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第243回 広がるCGP検査だが、コンパニオン診断薬として使う場合の診療報酬の低さゆえ、乳がんの治療薬トルカプが患者に使用されない事態に

メガバンクの行員の所業も“闇バイト”並の世の中にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。最近、証券会社や金融機関など、犯罪からは縁遠そうな企業の社員などによる悪質な犯罪が次々と表沙汰になっています。金融庁や東京証券取引所などでインサイダー取引の疑惑が明るみになったり、野村証券の元社員が強殺未遂罪で起訴されたり、三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から顧客の現金や貴金属を盗んだりと、もはや一流大出の大企業のエリートだからと言って、信用できる時代ではなくなってきています。野村証券は12月3日、元社員が強盗殺人未遂と放火の罪で起訴された事件を受けて、奥田 健太郎社長らが記者会見を開き、経営幹部10人が役員報酬を自主返上すると明らかにしました。12月6日には三菱UFJ銀行の新たな不祥事が明るみに出ました。同日付の日経バイオテクは、「三菱UFJ銀行の管理職の元行員、カルナバイオへの脅迫などで起訴」というニュースを発信、バイオベンチャー、カルナバイオサイエンスに誹謗中傷や脅迫をしていたなどとして、11月7日に神戸地検に強要未遂罪で起訴された50代の被告人が、三菱UFJ銀行の管理職の元行員(起訴後に懲戒解雇)だったと報じています。同記事によれば、「カルナバイオサイエンス役員の写真を貼り付けて『無能な経営者』と誹謗中傷したり、『死ね』と脅迫したりなど悪質性が高いことから、同社は警察に相談。2024年8月1日に兵庫県警は威力業務妨害や脅迫の容疑で元行員を逮捕した。その後、2024年11月7日に神戸地検は、脅迫罪よりも重く、罰金刑が設けられていない強要未遂罪で元行員を起訴した」とのことです。また、この元行員は三菱UFJ銀行の内規に違反する株取引を行っていたとも書かれています。貸金庫から顧客の現金や貴金属を盗んだり、顧客を脅迫したりと、もはや日本を代表するメガバンクとは思えない行員たちの所業の数々。同行の頭取は12月16日に記者会見を開き、被害額が10数億円に上るという貸金庫窃盗について謝罪しましたが、頭取や担当役員の発言には“個人の犯罪”として収束させようという意図が見え隠れし、行員の管理や教育というところまでは目が届いていないようでした。いずれにせよ、「銀行員は信用できる」(あるいは、銀行員の悪行を隠蔽できていた)時代の終焉を感じさせます。皆さんも重々お気を付けください。さて今回は、診療報酬の仕組みの不備から、乳がん治療薬「トルカプ」の使用に医療現場で制限がかかり、本来、同薬の恩恵が受けられるはずの患者が使用できない事態になっているというニュースを取り上げます。こちらも先月、日経バイオテクが報じたものです。銀行員の不祥事のスクープから乳がん治療薬の最新動向まで、実に幅広い取材領域で頭が下がります。保険適用から5年超が経過したCGP検査日経バイオテクの11月18日号の特集記事「保険診療下でのがんゲノム医療に課題が露呈」は、2019年6月の保険適用から5年超が経過した包括的がんゲノムプロファイリング検査(以下、CGP検査)について現状と課題をまとめており、とても参考になりました。CGP検査は、がんの組織を使って多数の遺伝子を同時に調べる検査のことです。標準治療がない固形がん患者と、標準治療が終了(または終了見込み)となった固形がん患者が対象で、実施できる医療機関はがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院に限られており、全国で273施設あります。このように全国に広がってきたCGP検査ですが、同記事によれば、「CGP検査をコンパニオン診断の目的で使用するのが難しく、一部の抗がん薬が使えない状態が生じている」とのことです。コンパニオン診断とは、ある治療薬が患者さんに効果があるかどうかを治療の前にあらかじめ検査することで、その診断のために使う薬はコンパニオン診断薬と呼ばれます。最近では、抗がん薬が新たに承認される際、その薬の効果を判定するためのコンパニオン診断薬として、CGP検査がセットで承認されるケースが増えています。標準治療がない固形がん患者らへのCGP検査は計5万6,000点だが…コンパニオン診断薬としてCGP検査を実施する場合、少なからぬ金銭的問題が生じます。それは、「標準治療がない固形がん患者と、標準治療が終了(または終了見込み)となった固形がん患者を対象」にがんゲノム医療中核拠点病院等がCGP検査を実施する場合と、一般の病院がコンパニオン診断薬としてCGP検査を実施する場合とで診療報酬が大きく異なるためです。具体的には、がんゲノム医療中核拠点病院等が、標準治療がない固形がん患者らにCGP検査を実施する場合、「がんゲノムプロファイリング検査」として4万4,000点、「がんゲノムプロファイリング評価提供料」として1万2,000点の合計5万6,000点(つまり56万円)を算定できるのに対し、一般の病院が通常のがん治療の一環でコンパニオン診断薬としてCGP検査を実施する場合は、「悪性腫瘍組織検査」の2,500点〜1万2,000点や、「BRCA1/2遺伝子検査」の2万200点しか算定できないのです。そうなると、得られる診療報酬がCGP検査で検査会社に支払う費用(相場は56万円の8割強程度の模様)よりも下回り、医療機関にとっては「持ち出し」となってしまうのです。日経バイオテクはこうした状況から、「PCR検査などCGP検査以外の検査が保険適用されていれば問題にはならないが、コンパニオン診断薬がCGP検査しか無い抗がん薬では、赤字覚悟でCGP検査を実施する医療機関はほぼ無く、患者にとっては死活問題になる」と書いています。トルカプが承認されたことで問題が顕在化もっとも、これまでもコンパニオン診断薬がCGP検査しかない抗がん薬は複数あったものの、まれな遺伝子変異を対象とした薬が主で、問題が大きくなることはありませんでした。しかし、2024年3月に乳がんの治療薬、トルカプ(一般名:カピバセルチブ)が承認されたことでこの問題が顕在化、「持ち出し」を避けたい医療機関が、同薬を本来使うべき患者の初回治療で使わない事態が生じているのです。トルカプは「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術切除不能または再発乳がん」を効能・効果とした薬剤です。手術不能の患者や再発した患者が初回治療で使える薬剤なので、投与対象の患者は多数に上るとみられています。ところが、トルカプのコンパニオン診断薬として認められているのは、「FoundationOne CDX がんゲノムプロファイル」というCGP検査のみです。医療機関がトルカプを初回治療で乳がん患者に使おうとした場合、この検査を行わなければなりませんが、その場合算定できる診療報酬は「悪性腫瘍組織検査」などで数千点、複数のコンパニオン診断を併せて実施したとしても最大1万6,000点程度に留まります。これでは、一般の医療機関がトルカプ使用に二の足を踏むのは当然と言えます。使えば患者1人当たり数十万円の赤字になってしまうのですから。日経バイオテクは「トルカプは標準治療が終了した乳がん患者にしか使われていない。臨床試験で効果が確認されている治療ラインとは異なるタイミングでの処方になっている」という同薬メーカーのアストラゼネカ担当者の言葉も紹介しています。今後もトルカプのようなケースは増えていく“本来使える人が使えていない”という状況を厚生労働省も認識はしているようですが、日経バイオテクの取材に対して保健局医療課の担当者は「専門家の意見を聞きながら引き続き検討していく」と答えるのみです。一方、アストラゼネカはCGP検査を用いないコンパニオン診断薬の開発に着手しているとのことです。日経バイオテクは、抗がん薬の臨床試験においてCGP検査が広く活用されており、結果、承認される際にCGP検査がコンパニオン診断薬として紐づけられることから、「今後もトルカプのようなケースは増えていくとみられる」と書いています。CGP検査がコンパニオン診断薬として使われる際の診療報酬体系については、次期改定を待たず、早急な見直しが必要だと考えられます。

