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セフトリアキソン【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第7回

セフトリアキソン前回はセファゾリンを勉強しました。そのスペクトラムは「S&S±PEK」です。復習は間に合っていますか? これらは皮膚軟部組織感染症や尿路感染症の起因菌でした。「±PEK」の部分は、厚生労働省のJANISなども参考にするという解説もしました。この知識を踏まえて、今回はセフトリアキソンについて紹介します。皆さんが毎日のように使われている抗菌薬なのではないでしょうか。セフトリアキソンのスペクトラムセフトリアキソンは第3世代セフェム系です。「トリ」がつくので「トリオ」で3。これで覚えてください。スペクトラムは「S&S+HMPEK」です。セファゾリンは「±」となっており、煮え切らない感じでしたが、今回は「+」で示しています。そして、HとMが加わりました。HMPEKは「ヘンペック」と呼んで「雌鶏がついばむ(hen pecks)」です。よくわからない語呂合わせなのですが、感染症科医の間で伝統的に使われている語呂なので覚えて損はないと思います。HはHaemophilus influenzae、MはMoraxella catarrhalisです。両方とも上下気道感染症の起因菌ですね(図1)。図1 セフトリアキソンのスペクトラム画像を拡大するそうすると、セフトリアキソンが皮膚軟部組織感染症、上下気道感染症、尿路感染症の代表的な起因菌を一通りカバーできることになるわけです。蜂窩織炎、肺炎、腎盂腎炎です。少なくとも救急外来でみかける感染症の半分くらいはこういった感染症ですね。残りはお腹の感染症くらいです。そのため、救急外来でよくセフトリアキソンが使われていると思いますが、それで大きな失敗をしない理由もこれでおわかりになるのではないでしょうか。ある意味、セフトリアキソンは救急外来の守護神と呼べてしまうわけです。ただその一方で、あくまで救急外来という点に注意が必要です。入院患者では緑膿菌感染症なども問題になるのですが、そういったところまではセフトリアキソンは対応しきれていません。院内感染症に対応するには、もっと世代の進んだセフェム系が必要になります。インフルエンザ桿菌の薬剤耐性分類HMPEKでHaemophilus influenzae(インフルエンザ桿菌)の話題が出てきたため、少しだけ補足します。インフルエンザ桿菌は、薬剤耐性機構を勉強するモデルとしてとっても使いやすいのです。インフルエンザ桿菌を薬剤耐性で分類すると、BLNAS、BLPAR、BLNARの3つにわかれます。とは言っても、覚えるのが大変なので、便宜的にレベル1、レベル2、レベル3でとりあえず十分です。レベル3のBLNARだけ、余力があれば覚えてください。図2 インフルエンザ桿菌の薬剤耐性分類画像を拡大するレベル1のBLNASタイプは楽勝です。アンピシリンを入れたら鍵穴にはまって簡単にやっつけることができます(図3)。図3 BLNASタイプへのアンピシリン画像を拡大するただし、インフルエンザ桿菌はアンピシリンに対抗すべく、レベル2のBLPARタイプにレベルアップします。これはβラクタマーゼを使ってアンピシリンを打ち落としてくるため、アンピシリンが効きません。そのため、βラクタマーゼ対策として人類側としては、アンピシリン・スルバクタムを使います。こうしてレベル2のBLPARタイプをやっつけることができます(図4)。図4 BLPARタイプへのアンピシリン・スルバクタム画像を拡大するしかし、インフルエンザ桿菌はさらに進化します。レベル3のBLNARでは、ペニシリン結合蛋白を変異させて、鍵穴の形を変えてしまいます。そうすると、アンピシリン・スルバクタムでも鍵穴が合わず太刀打ちできません(図5)。図5 BLNARタイプへのアンピシリン・スルバクタム画像を拡大するそのため、鍵穴の合うセフトリアキソンを持ってこないといけないわけです。これでやっとインフルエンザ桿菌をやっつけることができるわけです(図6)。図6 BLNARタイプへのセフトリアキソン画像を拡大するこのように、薬剤耐性機構を知っていると、抗菌薬をもっと楽しく勉強できると思います。今回出てきたBLNARはよく使う言葉なので、知っておいて損はないと思います。まとめセフトリアキソンは 「S&S+HMPEK」で覚えましょう。蜂窩織炎、肺炎、腎盂腎炎など救急外来でみる感染症の多くに対応しているため、使い勝手の良い抗菌薬です。ただし、あくまで救急外来、つまりは市中感染症に過ぎないわけで、院内感染症に対しては少々スペクトラムが不足している点にも気をつけていただければと思います。

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50代半ばで精神科から一転・総合診療でへき地へ【ReGeneral インタビュー】第2回

