「通院負担」であった。・精密検査の結果、「アミロイド陰性」(44例)や「MRIでの禁忌所見」(33例)により不適格となるケースも多くみられた。・多変量解析の結果、以下の因子が独立して治療開始率の低さと関連していた。75歳以上(オッズ比:0.25、95%信頼区間:0.15~0.43)、男性(0.56、0.33~0.95)、MMSEスコア27〜30点の軽微な層(0.33、0.18~0.60)。・75歳以上では副作用への懸念やアミロイド陰性率の高さ、男性ではMRIでの多発微小出血などの禁忌事項に該当する割合が高いことが影響していた。 本研究により、日本独自の「高額療養費制度」によって薬剤費の自己負担が抑えられている環境下でも、非経済的な要因が治療導入の大きな障壁となっている実態が確認された。著者らは、最も効果が期待される「超早期」の患者を適切に治療へつなげるためには、より安全で負担の少ない治療法の開発や、Shared Decision Making(共同意思決定)を支援する体制の構築、さらには早期治療の重要性に関する啓発が必要だと指摘している。

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慢性片頭痛に対するオナボツリヌス毒素A+抗CGRP抗体~メタ解析

 オナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体による二重標的療法は、単剤療法で効果が不十分な慢性片頭痛患者に対する潜在的な治療選択肢として浮上している。個々の観察研究報告からのエビデンスにおいて有益性が示唆されているが、利用可能な研究の規模、一貫性、方法論的な質については依然として不明である。イラン・テヘラン医科大学のAbbas Sarvari Soltani氏らは、慢性片頭痛におけるオナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体の併用療法の有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。European Journal of Medical Research誌オンライン版2026年2月20日号の報告。 オナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体の併用療法を評価した観察研究をシステマティックに検索した。選択基準を満たした研究10件のうち6件の研究から抽出可能な定量データが得られた。アウトカムには、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、50%以上および75%以上の治療反応率、頭痛関連機能障害(MIDAS、HIT-6)、急性期の薬物使用を含めた。ランダム効果モデルを適用し、異質性、サブグループパターン、出版バイアスを評価した。適格基準を満たした10件の研究のうち、併用療法に関する抽出可能な定量データを提供し、プール解析に含められたのは6件のみであった。 主な結果は以下のとおり。・併用療法によりMHDは、プール平均で7.9日短縮した(95%信頼区間[CI]:-10.2~-5.7)。・プール平均における50%以上の治療反応率は0.51(95%CI:0.37~0.66)、75%以上の治療反応率は0.19(95%CI:0.10~0.34)であった。・障害指標の改善が認められ、MIDASの減少は47.4ポイント(95%CI:-65.7~-29.1)、HIT-6の減少は8.2ポイント(95%CI:-10.9~-5.5)であった。・急性期の薬剤使用は、1ヵ月当たり4.3日減少した(95%CI:-6.1~-2.5)。・アウトカム間の異質性は中等度から高度であった。・年齢と性別によるサブグループ解析では、おおむね一貫した方向性が示された。・Funnel plotの検査とEgger検定では、顕著な出版バイアスは認められなかった。 著者らは「オナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体の併用療法は、観察コホート全体において、頭痛頻度、障害、急性期の薬剤使用において臨床的に意義のある減少を示した。異質性が高く、対照比較デザインが存在せず、サブグループデータが限られていることを踏まえ、解釈には慎重さが求められる。複数の研究で分散指標が補完されているため、統計的精度が過大評価されている可能性があり、効果量は決定的なものではなく概算値として解釈すべきである。患者選択、利益の持続性、費用対効果、アクセスの公平性を明らかにするためには、より大規模なプロスペクティブ研究が必要である」としている。

3.

早期アルツハイマー病、経口セマグルチドは進行を抑制せず/Lancet

 2型糖尿病患者などでは、GLP-1受容体作動薬の投与により認知症およびアルツハイマー病のリスクが低下することを示唆する実臨床研究のエビデンスがある。米国・ネバダ大学のJeffrey L. Cummings氏らは、「evoke試験」および「evoke+試験」において、経口セマグルチドは早期の症候性アルツハイマー病の臨床的な進行を遅らせる効果を有さず、安全性や忍容性は他の適応症を対象とした試験の結果と一致することを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年3月19日号で報告された。2つの無作為化プラセボ対照試験 evoke試験およびevoke+試験は、40ヵ国566施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2024年9月に参加者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 年齢55~85歳、アミロイド病変が確認されたアルツハイマー病で、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病に起因する軽度認知症を有する患者を対象とした。evoke+試験では、顕著な小血管病変を有する患者も対象に含めた。 被験者を、セマグルチド14mg(可変用量)またはプラセボを1日1回、最長で156週間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、無作為化された全患者における臨床的認知症評価尺度-Sum of Box(CDR-SB)スコアのベースラインから104週までの変化量とした。CDR-SB、ADCS-ADL-MCIスコアの変化量に差はない 3,808例を登録した。このうち1,855例(セマグルチド群928例、プラセボ群927例)がevoke試験、1,953例(976例、977例)がevoke+試験の参加者だった。ベースラインの全体の平均年齢は72.2(SD 7.1)歳、女性が1,998例(52.5%)で、平均CDR-SBスコアは3.7(SD 1.6)点だった。2,746例(72.1%)がMCI、1,034例(27.2%)が軽度のアルツハイマー型認知症であった。evoke+試験では、54例(2.8%)が小血管病変を有していた。 evoke試験およびevoke+試験における、ベースラインから104週までのCDR-SBスコアの平均変化量は、セマグルチド群で2.3(SE 0.1)点および2.2(0.1)点、プラセボ群で2.3(0.1)点および2.1(0.1)点で、推定群間差は、evoke試験が-0.08(95%信頼区間[CI]:-0.35~0.20、p=0.57)、evoke+試験が0.10(95%CI:-0.17~0.38、p=0.46)であり、両試験とも両群間に有意な差を認めなかった。 また、同期間におけるAlzheimer’s disease Cooperative Study Activities of Daily Living-MCI(ADCS-ADL-MCI)スコアの平均変化量の両群間の差は、evoke試験が-0.25(95%CI:-1.22~0.72)、evoke+試験は-0.03(95%CI:-0.97~0.91)と、いずれも有意差を示さなかった。消化器症状と体重減少が多い 試験治療下での有害事象は、両試験を合わせたセマグルチド群では1,896例中1,729例(91.2%)に、プラセボ群では1,902例中1,613例(84.8%)に発現した。セマグルチド群で頻度の高い有害事象は、体重減少(36.5%)、食欲減退(33.1%)、悪心(24.3%)であった。 試験薬の恒久的な投与中止に至った有害事象の割合は、セマグルチド群で16.9%とプラセボ群の8.4%に比べて高く、重篤な有害事象はそれぞれ20.4%および23.8%にみられた。担当医判定による治療関連死は5例に発生し、セマグルチド群で1例(出血性脳卒中)、プラセボ群で4例であった。 著者は、これらの結果と実臨床のエビデンスの乖離の説明として、(1)全原因による認知症ではなく、生物学的に定義されたアルツハイマー病患者を対象としたこと、(2)治療開始時に無症状の2型糖尿病患者集団におけるアルツハイマー病の発症率の低下ではなく、症状のあるアルツハイマー病患者集団における進行遅延を調査したことなどを挙げ、「アルツハイマー病の病変がより軽度で、無症状の患者に、より早期の段階で同様の介入を行うことで、治療効果が期待できる可能性がある」と指摘している。