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日本人の便失禁の現状が明らかに~約1万例のインターネット調査結果

 便失禁(FI)は、Rome IV基準では「4歳以上で繰り返す自制のきかない便の漏れ」と定義され、患者の健康関連の生活の質(HRQOL)に大きな影響を与える。ところが、日本の一般集団におけるFIの有病率に関する研究はほとんど行われていない。そこで、大阪公立大学の久木 優季氏らが日本人のFIの疫学についてRome IV基準を用いた調査を行ったところ、FI有病率は1.2%であることが明らかになった。Journal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2024年12月2日号掲載の報告。 本研究は18~79歳の日本人を対象としたインターネット調査を分析したもので、人口統計、併存疾患、ライフスタイル、腹部症状、排便習慣、HRQOL、およびRome IV基準にのっとった脳腸相関に関する調査を行った。また、多変量回帰分析により、Rome IV基準を満たすFI(Rome IV FI)に関連する因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・9,995例が分析され、そのうち過去3ヵ月以内に少なくとも1回のFIエピソードを経験した参加者は9.5%で、Rome IV FIの有病率は1.2%であった。・Rome IV FI患者は、排便を我慢できる者と比較し、HRQOLが著しく低下していた。・主な機能性消化管障害はRome IV FI患者(39.5%)と重複しており、機能性下痢(25.8%)が最も多くみられ、消化管障害が重複することで、Rome IV FI患者のHRQOLがさらに低下した。・アルコール消費は、胃食道逆流症、過敏性腸症候群、機能性腹部膨満、機能性下痢とは独立して、Rome IV FIと関連していた(オッズ比:1.82、95%信頼区間:1.24~2.66、p=0.002)。 研究者らは「生活習慣の改善がFI管理に及ぼす影響について調査するために、さらなる研究が必要」としている。

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うつ病、不安症、ADHD患者における双極症への移行率の比較

 一般的にみられる双極症の診断遅延は、アウトカム不良につながる可能性がある。ほとんどの研究では、主な前駆症状としてうつ病に焦点を当てているが、不安症や注意欠如多動症(ADHD)も、診断初期に高頻度で認められる。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のKevin Li氏らは、これらの前駆症状から双極症への移行率を調査し、相関関係を定量化するため、大規模な電子健康記録(EHR)を用いて、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年2月号の報告。 多様な都市医療センターであるジョンズ・ホプキンス・メディスンの10年間の包括的なEHRデータセットを分析し、うつ病、不安症、ADHDから双極症への移行率および相関関係を評価および比較した。移行のリスク因子は、比例ハザードモデルで時間変動変数として評価した。 主な結果は以下のとおり。・最初に対象となった2万1,341例のうち、1,232例が双極症に診断が移行した。・調整後1年診断移行率は、うつ病で4.2%、不安症で3.4%、ADHDで4.0%。・調整後10年診断移行率は、うつ病で11.4%、不安症で9.4%、ADHDで10.9%。・すべての前駆診断において双極症への移行と関連していた因子は、年齢(19〜29歳)治療環境(救急および入院)、向精神薬であった。・重度およびうつ病診断は、双極症への移行リスクの最も強力な因子の1つであった。・診断移行リスク因子は同様であったが、小児では移行率がより低く(とくにADHD)、成人ではより高かった。 著者らは「双極症への移行リスクが最も高いのは、最初にうつ病と診断された患者であったが、不安症やADHDと診断された患者においても、有意なリスクが認められた」と結論付けている。

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切除不能肝細胞がん1次治療、STRIDE vs.ソラフェニブの5年生存率と肝機能の影響(HIMALAYA)/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)に対する1次治療として、抗PD-L1抗体デュルバルマブと抗CTLA-4抗体トレメリムマブを併用するSTRIDEレジメンは、ソラフェニブ単剤療法と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことが、国際共同無作為化非盲検第III相HIMALAYA試験で示されている。今回、5年時OSおよびベースラインの肝機能による影響を評価した同試験の探索的解析結果を、近畿大学の工藤 正俊氏が欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)で報告した。・対象:局所療法の適応とならず、全身療法歴のない切除不能HCC患者(Child-Pugh分類A、Barcelona Clinic Liver Cancer[BCLC]病期分類B/C、ECOG PS 0/1)・試験群1:トレメリムマブ300mg 単回+デュルバルマブ1,500mg 4週ごと(STRIDE群、393例)・試験群2:デュルバルマブ1,500mg 4週ごと(デュルバルマブ群、389例)・対照群:ソラフェニブ400mg×2/日(ソラフェニブ群、389例)・評価項目:[主要評価項目]OS(STRIDE群vs.ソラフェニブ群)[副次評価項目]OS(デュルバルマブ群vs.ソラフェニブ群、非劣性)、36ヵ月OS率、無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性・5年時アップデート解析のデータカットオフ:2024年3月1日 主な結果は以下のとおり。・5年OS率はSTRIDE群19.6% vs.ソラフェニブ群9.4%(OS率比:2.09)で、両群のOS率比は時間の経過とともに増加した(4年時のOS率比:1.67、3年時:1.54、2年時:1.24)。・ベースライン時点でalbumin-bilirubin(ALBI)グレード1の患者はSTRIDE群217例vs.ソラフェニブ群203例、グレード2/3の患者は175例vs.186例で、ALBIグレードによる両サブグループの人口統計学的特性および疾患特性は、治療群間で同様であった。・ALBIグレード1の患者におけるOS中央値はSTRIDE群23.43ヵ月vs.ソラフェニブ群19.02ヵ月(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.63~0.99)、5年OS率は24.3% vs.13.6%であった。ALBIグレード2/3の患者におけるOS中央値は11.30ヵ月vs.9.72ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.63~1.00)、5年OS率は13.7% vs.4.7%であった。・48ヵ月以上の長期生存を達成した患者は、STRIDE群において人種、病因、全身状態、BCLC病期分類などによらずすべてのサブグループで確認された。・48ヵ月以上の長期生存を達成した患者の割合は、ALBIグレード1ではSTRIDE群26.3% vs.ソラフェニブ群17.7%、ALBIグレード2/3では14.9% vs.4.8%であった。・5年時点における治療関連の重篤な有害事象(SAE)の発生率は、安全性解析集団全体でSTRIDE群17.5% vs.ソラフェニブ群9.9%、ALBIグレード1の患者で20.4% vs.8.1%、ALBIグレード2/3の患者で14.0% vs.11.9%であり、主要解析のデータカットオフ時点と比較して大きな変化はみられなかった。 工藤氏は、STRIDEレジメンはベースライン時点の肝機能によらず、5年時点でソラフェニブに対するOSベネフィットを維持し、長期の追跡による追加の安全性上の懸念は認められなかったと結論付けている。