50代半ばで精神科から一転・総合診療でへき地へ精神科医として、大学教授として、文筆家として幅広く活動してきた中塚尚子氏。ペンネーム「香山リカ」の名でご存じの方も多いでしょう。いま中塚氏は、北海道勇払郡むかわ町穂別診療所で総合診療の現場に立っています。そこは医師2名、19床のへき地診療所。なぜ大胆なキャリアチェンジを選んだのか。総合医育成プログラムでどのように学び、現場で何を感じているのか。背景とリアルを伺います。「このままでいいのか?」―50代・趣味の延長から学び直しへ――執筆や大学での講義など多方面でご活躍の中で、へき地での総合診療に転向したきっかけを教えてください。精神科の外来で患者さんと話していると、50代半ばに差し掛かるころに「このままでいいのか」と人生を振り返る方が少なくありません。私は立教大学での教育と週2回の精神科外来を長く続けていました。どちらもやりがいがあって楽しかった。それが50代中ごろになって、患者さんたちと同じように「このまま同じ道を歩き続けていいのか」と思ったんです。自分にもこの問いがやってくるのかと本当に驚きでした。そんなとき、北海道の空港で偶然再会したのが、東京医大の同級生です。公衆衛生の分野で活躍していた彼が、いまは北海道オホーツク海沿岸のへき地で診療していると聞いて、「そんな転身ができるのか!」という驚きが心に残りました。――この出来事はいつ頃の話ですか。2016年頃です。このときはまだ、大学教員定年後の選択肢の一つくらいの考えでした。ただ、私が卒業した時代は今のような初期臨床研修はなく、大学教員になってからの臨床は外来だけ。精神科以外のことはほとんど知らず、全身管理や入院医療からは20年以上離れていたのが実情です。将来へき地で働きたいと思っても、準備なしで無理なのは明らかでしょう。だから、少しでも準備をと思いながらも、趣味や現実逃避に近い気持ちでプライマリ・ケアの本を手に取り始めました。どこでどう学ぶ? ―断られ続けた先に――そこからどのように具体的な学び直しに動き始めたのですか。ちょうど翌年、立教大学で1年間のサバティカル(研究休暇)にあたりました。臨床や介護の事情で海外留学は難しかったこともあって、総合診療の求人がある病院に片端から連絡してみました。総合診療の現場を体験してみたくて。結果は…散々です。理由は年齢や勤務日数などさまざまでしたが、すべて断られたときは落ち込みました。現実は厳しいと諦めかけたときに見つけたのが、母校・東京医大病院総合診療科の募集です。「他科出身でこれからプライマリ・ケアを学びたい医師も歓迎」とあり、連絡すると「週1〜2回でも自分のペースでどうぞ」と本当に快く受け入れてくださいました。外来で患者さんを受け持ってほかの先生に相談しながら診療する形で、ひやひやしながらも現場に立たせてもらいました。診療してみると何が自分に足りないかが明らかになって、体系的に学びたいという気持ちが高まりました。そうして総合医育成プログラムを受講しはじめたのが2020年です。――大学教員・精神科外来・総合診療の外来と三足のわらじでの参加だったのですね。そうです。1年間の研究休暇が終わって、東京医大での外来は週に半日。土曜日は精神科外来、日曜日は大学の入試業務などが重なります。プログラムに出席できたのは限られた日程しかなく、受けたい科目と時間が合わず歯がゆい思いもしました。講師の先生方のご負担は相当だったと思いますが、土日中心の運営だったからこそ参加できたことに感謝しています。「ここまではプライマリ・ケアで、ここからは専門医に」―線引きを知る安心感――受講中に苦労したことはありますか。正直、医学的な知識は知らないことが多すぎて、「こんなにたくさんのことを知らないと総合診療はできないのか」と何度も落ち込みました。事前に視聴する動画講義には確認テストがあるのですが、不正解のバツ印を画面で見るのは結構ショックでした。当時は教員としてテストを出すほうで、自分がテストを受けるのは学生以来ですから!とはいえ、大学と違って知識を整理するためテストなので、これで落第になるわけではないのは救いです。――印象的だった講義はありますか。耳鼻科の講義です。広島で開業されている講師の先生が「ここまではプライマリで診てください。ここからは専門医に紹介してください」と、総合診療で診る範囲と専門医へ紹介すべきときの線引きを明確に示してくださって、とてもほっとしたことを覚えています。「すべてを知らなくてもいい」とその領域の専門家に言ってもらえることは、大きな安心につながり、総合診療へ踏み出す背中を強く押してくれました。それから、ノンテクニカルスキルコースのひとつとして受けたMBTI(性格タイプ別コミュニケーション)1)も印象に残っています。単なる性格テストだろうと侮っていましたが、ユング心理学に基づく理論だと知って、若い頃読んだユングの著作をもう一度勉強し直したいと思いました。意外な発見で嬉しかったですね。得意を活かし、苦手は支え合う ―グループで学ぶ楽しさ――プログラムを受ける中で楽しかったことは。ブレイクアウトルームでの交流が本当に楽しかったです。同期型学習当日は、世代も専門も違う医師たちが、オンラインで全国から集まります。自然に助け合う空気があって、たとえば循環器のセッションで心電図を読むグループワークでは、循環器が専門の先生が率先して噛み砕いて教えてくれました。テーマが変われば別の専門の先生が手を挙げて助けてくれる。「わからない」と言っても軽蔑されない。休みを使ってでも学びたいという共通の動機が、お互いに得意なことを惜しみなく分かち合う雰囲気を支えていたように思います。グループで話すことが学び続ける励みになりましたし、実際に総合診療に進むようになったのも、自己紹介やここに来た経緯などを皆さんと話していたことが大きかったです。――プログラムの改善点はありますか。修了後も学び続けられる仕組みがあると心強いですね。正直なところ、日本プライマリ・ケア連合学会の勉強会までは手が回っていません。OB・OG向けの中級編として、単発でいいので、知識のアップデートをできるとありがたいです。修了生たちのクローズドな場で、現場で困ったことやこうやって乗り越えたというような話ができたら、知識面でも心理的な面でもサポートになるのではないかと思います。いざ実地で診療を開始 ー専門性は活かせるのか? 精神科の強みと悩み――2022年4月の赴任からもうすぐ4年、総合医として働いてみてご感想はいかがですか。60歳を過ぎて総合診療を始めたので、最低限のことを知って飛び込んでいる感じです。総合診療なので当たり前ですが、循環器疾患の患者さんを診察して体系的に考えたいと思っても、次に来るのは糖尿病の方、その次は転んで足を骨折した方、そのあとには不眠を訴える方―まったく違う問題を抱える患者さんが次々にやってきます。その場その場の対応で手一杯になってしまうこともあります。プログラムのテキストを振り返りたい気持ちはあっても余裕がないまま、気がついたら年月が経っているというのが正直なところです。――精神科のバックグラウンドは総合診療でどのように役立っていますか。 精神科医はとにかく話を聞くことからしか始められません。血圧に問題がある患者さんの診察でも、自然と仕事や家族、毎日の生活について伺うので、患者さんは「こんなことまで先生に話していいの?」と驚かれることもあります。かっこつけた言い方をするなら、全人的医療に近づけるのは精神科出身の強みだと思います。一方で、身体医学と精神医学を統合して見ることの難しさもあります。どちらかが前に出すぎてしまい、バランスを取ることが今も課題です。自分一人で完璧にバランスを取るのはまだ修行中で、周囲の助けに本当に支えられています。――周囲からはどのようなサポートを受けていますか。所長は総合診療専門医で、10年以上ここで診療している方です。私より3歳ほど年下ですが、頼って何でも聞いてしまっています。彼は私の診療をさりげなく見守り、気付いたことを「こうしたほうがいいんじゃない?」と助言してくれます。私もわからないことがあれば恥も外聞もなく、うるさいくらい質問しています。プライドも何もなく質問できる性格が役に立ったと思いますし、それを受け止めてもらえるのが本当にありがたいです。患者さんとの信頼関係が作れているのも大きな支えです。たとえば、万一検査を忘れてしまったとき、正直にお伝えして「もう一度来ていただけますか?」とお願いすると、午前に来た方が午後に「いいよ」と再来してくださることも珍しくありません。患者さんが近隣に住んでいる地域医療の強みだとも思います。へき地医療は苦労か?それとも癒しか?――地域で働くことのよさは何でしょうか。患者さん・地域の方との関係性でしょうか。患者さんは医師不足を理解していらして、「よく来てくれたね」「困ったことはない?」と気遣ってくれるほどです。怒られるどころか、甘やかされているように感じることもあります。身を粉にして苦労をする覚悟で来たのに、逆に患者さんや地域の人たちに癒されながら診療しています。都会で疲れを感じている医師は皆、へき地で働いたらいいのにと思うくらいです。この地域の医療の課題は。今、医師は所長と私の2人体制で、看護師、技師、リハビリテーション職、薬剤師、事務、介護やケアマネジャーまでそろって理想的に回っています。ただ、どの職種も1~2人しかいません。誰かが欠ければ一気に崩れる脆弱性があります。所長も60歳を超え、私は2026年3月で定年になります。定年後も一年更新の再雇用制度で続ける予定でいますが、スタッフも高齢化していて、病気や退職が重なればガラガラと崩れてしまう。誰かが欠けたとき、一時的に苫小牧や札幌から応援があっても常勤で長く働く人はほぼ来ません。継続性の担保は、ここだけでなく全国で共通する構造的な課題だと思います。専門医をやりきった世代こそ、新しい役割を――人生の意味を問い直すとき、医師のアドバンテージは。「もう一度、聴診器を」というコピーを見たとき2)、医師の原点に戻ろうとシニア医に促す秀逸なコピーだと思いました。最初にお話ししたように50代以降に「この先どうしよう」と悩む人は本当に多い。そんな中、医師は専門を変えるだけで、もう一度だれかの役に立てる。これは大きな強みです。専門医をやりきり、子育ても終えた世代に「最後は地域のために人助けしませんか」と伝えたい。外科の先生なら手術で無理ができなくなる年齢から総合診療に移ってもいい。農作業がしたくて地方に来る医師がいるように、趣味と仕事を組み合わせることもできます。一生都会を離れるのは難しいとしても、3~4年のローテーションで人が回って地域に貢献するモデルがあれば、医師も地域ももっと柔軟に動けると思います。完璧を目指さなくていい まずは総合診療の地図を手に入れる――総合医育成プログラムを受けようと思う方へメッセージを。精神科の経験しかなかった私には難しい内容もあり、「これは私にはとてもできない」「無理だ」と心が折れることもありました。でも、そこで選別されるわけではありません。このプログラムは「私がまったく知らなかったこの領域にはこういう疾患があり、こういう問題がある」と、総合的に診るための見取り図を手に入れるものだと思うのです。当然、見取り図を手に入れる段階ですべてが身に付くわけはありません。実践の場でテキストを見返し、周りの助けを借りて、少しずつ身に付けていけばいい。まずは受けてみてください。世界旅行をするような感覚で、総合診療の扉を開けてみることをお勧めします。 引用 1) Myers-Briggs Type Indicatorの略称。ユングのタイプ論をもとにして開発された自己分析メソッドを活用した、 性格タイプ別コミュニケーションに関する研修。 2) 2016年、へき地医療に興味をもった中塚氏が偶然見つけた、地域医療研究会が主催する「医師研修プログラム」に関するリポート冒頭のキャッチコピー。 中塚氏は著書の中で以下のように述懐している。 「このリポートのタイトルは「『もう一度聴診器を』、第二の人生にへき地医療」。へき地医療への転身を考え始めた私に、これ以上“刺さるタイトル”もないだろう。ダイエットを始めた人が「『もう一度Mサイズを』、落ちない脂肪にこのサプリ」という広告を目にしたようなものだ」(香山リカ.精神科医はへき地医療で“使いもの”になるのか?.星和書店;2024.p28.)

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麻雀で統合失調症患者の認知機能は改善するか

 麻雀は、認知機能の向上と密接に関連していることが広く報告されている。しかし、統合失調症患者の認知機能に対する麻雀の影響については、これまで研究されていなかった。中国・重慶医学大学のRenqin Hu氏らは、統合失調症患者の認知機能改善を目的とした麻雀介入の有効性を評価するため、パイロット単盲検ランダム化比較試験を実施した。BMC Psychiatry誌2025年11月7日号の報告。 本パイロット研究では、統合失調症患者49例を対象に、介入群(麻雀と標準治療の併用)と対照群(標準治療)にランダムに割り付けた。介入群は、麻雀による認知トレーニングを1日2時間、週4日、12週間にわたり行った。主要認知アウトカムは、ケンブリッジ神経心理学的検査自動化バッテリー(CANTAB)を用いて評価した。副次的アウトカムには、生活の質(QOL)、臨床症状、無快感症、副作用、個人的および社会的機能を含めた。評価は、ベースライン時および4週目、8週目、12週目に実施された。 主な結果は以下のとおり。・介入群は、研究期間を通して反応時間と運動時間の両方に対し、改善効果を示した。・視覚記憶、新たな学習、戦略活用、空間記憶能力、複雑視覚課題の正確性に関して、介入群と対照群の間に有意な差は認められなかった。・介入群は、QOLにおいて緩やかな改善を示した。しかし、その他の副次的アウトカムでは、有意な変化は認められなかった。 著者らは「麻雀介入は、統合失調症患者の特定の認知機能とQOLに有益である可能性が示唆された。しかし、これらの結果は慎重に解釈する必要がある。本結果を明らかにするためにも、より大規模で多様なサンプルや長期介入によるさらなる研究が求められる」とまとめている。