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第313回 臨床試験でデクスメデトミジンがアルツハイマー病関連タンパク質除去を促進

脳の老廃物処理機能を後押しして、アルツハイマー病と関連するタンパク質がより除去されるようにする薬の組み合わせの効果が臨床試験で裏付けられました1,2)。「一線を画す進歩であり、神経変性疾患患者を助けうることに留まらず、健康な人が脳の機能を最大限にするのにも役立つかもしれない」とアミロイドβ(Aβ)検出化合物を研究するハーバード大学の准教授Shiju Gu氏は今回の成果を評しています。脳は代謝で生じる老廃物を血管に沿って流れるグリンパティック系を介して排出します。グリンパティック系からリンパ系へと運ばれた老廃物は、次に血液に至って処分されます。グリンパティック系はアルツハイマー病関連タンパク質のAβやタウの除去を促すことがげっ歯類の検討で示されています。その働きは睡眠中にとくに盛んで、睡眠不足はAβやタウの除去を滞らせます。ヒトの脳にもグリンパティック機能があり、やはり睡眠中に活動し、睡眠中にAβやタウが脳から排出されることに一役買っていることが神経画像解析で判明しています。残念なことにグリンパティック系は老化で衰え、アルツハイマー病ではとくに不調になるようです。一方幸いにも、脳の青斑核(LC)から伸びる神経のノルアドレナリンの働きを制するいくつかの手段で、睡眠中のグリンパティック機能を高めうることも示されています。たとえば、外科処置の際の鎮静によく使われるα2アドレナリン作動薬デクスメデトミジンは、LCの活動を抑制することでグリンパティック機能を高めることがげっ歯類の検討で示されています3)。デクスメデトミジンにはアルツハイマー病を模すマウスの認知機能低下を遅らせる効果もあります4)。そこで米国の製薬会社Applied Cognitionに勤めるPaul Dagum氏らは、ヒトではどうかを試すべく臨床試験でデクスメデトミジンのグリンパティック機能やAβとタウの除去への作用を調べることにしました。試験には平均年齢60歳の19人が参加し、試験室で寝ないで1晩を過ごした後にデクスメデトミジンと同剤につきものの副作用である低血圧を防ぐα1アドレナリン作動薬ミドドリンの投与を受けました。Applied社はその組み合わせをACX-02という名称を付けて開発しています。被験者には1週間後に再び試験室で一晩を寝ないで過ごしてもらいます。しかしその後が1回目の徹夜とは違い、ACX-02ではなくプラセボが投与されました。プラセボ投与との比較の結果、喜ばしいことにげっ歯類での検討と同様の効果が示されました。すなわちACX-02はグリンパティック機能を高めてAβとタウが脳から血液へと排出されるのを促す効果がありました。アルツハイマー病治療として承認済みのアミロイド除去抗体と違って、ACX-02ならAβとタウの両方の除去を促せそうであり、認知機能により有益かもしれません。Dagum氏らのチームは初期アルツハイマー病患者を募る試験でACX-02に一層の取り柄があるかどうかを調べるつもりです。パーキンソン病などの異常に折りたたまれた(ミスフォールド)タンパク質の蓄積による他の脳疾患にもACX-02は役立つかもしれません。もっというと、寝不足後の注意欠如の解消にも使えるかもしれない、と研究チームの1人は言っています2)。 参考 1) Dagum P, et al. Pharmacological enhancement of glymphatic function in humans increases the clearance of Alzheimer’s disease-related proteins. medRxiv. 2026 Mar 12. 2) The brain's cleaning system can be boosted to rid Alzheimer's proteins / NewScientist 3) Hablitz LM. et al. Sci Adv. 2019;5:eaav5447. 4) Ma K, et al. Drug Des Devel Ther. 2024;18:5351-5365.

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年収2,000万円以上の割合は? 地域・診療科による違いは?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人(男性883人、女性117人)を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、1,000万~2,000万円の割合は58.0%、2,000万円以上の割合は24.0%であり、8割超が1,000万円以上であった。最も多い年収帯は2,000万~2,500万円 全体で最も多い年収帯は2,000万~2,500万円(全体の13.7%)で、次点が1,400万~1,600万円(13.3%)であった。2016年に実施した調査結果と比較すると、1,000万円以下、1,000万~2,000万円、2,000万円以上の割合は、2016年がそれぞれ21.2%、58.8%、20.0%であったのに対し、2026年がそれぞれ18.0%、58.0%、24.0%であり、やや年収の上昇傾向がみられたが、大きな変化はなかった。 年代別にみると、46~55歳、56~65歳のうち2,000万円以上と回答した割合は、いずれも35.0%となった。35歳以下で1,000万円以上の割合は75.0%であった。2,000万円以上は男性26.0%、女性8.5% 男女別にみると、昨年度の年収が1,000万円以上と回答した割合は男性が84.4%であったのに対し、女性は63.2%であった。2,000万円以上に絞ると、それぞれ26.0%、8.5%であった。地域別の傾向は? 地域別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり。・北海道・東北(113人):31.0%・関東(298人):24.8%・中部(161人):24.8%・近畿(214人):23.8%・中国(61人):18.0%・四国(34人):11.8%・九州・沖縄(119人):21.0%診療科別の傾向は? 診療科別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。・脳神経外科(37人):40.5%・循環器内科(67人):38.8%・消化器外科(34人):32.4%・精神科(78人):29.5%・消化器内科(53人):28.3%・放射線科(32人):28.1%・整形外科(55人):23.6%・神経内科(30人):23.3%・内科(197人):21.8%・呼吸器内科(34人):20.6%・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):16.1%・小児科(52人):11.5% その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第1回】昨年度の年収