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高齢低リスク早期乳がんの温存手術後、放射線療法vs.内分泌療法(EUROPA)/SABCS2024

 70歳以上の低リスク早期乳がん患者の乳房温存手術後の治療を、放射線療法(RT)と内分泌療法(ET)で比較した第III相無作為化比較試験(EUROPA試験)の中間解析において、RTがETより2年健康関連QOLが良好で治療関連有害事象の発現率が低かったことを、イタリア・フィレンツェ大学のIcro Meattini氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。・対象:70歳以上のLuminal-like早期乳がん(ER/PR≧10%、HER2陰性、pT1pN0もしくはcN0、Ki-67≦20%)で乳房温存手術を受けた女性・RT群:寡分割照射による全乳房照射もしくは乳房部分照射・ET群:アロマターゼ阻害薬もしくはタモキシフェンを5~10年間投与・評価項目:[主要評価項目]5年同側乳房内再発(IBTR)率、EORTC QLQ-C30のglobal health status(GHS)スコアによる2年健康関連QOL[副次評価項目]局所再発(LRR)、乳がん特異的生存期間、全生存期間、対側乳がん(CBC)、有害事象、QLQ-C30/BR45モジュールドメインにおける健康関連QOL 健康関連QOLの中間解析は、2年健康関連QOL評価に152例が到達した時点で実施することが事前に計画されていた。今回は、その中間解析結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月~2024年6月に734例が登録され、731例がRT群(365例)またはET群(366例)に無作為に割り付けられた。今回の中間解析では、RT群104例、ET群103例が解析対象で、年齢(70~79歳/80歳以上)およびG8スコア(14以下/14超)の分布は両群でほぼ同じであった。・QLQ-C30 GHSスコアのベースライン時から24ヵ月目の変化の平均は、RT群では-1.1(SD:18.8)、ET群では-10.0(SD:25.8)であった。年齢およびG8スコア調整後のGHSスコアの最小二乗平均の変化はRT群が-3.40、ET群で-9.79で、RT群がET群より6.39(p=0.045)小さかった。・QLQ-C30のほとんどの機能ドメインおよび症状尺度の変化において、RT群のほうが良好な結果を示した。・QLQ-BR45の機能ドメインの変化は有意な差はなかったが、ほとんどの症状尺度の変化はRT群のほうが良好な結果を示した。・IBTR、LRRは両群とも報告されず、CBCはRT群で2例(1.9%)、ET群で1例(1%)にみられた。RT群で4例(3.8%)、ET群で2例(1.9%)が死亡したが、いずれも乳がん関連ではなかった。・治療関連有害事象はRT群で65例(67.0%)、ET群で76例(85.4%)に発現した。 本試験の患者登録およびフォローアップは継続しており、最終解析にはIBTR率と長期転帰が含まれる予定。Icro Meattini氏は「RTもしくはETは単独で実施できる治療オプションの可能性があり、集学的かつ患者中心の個別化治療における必要性を強調している」とまとめた。

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転移を有する去勢感受性前立腺がん、放射線療法の追加は有効か/Lancet