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ゾンゲルチニブ発売、HER2変異陽性NSCLCの治療の変化は?/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、ゾンゲルチニブ(商品名:ヘルネクシオス)を2025年11月12日に発売した。発売を機に「非小細胞肺がん(NSCLC)のアンメットニーズと最新治療」をテーマとしたメディアセミナーを2025年11月18日に開催した。後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長 兼 呼吸器内科 科長)がHER2遺伝子変異陽性NSCLC治療のアンメットニーズと最新治療について紹介し、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者の清水 佳佑氏(肺がんHER2「HER HER」代表)が、患者会の運営経験、患者が抱える課題やアンメットニーズを述べた。HER2遺伝子変異陽性NSCLCの特徴 後藤氏は、LC-SCRUM-Asiaの取り組み、HER2遺伝子変異陽性肺がんの特徴や治療法などについて紹介した。 LC-SCRUM-Asiaは、肺がんの原因となる希少遺伝子変化を見つけ出し、有効な治療薬を届けることを主な目的としている。後藤氏によると、これまでに2万5千例以上の肺がん患者が登録され、これまでの活動に伴って14種類の分子標的薬が臨床応用されているとのことだ。 LC-SCRUM-Asiaにおける遺伝子解析結果によると、HER2遺伝子変異は日本人NSCLC患者の2.6%にみられる。このうちexon20挿入変異が79%であり、そのなかでYVMA変異(HER2 A775_G776insYVMA)が66%を占める。HER2遺伝子exon20挿入変異を有するNSCLC患者の特徴としては、若年発症が多い(年齢中央値65歳[範囲:29~90])、女性の割合が多い(57%)、非喫煙者が多い(55%)、腺がんがほとんど(98%)といったことが挙げられる1)。 現在、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者に対する1次治療の標準治療の1つとして、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法があるが、LC-SCRUM-Asiaの登録患者における無増悪生存期間(PFS)中央値は8.5ヵ月であった1)。化学療法単独と比較してPFSは延長しているが、アンメットニーズが存在すると言える。新たな治療選択肢の登場 そのようななか、2次治療以降の選択肢として、HER2を標的とする抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が登場した。既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第II相試験「DESTINY-Lung02試験」2)において、T-DXd 5.4mg/kgは奏効割合(ORR)50.0%(完全奏効[CR]2.9%、部分奏効[PR]47.1%)、PFS中央値10.0ヵ月、全生存期間(OS)中央値19.0ヵ月といった良好な治療成績を示した。ただし、後藤氏は「有効な薬剤であることに間違いないが、限界も存在する」と述べる。 そこで、新たな治療選択肢として登場したのがゾンゲルチニブである。ゾンゲルチニブは、HER2と構造的な関連のある野生型EGFRに対する阻害活性を弱め、HER2を選択的に阻害するように設計された薬剤である。野生型EGFRを阻害すると、発疹や下痢などのEGFR関連有害事象が生じやすくなるが、ゾンゲルチニブはその毒性を軽減するように開発された。 既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第I相試験「Beamion LUNG-1試験」3)において、ゾンゲルチニブはORR 71%(CR 7%、PR 64%)、PFS中央値12.4ヵ月という良好な有効性を示した。安全性については、主な治療関連有害事象(TRAE)として下痢(56%)や肝機能障害(AST増加24%、ALT増加21%)、発疹(33%)などがみられたが、全体のGrade3以上のTRAEの発現割合は17%であった。 Beamion LUNG-1試験の結果から、『肺診療ガイドライン2025年版』では、T-DXdと並んで、2次治療以降でゾンゲルチニブ単剤療法を行うことが強く推奨された(推奨の強さ:1、エビデンスレベル:C)4)。 後藤氏は、ゾンゲルチニブについて「最も大きな特徴は毒性が軽いという点である。非常に使いやすい薬剤であり、HER2遺伝子変異陽性NSCLCの治療において、最も使われる薬剤になるのではないかと考えている」と期待を語った。HER2肺がんの患者会設立と活動 清水氏は、2017年にStageIIIBの肺腺がんの告知を受け、標準治療および臨床試験への参加を経てCRに至ったがんサバイバーであり、HER2遺伝子変異またはHER2過剰発現を有する肺がんを対象とした患者会として、2018年に肺がんHER2「HER HER」を設立した。 清水氏は「日常のことやHER2に関することを話したいと思っても話す場がない。臨床試験の情報を得ても共有する場所がなく、もったいない。HER2遺伝子変異またはHER2過剰発現を有する肺がん患者が安心して集まる場があるとよい」という思いを抱えていたという。そのようななか、日本臨床腫瘍学会学術集会の懇親会において、ROS1融合遺伝子陽性の肺がんを対象とした患者会の会員と出会ったことで、肺がんHER2「HER HER」の設立を決意したとのことだ。 現在(講演時)の会員数は52名であり、30~60代の患者が中心で、とくに50代の患者が多い。患者家族も会員の約4分の1を占めている。HER2遺伝子に特化した患者会であることから、沖縄県から宮城県まで会員が分布している。そのため、活動はオンラインが中心とのことである。 本患者会では「治療と共に」「仲間と共に」「社会と共に」という3つのテーマを掲げている。活動としては、患者同士で日々の治療や副作用、治療や生活の不安や悩みなどについて情報共有をするほか、臨床試験の情報を共有しているという。また、ほかの肺がんの患者団体、疾患を超えた団体とも活動を行っており、「社会と一緒に医療を作っていきたい」と考えながら、研究への患者・市民参画(PPI)の活動も積極的に進めているとのことである。患者会の活動で得られた変化とアンメットニーズ このような活動を進めていくなかで、周囲との関係性に変化があったと清水氏は語る。その例として、医療者とのコミュニケーションの変化、家族や周囲の方との関係の変化などを挙げた。医療者との関係性について、清水氏は「患者会内の先輩患者から医療者とのコミュニケーション方法を学ぶことで、医療者との信頼関係の構築につながることがあった。治療に関する知識や情報を持つことで、主治医と共に納得して治療を進められるようになった方もいた」と述べた。また、生活の工夫など、普段聞くことのできない体験談を聞くことで、家族や周囲の方との関係に変化が生まれ、生活がしやすくなったという方もいたとのことである。 一方で、課題も存在すると清水氏は述べる。EGFR遺伝子などの主要なドライバー遺伝子と比較し、希少遺伝子異常は治療選択肢が限られる場合があり、臨床試験情報へのアクセスが求められることもある。実際に、臨床試験の探し方や参加方法がわからないといった相談を受けることもあるという。これについて、後藤氏は「遺伝子解析結果とその結果に関連する臨床試験情報を患者へ直接提供するLC-SCRUM-Supportというプロジェクトを開始している。患者またはその近親者のメールアドレスを登録いただくと、現在進行中の臨床試験情報が届くため、患者会の皆さまにも活用いただきたい」と述べた。 以上を踏まえ、清水氏は「形式的なPPIにとどまらず、双方向のコミュニケーションが当たり前になることが重要だと捉えている。より患者の声が生きる設計を共に作っていき、情報が誰でも届く社会になることを期待している」と述べた。また、今後の活動について「がん治療を行っている患者や家族には、それぞれの悩みや不安がある。少しでもその不安や悩みを解消し、穏やかな生活を送っていただきたい。そのため、一人ひとりの声をしっかりと聞き、寄り添いながら活動を進めたいと考えている。私たちの声が誰かの治療に繋がり、誰かの声が私たちの希望に繋がる。『HER HER』はその架け橋のような存在でありたいと思っている」と語った。

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THP療法後に病勢進行のないHER2+転移乳がん維持療法、tucatinib追加でPFS改善(HER2CLIMB-05)/SABCS2025

 タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法後に病勢進行のないHER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における維持療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)へのtucatinibの追加は、プラセボ+HP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善した。米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が、日本を含む23ヵ国で実施された第III相HER2CLIMB-05試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。なお、この結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年12月10日号に同時掲載されている1)。・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験・対象:THP療法(4~8サイクル)後に病勢進行のない、スクリーニング時の造影MRIで脳転移がないもしくは無症候性の脳転移を有するHER2+転移乳がん患者(ECOG PS 0/1)・試験群:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+HP(3週間間隔)±内分泌療法 326例・対照群:プラセボ+HP±内分泌療法 328例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、中枢神経系無増悪生存期間(CNS-PFS)、安全性など・データカットオフ:2025年9月5日(追跡期間中央値:23ヵ月) 主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに54歳、ホルモン受容体陽性がtucatinib+HP群51.5%vs.プラセボ+HP群53.7%で、脳転移ありもしくはあった症例が12.6%vs.12.2%、de novo転移が69.6%vs.68.9%であった。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、tucatinib+HP群24.9ヵ月vs.プラセボ+HP群16.3ヵ月で、tucatinib+HP群における統計学的有意な改善が認められた(ハザード比[HR]:0.641、95%信頼区間[CI]:0.514~0.799、両側検定のp<0.0001)。・ホルモン受容体の状態、ベースラインでの脳転移の有無、年齢(<65歳/≧65歳)など事前に規定されたすべてのサブグループにおいて、tucatinib+HP群におけるPFSベネフィットが確認された。ホルモン受容体の状態別にみると、陽性患者においてもtucatinib+HP群における統計学的有意な改善が認められたが(25.0ヵ月vs.18.1ヵ月、HR:0.725、95%CI:0.535~0.983、p=0.0389)、陰性患者でより大きなベネフィットがみられた(24.9ヵ月vs.12.6ヵ月、HR:0.554、95%CI:0.403~0.761、p=0.0002)。・OSデータは未成熟であるものの、tucatinib+HP群において数値的に良好な傾向がみられた。・CNS-PFS中央値はITT集団全体では両群で未達、探索的解析項目であるベースラインで脳転移を有する患者(41例vs.40例)においてはtucatinib+HP群8.5ヵ月vs.プラセボ+HP群4.3ヵ月(HR:0.719、95%CI:0.406~1.273)であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はtucatinib+HP群42.3%vs.プラセボ+HP群24.4%で発現した。tucatinib+HP群で多く発現したGrade3以上のTEAEは、ALT上昇(13.5%)、AST上昇(7.1%)、下痢(6.1%)などであった。 Hamilton氏は今回の結果について、HER2+転移乳がん患者に対するTHP療法後の維持療法として、HP+tucatinib療法が、病勢進行までの期間を延長し化学療法を受ける期間を短縮させるための選択肢の1つとなることを示したとまとめている。

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降圧薬数漸減で、フレイル高齢者の死亡率は改善するか/NEJM