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リチウムが高齢の軽度認知障害患者の言語記憶低下を抑制か

 気分障害の治療に用いられるリチウムは、抑うつや不安などに有効であるだけでなく、脳にも利点をもたらすようだ。予備的な臨床試験で、低用量のリチウムの錠剤が、軽度認知障害(MCI)がある高齢者の言語記憶能力の低下を遅らせる可能性が示された。米ピッツバーグ大学精神医学分野のAriel Gildengers氏らが実施したこの試験の詳細は、「JAMA Neurology」に3月2日掲載された。Gildengers氏らは、「今回の臨床試験の結果は決定的なものではないが、より大規模な追加試験を実施する必要性を示すには十分な有望な兆候が得られた」と説明している。 論文の研究背景によると、先行研究では、アルツハイマー病で見られる脳の変性の背景にリチウム不足が関与している可能性が示唆されている。Gildengers氏は、「過去の研究で、長期間リチウムを使用している双極症(双極性障害)の高齢者では、脳の統合性を示すマーカーがより良好な傾向が認められた。そこで新たな疑問として浮かび上がったのが、そうした神経保護作用が気分障害以外にも及ぶのか、また、それを前向き臨床試験で厳密に検証できるのかということだった」と説明する。 今回の臨床試験では、60歳以上の高齢者83人を、2年間にわたって低用量リチウムを使用する群(41人)とプラセボを使用する群(42人)のいずれかにランダムに割り付け、リチウムが脳の機能や構造に与える影響を評価した。参加者は、認知機能検査と脳画像(MRI)検査を受けた。最終的に、実際に治療を受けたリチウム群41人(平均年齢72.93歳、女性56%)とプラセボ群39人(平均年齢71.22歳、女性56%)の80人が解析に含められた。 その結果、言語記憶評価テスト(CVLT-II)のスコアの毎年の低下幅は、リチウム使用群で0.73ポイントだったのに対し、プラセボ群では1.42ポイントであった(1年当たりの差0.69ポイント、95%信頼区間0.01〜1.37、P=0.05)。一方、脳画像検査では、両群ともに、記憶を司る脳領域である海馬の体積と脳皮質体積が時間の経過とともに縮小していたが、有意な群間差は認められなかった。探索的解析では、アルツハイマー病と関連する有害なタンパク質として知られるアミロイドβの脳内蓄積量が多い人では、リチウムによる保護効果がより大きい可能性が示唆された。 論文の筆頭著者であるGildengers氏は、ニュースリリースの中で、「重要なのは、リチウムが失われた記憶を回復させるわけではないという点だ。もし今回の結果が確かなものであれば、リチウムは記憶力の低下を遅らせる働きをしている可能性がある」と述べている。 この臨床試験が開始されたのは2018年である。その当時、アミロイドβを調べる血液検査は存在しなかった。そのため、参加者は臨床症状のみに基づき試験に登録されており、アミロイド陽性だったのは参加者の一部だった。Gildengers氏らは、「このことが、こうした患者群でリチウムのより強い効果を明らかにする同試験の力を弱めた可能性がある」との見方を示している。Gildengers氏は、「もし現時点でこの試験を計画するなら、最初からアミロイドβの状態に基づいて参加者を登録するだろう。実際、次の研究ではそのような方法で実施する予定だ」と話している。 また、今回の臨床試験では低用量のリチウムが高齢者でも安全に使用できることが示された。研究グループは現在、より大規模で決定的な臨床試験の実施に向けて支援を求めている。Gildengers氏は、「今回の臨床試験は、このアプローチが実行可能で安全であり、さらに追究する価値があることを示している。一方で、特にこれほど重要な問題を扱う場合には、慎重に計画された十分な検出力を有する臨床試験が不可欠である理由を改めて認識させられた」と述べている。

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幻聴が病気の場所を教えてくれた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第303回

幻聴が病気の場所を教えてくれた1例「私は今、お前の脳内に直接語りかけている……」──誰もが一度はそんな中二病全開の妄想を抱いたことがありますよね?えっ、ないですか?静まり返った教室や一人きりの自室で、自分にだけ特別な能力が備わっていると信じて疑わなかったあの黒歴史。しかし、それが単なる妄想ではなく、現実の出来事だったとしたらどうでしょう。今回は、そんな漫画やアニメのような展開が本当に起こってしまった、驚愕の症例報告をご紹介します。Azuonye IO. A difficult case: Diagnosis made by hallucinatory voices. BMJ. 1997 Dec 20;315(7123):1685-1686.症例は、精神疾患の既往もなく身体的にも健康であった40代前半の女性です。ある日、自宅で一人で本を読んでいたところ、突然頭の中に声が聞こえ始めました。「―――怖がらないでください。こんな風に話しかけられて驚いているでしょうけれど、これが一番簡単な方法だったのです」その声はさらに続き、ロンドンにある特定の病院の放射線科に行くようにと具体的な指示を出しました。「あなたには脳腫瘍があり、治療が必要です」。幻聴の内容は、驚くほど具体的でした。恐怖を感じた女性は精神科を受診しました(ちなみに当時の担当医は本論文の筆頭著者)。幻聴に対して投薬とカウンセリングが開始され、症状は一時的に消失しました。しかし、休暇で海外に滞在中、再び声が聞こえ始めたのです。「―――早く帰国して、脳腫瘍の治療を受けるべきだ」さすがに不安を抑えきれなくなった女性は、帰国後すぐに病院を再受診しました。担当医は、彼女を安心させる目的も兼ねて頭部CT検査をオーダーしました。ところが、検査の結果…、なんと幻聴が指摘したとおり、髄膜腫が発見されたのです。ただちに脳神経外科で腫瘍摘出術が施行されました。そして、彼女が術後に意識を取り戻した直後、あの声が最後にこう語りかけてきたと記録されています。「―――あなたを助けることができて嬉しいです。さようなら」これ以降、幻聴が再び出現することはありませんでした。この信じ難い症例について、明確なメカニズムは現在も解明されていません。

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新生児のフェニルケトン尿症に対応する治療薬発売/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)顆粒分包を2026年3月18日に発売した。 PKUは、まれに起こる先天性代謝異常疾患であり、フェニルアラニン(Phe)と呼ばれる必須アミノ酸を分解できないことが特徴で、神経学的症状やその他の症状を引き起こす。未治療や管理が不十分な状態が続き、Pheが体内に有害なレベルまで蓄積した結果、長年にわたり知的障害、痙攣発作、発達遅延、認知能力低下、行動および感情の問題など、重度かつ不可逆的な障害が生じる。現在、新生児ではスクリーニングで診断が行われており、世界中で約5万8,000人の患者が推定されている。 セピアプテリンは、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)のきわめて重要な補酵素であるBH4の天然前駆体であり、その作用機序により、Phe濃度を効果的に低下させることで、幅広くPKU患者の治療ができることが期待されている。<製品概要>一般名:セピアプテリン販売名:セピエンス顆粒分包 250/1,000mg効能又は効果:フェニルケトン尿症効能又は効果に関連する注意:BH4欠損症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない用法及び用量又は使用方法:通常、セピアプテリンとして、以下の用量(省略)を1日1回食後又は食事とともに経口投与する。なお、忍容性が認められない場合、6ヵ月以上2歳未満では1日7.5mg/kgまで、2歳以上では1日20mg/kgまでの範囲で適宜減量すること。承認日:2025年12月22日発売開始日:2026年3月18日薬価:セピエンス顆粒分包 250mg 1万6,989.4円/包セピエンス顆粒分包 1,000mg 6万7,957.1円/包製造販売元:PTCセラピューティクス株式会社