 低腫瘍量のde novo転移を有する去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者の治療において、標準治療+アビラテロンと比較して標準治療+アビラテロンに放射線療法を併用すると、画像上の無増悪生存期間(PFS)と去勢抵抗性前立腺がんのない生存期間(無去勢抵抗性生存期間)が有意に延長するが、全生存期間(OS)の改善は得られないことが、フランス・Institut Gustave RoussyのAlberto Bossi氏らが実施した「PEACE-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。欧州7ヵ国の無作為化対照比較第III相試験 PEACE-1試験は、2×2ファクトリアルデザインを用いた非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2013年11月~2018年12月に欧州7ヵ国の77施設で患者を登録した(Janssen-Cilagなどの助成を受けた)。 年齢18歳以上、骨シンチグラフィ、CTまたはMRIで確認されたde novo mCSPCで、全身状態の指標であるECOG PSスコアが0~1(骨痛がある場合は2)の患者を対象とした。 これらの患者を、次の4つの治療群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。(1)標準治療(アンドロゲン除去療法単独、またはドセタキセル75mg/m2の3週間ごと6サイクル静脈内投与を併用)、(2)標準治療+アビラテロン(アビラテロン1,000mgを1日1回経口投与+プレドニゾン5mgを1日2回経口投与)、(3)標準治療+放射線療法(前立腺に対し総線量74Gyを37分割で照射)、(4)標準治療+放射線療法+アビラテロン。 主要評価項目は2つで、画像上のPFSとOSとし、低腫瘍量の転移病変を有する患者および試験集団全体においてITT解析を行った。アビラテロン非投与ではPFSが改善せず 1,172例を無作為化し、標準治療群に296例(25.3%)、標準治療+アビラテロン群に292例(24.9%)、標準治療+放射線療法群に293例(25.0%)、標準治療+放射線療法+アビラテロン群に291例(24.8%)を割り付けた。標準治療の内訳は、アンドロゲン除去療法単独が462例(39.4%)、アンドロゲン除去療法+ドセタキセルが710例(60.6%)であった。1,172例中505例(43.1%)が低腫瘍量の転移病変を有する患者だった。試験集団全体の追跡期間中央値は6.0年。 アビラテロンの投与を受けた低腫瘍量の患者(252例)では、標準治療に放射線療法を加えることで、画像上のPFSが有意に延長した。PFS中央値は、標準治療+アビラテロン群(126例)が4.4年(99.9%信頼区間[CI]:2.5~7.3)、標準治療+放射線療法+アビラテロン群(126例)が7.5年(4.0~未到達)で、補正後ハザード比(HR)は0.65(99.9%CI:0.36~1.19)であった(p=0.019)。 これに対し、アビラテロンの投与を受けなかった低腫瘍量の患者(253例)では、このような効果を認めなかった。PFS中央値は、標準治療群(127例)が3.0年(99.9%CI:2.3~4.8)、標準治療+放射線療法群(126例)が2.6年(1.7~4.6)で、補正後HRは1.08(0.65~1.80)であった(p=0.61)。 また、OSについては、統計学的交互作用のため事前に定義された閾値(p>0.05)に達しなかった(p=0.12)ことから、放射線療法を受けた2つの介入群を統合して解析を行ったところ、低腫瘍量の患者では、放射線療法の併用はOSに影響を及ぼさないことが示された。OS中央値は、標準治療±アビラテロン群(253例)が6.9年(95.1%CI:5.9~7.5)、標準治療+放射線療法±アビラテロン群(252例)が7.5年(6.0~未到達)で、HRは0.98(95.1%CI:0.74~1.28)であった(p=0.86)。試験集団全体でも放射線療法追加の効果 低腫瘍量の患者では、放射線療法を併用することでmCSPCが発生するまでの期間が有意に遅延した。無去勢抵抗性生存期間中央値は、標準治療±アビラテロン群が2.5年(95%CI:2.1~2.9)、標準治療+放射線療法±アビラテロン群が3.4年(2.8~4.5)、HRは0.74(95%CI:0.60~0.92)であった(p=0.0069)。この放射線療法追加の効果は、試験集団全体においても示された(HR:0.79[0.69~0.90]、p=0.0005)。 安全性評価集団では、放射線療法を受けなかった患者(標準治療±アビラテロン群)604例中339例(56.1%)、これを受けた患者(標準治療+放射線療法±アビラテロン群)560例中329例(58.8%)で、少なくとも1つの重度有害事象(Grade3以上)が発現した。最も頻度の高い重度有害事象は、高血圧(標準治療±アビラテロン群110例[18.2%]、標準治療+放射線療法±アビラテロン群127例[22.7%])および好中球減少(40例[6.6%]、29例[5.2%])であった。 著者は、「放射線療法は、転移病変の負荷の程度を問わず、また全体的な毒性を増加させずに、重篤な泌尿生殖器イベントの発生を減少させ、高腫瘍量および低腫瘍量のde novo mCSPC患者の標準治療を構成する治療法となる可能性がある」としている。

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Long COVIDの神経症状は高齢者よりも若・中年層に現れやすい

 新たな研究によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)のうち、重篤な神経症状は、高齢者よりも若年層や中年層の人に現れやすいことが明らかになった。米ノースウェスタン・メディスン総合COVID-19センターの共同所長を務めるIgor Koralnik氏らによるこの研究結果は、「Annals of Neurology」に11月22日掲載された。 Long COVIDの神経症状は、頭痛、しびれやうずき、嗅覚障害や味覚障害、目のかすみ、抑うつ、不安、不眠、倦怠感、認知機能の低下などである。論文の上席著者であるKoralnik氏は、「COVID-19による死亡者数は減少し続けているが、人々は依然としてウイルスに繰り返し感染し、その過程でlong COVIDを発症する可能性がある」と指摘する。同氏は、「long COVIDは、患者の生活の質(QOL)に変化を引き起こしている。ワクチン接種や追加接種を受けている人でも、COVID-19患者の約30%にlong COVIDの何らかの症状が現れる」と話す。 今回の研究では、2020年3月から2023年3月の間にノースウェスタンメモリアルホスピタルのNeuro-COVID-19クリニックを受診し、新型コロナウイルス検査で陽性が判明した最初の1,300人(COVID-19による入院歴のある患者200人、入院歴のない患者1,100人)を対象に、COVID-19の重症度(入院歴の有無)によるlong COVIDの神経症状の違いを検討した。対象患者は、若年層(18〜44歳)、中年層(45〜64歳)、高齢者(65歳以上)に分類された。 COVID-19の発症から10カ月後の時点で、若年層と中年層では、高齢者に比べてlong COVIDの神経症状の発生率が高く、症状の負担も大きいことが明らかになった。また、入院歴のない患者群では、若年層と中年層で高齢者に比べて、主観的な倦怠感や睡眠障害のスコアが高く、これらの層はQOLへの障害をより強く感じていることが浮き彫りになった。さらに、入院歴のない患者群では、認知機能(実行機能や作業記憶)のスコアが最も低かったのは若年層であることも判明した。一方、入院歴のある患者群では、認知機能の一部(実行機能)に統計学的に有意に近い年齢による差が認められたものの、QOLには年齢による有意な差は確認されなかった。 Koralnik氏は、「long COVIDは、社会の労働力、生産性、革新の多くを担う働き盛りの若年成人に特に大きな影響を及ぼし、健康上の問題や障害を引き起こしている」と述べ、「これは社会全体にとって厳しい状況だ」との見方を示している。 さらにKoralnik氏は、「この研究は、long COVIDに苦しむあらゆる年齢の人々に対し、症状を緩和し、QOLを向上させるために必要な治療とリハビリテーションのサービスを提供すべきことの重要性を浮き彫りにするものだ」と米ノースウェスタン大学のニュースリリースで述べている。