 介護施設に入居し、複数の降圧薬による治療を受けているフレイルの高齢者では、通常治療と比較して降圧薬数を漸減する治療法は、全死因死亡率を改善せず、転倒や骨折の頻度は同程度であることが、フランス・Universite de LorraineのAthanase Benetos氏らが実施した「RETREAT-FRAIL試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年11月20日号で発表された。降圧治療中の80歳以上の無作為化対照比較試験 研究グループは、フレイル高齢者における降圧薬中止の便益とリスクの評価を目的に、フランスの108の介護施設で非盲検無作為化対照比較試験を行った(フランス保健省などの助成を受けた)。2019年4月~2022年7月に参加者を登録し、2024年7月に追跡を終了した。 年齢80歳以上、介護施設に入居し、降圧治療として2種類以上の降圧薬の投与を受け、収縮期血圧が130mmHg未満の患者を対象とした。被験者を、プロトコールに基づき降圧薬の投与を段階的に中止する治療法を受ける群(漸減群)または通常治療を受ける群(通常治療群)に、1対1の割合で無作為に割り付け、最長で4年間追跡した。 漸減群では、無作為化の直後にプロトコールに基づき降圧薬の投与中止を開始し、その後は3ヵ月後および6ヵ月後、引き続き6ヵ月ごとの受診時に、急性期の内科的疾患がなく収縮期血圧が130mmHg未満であれば順次降圧薬の投与を中止することとした。 主要エンドポイントは全死因死亡とし、副次エンドポイントはベースラインから最終受診時までの降圧薬数の変化量、追跡期間中の収縮期血圧の変化量などであった。全死因死亡率、漸減群61.7%vs.通常治療群60.2%で有意差なし 1,048例(平均[±SD]年齢90.1[±5.0]歳、女性80.7%)を登録し、528例を漸減群に、520例を通常治療群に割り付けた。追跡期間中央値は38.4ヵ月(四分位範囲:30.0~48.0)と推定された。ベースラインの平均(±SD)収縮期血圧は、漸減群113±11mmHg、通常治療群で114±11mmHgであり、平均拡張期血圧は両群とも65±10mmHgであった。 平均(±SD)降圧薬数は、漸減群ではベースラインの2.6±0.7種類から最終受診時には1.5±1.1種類へ、通常治療群では2.5±0.7種類から2.0±1.1種類へと減少した。 また、追跡期間中における収縮期血圧の変化量の補正後平均値の群間差(漸減群-通常治療群)は4.1mmHg(95%信頼区間[CI]:1.9~5.7)であり、同様に拡張期血圧では1.8mmHg(0.5~3.0)であった。漸減群の7例で、収縮期血圧が160mmHg以上に上昇したため降圧薬を再導入した。 全死因死亡は、漸減群で326例(61.7%)、通常治療群で313例(60.2%)に発生し(補正後ハザード比:1.02、95%CI:0.86~1.21)、両群間に有意差を認めなかった(p=0.78)。MMSE、SPPB、QOLも同程度 副次エンドポイントである心血管系以外の原因による死亡(漸減群53.8%vs.通常治療群53.5%)、急性心不全(12.7%vs.11.0%)、転倒(50.0%vs.50.0%)、骨折(7.8%vs.9.2%)、新型コロナによる死亡(1.1%vs.3.1%)、主要心血管イベント(MACE、19.3%vs.17.3%)の発生率にも、両群間に有意な差はなかった。 ミニメンタルステート検査(MMSE)、Short Physical Performance Battery(SPPB)、日常生活動作(ADL)、生活の質(EQ-5D-3L質問票)、握力のベースラインからの変化量の最小二乗平均曲線下面積は、いずれも両群で同程度であった。また、主要および副次エンドポイントの定義に含まれない重篤な有害事象は、漸減群で132例、通常治療群で128例に発現し、両群間に大きな差はなかった。 著者は、「本試験では、この患者集団において降圧薬漸減戦略は通常治療より全死因死亡率を25%低下させるとの仮説は確認されなかった」「通常ケア群でも降圧薬数の減少が観察されたが、漸減群ほど顕著ではなかった。この知見は、患者が高齢化しフレイルが進むにつれて、医師が日常的に治療の強度を軽減する可能性があることを示唆する」「すべての併用薬の数はベースラインと最終受診時でほぼ同じであることから、通常治療群における降圧薬数の減少は、予期せぬクロスオーバー効果による可能性が高い。2つの群を診察する総合診療医(GP)が、通常治療群の患者ケアにおいて意図せずに漸減戦略を採用した可能性がある」としている。

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メトホルミンが運動療法の効果を阻害してしまう可能性

 古くからある経口血糖降下薬で、米国では現在も2型糖尿病の第一選択薬として位置付けられているメトホルミンが、運動療法の効果を阻害してしまう可能性を示唆するデータが報告された。米ラトガーズ大学ニューブランズウィック校のSteven Malin氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月7日掲載された。 この研究の背景について、論文の筆頭著者であるMalin氏は、「多くの医療従事者は、1+1=2だと考えている。しかし、メトホルミンがわずかながら運動の効果を弱めることを示唆するエビデンスも存在する」と話している。この問題の本質を探るため同氏らは、メタボリックシンドロームのリスクのある成人において、同薬が血管インスリン感受性(インスリンによる血管拡張や血流促進作用)を低下させる可能性の有無を、二重盲検プラセボ対照試験で検討した。 研究参加者を、低強度運動(最大酸素摂取量〔VO2max〕の55%の運動)を週5回行うプラセボ服用群(22人)、低強度運動を行うメトホルミン(1日2,000mg)服用群(21人)、高強度運動(VO2maxの85%の運動)を週5回行うプラセボ服用群(24人)、高強度運動を行うメトホルミン服用群(24人)という4群にランダムに割り付け、16週間介入した。 その結果、プラセボを服用した2群ではともにVO2maxが有意に上昇したが、メトホルミンを服用した2群はともに有意な変化が見られなかった。体脂肪は高強度運動を行った2群でのみ有意に減少した。また、メトホルミンを服用した群では、インスリンによる血管拡張反応や血流促進作用が小さくなり、さらに、運動による空腹時血糖値の低下幅が少なくなっていた。 この結果についてMalin氏は、「強度にかかわらず運動によって血管の機能が改善した。ところがメトホルミンはこの効果を弱めてしまった。メトホルミンを服用して運動をしたからといって、血糖値がより大きく下がるわけではないことも見過ごせない。加えて、メトホルミンを服用した人は体力(VO2max)も向上しなかった。つまりこれは、身体機能が改善されていないことを意味し、長期的な健康リスクにつながる可能性がある」と総括している。 本研究で観察されたメトホルミンの負の影響のメカニズムとして研究者らは、メトホルミンが人間の細胞の原動力とも言えるミトコンドリアの働きに影響を及ぼすため、運動の効果を鈍らせるのではないかと推測している。同薬が血糖コントロールを改善する作用機序の一部に、ミトコンドリアの働きを部分的に阻害する作用が含まれており、その作用が運動によって得られる効果を妨げてしまう可能性があるとのことだ。 Malin氏は、「メトホルミンと運動の最適な併用方法を探し出さなければならない。また、メトホルミン以外の薬剤と運動の相互作用についても検討が必要だろう」と述べている。

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脳腫瘍内部に細菌シグナルの存在を発見

 脳は、細菌の存在しない無菌環境と考えられている。しかし新たな研究で、脳腫瘍の内部に細菌が存在することを示唆するシグナルが確認された。研究グループは、これらの細菌は、がんの成長や挙動に影響を与えている可能性があると考えている。これまでにも大腸がんなどの消化器がんにおいて細菌が発見されているが、他の部位の腫瘍における細菌の存在については議論があった。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター外科腫瘍学およびゲノム医学分野のJennifer Wargo氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に11月14日掲載された。 Wargo氏は、「この研究は、脳腫瘍の生物学に対する理解に新たな次元を開くものだ。微生物の要素が脳腫瘍の微小環境(がん細胞の周囲にある細胞や分子、構造のまとまりのこと)にどのような影響を与えるかをマッピングすることで、がん患者の転帰を改善するための新たな治療戦略を特定できる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、221人の患者から採取した243個の脳組織サンプルが分析された。サンプルには、脳腫瘍(神経膠腫、転移性脳腫瘍)由来のサンプルが168個、非がんまたは腫瘍隣接組織のサンプルが75個含まれていた。 蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH法)、免疫組織化学、高解像度イメージング技術を用いた解析の結果、神経膠腫および転移性脳腫瘍の両サンプルで細菌の16SリボソームRNA(16S rRNA)やリポ多糖(LPS)が検出された。これらの細菌シグナルは、腫瘍細胞や免疫細胞、間質細胞の内部に局在していた。また、カスタム16S rRNA解析およびメタゲノム解析により、腫瘍微小環境における細菌シグナルと関連する特定の菌群が同定されたが、標準的な培養法では生菌は得られなかった。空間解析からは、細菌16S rRNAシグナルのパターンが、抗菌反応や免疫代謝の特徴と、領域レベル・細胞近傍レベル・細胞レベルで相関していることが示された。さらに、腫瘍内の細菌16S rRANの配列は、サンプル提供者自身の口腔や腸内の細菌と重複しており、離れた場所の微生物叢との関連も示唆された。 論文の筆頭著者であるMDアンダーソンがん研究センター外科腫瘍学分野のGolnaz Morad氏は、「本研究により、脳腫瘍の微小環境において、これまで知られていなかった役割を担う要素が明らかになった。この要素は、脳腫瘍の挙動を説明する手がかりとなる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。また同氏は、「細菌要素は腫瘍内の免疫細胞と相互作用し、腫瘍の成長や治療への反応に影響を与える可能性がある」との見方を示している。ただし研究グループは、この研究では、脳腫瘍内に存在する細菌ががんの増殖を直接促進するような、意味のある変化を引き起こすかどうかは不明であるとしている。 研究グループは現在、細菌がどのように脳に到達し、脳腫瘍の形成に関与しているのかをより深く理解するための研究に取り組んでおり、その一つとして、歯周病が脳への細菌の拡散に影響を与えるかどうかを調査しているという。

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ロボット支援直腸がん手術、国内リアルワールドデータが示す新たな標準治療の可能性