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抗コリン薬の使用は心血管イベントリスクの上昇と関連

 抗コリン薬と呼ばれる一般的な薬剤の使用が、心不全などの重篤な心血管疾患のリスク上昇と関連する可能性が新たな研究で示された。抗コリン薬を最も多く使用していた人では、非使用者と比べて心血管イベントリスクが71%高かったという。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のHong Xu氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に2月28日掲載された。ただし、本研究は観察研究であり、抗コリン薬が心疾患を直接引き起こすことを証明したものではない。 抗コリン薬は、神経伝達物質のアセチルコリンの働きを抑える薬剤で、睡眠補助薬や抗ヒスタミン薬、尿失禁治療薬、一部の抗うつ薬などさまざまな処方薬や市販薬に含まれている。 今回の研究でXu氏らは、ストックホルム在住で主要な心血管疾患の既往がなく、2008年1月1日時点で45歳以上だった50万8,273人を対象とし、2021年12月31日まで心血管イベントの発生を追跡した。抗コリン薬の使用量(抗コリン負荷)は抗コリン薬認知負荷(Anticholinergic Cognitive Burden;ACB)スケールを用いて評価し、規定1日投与量(defined daily dose;DDD)に基づく年間使用量として定量化した。論文の筆頭著者である同研究所のNanbo Zhu氏は、「抗コリン薬を含有する薬剤の多くは、高齢者や複数の疾患を有する人に使用されている。そこでわれわれは、同薬の累積的な使用量が経時的に心血管疾患リスクに影響を及ぼすかどうかを調べたかった」と説明している。 追跡期間中央値14.0年の間に11万8,266件の心血管イベントが発生した。解析の結果、社会人口統計学的特徴、生活習慣、および臨床的リスク因子を調整した後も、抗コリン薬の使用量の増加は心血管イベントリスクの増加と有意に関連していた。具体的には、年間累積使用量が0DDDの群と比較して、365DDD以上の群ではリスクが71%、90~364DDDの群では31%、1~89DDDの群では16%高かった。同薬の使用量が最も多い群で特にリスクが高かった疾患は、心不全(ハザード比2.70)、不整脈(同2.17)、動脈疾患(同1.48)、心筋梗塞(同1.46)、静脈血栓塞栓症と脳血管疾患(いずれも同1.32)であった。 研究グループは、「抗コリン薬の累積負荷が、短期的だけでなく長期的にも心臓の調節機能に影響を与える可能性がある」との見方を示している。また、Xu氏は、「この結果は、これらの薬を常に避けるべきだということを意味するわけではなく、使用量を注意深く管理する必要があることを示している」と述べている。 さらに研究グループは、「抗コリン薬が心臓の健康に直接影響するかどうかを明らかにするには、臨床試験によるさらなる検証が必要だ」としている。

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第55回 認知症予防に「リチウム」が効く? 新たな治療法を探る「パイロット研究」の意味

物忘れが気になり始めた高齢者の認知機能低下を、古くからある気分安定薬「リチウム」で防げるかもしれない。そんな期待を込めた初期段階の臨床試験(パイロット研究)の結果が、医学誌JAMA Neurology誌に発表されました。決定的な「効果あり」という結論には至りませんでしたが、新しい治療法を生み出すために、こうした地道な研究がいかに重要であるかを解説します。認知症の一歩手前「MCI」とリチウムへの期待軽度認知障害(MCI)は、記憶力などに少し低下が見られるものの、日常生活には支障がない状態のことを指し、健康と認知症の中間段階にあたります。近年、アルツハイマー病の発症メカニズムに「脳内のリチウム不足」が関わっている可能性が動物実験で指摘され、リチウムを補うことが脳の神経を保護し、認知機能の低下を遅らせるのではないかと注目を集めてきました。これを検証するため、米国ピッツバーグ大学の研究チームは、MCIの高齢者80例を対象に臨床試験を行いました。参加者を2つのグループに分け、一方には低用量(1日150〜300mg)のリチウムを、もう一方には偽薬(効果のないプラセボ)を2年間にわたって毎日飲んでもらい、記憶力や脳の容積の変化などを詳しく調べました。気になる研究結果は?結論から言うと、あらかじめ設定されていた6つの主要な評価項目(認知機能テスト、海馬の容積、大脳皮質の容積、血液中のバイオマーカーなど)すべてにおいて、統計学的に明確な「効果がある」という厳しい基準を満たすことはできませんでした。脳の海馬や大脳皮質の容積は、リチウムを飲んでも偽薬を飲んでも、時間とともに同じように減少していく経過が観察されました。しかし、希望が見えるデータもありました。言葉の記憶力を測るテストでは、偽薬のグループが1年で平均1.42点スコアが低下したのに対し、リチウムのグループは0.73点の低下にとどまっていたのです。この差は、厳格な統計基準には届かなかったものの、病気の進行を遅らせる可能性を示すデータと言えます。安全性についても重要なデータが得られました。研究期間中、薬が直接の原因と考えられる深刻な副作用は発生しませんでした。ただし、クレアチニン(腎機能の指標)の上昇、下痢、疲労感、手の震えなどが一部の参加者に見られ、高齢者が無理なく服用できる用量には限界があることも指摘されました。なぜ「効果が証明されなかった研究」が重要なのかこれらの結果を見ると、「なんだ、結局効くかどうかわからないのか」とがっかりされるかもしれません。しかし、今回の研究は「パイロット研究」と呼ばれる非常に重要なステップです。新しい治療法を世に出すためには、最終的に数百人、数千人規模の患者さんが参加する大規模な試験で効果を証明しなければなりません。しかし、いきなり大規模な試験を行うのは、患者さんの安全性や莫大な費用の面でリスクが大きすぎます。そのため、まずは少人数で「そもそもこの薬の量は高齢者にとって安全か?」「患者さんは2年間も薬を毎日飲み続けられるか?」「効果を正確に測るためには、どのテストが最適か?」を確かめる必要があるのです。実際、今回のパイロット研究から「高齢者には1日300mgを超えるリチウムは負担が大きい」という教訓が得られ、将来の大規模試験では150〜300mgの用量で行うべきだという方針が立ちました。また、アルツハイマー病の原因となるアミロイドが脳に蓄積している患者さんに絞って試験を行えば、より明確な効果が確認できる可能性が高いこともみえてきました。未来の医療へ向けた冷静な一歩今回のニュースから私たちが知っておくべきことは、「認知症予防のために、今すぐ焦ってリチウムやサプリメントを自己判断で飲んではいけない」という事実です。現時点では、リチウムがMCIの進行を食い止めると証明されているわけではありません。しかし、医学研究はこうして患者さんの安全を第一に守りながら、一つひとつのデータを積み重ねて慎重に進められています。失敗や「効果なし」というデータも含めて、すべてが次の大きな発見のための重要なピースになります。将来、リチウムが安価で身近な認知症の予防薬として確立される日が来るかもしれません。期待を持ちながらも、焦らず見守っていくことが大切です。1)Gildengers AG, et al. Low-Dose Lithium for Mild Cognitive Impairment: A Pilot Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2026 Mar 2. [Epub ahead of print]