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皮膚パッチで血圧測定

 近い将来、切手サイズのウェアラブルパッチを皮膚に貼ることで、連続的に血圧を測定できるようになるかもしれない。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)ジェイコブス工学部のSai Zhou氏らの研究の成果であり、100人以上の患者を対象にした検討で良好な結果を得られたという。詳細は「Nature Biomedical Engineering」に11月20日掲載された。 正常血圧(120/80mmHg未満)を維持することは、心臓病や脳卒中、腎臓障害、認知症、視力低下など、さまざまな病気や障害の予防に役立つ。そのため高血圧患者の多くが、腕などにカフを巻いて血圧の測定を行っている。しかしZhou氏は、「従来のカフによる血圧測定は、測定した時点の血圧しか知り得ないため、重要な血圧変動パターンを見逃してしまうこともある」と話し、「われわれが開発中のウェアラブルパッチなら、血圧変動の連続的なデータを得ることができ、治療法の詳細な検討を可能にしてくれる」としている。 開発中のパッチは柔らかくて伸縮性のある素材でできていて、前腕の皮膚に貼り付けて使用する。装着後は、パッチ内部の小型トランスデューサーから超音波が発信されて血管の直径の変化を追跡し、その変化を血圧値に換算し続ける。研究グループでは、このパッチは一般的なカフによる血圧測定器の代替として利用できるだけでなく、集中治療室や手術室で使うような、高精度だが侵襲性のある、動脈ラインを用いた連続血圧測定にも匹敵する精度だとしている。 実際、手術後に集中治療室に入室中の患者4人、および心臓カテーテル検査を受けた患者21人を対象にした試験では、パッチによる測定値は動脈ラインによる測定値に近似していた。このことから、非侵襲でありながら高精度の連続血圧測定が可能になると考えられた。また、じっとしている時だけでなく、腕や脚を上げる、食事を取る、椅子から立ち上がる、自転車をこぐといった、さまざまな日常的な活動の下でこの新しいパッチをテストしたが、すべてのケースで従来の手法による測定値とほぼ一致した値となった。 このパッチの開発グループの1人であり、化学やナノ工学を専門とするUCSDのSheng Xu氏は、「1回限りの血圧測定では、白衣高血圧(診察室血圧が家庭血圧より高い)や仮面高血圧(家庭血圧が診察室血圧より高い)を検出し難く、また日常の活動や薬剤などの影響により血圧が変化することから、正確な診断と管理・治療が困難だ」とし、「だからこそ、このデバイスをさまざまな臨床環境やリアルワールドでテストすることが非常に重要とされた」と、研究の背景を述べている。なお、研究グループでは現在、このパッチをより改良した上で、大規模な臨床試験を実施する計画を立てている。

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セマグルチドは心血管系疾患の既往と心不全を有する肥満患者の心不全イベントリスクを低下する:SELECT試験の2次解析(解説:原田和昌氏)

 肥満の人では心血管疾患のリスクが高まるが、これまでMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)のリスクを低減しつつ効果的な体重管理ができることが証明された治療薬はなかった。SELECT試験は、糖尿病の既往がない過体重または肥満で、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往を有する成人を対象に、GLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mg週1回皮下投与のMACE予防に対する有効性をプラセボ投与と比較した無作為化二重盲検試験であり、41ヵ国にて45歳以上の過体重または肥満の成人1万7,604例が登録された。なお、BMIが30以上を「肥満」とし、BMIが25以上30未満を「過体重」とした。セマグルチド2.4mg投与群ではプラセボ群と比較してMACEが20%有意に減少した。 本論文は英国のDeanfield氏らが、SELECT試験の症例登録時に心不全の既往を有する患者における、セマグルチドのMACE、および心不全(HF)リスクの軽減効果について、SELECT試験の事前規定分析により検証したものである。登録時にHFのあった患者4,286例中、53%がHFpEF、31.4%がHFrEF、15.5%が詳細不明のHFであった。エンドポイントは、MACE、複合HFエンドポイント(心血管死、HF入院、HF緊急受診)、心血管死、および全死因死亡である。 HFと非HFで、ベースライン特性は同様であったが、HF患者の臨床イベントの発生率が高かった。セマグルチド治療により、HF患者は非HF患者と比較してMACEのリスクが28%低下し、複合HFエンドポイントのリスクが21%有意に低下した。心血管死のリスクは24%低下し、全死因死亡のリスクは19%低下した。HFrEF患者はHFpEF患者よりも絶対リスクが高かった。セマグルチド治療により、HFrEF患者でMACEのリスクが35%、HFpEF患者では31%低下し、両タイプに有効であることが示された。複合HFエンドポイントのリスクは、HFrEFで21%、HFpEFで25%低下したがタイプ別では有意ではなかった。 本試験の結果はSELECT試験の主要結果と一致し、とくにHFrEF、HFpEFのタイプによらないHFイベントリスク低減効果を示したが、これまでGLP-1アナログ(リラグルチド)が急性心不全で入院したHFrEFの糖尿病患者の予後(死亡、再入院)を改善せず、むしろ悪化したという報告もあるため(FIGHT試験)、クラス・エフェクトと考えることは難しいかもしれない。また、Lancet誌の同じ号にてSELECT、FLOW、STEP-HFpEF、STEP-HFpEF DM試験の統合解析が行われて、「現時点で治療選択肢がほとんどないHFpEF患者において、セマグルチドが心血管死または心不全増悪イベントの複合を低減する有効かつ安全な治療法であることを支持する最も包括的なエビデンスをもたらすものである」(?)と結論付けているが、過体重または肥満で糖尿病のない、心血管系疾患の既往を有するというHFpEFの表現型が、とくに日本においてどれだけの患者に当てはまるのかは明らかでない。

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095)老後に必要なものは…〇〇?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

老後に必要なものは…〇〇?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来はお子さんから高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが受診されます。私の勤務する病院は比較的、年齢層が高めで、高齢の方のお相手をする機会に恵まれております。一口に高齢者と言っても、年代からADL、キャラクターまで、本当に人それぞれ。私個人の印象としては、60~70代はまだまだ元気で、お仕事も現役だったり、趣味にいそしまれている方が多い年代。80歳前後から少しずつ、受け答えの反応に不安を覚えるようになり、動作がゆっくりになり、以前よりも活気がへったなと感じるように。90代で元気にしっかりとお一人さま受診される方はめずらしく、一人でこられる方でも杖や歩行器を使われている方が多くなります。高齢でもなお、受け答えがしっかりしており、動作もシャンとしている方々に共通しているのが、身のまわりのことを自分でされているということ。一人暮らしの方もいれば、同居でも二世帯のような形で独立して生活している方もいます。頭も体もしっかりしているからこそ、そうした日常動作も問題なく行えるのでしょうが、「『日々のことを自分でする』意識が大切なのかもしれない」と思う次第です。椅子からの立ち上がりや、診察台への歩行など、診察室の中だけでみても、筋力が必要とされる動作の連続です。病院への移動も含めて、「日常を支える『筋肉』って大事だな」と改めて感じます。当たり前のことかもしれませんが、使わないとすぐに衰えてしまうのが筋肉というもの。私も20km走をサボるとすぐに骨格筋率が下がるので、「筋肉は維持が大事、使ってなんぼ」と思って生きています。人生何が起こるかわかりませんが、「可能な限り生涯現役でいきたいな」と思うのでした。それでは、また次の連載で。

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1日1回投与の高カリウム血症改善薬「ビルタサ懸濁用散分包8.4g」【最新!DI情報】第29回