 国内約1.8万人分のリアルワールドデータを解析した多施設後ろ向きコホート研究により、進行直腸がんに対するロボット支援手術が、開腹および腹腔鏡手術と比較して短期・長期の両成績で有意に優れていることが示された。5年全生存率はロボット支援手術で94%と最も高く、術後合併症の発症率や総入院費用も最小であったという。研究は東京科学大学消化管外科学分野の花岡まりえ氏、絹笠祐介氏らによるもので、詳細は10月28日付で「Colorectal Disease」に掲載された。 従来の腹腔鏡手術(LRR)は直腸がん治療に有効であるが、長期的な腫瘍学的成績は開腹手術(ORR)と同等で、直腸膜間全切除(TME)が不完全になるリスクがあることが報告されている。ロボット支援手術(RARR)は低侵襲なアプローチとして短期成績に優れるとされる一方、長期成績のデータは限られている。そこで本研究では、国内大規模リアルワールドデータを用いて、進行直腸がん患者に対するORR、LRR、RARRの短期・長期成績を比較することを目的とした。 本研究では、国内の大規模診療データベース(メディカル・データ・ビジョン株式会社保有)を用い、2018年4月~2024年6月に直腸切除術を受けた3万7,191人のうち、cT3またはcT4aの患者1万7,793人を解析した。ベースラインのバランスを調整するためオーバーラップ重み付けを行い、有効サンプルサイズは1万4,627人となった。主要評価項目は5年全生存率(OS)および無再発生存率(RFS)で、副次評価項目には周術期成績を設定した。データの分布に応じて、Welchのt検定、Mann-WhitneyのU検定、カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定を適用した。生存アウトカム(OSおよびRFS)については、オーバーラップ重み付けを用いてKaplan-Meier曲線を作成し、log-rank検定を行った。 オーバーラップ重み付け後の患者数の内訳は、RARR群で2,247人、LRR群で1万339人、ORR群で2,041人であった。平均年齢は70歳で、男性が66%を占めた。 短期成績では、RARR群は術後合併症の発生率が最も低かった(RARR:16.54%、LRR:19.95%、ORR:29.68%、P<0.001)。また、入院期間も最も短く(RARR:15.69日、LRR:18.87日、ORR:25.38日、P<0.001)、入院から退院までの総医療費も最も低かった(RARR:184万9,029円、LRR:193万4,626円、ORR:201万2,968円、P<0.001)。さらに、90日死亡率もRARR群で有意に低かった(RARR:0.23%、LRR:0.70%、ORR:1.21%、P<0.001)。 5年OSはRARR群で最も高く(94%、95%信頼区間91~97%)、次いでLRR群(86%、同85~88%)、ORR群(78%、同75~81%)の順であった。また、5年RFSもRARR群で最も高く(93%、同91~95%、)、次いでLRR群(83%、同81~84%)、ORR群(74%、同71~77%)の順であり、OSおよびRFSの両方でRARR群が他の2群に比べてそれぞれ良好であった(P<0.001)。これにより、RARR群が一貫して最良の転帰を示すことが示された。 OS不良と関連する因子を多変量Cox回帰分析で検討したところ、TNM分類以外の項目では、ORR(ハザード比〔HR〕4.69 、95%信頼区間3.42~6.43)、LRR(HR 2.50、同1.85~3.37)、男性(HR 1.35、同1.31~1.81)、腹会陰式直腸切断術(APR;HR 1.57、同1.33~1.86)、大学病院以外での手術(HR 3.53、同2.37~5.24)などが同定された(P<0.001)。一方でRARRはLRR、ORRと比べてOSの有意な予後良好因子として同定された。 著者らは、「本研究は進行直腸がんに対して大規模なリアルワールドデータを用いて、RARRの短期・長期アウトカムを評価した初めての研究である。今回の結果は、ロボット支援手術がこの領域における新たな標準治療となり得ることを支持している」と述べている。

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ウォートンゼリー由来間葉系幹細胞の冠動脈内注入は心筋梗塞後の心不全を予防するかもしれない(解説:原田和昌氏)

 間葉系幹細胞による再生医療に関心が高まっている。幹細胞治療における最大規模の第III相BAMI試験では、急性心筋梗塞後において骨髄由来単核球細胞の冠動脈内注入により主要評価項目の総死亡率に有意な利益は示されなかったが、心不全による入院は有意に減少した。間葉系幹細胞は骨髄由来単核球細胞よりも大きな可能性がある。間葉系幹細胞の全体的な安全性に加え、ウォートンゼリー由来間葉系幹細胞(WJ-MSC)は分離が容易で、体外やin vitroで増殖しやすく、免疫適合性が高く拒絶反応のリスクがほとんどないという。ウォートンゼリーは、胎児の臍帯の中にあるゼラチン状の組織で、胎児の成長過程で形成される間葉系の組織である。 イラン・シラーズ医科大学のAttar氏らは第II相試験で、心筋梗塞後にWJ-MSCの冠動脈内投与により左室駆出率の改善を確認した。今回、WJ-MSCの冠動脈内投与の、心筋梗塞後の心不全発症に対する効果を第III相PREVENT-TAHA8試験により評価した。WJ-MSCの冠動脈内注入により心不全の発症および心不全による再入院のリスクが有意に低減し、心血管死と心不全/心筋梗塞による再入院の複合エンドポイントが有意に改善した。 イラン・シラーズ市の3つの病院で行われた単盲検無作為化対照比較優越性試験である。年齢18~65歳、試験登録日前の3~7日以内に初回のST上昇型急性前壁心筋梗塞を発症し、心エコー検査で左室駆出率<40%、プライマリPCIが成功した患者396例を対象とした。これらを1対2の割合で介入群(136例、平均57.8歳、男性85%)または対照群(260例、59.2歳、79%)に無作為に割り付けた。介入群では標準治療に加え、同種WJ-MSCを冠動脈内に注入した。対照群は標準治療のみを受けた。 主要エンドポイントは心不全の発症で、副次エンドポイントは心不全による再入院、全死因死亡、心血管死、心筋梗塞による再入院などであった。また、心筋梗塞発症から6ヵ月までの左室駆出率の変化を両群で比較した。追跡期間中央値33.2ヵ月で心不全の発症率は対照群が100人年当たり6.48に対し、介入群は2.77と有意に良好であった。心不全による再入院(介入群0.92 vs.対照群4.20/100人年、ハザード比:0.22、95%信頼区間:0.06~0.74、p=0.015)、心血管死と心筋梗塞/心不全による再入院の複合エンドポイント(2.80 vs.7.16/100人年、0.39、0.19~0.82、p=0.012)は、介入群で有意に優れた。心筋梗塞による再入院、全死因死亡、心血管死は両群間に有意差を認めなかった。左室駆出率はベースラインから6ヵ月までに、介入群で14.28%、対照群で8.16%、有意に上昇し、左室駆出率の改善は対照群に比べ介入群で有意に良好だった。不整脈、過敏反応、再梗塞、腫瘍形成などの有害事象の報告はなかった。 Sham手技のない単盲検試験であり、結果をうのみにすることはできないが、再生医療の試験としては規模が大きく、長期間の追跡を行っており興味深い論文である。しかし、本論文はBMJ誌のウェブサイトに掲載後、いくつかの問題点(データの不整合、年齢基準を満たさない参加者の組み入れの懸念、未申告の利益相反の懸念など)が指摘されているという。