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生涯を通じた食生活の質が認知機能と関連している

 食生活は、高齢期における認知機能低下や認知症発症のリスク因子である。しかし、食生活の質と認知機能の長期的な関係は、これまであまりよくわかっていなかった。米国・タフツ大学のKelly C. Cara氏らは、食生活の質と認知機能の傾向、そして生涯にわたるこれらの相互関係について調査を行った。Current Developments in Nutrition誌2025年12月20日号の報告。 1946年英国出生コホート(3,059例、男性の割合:50.2%)のデータを用いて、混合軌跡モデリング(group-based trajectory modeling)により、幼少期から成人期後期までの食生活と認知機能の軌跡およびそれらの関連性、また食生活の軌跡とその後の認知症の徴候との関連性を調査した。Healthy Eating Index-2020のスコアは、4歳、36歳、43歳、53歳、60~64歳における食事の回想および日記から算出した。認知機能の全体的パーセンタイル順位は、8歳、11歳、15歳、43歳、53歳、60~64歳、68~69歳における知的能力と認知機能の検査から算出した。68~69歳におけるアデンブルック認知機能検査IIIのスコアに基づき、認知症の可能性を評価した。多項ロジットモデルを用いて、軌跡群の早期予測因子を決定した。 主な結果は以下のとおり。・3つの食生活の質の軌跡および4つの認知機能の軌跡が特定された。・性別、出生地、幼少期の社会階級、余暇活動は、軌跡群の予測因子であった。・結合軌跡モデルでは、認知機能が最も低い群には、主に食生活の質が低いまたは中程度の参加者がそれぞれ58%、35%含まれていた。・一方、認知機能が最も高い群には、食事の質が中程度または高い参加者がそれぞれ57%、36%含まれていた。・68~69歳で認知症の兆候を示した参加者の割合は、食事の質が低い群で、中程度および高い群と比較し、それぞれ3.8%、7.4%高かった。 著者らは「これらの結果は、生涯を通じた食事の質と認知機能との間に関連があること、そして幼少期から成人期にかけて食事の質が低い人は認知症の可能性が高いことを示唆している。食事ガイドラインに沿った食生活を長期にわたって継続することは、生涯を通じて認知機能にプラスの影響を与える可能性がある。しかし、これらの結果を確認するには、より多くの縦断的研究が求められる」としている。

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中年期の健康的な食事は認知機能低下リスクを抑制する?

 今日の食卓に並んでいるものが、高齢になったときの脳の老化に影響を与える可能性があるようだ。中年期に健康的な食事をしている人では高齢期に認知機能が低下するリスクが低いことが、新たな研究で示された。米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院疫学・栄養学分野のKjetil Bjornevik氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月23日掲載された。 Bjornevik氏らは、「野菜や魚を豊富に、ワインは適量を摂取することは、認知機能低下リスクの抑制に寄与していた一方、赤肉や加工肉、フライドポテト、糖分の多い飲料は認知機能の低下に関連していた。この結果は、健康的な食事が将来の脳の健康に有益である可能性を示唆している」と述べている。 今回の研究では、米国の女性看護師と男性医療従事者を対象に、健康状態を生涯にわたって追跡した3件の大規模研究のデータを統合し、合計で15万9,347人(平均年齢44.3歳、女性82.6%)を対象に解析が行われた。Bjornevik氏らは、各参加者の食事内容を調べ、心臓の健康に良いとされるDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食、健康的な植物性食品ベースの食事指数(Healthful Plant-Based Diet Index;hPDI)、プラネタリーヘルスダイエット指数(Planetary Health Diet Index;PHDI)、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)など、6種類の健康的な食事法の遵守度をスコア化した。その上で、同スコアと高齢期の自己申告に基づいた主観的な認知機能低下との関係を調べた。 その結果、脳の健康を守る効果が最も高いのはDASH食であることが示された。具体的には、DASH食の遵守度が上位10%の人では下位10%の人と比べて、認知機能低下のリスクが41%低かった(リスク比0.59、95%信頼区間0.57〜0.62)。特に、45~54歳の時点でDASH食の遵守度が高いことは、認知機能低下リスクが低いことと最も強く関連していた。また、血糖値や炎症の抑制を目的とした食事法も認知機能低下のリスクを下げることが示された。 45〜54歳の人で関連が最も強かった点について、今回の研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスの管理栄養士であるStephanie Schiff氏は、「この年代の人は『年をとれば記憶力は衰えるし、頭の回転も鈍くなってぼんやりするものだ。それが老化現象であり、どうすることもできない』と思いがちだ。だからこそ、適切な食事法を守れば、あるいはDASH食に従えば、記憶力や認知機能、注意力、言語能力、実行機能を改善できる可能性があることを示したこのハーバード発の研究結果には心を躍らされる」と付け加えている。 本研究では、DASH食以外の健康的な食事法も認知機能低下のリスクを11~24%低下させることが示された。さらに、野菜、果物、魚、ワイン、紅茶、ドレッシングはいずれも良好な認知機能に関連していた一方、フライドポテト、赤肉や加工肉、卵、甘い飲み物、菓子類は認知機能の悪化に関連していた。 Schiff氏は、DASH食が脳に大きなメリットをもたらすことが示されたことに驚きはなかったと話す。「心臓の健康に良いDASH食に従った食事を摂取することには利点しかない。心臓を健康に保つことは、脳を健康に保つことにつながるからだ」と同氏は言う。 また、DASH食は血圧を下げることを重視しているが、このことが脳の老化に対する有益性の多くを説明している可能性があるとSchiff氏は考察している。高血圧は血管に損傷を与えるが、その中には脳に血液を送る血管も含まれる。「脳に十分な血液が送られなくなると酸素が不足し、脳細胞の損傷をもたらす。その結果、認知機能や記憶力の低下、さらにはアルツハイマー病のリスクが上昇する可能性がある」と同氏は説明している。

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認知症患者に対する抗精神病薬使用が死亡リスクに及ぼす影響は

 神経精神症状は、認知症で頻繁にみられ、機能低下、介護者の負担、死亡率の主要な要因となっている。症状が重症化したり、非薬物療法に反応しなくなったりすると、抗精神病薬を使用することが多いが、いまだに安全性への懸念が残っている。とくに、地域社会で生活する神経精神症状を有する患者において抗精神病薬の使用が生存率に及ぼす影響は依然として明らかになっていない。スペイン・Clinica Josefina ArreguiのKevin O'Hara-Veintimilla氏らは、認知症および神経精神症状を有する高齢者における抗精神病薬使用と全死亡率との関連性を検討するため、以前発表したシステマティックレビューおよびメタ解析の2次解析を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2026年2月10日号の報告。 本解析は、PROSPERO(CRD42024621462)に登録、コクランハンドブックに従って実施、PRISMA 2020ガイドラインに準じて報告された。神経精神症状が記録されている65歳以上の地域在住の認知症患者を対象に、抗精神病薬の使用と全死亡率の調整ハザード比(aHR)を報告した研究を適格な観察研究とした。プール推定値は、固定効果モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・5件の観察コホート研究より抽出された1万4,183例を対象に解析を行った。・抗精神病薬の使用と全死亡率との間に有意な関連は認められなかった(プールされたaHR:1.06、95%信頼区間[CI]:0.97〜1.16、p=0.21、I2=43%)。・サブグループ解析では、定型抗精神病薬ではaHRが0.79(95%CI:0.62〜1.01)、非定型抗精神病薬ではaHRが1.23(95%CI:0.97〜1.56)であり、クラス間で有意差が認められた(p=0.03)。 著者らは「認知症および神経精神症状を有する地域在住高齢者において、抗精神病薬の使用と全死亡率の間に統計的に有意な関連は認められなかった。しかし、利用可能なエビデンスは限定的で不正確であるため、不確実性が大きかった。そのため、これらの知見は慎重に解釈する必要がある」と結論付けている。

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ニセ警察からの電話【Dr. 中島の 新・徒然草】(624)