1日1回投与の高カリウム血症改善薬「ビルタサ懸濁用散分包8.4g」今回は、高カリウム血症改善薬「パチロマーソルビテクスカルシウム(商品名:ビルタサ懸濁用散分包8.4g、製造販売元:ゼリア新薬工業)」を紹介します。本剤はナトリウムを含まないため、食塩制限が必要な慢性腎臓病や心不全を併存する高カリウム血症患者にも使用することができ、1日1回投与のため良好なアドヒアランスが期待されています。<効能・効果>高カリウム血症の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しません。<用法・用量>通常、成人には、パチロマーとして8.4gを開始用量とし、水で懸濁して1日1回経口投与します。以後、血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減しますが、最高用量は1日1回25.2gです。なお、増量する場合は8.4gずつとし、増量間隔は1週間以上空けます。<安全性>重大な副作用には、低カリウム血症(4.6%)、腸管穿孔、腸閉塞(いずれも頻度不明)があります。重篤な低カリウム血症が発現した場合は生命の危機に陥ることがあるため、用法・用量を遵守することが重要です。また、血清カリウム値に影響を及ぼす薬剤の用量に変更が生じた場合は、血清力リウム値の変動に注意が必要です。その他の副作用は、便秘(14.5%)、下痢、腹部膨満(いずれも1~2%未満)、鼓腸、低マグネシウム血症(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は高カリウム血症を改善する薬です。2.水に懸濁して、1日1回服用します。3.飲み忘れた場合は、同日中に服用してください。翌日以降に決して2回分を服用しないでください。4.服用中は、排便状況を確認し、便秘に引き続き持続する腹痛、嘔吐などの症状が現れた場合には、速やかに医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>高カリウム血症は、軽度ではほとんど症状のない非症候性ですが、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを超えると心筋脱分極が促進し、心電図の変化および不整脈が生じます。腎不全や心不全患者、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASi)などの薬剤の使用によって生じることがあります。治療目標は、血清カリウム値を正常範囲内に維持することであり、急性期だけでなく長期的に血清カリウム値を管理することが重要です。また、高カリウム血症を伴う患者において、RAASiの減量や中止は心腎疾患の悪化につながる可能性があるため、RAASi治療の継続率を高めるためにもカリウム値の管理が必要です。パチロマーソルビテクスカルシウムは、カルシウム塩とD-ソルビトールを含む非吸収性の陽イオン吸着ポリマーです。このポリマーは、消化管内腔のカリウムと結合し、糞中へのカリウム排泄を増加させることで、体内のカリウムを除去し、血清カリウム値を低下させます。本剤は、ナトリウムを含まないため、食塩制限が必要な慢性腎臓病や心不全を併存する高カリウム血症患者にも使用できます。また、従来の高カリウム血症治療薬は、1日に複数回の服用が必要でしたが、本剤は1日1回投与であるため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。ただし、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。日本人の高カリウム血症患者を対象とした国内第III相試験(ZG-801-02)において、主要評価項目である二重盲検期4週後での二重盲検期ベースラインからの血清カリウム値変化量の調整済み平均値は、本剤群で-0.02mEq/L(95%信頼区間:-0.19~0.15)、プラセボ群で0.78mEq/L(同:0.60~0.96)でした。群間差は-0.80mEq/L(同:-1.05~-0.54)であり、両群間で有意差が認められました(p<0.001)。また、二重盲検期中のRAASi投与患者において、本剤およびプラセボ群のRAASi用量維持割合は、それぞれ84.6%(同:65.2~95.6)および53.6%(同:33.9~72.4)でした。群間差は31.0%(同:5.8~53.6)であり、本剤群のRAASi治療継続率は、プラセボ群に対して有意に高いことが示されました(p=0.019)。

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第245回 いつもより多めの運動で記憶向上が翌日まで保たれる

いつもより多めの運動で記憶向上が翌日まで保たれる運動後に認知機能が向上することが実験環境における先立つ試験で示されています。しかしその効果がどれぐらい続くのかはわかっていませんでした。英国の50~83歳の男女76人の日常を調べた新たな試験結果1,2)によると、運動がもたらす記憶の向上はどうやら24時間は続くようです。試験に参加した76人には加速度計(活動量計)を8日間着用してもらい、その記録から運動、座っている時間、睡眠時間やその特徴が調べられました。また、被験者は注意、記憶、精神運動速度(察知と反応の速さ)などの認知機能検査を毎日受けました。社会経済的特徴や生活習慣などを考慮して解析したところ、早歩き、ダンス、階段のぼりなどの心拍数を上げるそこそこ~きつめの運動をいつもより長くすると、翌日の作業記憶(一時的な記憶)やエピソード記憶(過去の経験を思い出すこと)が向上していました。また、より長い(6時間以上)睡眠明けの日はエピソード記憶がより良く、精神運動速度がより速まっていました。一方、座っていることの害がご多分に漏れず示されました。今回の試験ではより長く座って過ごすことと翌日の作業記憶が鈍ることが関連しました。加速度計を装着してもらっている期間に認知機能検査を毎日実施するという、これまでにない類いの試みであることが今回の試験の主な強みであると著者は言っています。そのおかげで、実験環境ではない日常生活における身体活動が翌日の認知機能へ及ぼす影響を明確にすることができました。試験の欠点は、認知障害や認知症ではなく、認知機能が損なわれていない人のみを募ったことです。ゆえに、認知症などの神経認知疾患を有する人が今回と同様の結果を示すかどうかは不明です。また、被験者は非常に活動的だったので、あまり体を動かさない人に今回の結果が当てはまるかも不明です。これまで、運動に伴うしばらくの認知改善は、認知機能に寄与する脳の成分の放出や血流を運動が促すことによるものと考えられてきました。一般的にそのような効果は運動後せいぜい数時間しか続かないようです。しかし運動が引き出す変化には1~2日間(24~48時間)続くものもあるようです。たとえば運動後の気分改善が24時間後に消滅していなかったことが示されています3)。別の試験では記憶維持のfMRI指標の向上が運動後48時間保たれていました4)。そういう長持ちな効果が今回の試験で判明した利点を生み出しているようです。体をよく動かす生活習慣を、それができるようによく眠って保ちつつ歳をとることの大切さを今回の試験結果は示しています5)。参考1)Bloomberg M, et al. Int J Behav Nutr Phys Act. 2024;21:133.2)Short-term cognitive boost from exercise may last for 24 hours / UCL 3)Maroulakis E, et al. Percept Mot Skills. 1993;76:795-801.4)van Dongen EV, et al. Curr Biol. 2016;26:1722-1727.5)Commentary: Exercise boosts memory for up to 24 hours after a workout ‐ new research / UCL