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第292回 クマ外傷、被害者にある共通点

INDEXクマ被害の原因クマとの遭遇、西日本でも普通に被害者の共通点クマ被害から病院到着に要する時間クマ被害の原因もう今年も残すところあと半月ほどだが、今年下半期に世間を賑わした話題の一つがクマ被害だろう。環境省が発表している本州でのツキノワグマ出没件数は2025年度上半期だけで2万792件。過去5年間の最多は2023年度の2万4,348件だが、今年度は上半期でそれに迫る勢いだ。だが、それ以上に深刻なのが人身被害だ。12月5日現在、全国でクマの襲撃による死者は13人、行方不明者は1人、負傷者は217人。統計がある2006年度以降、これまでの人身被害の最多は2023年度の死者6人、負傷者213人だが、今年度はいずれもこれを上回り、死者に至ってはすでに2023年度の2倍超だ。もはや災害級と言っても過言ではないだろう。この背景には、過疎化や耕作放棄地の増加といった社会構造の変化により人と野生動物の緩衝帯だった里山地域にクマの生息域が拡大し、図らずもヒトと遭遇してしまう機会が全国的に増加していることがある。ちなみにクマの生息域拡大は、個体数増加が最大の要因だ。公益財団法人日本野生生物研究センター(現・一般財団法人 自然環境研究センター)が推計した1980年代の本州でのツキノワグマ個体数は最大1万2,600頭だったが、その後の緩やかな保護政策やハンター数の激減により個体数が増加。環境省が発表している本州のツキノワグマの最新推計個体数は約4万2,000頭と、約40年で3倍以上に膨れ上がっている。日本のツキノワグマが増え過ぎなのは別のデータからも明らかだ。ツキノワグマは中国などのアジア圏にも生息しているが、中国政府が2003年に公表した国内の推計個体数は約2万7,500頭。国土面積で中国の25分の1に過ぎない日本に中国の約1.5倍ものツキノワグマが生息しているわけで、すでにバケツの水があふれ出している状態なのである。クマとの遭遇、西日本でも普通にこのような状況では各地でクマによる重篤な外傷のリスクは高まる。今年5月には秋田大学医学部救急・集中治療医学講座教授の中永 士師明(なかえ はじめ)氏の編著『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(以下、クマージェンシー)が発刊されて話題になり、現状で5刷まで重版している。そこで同書や国立情報学研究所(NII)のCiNii(NII学術情報ナビゲータ、通称・サイニィ)でクマ外傷に関する主な論文を拾って、その疫学、病態や治療戦略について、2回に分けてまとめてみることにする。はっきり言って個人的な興味が発端だが、実際論文を検索してみると、今話題の岩手県、秋田県だけでなく、新潟県、富山県、山梨県、岐阜県、島根県など各所から症例報告があることに驚く。全体的に西日本地域は無縁だと思うかもしれないが、昨今の情勢はそうとも言えない。たとえば、現在では数年前まで月間1件程度の目撃情報しかなかった奈良県や三重県ではいまや月間10件超の目撃情報があることは珍しくなくなった。京都府の昨今の目撃情報は月間300件を超えることもある。これは西日本地域のツキノワグマ個体群は、これまで環境省のレッドリストに掲載されて保護されてきたが、急速に個体数が増え、保護地域からあふれ出してきているからである。しかも厄介なことに保護政策によりクマの狩猟ができるハンターがほかの地域に比べほとんどいないのが現状である。このままで行けば、いまの北東北地域のような状況は西日本でも起こりえるのである。被害者の共通点まず、クマ外傷について効果的な医療体制を考えるうえで重要となるのが被害者の属性である。参照したのは前出、クマージェンシーと参考文献欄に示す16論文で、論文での単純合算症例数は113例(一部症例重複の可能性あり)となる。そして被害者の属性には明確な傾向が見てとれる。まず、113例の年齢は38~84歳までばらつくが、クマージェンシー第2章で挙げられた30例は平均年齢74.5歳、新潟大学で治療された10例の平均年齢は73歳、岩手医科大学で治療された50例の平均年齢は69±5歳であり、被害者は高齢者に集中している。しかも性別では、8割強が男性である。この理由は被害に遭ったシーンに依存すると考えられる。多くは山菜採りや畑作業、猟友会活動などでクマと遭遇して被害に遭っており、こうした活動をする人に占める高齢男性の多さが反映されているのだろう。ちなみに被害シーンには明らかな山林内だけでなく、観光バスのターミナル(乗鞍岳)、勤務先駐車場、川釣り中、犬の散歩中などもある。しかし、クマージェンシーで紹介されている直近の2023年の秋田大学高度救命救急センターへの搬送例20例のうち15例は、市街地で被害に遭っている。やはりクマの個体数の増加とその時々の餌の多寡が相まって、市街地での被害が多くなっているのは確かだろう。また、発生時期は113例中、発生月がわかる43例で見ると、主な被害発生時期は5~11月である。ただし、クマの冬眠期と言われる1月や12月にもまれだが被害は発生している。発生ピークは岩手医科大学の50例の検討では山菜採りの時期と重なる5月、新潟大学の10例では冬眠準備期にあたる10月がピークとなっている。さらにクマージェンシーに記載の2023年の事例も10月がピークである。ただし、クマージェンシーでは5月の時期は発生場所が山林のみで、10月に近づくにつれて人の生活圏での発生が増え、山林での発生よりも多い点は注目される。つまるところ春先は人間が山林に分け入ることで被害が発生するのに対し、冬眠直前の10月は冬眠を控えたクマが採餌を強化することでヒトの生活圏に分け入り、被害が発生すると考えられる。いわば地域の環境要因や秋期のクマの主食となる堅果類の豊凶などが被害に影響を与えることを示唆している。2時間刻みで被害発生時間帯がわかる113例中25例で見ると、最多発生時間は午前8~10時、次いで午前6~8時、午前10~12時となっている。ヒトとクマの行動時間帯が重なる午前中に被害が集中するパターンが見てとれる。クマージェンシーでは最も多いのが午前3~6時と午後3~6時である。たぶんこの違いは、地域の日照時間や人の行動パターンなどが影響しているのだろう。ただ、いずれにせよ午前中は要注意と言える。クマ被害から病院到着に要する時間そして、こうした症例が救急搬送にどれだけの時間を要するかは、その後の治療にも影響する重要な要素である。もっとも症例が多い岩手県50例の検討では、直接搬送された症例の受傷から病院搬入まで平均時間は182±10分。かなり長時間だが、論文内ではとくに山林で受傷した場合は自力下山後に救急要請を行うため、救急隊接触までに時間がかかっているとその要因を指摘している。また、新潟大学10例の検討では同じ受傷から病院搬送までの平均時間は104分と岩手のケースと比べて短いが、これは10例のうち7例の受傷場所が人の生活圏内(里山地域)だったためだろう。ちなみにクマ外傷の場合、出血性ショックなどの危険も高いことから、多くは三次救命救急センターで対応することになるが、新潟県でのドクターヘリ10例の検討によると、この10例での消防覚知から収容までの時間は中央値64.5分(54.5~80.0分)で、ドクターヘリの活用で救急車による陸路搬送よりも、医療介入が推定48分、病院到着が推定11分、早く行えたと報告している。もっとも救急車、ドクターヘリいずれでの搬送でも、とくに山林での受傷の場合、携帯電話が不通な地域もあるため、前出のように被害者が自力で下山するまで救急要請が行えないために搬送までに時間を要する問題のほかにも、たとえ携帯電話が通じる場合でも通報後に駆け付けた救急隊が現場の特定に苦労する場合やクマがまだ捕獲されていない現場での二次災害のリスクもあるという。このようにすでに医療アクセスの段階で困難に直面するという意味で、やはりクマによる被害は災害と同じと言わざるを得ない。さて次回は実際の病態、治療について紹介する。 1) 高橋 学ほか. 日外傷会誌. 2017;31:442-447. 2) 齊藤 景ほか. 創傷. 2021;12:98-105. 3) 田中 宏和ほか. 日口外誌. 2014;60:581. 4) 玉置 盛浩ほか. 日口外誌. 2007;53:732. 5) 松本 尚也ほか. 日救急医会誌. 2015;26:105-110. 6) 大滝 真由子ほか. 日形会誌. 2023;43:60-66. 7) 木原 健仁. 昭和医科大学雑誌. 2025;85:123-128. 8) 出内 主基. 新潟医学会雑誌. 2023;137:19-27. 9) 加藤 雅康ほか. 日救急医会誌. 2011;22:229-235. 10) 村山 和義ほか. 日口外傷誌. 2021;20:17-21. 11) 石戸 克尚ほか. 日口外傷誌. 2019;42:51-56. 12) 石戸 克尚ほか. 日口外傷誌. 2020;19:50-56. 13) 鈴木 真輔ほか. 頭頸部外科. 2018;28:183-190. 14) 陳 貴史ほか. 形成外科. 2003;46:1203-1208. 15) 川合 唯ほか. 耳鼻免疫アレルギー. 2023;3:95-100. 16) 中村 彩芳ほか. 島根県中病医誌. 2024;49:43-47. 17) 中永 士師明 編著. クマ外傷 クマージェンシー・メディシン. 新興医学出版社;2025.

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いま知っておきたい二重特異性抗体~固形がんで進む開発と期待~【Oncologyインタビュー】第54回

出演公益財団法人がん研究会 有明病院 北野 滋久氏近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)や抗体薬物複合体(ADC)、二重特異性抗体などの抗体技術を応用した薬物療法の開発が著しい進展をみせている。血液がんでの開発が先行していたT Cell Engagerなどの二重特異性抗体は、固形がん領域においても開発が進み、2024年にはアミバンタマブ、タルラタマブが製造販売承認を取得した。そこで、固形がんにおける抗体技術を利用した薬物療法の開発の歩みや現状、将来への期待について、北野 滋久氏が詳説する。将来の臨床応用が期待される新世代のICI、二重(多重)特異性ADCについても紹介する。※番組冒頭にDoctors'PicksのCMが流れます

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大阪大学医学部 血液・腫瘍内科学【大学医局紹介~がん診療編】

保仙 直毅 氏(教授)福島 健太郎 氏(准教授)菅 真紀子 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴大阪大学血液・腫瘍内科学の最大の特徴は“多様性”にあると思います。現在、大学には30人程度、関連施設を含めると100人を超える医局員が在籍しておりますが、それぞれ皆異なった志向、価値観、ライフスタイルを有しており、お互いに異なるそれらを尊重しながら協力して臨床・研究・教育に臨んでいます。これは人数が多いからこそできることで、より人の和を広げるよう、いろいろな人を柔軟に受け入れています。現在では新入医局員の半数以上が他学の出身者で、皆のびのびとやっていると思います。今後医局をどのように発展させていきたいか今のまま、どんどん人が加わって、皆が自由に活躍していただけば何よりです。ただ、全体としては臨床でも研究でも大きな仕事を成し遂げられるようにまとめていきたいと思います。医師の育成方針受験秀才から脱却して、「なぜかと問いかける血液内科医」になっていただくようにと思っています。治せる病気はきちんと治せるようになるのはもちろんのことですが、治らない病気は「なぜ治らないのだろう」と考えられるようになってほしいと思います。力を入れている治療/研究テーマ白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫をはじめとする血液悪性疾患は「不治の病」として長く知られてきましたが、治療の進歩や支持療法の強化により長期の生存、治癒が見込める病気になりつつあります。私たちの医局では、血液悪性疾患の標準治療はもちろん、新規薬剤の臨床試験(治験)に積極的に参加し国内外の診療をリードしております。またここ数年来で実臨床で使用できるようになった細胞療法、CAR-T療法により再発・難治の悪性リンパ腫・急性リンパ芽球性白血病の患者さんが長期生存できる可能性が高まってきました。さらには、当科で開発された新規細胞療法がいちはやく臨床使用できるよう、早期臨床試験(First in Human、Phase1)を行っています。このように新規の治療を臨床の場で体験し、その開発に携わり安全性や効果、注意すべき有害事象を深く学ぶことは、次世代の患者さんの治療に役立つことになり、さらには現状の治療の問題点を認識することができます。医局の雰囲気、魅力当医局では子育て世代の先生方も多く、業務のオン・オフは明確に分けられるようにしており、ワークライフバランスを保ちつつ、キャリアパスを積んでいくことができます。また各種専門医・指導医を各自の希望に合わせて取得できるよう、幅広く症例を経験することが可能です。私たちと一緒に、未来のがん治療を創っていきませんか?同医局を選んだ理由長崎大学での学生時代に血液内科の魅力を知り、卒業後は大阪大学の初期研修プログラムで血液・腫瘍内科の研修を受けました。造血幹細胞移植を含む高度な診療や最新の臨床研究への参加、研究室と病棟が連携し患者検体を迅速に解析できる環境は魅力的で、また厳しい状況にある患者さんに真摯に向き合いながらも、前向きにかつ楽しそうに診療に取り組む先生方の姿に触れ、自分もここで学びたいと入局を決めました。出身大学や経歴の異なる多くの先生方が所属して活躍しており、多様なキャリアを尊重する柔軟な医局の風土にも惹かれました。現在学んでいること市中病院で研鑽を積んだ後に大学院へ進学し、現在は白血病に対する新規細胞療法の研究に携わっています。自ら計画を立案し実験を重ね、新たな知見を築いていく過程は非常に刺激的で、臨床を離れて研究に没頭できた時間は医師として大きな財産となりました。研究を通じて細胞療法の可能性と限界を学び、今後の治療開発に必要な視点を養えたことは臨床医としても得難い経験だったと感じています。今後のキャリアプラン研究を継続するため海外留学に向けた準備を進めています。将来的にはトランスレーショナル・リサーチを軸に、造血器腫瘍に対する新たな治療開発を前進させる一助となれるよう臨床・研究の双方から研鑽を積んでいきたいと考えています。大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学住所〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2問い合わせ先ikyoku@bldon.med.osaka-u.ac.jp医局ホームページ大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本臨床腫瘍学会日本血栓止血学会日本輸血・細胞治療学会日本造血・免疫細胞療法学会日本がん治療認定医機構研修プログラムの特徴(1)臨床・研究ともに自身の希望に合わせたキャリアプランをサポートしております。(2)子育てに配慮した働き方支援をしております。(3)内科専門医、血液専門医、造血・免疫細胞療法学会認定医など資格取得を研修当初から視野においたプログラムを支援しております。詳細はこちら