六百二十四の段 ニセ警察からの電話だんだん暖かくなってきましたね。花粉さえなければ最高の季節なんですけど。ChatGPTの厳しい指導のもと、私は毎日6,000歩のウォーキングを続けています。花粉の多い日でも何とかノルマを達成しなくてはなりません。なので、家の中をグルグルと歩いて辻褄を合わせております。さて、先日は外来で患者さん(50代、女性)に驚くべき録音を聞かされました。なんと、ニセ警察からスマホにかかってきた詐欺電話です。早速、診察室で再生してもらいました。 ニセ 「大阪府警ですが静岡県警から捜査協力の要請を受けて○田○子さんにご連絡しております」 患者 「はいはい」 ニセ 「現在静岡県警と合同捜査中の事件に関する内容で、○田さんにお伝えしなくてはならない重要な事項がありますので」 患者 「はい、は~い」 このニセ警察、妙に爽やかです。好青年すぎて逆に違和感しかありません。ホンモノの大阪府警って、もっと馴れ馴れしいオッチャンたちばっかりな気がします。まあ、関西人というのは、私も含めて全体に爽やかさが足りないわけですが。 ニセ 「本人確認書類となる身分証明書をお持ちのうえで、本日ですね、大阪府警の警察本部にお越しいただくことは可能でしょうか」 患者 「はい」 ここでニセ警察にちょっとした戸惑いが感じられました。電話をかけた相手が、まさか大阪に住んでいるとは思っていなかったのかもしれません。詐欺の場合は「そんな遠くは行けません」と言わせておいて、「それではビデオ通話で取り調べを行います」と提案し、ニセの警察手帳や逮捕状を見せて本物と信じ込ませるのが通常の手口なのだとか。さらにやり取りは続きます。 ニセ 「お越しいただくことは可能ですか」 患者 「行きますよ」 ニセ 「何時頃来られますか」 患者 「何時でも」 ニセ 「すぐに来られる、と」 ここで急に患者さんの声が大きくなります。 患者 「どういったご用件ですか」 ニセ 「すぐに来られるということですか」 患者 「どういうご用件ですか。静岡県警の誰ですか!」 「ブチッ」という音とともに電話は切れてしまいました。あまりにも面白いやり取り、そのまま聞き流すのももったいない。そこで診察室でもう一度再生してもらって、自分のスマホで録音しました。自分も詐欺に遭わないためには、何回も聴く必要があります。家に持って帰って、女房にもこの録音を聞かせたところ…… 女房 「この人、何をいきなりキレているわけ?」 中島 「キレてるのかなあ。このくらい平常運転でしょう」 女房 「こんなに怒鳴られたら、ニセ警察もビックリしたと思うわ。いったい何の病気なの?」 中島 「高次脳機能障害やけど」 女房は「やっぱり!」という表情になりました。この患者さんはいつもこんな感じなので、私もすっかり慣れてしまっていました。確かにご本人は「私、腹が立ったら自分でも止められへんねん」と普段から言っています。たまたまこの患者さん、詐欺電話を受けた日にお姉さんが自宅に来ていたとのこと。このお姉さんは以前に警察に勤めていたこともあって、詐欺の手口もよく知っていました。横から「スピーカーにしろ」とか「録音しろ」とか紙に書いて指示されたそうです。さらに、警察からの連絡の場合は電話番号の下4桁が「1234」になるのだとか。言われてみれば、警察署の代表番号は常に「1234」です。詐欺を見破る有力な方法ですが、気が付きませんでした。ただ、最近は詐欺師のやり方も手が込んできて、こちらのディスプレイに表示される番号の下4桁が「1234」となることもあるとのこと。そうなると何が正しいのか、わからなくなってしまいます。が、少なくとも「1234」以外の番号から警察を名乗る電話がかかってきたら、疑ってかかったほうがよさそうですね。詐欺を巡っては、ほかにもいろいろな報道がされています。ニュースによると、最近の警察は「仮想身分捜査」なるものを行っているのだとか。これは捜査員が架空の身分で闇バイトに応募・潜入するもので、2025年には13件実施し、5人を摘発し、7件を未然防止したそうです。「ひょっとして捜査員が紛れ込んでいるかも」と犯罪組織に思わせたら、抑止効果のほうも期待できるかもしれません。ともあれ、読者の皆さんも、ニセ警察からの詐欺電話に引っ掛からないようご注意ください。最後に1句 彼岸過ぎ 詐欺師相手に ブチ切れる

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日本における認知症介護者、BPSDによる負担増加とQOL低下が明らかに

 アルツハイマー病患者における認知症の行動・心理症状(BPSD)は、介護者の負担、ひいてはケアの質に深刻な影響を及ぼす可能性がある。東京慈恵会医科大学の品川 俊一郎氏らは、日本のアルツハイマー病患者の介護者において、BPSDおよびBPSDのサブタイプと介護者の負担およびQOLとの関連を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年1月28日号の報告。 本調査では、マクロミルに登録されているアルツハイマー病患者の同居介護者を対象に、ウェブベースのアンケートを実施した。BPSDの有病率は、Neuropsychiatric Inventory-Questionnaire(NPI-Q)の日本語版を用いて測定した。介護者の負担、健康関連QOL、ソーシャルケア関連QOLを評価するため、それぞれZarit介護者負担尺度日本語版(J-ZBI)、EQ-5D-5L、介護者向け成人ソーシャルケア成果ツールキット(ASCOT-Carer)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・回答者705人中、BPSDを有する患者を介護していたのは639人(90.6%)、BPSDのない患者を介護していたのは66人(9.4%)であった。・介護者の平均年齢は54.6歳であり、男性の割合が56.9%、両親または義理の両親を介護していた人の割合は84.0%であった。・BPSDを有する患者を介護していた人は、BPSDのない患者を介護していた人と比較し、J-ZBIスコアが高かった(平均差[MD]:6.7、95%信頼区間[CI]:4.5〜9.0、p<0.001)。一方、EQ-5D-5Lスコア(MD:-0.076、95%CI:-0.134〜-0.018、p=0.010)およびASCOT-Carerスコア(MD:-0.101、95%CI:-0.168〜-0.033、p=0.003)は低かった。 著者らは「日本のアルツハイマー病患者の介護者において、介護負担増加とBPSDの間に有意な関連が示された。これは、日本の介護者の医療および社会福祉関連QOLの低下と関連している可能性を示唆している」としている。

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65歳を過ぎてからの予防でも遅くはない! Lancetの14の危険因子を読み解く(中編)【外来で役立つ!認知症Topics】第39回