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乳製品と死亡リスク減少、牛乳vs.ヨーグルト/慶應大

 日本人における乳製品摂取と死亡リスクとの関連を12年間追跡調査した結果、男女ともにヨーグルトの摂取量が多いほど全死因死亡リスクが低く、女性ではさらに乳製品全般および牛乳摂取と全死因死亡リスク、牛乳摂取とがん死亡リスク、ヨーグルト摂取と心血管疾患死亡リスクの低下が関連していたことを、慶應義塾大学の宮川 尚子氏らが明らかにした。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌オンライン版2024年11月13日号掲載の報告。 これまでの研究において、日本人集団における乳製品摂取と死亡リスクとの関連は、研究間で、とくに男女間で一貫していない。そこで研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)の追跡データを用いて、乳製品摂取と全死因死亡やがん死亡、心血管疾患死亡との関連を調べた。 解析対象は、がんや循環器疾患の既往歴がなく、乳製品摂取情報がある7万9,715人(女性57.2%、平均年齢54.7歳)であった、乳製品の摂取量は、検証済みの食物摂取頻度調査票を使用して聴取した。潜在的交絡因子および食事因子を調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて、乳製品摂取量で三分位に分けて死亡率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●乳製品総摂取量の中央値は、男性が34.6g/1,000kcal(66.0g/日)、女性が79.7g/1,000kcal(127.5g/日)であった。●追跡期間中央値12.4年(93万2,738人年)で3,723例が死亡し、そのうちがんによる死亡が2,088例、心血管疾患による死亡が530例であった。●男性では、ヨーグルトの摂取量がもっとも多い群では、もっとも少ない群よりも全死因死亡リスクが低かった(HR:0.90、95%CI:0.82~0.999、傾向のp=0.034)。●女性では、乳製品の総摂取量と全死因死亡リスク、牛乳摂取量と全死因死亡リスクおよびがん死亡リスク、ヨーグルト摂取量と全死因死亡リスクおよび心血管疾患死亡リスクとの間にも逆相関が観察された。 ・乳製品摂取による全死因死亡のHR:0.81、95%CI:0.70~0.92、傾向のp=0.001 ・牛乳摂取による全死因死亡のHR:0.84、95%CI:0.73~0.95、傾向のp=0.007 ・牛乳摂取によるがん死亡のHR:0.82、95%CI:0.69~0.99、傾向のp=0.034 ・ヨーグルト摂取による全死因死亡のHR:0.87、95%CI:0.76~0.997、傾向のp=0.046 ・ヨーグルト摂取による心血管疾患死亡のHR:0.64、95%CI:0.46~0.90、傾向のp=0.007 これらの結果より、研究グループは「女性の乳製品全般と牛乳の摂取量の多さ、および男女のヨーグルト摂取量の多さは、12年間の追跡調査において全死因死亡リスクの低下と関連していた。本研究は、少なくとも日本人が日常的に摂取している程度の乳製品の摂取は、健康的な食生活の品目としての推奨と矛盾しないことを示唆している」とまとめた。

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高リスク早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、バイオマーカー解析結果(KEYNOTE-522)/SABCS2024

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が有意に改善したことが報告されている。今回、本試験の探索的バイオマーカー解析で、T細胞浸潤18遺伝子発現プロファイル(TcellinfGEP)、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーなどのバイオマーカーとpCRおよびEFSとの関連を調べた結果について、米国・Baylor-Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。 バイオマーカーはベースラインでの腫瘍検体で評価した。TMB、BRCA、相同組換え修復欠損(HRD)は全エクソームシーケンシング(WES)、それ以外のバイオマーカーはRNAシーケンシングで調べた。主要評価項目は、TcellinfGEP、TMB、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーとpCRおよびEFSとの関連、副次評価項目は、TNBC分子サブタイプ、HRD状況、HER2遺伝子発現/シグネチャー、PTEN欠損シグネチャーとpCRおよびEFSとの関連とした。データカットオフは2021年3月23日であった。 主な結果は以下のとおり。・WESデータはペムブロリズマブ+化学療法群641例、プラセボ+化学療法群305例、RNAシーケンシングデータはペムブロリズマブ+化学療法群618例、プラセボ+化学療法群286例で得られた。・TcellinfGEPは、両群ともpCRおよびEFSと正の関連を示した。・TMBは、ペムブロリズマブ+化学療法群ではpCRおよびEFSと正の関連を示した。プラセボ+化学療法群ではpCRと正の関連を示したが、EFSとは示さなかった。・TcellinfGEPの第1三分位未満と第1三分位以上のサブグループ解析において、EFSはどちらもペムブロリズマブ+化学療法群が優位であった。・TMBの175変異/エクソーム未満と175変異/エクソーム以上のサブグループ解析において、EFSはどちらもペムブロリズマブ+化学療法群が優位であった。・TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーのうち、解糖系と細胞増殖は両群ともpCRと正の関連を示したが、EFSとは示さなかった。・PTEN欠損シグネチャーとHRD状況は、両群でpCRと正の関連を示した。・TNBC分子サブタイプ(BLIA、BLIS、LAR、MES)別のサブグループ解析では、どの分子タイプもEFSはペムブロリズマブ+化学療法群で優位であった。・HRD状況のサブグループ解析では、陰性と陽性のどちらのサブグループにおいてもペムブロリズマブ+化学療法群でpCR、EFSとも優位であった。 O’Shaughnessy氏は、「これらの結果から、TcellinfGEPなどのいくつかのバイオマーカーはpCRやEFSの予後予測因子であるが、ペムブロリズマブの効果予測因子ではないことが示唆された。TcellinfGEP、TMB、分子サブタイプ、HRD、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーを含む、さまざまなバイオマーカーで定義されたサブグループで、ペムブロリズマブ+化学療法は化学療法単独に対する効果の優位性が示された」とまとめた。

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アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール長期延長試験