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小児期の肥満は成人後に診療数が多くなる

 小児期のBMIは、成人になってからの疾患リスクに影響を与えるのだろうか。このテーマについて、デンマーク・コペンハーゲン大学病院臨床研究予防センターのJulie Aarestrup氏らの研究グループは、小児約11万人を対象に調査し、その結果、小児期に肥満だった人では、成人してからの診断件数が多かったことが判明した。この結果は、Obesity誌オンライン版2025年11月18日号で公開された。小児期の肥満では女性のほうが成人後に診断件数が多くなる 研究グループは、15~60歳までの性別特異的な疾患診断パターンが、小児期のBMIによって異なるかどうかを調査するために、コペンハーゲン学校健康記録登録簿中の1962~96年生まれで体重・身長が測定された児童11万2,952例(女子5万5,603例)を対象に、7歳時のBMIを低体重(4.3%)、正常体重(83.1%)、過体重(9.2%)、肥満(3.5%)に分類した。病院ベースの診断は、全国登録データから取得し、BMI群ごとに頻度の高い疾患上位50種について、性別別の累積発生率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・小児期肥満の人は、60歳までの病院での診断件数の推定値が高く、女性で18.2件(95%信頼区間[CI]:16.9~19.5)、男性で15.1件(95%CI:13.8~16.4)だった。・正常体重の人の診断件数の推定値は、女性で14.7件(95%CI:14.5~14.9)、男性で11.7件(95%CI:11.5~11.8)だった。・小児期肥満の女性と男性において、60歳までの診断で最も多かったのは、成人期の過体重(36.4%)と肥満(11.8%)だった。・小児期のBMI区分によるその他の疾患の差はわずかだった。 これらの結果から研究グループでは、「小児期に肥満だった成人は、病院ベースの診断数が最も多かった。成人期の過体重および肥満を除き、小児期のBMIグループ間における生涯にわたる疾患パターンはおおむね類似していた」と結論付けている。

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ベンゾジアゼピンの使用は認知症リスクにどの程度影響するのか?

 ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は、不眠症や不安症の治療に幅広く使用されている。しかし、BZDの長期使用は、認知機能低下を加速させる可能性がある。認知症の前駆症状がBZD使用のきっかけとなり、逆因果バイアスが生じている可能性もあるため、エビデンスに一貫性が認められていない。カナダ・Universite de SherbrookeのDiego Legrand氏らは、BZDの使用量、投与期間、消失半減期が認知症発症と独立して関連しているかどうかを検証し、前駆期による交絡因子について検討を行った。Journal of the Neurological Sciences誌2025年12月15日号の報告。 Canadian Community Health Surveyから抽出したtorsade cohortを対象に、医療行政データベースにリンクした症例対照研究を実施した。BZDの使用量、投与期間、消失半減期は、多変量条件付きロジスティック回帰を用いて解析した。モデル1では、認知症リスク因子を調整した。モデル2では、BZDの潜在的な適応症(不眠症、不安症、うつ病)についても調整した。前駆症状の影響を検証するため、インデックス日を診断の1~10年前に変更した。症例群は50歳以上の認知症患者とし、対照群は性別、年齢、フォローアップ調査、教育歴でマッチングさせた。 主な結果は以下のとおり。・症例群1,082例および対照群4,262例において、モデル1では、BZDの使用が認知症と関連していることが示唆された(オッズ比[OR]:1.65、95%信頼区間:1.42~1.93)。・認知症リスクは、半減期が長い薬剤(OR:2.81)のほうが、半減期が中程度の薬剤(1.57)よりも高かった。・モデル2では、180日超の慢性的なBZDの使用は、診断前4年以内において、認知症リスクとの関連が認められた。 著者らは「BZDの使用は、認知症リスクの上昇と関連しており、半減期が長い薬剤で最も強い関連が認められた。BZDの慢性的な使用との関連が4年間の前駆症状に限定されていることは、適応による交絡、あるいは逆因果関係を示唆している。これらの知見は、高齢者におけるBZDの使用は、慎重かつ期限を限定して行うべきであることを強調している」と結論付けている。

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妊娠中の体重増加と母体および新生児の臨床アウトカムの関連/BMJ

 オーストラリア・モナシュ大学のRebecca F. Goldstein氏らは、世界のさまざまな地域および所得水準の妊産婦を対象とした観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行い、米国医学研究所(IOM)の推奨値を超える妊娠中の体重増加(GWG)は、アウトカムが不良となるリスクの増加と関連していることを示した。著者は、「今回の結果は、WHOが推進している世界各地の周産期アウトカムの改善に向けたGWG基準の最適化プロセスに役立つだろう」としている。BMJ誌2025年11月19日号掲載の報告。コホート研究40件、妊婦約161万人についてレビュー&解析 研究グループは、Embase、EBM Reviews、Medline、Medline In-Process、その他のデータベースを用い、2009年~2024年5月1日に発表された論文を検索した。適格基準は、18歳超の単胎妊娠の女性300例超を対象とし、妊娠前BMIカテゴリー別の総GWG、ならびに研究で定義されたBMIおよびGWG別のアウトカムが報告されている観察研究とした。言語は問わなかった。 主要アウトカムは、出生体重、帝王切開率、妊娠高血圧症候群、早産、在胎不当過小/過大児、低出生体重、巨大児、新生児集中治療室(NICU)入室、呼吸窮迫症候群、高ビリルビン血症、および妊娠糖尿病とした。 検索の結果、2万1,729件の研究が同定され、適格と判定された計40件のコホート研究(妊産婦計160万8,711例)がレビューに包含された。体重増加がIOM推奨値を下回ると、早産、低出生体重児などが増加 コホート全体で、低体重が6%(6万5,114例)、正常体重が53%(60万7,258例)、過体重が19%(21万5,183例)、肥満が22%(25万2,970例)であった(データ入手は114万252例、WHO分類およびアジア人のBMI分類の両方を含む研究で定義されたBMI分類に基づく)。妊娠終了時、GWGがIOM推奨値を下回っていたのは23%、上回ったのは45%であった。 WHOのBMI基準を用いたところ、IOM推奨値を下回るGWGは、出生体重の低下(平均差:-184.54、95%信頼区間[CI]:-278.03~-91.06)、帝王切開分娩(オッズ比[OR]:0.90、95%CI:0.84~0.97)、在胎不当過大児(0.67、0.61~0.74)、巨大児(0.68、0.58~0.80)の低いリスク、早産(1.63、1.33~1.90)、在胎不当過小児(1.49、1.37~1.61)、低出生体重児(1.78、1.48~2.13)、呼吸窮迫症候群(1.29、1.01~1.63)の高いリスクと関連していた。上回ると、帝王切開、妊娠高血圧症候群、在胎不当過大児などが増加 一方、IOM推奨値を上回るGWGは、出生体重の増加(平均差:118.33、95%CI:53.80~182.85)、帝王切開分娩(OR:1.37、95%CI:1.30~1.44)、妊娠高血圧症候群(1.37、1.28~1.48)、在胎不当過大児(1.77、1.62~1.94)、巨大児(1.78、1.60~1.99)、およびNICU入室(1.26、1.09~1.45)の高いリスク、早産(0.71、0.64~0.79)および在胎不当過小児(0.69、0.64~0.75)の低いリスクと関連していた。 アジア人のBMI基準では、GWGが推奨値を下回ると、妊娠高血圧症候群(OR:3.58、95%CI:1.37~9.39)および早産(1.69、1.25~2.30)の高いリスク、在胎不当過大児(0.80、0.72~0.89)の低いリスクと関連し、GWGが推奨値を上回ると帝王切開(1.37、1.29~1.46)および在胎不当過大児(1.76、1.42~2.18)の高いリスク、在胎不当過小児(0.62、0.53~0.74)および低出生体重(0.44、0.31~0.6)の低いリスクと関連した。

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DES留置後1年以上の心房細動、NOAC単剤vs.NOAC+クロピドグレル併用/NEJM