前回に続き、今回もLancet誌が掲げる認知症の修正可能な危険因子(リスクファクター)を扱う1)。当初は、前回解説した「難聴」と「高LDLコレステロール(LDL-C)」以外の12因子について個々に述べる予定であったが、その前に筆者自身、見落としがあると反省している。改めて注意喚起すべきは、これらはあくまで「認知症」の危険因子であって、必ずしも「アルツハイマー病(AD)」のみを指すものではないことだ。認知症の危険因子は70以上に及ぶとよく言われるが、示された14の危険因子がすべての認知症原因疾患(AD、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、その他)に当てはまるとは考え難い。一方で世界的に見ても、認知症の3分の2はADが占める。だから実際には、広く認知症全般に対する危険因子を論じているはずが、無意識に「ADの危険因子」として捉えてしまいがちだ。実際に、関係論文を読み込んでみても、こうした分野の知見の大部分はADに関するものであり、それ以外では血管性認知症とレビー小体型認知症に関するものがわずかにあるに過ぎない。たとえば血管性認知症については高血圧と糖尿病などが該当し、レビー小体型認知症なら大気汚染のPM2.5だろうか。いずれにせよ、認知症の危険因子を語るうえでは、ADに関わるものが主体になっている。こうした背景を踏まえ、危険因子とその対策を考えるうえで、基本でありながら見失いがちな「3つの視点」を整理しておきたい。ライフステージに沿った病理の段階を理解するまずLancetによる報告の1つの特徴は、危険因子を年代別に分けていることである。筆者は、これが「若年期・中年期・老年期」の3段階に分けられているのは、ADの発症から進行という病理の段階に沿って危険因子を説明したいからではないかと思う。その段階とは、「発病以前・発病の芽生え・発病前夜」である。1)若年期(発病以前):若年期の教育が、脳の神経回路や「認知予備能」という脳の骨格を作る。つまり大脳の基礎力がこの時期に形成されるわけだ。そして後年、これを維持し育てていくことが予防につながると考えればいいだろう。2)中年期(発病の芽生え):中年期は脳内でアミロイドの沈着が始まるという意味で、AD脳の芽生えの時期だと考えられる。この時期の危険因子では、通称「悪玉コレステロール」のLDL-Cや難聴、糖尿病などの疾病や障害が主体である。これらは中年期に発症しやすくAD病理の悪化を促進させるため、この時期に「悪の芽」を摘んでおくことが重要だ。3)老年期(発症前夜):老年期の危険因子である孤独や大気汚染、視力低下などは、発症の準備がほぼ整ったステージにおける「とどめの一押し」になりうる。これら3つの危険因子は、いずれもアミロイド仮説との直接的な関係は薄いかもしれないが、むしろ脳の衰弱ぶりを露呈させてしまう「最後の悪役」とみなすべきだろう。こうした要因はこれら3つに限らない。たとえば、せん妄や大腿骨頸部骨折、さらに入院など生活の場の変化といった要因もまた、認知症発症のとどめの一押しだったと経験された読者も多いだろう。画像を拡大する「疾患・障害」と「生活・環境」に分けて考える14の危険因子は、大きく2つのグループに分類できる。一つは、「疾患・障害リスク」である。糖尿病やLDL-Cが代表的で、これらは従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化、また血管脳関門の観点から説明しやすい。もう一つは、「生活・環境リスク」だ。アミロイド仮説では説明し難いものである。上記の「教育」のように、若年期に基礎が作られた脳内ネットワーク・認知予備能といった別の考え方で説明される傾向がある。このように分類する理由を、次のように換言することもできるだろう。つまり前者の危険因子に注目することで、ADという病気の進行プロセスをくい止めようという表街道の予防法があることがわかる。また後者へ注目すれば、健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという狙いの予防法もあるとわかる。前者が表街道なら、後者は側面からの援護射撃と例えられるだろう。65歳を過ぎてからの「予防」の留意点以上を踏まえて、65歳以上で現在は認知症ではない人を想定して、危険因子と予防を説明する際の留意点を述べたい。まず伝えたいのは、「若年期・中年期の危険因子は、老年期に入ったら無関係になるわけではない」ということだ。たとえば、若い頃の教育が不十分だったとしても、「生涯学習」の言葉どおり、人生を通して学び続ける姿勢は脳の維持につながるはずだ。この考え方は、中年期の危険因子の大半、とくに糖尿病や高血圧といった生活習慣病の管理にも当てはまる。一方で、こうした「老年期からの予防でも遅くはない」という考え方では難しい危険因子もある。その代表は「頭部外傷」だろう。というのは、過去の頭部外傷がもたらした脳へのダメージを癒したり進行を阻止させたりする確たる方法は、今のところなさそうだからである。実際、これまで調べた範囲では、頭部外傷という危険因子への対応の多くは、これからの転倒・転落を防ぐための方法であった。再発防止がポイントという意味で、「うつ病」への対応もそれに似ているかもしれない。最後に、老年期特有の因子として、「孤独」「大気汚染」「視力低下」がある。具体的には次回述べるが、これらは上記の「過去の蓄積」の危険因子とは異なり、「今現在の問題」である。実際の対応がそう容易だとも思われないが、これらへの備えを一念発起して始めるのに遅すぎるということはない。今からでも着手できるという意味で、最も重要かもしれない。参考文献1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

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妊娠後期の抗てんかん薬曝露、児の神経発達障害との関連は?/BMJ

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLoreen Straub氏らは、米国の2つの医療利用データベースを用いて、妊娠後半期の抗てんかん薬への曝露が出生児の神経発達障害(NDD)のリスクに及ぼす影響を解析し、妊娠中のバルプロ酸曝露による児のNDDリスク増加についてさらに強固なエビデンスが得られたことを報告した。「ゾニサミドも複数のアウトカムとの関連性が示唆されたが、さらなる評価が必要である。他の抗てんかん薬についても、複数の比較やまれなアウトカムにおいて潜在的なシグナルが観察されているが、データの蓄積と確認が必要である」と述べている。BMJ誌2026年3月11日号掲載の報告。NDD(ADHD、ASD、学習障害など)のリスクを曝露群vs.非曝露群で検証 本検討には、米国における公的および民間の医療保険加入者の医療利用データ(Medicaid Analytic eXtract/Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files[MAX/TAF]の2000~18年、およびMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database[MarketScan]の2003~21年)が用いられた。 解析対象は、妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで継続して保険に加入していた12~55歳のてんかんを有する女性とその児で、児の出生から保険加入期間終了、対象となるNDDの診断、研究期間終了または死亡のいずれか早い時点まで追跡した。 妊娠後半期に少なくとも1回の抗てんかん薬の処方(単剤療法または併用療法)を受けた妊婦とその児を曝露群、てんかんと診断されているが妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで抗てんかん薬の投与を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。 抗てんかん薬は、カルバマゼピン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、トピラマート、バルプロ酸、ゾニサミドを対象とした。バルプロ酸はNDDとの関連が確立されていることから陽性対照として、ラモトリギンは一般的にNDDリスクと関連していないため陰性対照として用いた。 主要アウトカムは、検証済みのアルゴリズムを用いて特定されたNDD(ADHD、ASD、行動障害、発達性協調運動障害、知的障害、学習障害、発話または言語障害のいずれかを有すると定義)で、曝露群と非曝露群のNDDリスクを比較した。バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムと関連 解析対象は、MAX/TAFの1万7,590例(非曝露群7,245例、曝露群1万345例)、MarketScanの6,290例(それぞれ1,642例、4,648例)で、曝露群の個々の曝露件数はラコサミドの219例からレベチラセタムの5,261例の範囲にわたった。 ほとんどのNDDが診断されると予想される8歳時点でのNDDの累積発生率は、非曝露群で34.3%(95%信頼区間[CI]:32.0~36.7)に対し、曝露群ではラコサミド曝露の22.7%(95%CI:12.2~39.8)からゾニサミド曝露の42.6%(95%CI:31.9~55.3)にわたった。 バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムとの関連を示したが(補正後ハザード比[HR]の範囲:1.26~4.50)、レベチラセタムとフェニトインはいずれのアウトカムとも関連していなかった。 いくつかの薬剤は知的障害のリスクが増加したが、当該障害児が少なく正確な推定値を得られなかった。トピラマートとラモトリギンは、ほとんどのアウトカムにおいて有意な関連は認められなかったが、知的障害(両薬剤)および学習障害(トピラマートのみ、少数例に基づくHR:1.23)については潜在的なシグナルが認められた。 カルバマゼピンとオクスカルバゼピンは、ADHDおよび行動障害のリスクが中等度に増加した(HRの範囲:1.23~1.40)。 これらの結果は、ラモトリギンを対照薬として用いた場合を含む複数の感度解析においても一貫していた。

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認知症リスクが上昇するコーヒー摂取量は?