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性が、12週間のランダム化比較試験において実証された。しかし、長期的な有用性については、これまで十分に検証されていなかった。米国・大塚製薬のSaloni Behl氏らは、ブレクスピプラゾールの長期的な安全性および忍容性を評価するため、長期延長試験の結果を報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年11月号の報告。 2018年10月〜2022年9月、欧州および米国の66施設において、12週間積極的治療延長試験を実施した。経口ブレクスピプラゾールの投与量は、2mg/日または3mg /日。ランダム化試験を完了したケア施設およびコミュニティ環境下におけるアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者259例(88.4%)を安全性分析に含めた。アルツハイマー病治療薬の継続投与は許容された。主要安全性エンドポイントは、治療中に発生した有害事象(TEAE)の発生率および重症度とした。探索的有効性エンドポイントは、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は74.3±7.6歳、女性の割合は56.0%(145例)、白人の割合は95.8%(248例)。・TEAEの発生率は25.9%(67例)であり、頭痛(3.5%)、転倒(2.3%)の報告が多かった。・ほとんどのTEAEは軽度または中等度であり、重度のTEAEは5例(1.9%)で報告された。・重度の転倒の3例には、つまずき、座り損ねる、脱水が含まれた。・TEAEにより治療を中止した患者は12例(4.6%)であった。・死亡例は認められなかった。・平均CMAI合計スコアは、12週間で9.1ポイントの改善が認められた。 著者らは「ランダム化比較試験および長期延長試験の結果を考慮すると、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する高齢患者に対するブレクスピプラゾール2mgまたは3mg/日治療は、24週間まで忍容性が良好であることが確認された」と結論付けている。

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再発・難治濾胞性リンパ腫、レナリドミド+リツキシマブへのtafasitamab上乗せ(inMIND)/ASH2024

 再発/難治(R/R)濾胞性リンパ腫(FL)では、抗CD-20抗体併用療法であるレナリドミド(len)とリツキシマブ(R)が用いられる。 そのような中、R/R FLにおける抗CD-19抗体tafasitamabのlen+Rへの上乗せ効果を評価する第III相inMIND試験が行われている。同試験の初回解析結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaurie H. Sehn氏が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表した。・試験デザイン:第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験・対象:グレード1~3Aの成人R/R FL(または辺縁帯リンパ腫)、抗CD-20抗体療法を含む1ライン以上の前治療歴あり・試験群:tafasitamab(12mg/kg)12サイクル(1~3サイクルは毎週、4~12サイクルは2週ごと)+len(20mg)12サイクル(Day1~21連日)+R(375mg/m2)5サイクル(1サイクルは毎週、2~5サイクルは4週ごと)(TAFA群、273例)・対照群:プラセボ+len+R(PBO群、275例)・評価項目:【主要評価項目】治験医師評価の無増悪生存率(PFS)【副次評価項目】PET-CR率、全生存率(OS)、独立評価委員会(IRC)評価のPFS、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、後治療までの期間(TTNT)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は64歳(75歳以上19.7%)、FLIPI(中等度・高リスク濾胞性リンパ腫国際予後指標)3~5が52.4%、GELF(Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires)高腫瘍量規準該当が82.8%、POD24(初回化学療法後24ヵ月以内の再発・増悪)は31.6%と比較的高リスクな集団であった。・追跡期間中央値14.1ヵ月時点のPFS中央値はTAFA群22.4ヵ月、PBO群13.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~0.58、p<0.0001)と有意にTAFA群で良好であった。・PFSはすべてのサブグループにおいてTAFA群が優れていた。・PET-CR率はTAFA群49.4%、PBO群39.8%(オッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.04〜2.13、名目上p=0.0286)と有意にTAFA群で良好であった。・ORRはTAFA群83.5%、PBO群72.4%(OR:2.0、95%CI:1.30〜3.02、名目上p=0.0014)と有意にTAFA群で良好であった。・頻度の高いGrade3/4の試験治療下における有害事象(TEAE)は好中球減少(TAFA群39.8%、PBO群37.5%)、肺炎(それぞれ8.4%、5.1%)などであった。・TEAEによる投与中止は、TAFA群の11%、PBO群の7%にみられた。 inMINDはR/R FLに対して初となる、抗CD19と抗CD20という2つの抗体を併用した試験としても評価される。レナリドミド・リツキシマブ併用へのtafasitamabの上乗せは、R/R FLに対する新しい標準治療としての将来性を示した、とSehn氏は結んだ。

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MSI-H/dMMRの進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 全身療法による前治療歴のない、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を示す転移を有する大腸がん患者の治療において、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象が少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らCheckMate 8HW Investigatorsが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年11月28日号に掲載された。国際的な無作為化第III相試験の中間解析 CheckMate 8HW試験は、日本を含む23ヵ国121施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に患者の無作為化を行った(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんで、各施設の検査でMSI-HまたはdMMRを示し、さまざまな治療ライン数の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ療法、ニボルマブ単独療法、化学療法を受ける群に2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は以下の2つとし、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者を対象とした。(1)1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法または化学療法を受けた群におけるPFS、(2)転移病変に対する全身療法の有無を問わずに、ニボルマブ+イピリムマブ療法またはニボルマブ単独療法を受けた群におけるPFS。 今回の事前に規定された中間解析では、(1)の解析結果が報告された。境界内平均生存期間が10.6ヵ月延長 転移病変に対する全身療法を受けていない303例を、ニボルマブ+イピリムマブ群に202例(年齢中央値62歳、女性53%)、化学療法群に101例(同65歳、55%)割り付けた。255例(ニボルマブ+イピリムマブ群171例[85%]、化学療法群84例[83%])が、中央判定でMSI-HまたはdMMRの腫瘍を有していた。 追跡期間中央値31.5ヵ月(範囲:6.1~48.4)の時点で、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者におけるPFS中央値は、化学療法群が5.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.4~7.8)であったのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ群は未到達(38.4~評価不能)と有意に優れた(p<0.001[両側層別log-rank検定を用いて算出したPFSの群間差])。 また、Kaplan-Meier曲線による12ヵ月無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が79%(95%CI:72~84)、化学療法群は21%(11~32)であり、24ヵ月無増悪生存率はそれぞれ72%(64~79)および14%(6~25)であった。 24ヵ月時の境界内平均生存期間(RMST)は、化学療法群よりニボルマブ+イピリムマブ群で10.6ヵ月(95%CI:8.4~12.9)延長し、これはPFSの主解析の結果と一致した。新たな安全性に関する懸念はみられない ニボルマブ+イピリムマブ群では、そう痒(22%)、下痢(21%)、甲状腺機能低下症(16%)、無力症(14%)、化学療法群では下痢(51%)、悪心(47%)、無力症(35%)、食欲減退(23%)の頻度が高かった。 Grade3または4の治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23%、化学療法群で48%に発現した。試験薬の投与中止に至った全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ16%および32%に認めた。また、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。 著者は、「本試験で得られたPFSの結果は、非無作為化CheckMate 142試験における1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法のデータと一致しており、MSI-HまたはdMMRを示す転移を有する大腸がん患者の治療において、この免疫チェックポイント阻害薬2剤併用療法の使用を支持するものである」としている。

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