 認知症は神経変性疾患であり、環境因子や食習慣を含む生活習慣因子が重要な病因として関与していると考えられる。とくに、コーヒーや紅茶の摂取が認知症の予防効果とリスク因子の両方を示していることから、その影響については依然として議論が続いている。イタリア・University of Modena and Reggio EmiliaのElena Mazzoleni氏らは、コーヒーおよび紅茶の摂取と認知症リスクの用量反応関係を評価するため、メタ解析を実施した。Journal of Epidemiology and Population Health誌2026年2月号の報告。 2025年12月9日までに公表された研究をPubMed、EMBASEよりシステマティックに検索した。対象者の選定基準は、慢性疾患がなく、認知症の既往歴がない集団を対象にコーヒーまたは紅茶の摂取量および認知症発症リスクを評価したコホート研究またはコホート・ネストテッド・ケース・コントロール研究とした。研究の質の評価にはROBINS-Eツールを用いた。コーヒーと紅茶の摂取量増加と認知症の関係について、非線形用量反応モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には10件の研究を含めた。ベースライン時点で45万人超が参加し、平均フォローアップ期間は11.5年であった。・紅茶の摂取量の増加に伴い、すべての原因による認知症リスクは漸進的かつ直線的に減少することが明らかとなった。これは、すべての種類の紅茶と緑茶のみの場合でも同様の結果であった。・コーヒーはU字型の関係を示し、1日2~3杯(約300~450mL/日)でリスクが最も低かった。・アルツハイマー型認知症との関連では、1日3杯までのコーヒー摂取はリスクに差がみられなかったが、それ以上の量になるとリスクの増加が認められた。 著者らは「本研究では、適度なコーヒー摂取は認知症リスクに影響を及ぼさないが、1日3杯以上のコーヒー摂取は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー型認知症のリスクを上昇させる可能性が示唆された。一方、紅茶の摂取はすべての原因による認知症リスクを直線的に低下させるようである。しかし、アルツハイマー型認知症については、1日1杯超の摂取ではリスクのさらなる低下は認められなかった」と結論付けている。

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アイトラッキング診断ツール、神経変性疾患の鑑別や評価の一助となるか

 眼球運動異常は、神経変性疾患においてよくみられる。これは、眼球運動を制御する神経経路および脳領域の変性が原因であると考えられる。背外側前頭前皮質、基底核、上丘、小脳の病理学的変化は、臨床検査では検出されない可能性のある眼球運動指標の微妙な変化を引き起こす。カナダ・Montreal Neurological InstituteのPaul S. Giacomini氏らは、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病およびその他の認知症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患における眼球運動バイオマーカーの潜在的な用途について考察した。Journal of Neurology誌2026年2月10日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・サッカード、アンチサッカード、固視、滑動追跡などの眼球運動指標は、疾患進行の予後を予測し、診断の補助として病理学的サブタイプを鑑別することができる。そのため、臨床医が運動機能および認知機能の早期悪化を評価することを可能にすると考えられる。・医療技術のコストが、臨床現場における最適な活用とアクセスを制限している。・専門の神経科医の不足は、医療へのアクセスをさらに制限している。・スマートフォンやタブレットなどの広く普及しているデジタル機器に組み込まれた新しいアイトラッキング技術は、最小限の機器で詳細な評価を可能にし、日常の臨床現場における患者評価や治療方針の決定を支援するための、非侵襲的かつ費用対効果の高い重要な方法であると考えられる。・デジタルバイオマーカーは、かかりつけ医、看護師、薬剤師などの医療専門家がケアのギャップを埋めるために容易に活用でき、神経変性疾患の患者へのケア提供を改善するために広く採用できる強力なツールとなる可能性がある。

20.

血液検査でアルツハイマー病の発症時期を高精度で予測

 脳がいつ衰え始めるのかが正確に分かるとしたらどうだろう。まるで近未来映画のストーリーのようだが、新たに開発された「生物学的時計」によって、それが現実になるかもしれない。米ワシントン大学医学部のKellen Petersen氏らが、p-tau217(リン酸化タウ217)と呼ばれるタンパク質に焦点を当てた血液検査により、アルツハイマー病(AD)の症状が現れ始める時期をわずか3.0~3.7年の誤差で予測できたとする研究結果を発表した。p-tau217は、ADで生じるタウタンパク質の異常(凝集体の形成)を反映する指標であり、その上昇はアミロイドβの蓄積とも密接に関連している。この研究の詳細は、「Nature Medicine」に2月19日掲載された。 研究グループによると、本研究では、脳内での有害なタンパク質の蓄積は、驚くほど一定で予測可能なスケジュールに従って進むことが示された。Petersen氏は、「アミロイドβとタウタンパク質のレベルは、まるで木の年輪のようなものだ。年輪を数えれば木が何歳か分かるのと同じように、これらのタンパク質も一貫したパターンで蓄積していき、値が陽性になる年齢が分かれば、その人がいつADの症状を発症するかを高い精度で予測できる」と話している。 研究グループは、独立した2つの高齢者コホート(Knight ADRCコホート258人、ADNIコホート345人)から得たデータを用いて、p-tau217の増加パターンから生物学的時計を新たに構築し、血液中のp-tau217値を測定することでAD症状の発現時期を予測できるかを検討した。 その結果、血漿中のp-tau217のパーセンテージ値(%p-tau217)が陽性(>4.06%)となる推定年齢から、AD症状の発現時期を平均3.0〜3.7年の誤差で予測し得ることが示された。また、p-tau217が陽性となってからAD症状が現れるまでの期間は、高齢になるほど短いことも示唆された。例えば、60歳で陽性となった人は、AD症状の発現まで約20年かかる可能性がある一方で、同じ陽性でも80歳の人の場合は、症状発現までわずか11年と推定された。 現在、ADリスクを特定するには高額な脳画像検査や侵襲的な脳脊髄液検査を要することが多い。それに対し、この血液検査はより迅速で、安価かつアクセスしやすい代替手段となる可能性を秘めており、医療や研究のアプローチを大きく変える可能性もある。 この検査は、現在は主に、研究の場で使用されている。研究グループは、開発した予測モデルの詳細と、他の研究者が探索・改良できるウェブアプリケーションも公開している。論文の上席著者であるワシントン大学医学部のSuzanne Schindler氏は、「短期的には、これらの予測モデルは、研究や臨床試験を加速させるだろう。最終的な目標は、個々の患者に、症状がいつ発現するかを伝えられるようにすることだ。そうすることで、患者や医師が症状を防いだり遅らせたりするための計画を立てられるようになる」と述べている。 なお、本研究には、AbbVie社、アルツハイマー病協会、アルツハイマー創薬財団(ADDF)の研究プログラムであるDiagnostics Accelerator、Biogen社、Janssen Research & Development社、武田薬品工業株式会社などが資金提供を行った。

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