 1年以上前に薬剤溶出ステント(DES)の留置を受けた心房細動患者において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法はNOAC+クロピドグレルの併用療法と比較し、全臨床的有害事象(NACE)に関して非劣性であることが認められた。韓国・Yonsei University College of MedicineのSeung-Jun Lee氏らが、同国32施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検非劣性試験「Appropriate Duration of Antiplatelet and Thrombotic Strategy after 12 Months in Patients with Atrial Fibrillation Treated with Drug-Eluting Stents trial:ADAPT AF-DES試験」の結果を報告した。ガイドラインの推奨にもかかわらず、DES留置後の心房細動患者におけるNOAC単剤療法の使用に関するエビデンスは依然として限られていた。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。第2または第3世代DES留置後1年以上の高リスク心房細動患者が対象 研究グループは、心房細動と診断され、登録の1年以上前に第2世代または第3世代のDESを留置するPCIを受け、CHA2DS2-VAScスコアが2以上の19~85歳の患者を、NOAC単剤療法群またはNOAC+クロピドグレル併用療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 NOACは担当医師の選択としたが、試験ではアピキサバンまたはリバーロキサバンのみを使用した。 主要エンドポイントは、無作為化後12ヵ月時点における全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、全身性塞栓症または大出血もしくは臨床的に重要な非大出血の複合であるNACEで、非劣性マージンは主要エンドポイント発現率の群間差の片側97.6%信頼区間(CI)の上限が3.0%とし、ITT解析を行った。なお、非劣性が認められた場合、主要エンドポイントにおけるNOAC単剤療法の優越性を第1種過誤率4.8%(両側)として検定することが事前に規定された。12ヵ月時のNACE発現率、単剤群9.6%vs.併用群17.2% 2020年4月~2024年5月に計1,283例がスクリーニングされ、このうち960例が無作為化された(単剤療法群482例、併用療法群478例)。平均年齢は71.1歳、女性が21.4%であった。 主要エンドポイントのイベントは単剤療法群で46例(Kaplan-Meier推定値9.6%)、併用療法群で82例(17.2%)に発現し、絶対群間差は-7.6%(95.2%CI:-11.9~-3.3、非劣性のp<0.001)、ハザード比(HR)は0.54(95.2%CI:-0.37~0.77、優越性のp<0.001)であった。 大出血もしくは臨床的に重要な非大出血は、単剤療法群で25例(5.2%)、併用療法群で63例(13.2%)に発現した(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)。大出血の発現率はそれぞれ2.3%および6.1%(HR:0.37、95%CI:0.18~0.74)、臨床的に重要な非大出血の発現率は2.9%および7.1%(0.40、0.21~0.74)であった。

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ER+/HER2-早期乳がん術後ホルモン療法、giredestrant vs.標準治療(lidERA)/SABCS2025

 ER+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)giredestrantと現在の標準治療である内分泌療法を比較した第III相lidERA試験の中間解析の結果、giredestrantは無浸潤疾患生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、再発または死亡に至る可能性を30%低下させたことを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya L. Bardia氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で報告した。・試験デザイン:非盲検国際多施設共同無作為化試験・対象:12ヵ月以内に乳がん手術を受け、必要に応じて術前/術後化学療法を完了したStageI~III、ER+/HER2-の早期乳がん患者 4,170例・試験群:giredestrant 30mg 1日1回経口投与 2,084例・対照群:標準内分泌療法(タモキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンから1つ選択) 2,086例※5年間または許容できない毒性が発現するまで継続。閉経前・閉経前後の女性および男性はLH-RHアゴニストを併用。・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]無遠隔再発期間(DRFI)、全生存期間(OS)、安全性など・データカットオフ:2025年8月8日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値は両群ともに54.0歳で女性が99.5%であった。閉経後がgiredestrant 59.0%および標準内分泌療法群59.6%、StageIが12.3%および13.6%、StageIIが49.0%および45.7%、StageIIIが38.7%および40.6%、化学療法歴を有したのは81.0%および78.4%であった。・追跡期間中央値は32.3ヵ月であった。・主要評価項目であるIDFSイベントはgiredestrant群140例(6.7%)、標準内分泌療法群196例(9.4%)に発生し、ハザード比(HR)は0.70(95%信頼区間[CI]:0.57~0.87、p=0.0014)であった。3年IDFS率はgiredestrant群92.4%、標準内分泌療法群89.6%であった。・IDFSを内分泌療法別にみると、giredestrant vs.アロマターゼ阻害薬のHRは0.73(95%CI:0.58~0.92)、giredestrant vs.タモキシフェンのHRは0.53(0.35~0.80)であった。・IDFSにおけるgiredestrantのベネフィットは、事前に規定していたすべてのサブグループで同様であった。・DRFIイベントはgiredestrant群102例(4.9%)、標準内分泌療法群145例(7.0%)に発生した(HR:0.69、95%CI:0.54~0.89)。3年DRFI率はgiredestrant群94.4%、標準内分泌療法群92.1%であった。・OSは未成熟であったものの、giredestrant群において改善傾向がみられた(HR:0.79、95%CI:0.56~1.12、p=0.1863)。・Grade3/4の有害事象(AE)はgiredestrant群407例(19.8%)および標準内分泌療法群372例(17.9%)、重篤なアウトカムに至ったAEは6例(0.3%)および16例(0.8%)に発現した。・giredestrant群で多かった全GradeのAEは関節痛(48.0%)、ホットフラッシュ(27.4%)、頭痛(15.3%)などであった。Grade3/4のAEは高血圧(2.6%)、関節痛(1.5%)などであった。 Bardia氏は「lidERA試験の結果は、giredestrantがER+/HER2-早期乳がん患者における新たな標準治療となる可能性を支持するものである」とまとめた。

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アトピー性皮膚炎患者に最適な入浴の頻度は?

 アトピー性皮膚炎患者にとって入浴は判断の難しい問題であり、毎日の入浴が症状の悪化を引き起こすのではないかと心配する人もいる。こうした中、新たなランダム化比較試験で、入浴の頻度が毎日でも週に1~2回でも、入浴がアトピー性皮膚炎の症状に与える影響に違いはないことが明らかになった。 この試験を実施した英ノッティンガム大学臨床試験ユニットのLucy Bradshaw氏は、「アトピー性皮膚炎の人でも自分に合った入浴頻度を選べることを意味するこの結果は、アトピー性皮膚炎の症状に苦しむ人にとって素晴らしい知らせだ」と述べている。この臨床試験の詳細は、「British Journal of Dermatology」に11月10日掲載された。 アトピー性皮膚炎は、皮膚の水分保持力の低下や外的刺激や病原体から体を守る力(バリア機能)の低下により、皮膚の乾燥、かゆみ、凹凸などが生じる疾患である。今回の試験では、438人のアトピー性皮膚炎患者(16歳未満108人)を対象に、入浴の頻度が症状に与える影響が検討された。入浴は、シャワーだけを浴びる場合とバスタブに身体を浸す場合の双方を含めた。対象者は、4週間にわたり、週に1〜2回入浴する群(220人)と毎日(週に6回以上)入浴する群(218人)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、週に1回、POEM(patient oriented eczema measure)を使って患者が報告したアトピー性皮膚炎の症状であった。 その結果、ベースライン、および1、2、3、4週目の平均POEMスコアは、毎日入浴した群でそれぞれ14.5点、11.7点、12.2点、11.7点、11.6点、週1〜2回入浴した群ではそれぞれ14.9点、12.1点、11.3点、10.5点、10.6点であった。両群間の4週間の平均POEMスコアの調整差は−0.4(95%信頼区間−1.3~0.4、P=0.30)であり、有意な差は認められなかった。 共著者の1人であり、自身もアトピー性皮膚炎に罹患しているノッティンガム大学Centre of Evidence Based Dermatology(CEBD)のAmanda Roberts氏は、「この研究結果には非常に安心した」と話す。同氏は、「日常生活の中にはアトピー性皮膚炎の症状に影響する可能性があるものがたくさんある。そのため、入浴やシャワーの頻度はそこに含まれないと知っておくのは、心配事が一つ減って喜ばしいことだ」と話している。 研究グループは次の研究で、アトピー性皮膚炎の再発の治療において、ステロイド薬をどのくらいの期間使用すべきかを調べる予定だという。Bradshaw氏は、「アトピー性皮膚炎患者と緊密に協力しながらこの研究を共同設計できたことは素晴らしい経験だった。われわれは、これまでの研究では十分に注目されてこなかった、アトピー性皮膚炎患者の生活にまつわる疑問に答えを見つけ始めたところだ」と述べている。

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脂肪由来の幹細胞が脊椎圧迫骨折の治癒を促進

 日本の研究グループが、骨粗しょう症患者によく見られる背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)の新たな治療法に関する成果を報告した。脂肪由来の幹細胞(ADSC)を用いた再生医療により骨折を修復できる可能性のあることが明らかになったという。幹細胞は、骨を含むさまざまな種類の組織に成長することができる。大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の高橋真治氏らによるこの研究の詳細は、「Bone & Joint Research」に10月28日掲載された。高橋氏は、「このシンプルで効果的な方法は、治りにくい骨折にも対応可能で、治癒を早める可能性があり、患者の健康寿命を延ばす新たな治療法となることが期待される」と話している。 骨粗しょう症は、骨量が減って骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態である。骨粗しょう症患者に最も多く見られる骨折は、脊椎圧迫骨折である。脊椎圧迫骨折は長期にわたる障害につながり、生活の質(QOL)を著しく制限する可能性がある。米食品医薬品局(FDA)によると、推定2,000万人の米国人が骨粗しょう症に悩まされており、その多くは更年期に伴うホルモン変化の影響を受けた高齢女性であるという。 高橋氏らは、ADSCを骨に分化させ、3次元的に培養して「ADSC骨分化スフェロイド」と呼ばれる細胞集合体を作製した。次に、このスフェロイドを人工骨に利用されるβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)と組み合わせた上で骨折したラットの背骨に移植し(骨分化スフェロイド群)、ADSC未分化スフェロイドとβ-TCPを移植した群(未分化スフェロイド群)、またはβ-TCPを単独で移植した群(対照群)との間で骨再生の効果を比較した。 その結果、骨分化スフェロイド群と未分化スフェロイド群では対照群と比べて、骨量および骨癒合スコアが有意に改善し、特に骨分化スフェロイド群での改善は顕著であった。また、骨分化スフェロイド群では対照群と比べて、力学的強度も有意に改善していた。組織学的解析では、骨分化スフェロイド群では他の2群に比べて骨再生が顕著であった。さらに、遺伝子発現解析の結果、骨分化スフェロイド群では、アルカリホスファターゼ(ALP)やオステオカルシン(OCN)などの骨形成マーカーや、BMP-7、IGF-1などの再生関連因子の発現が多く、アポトーシスが抑制されていることも確認された。 論文の筆頭著者である大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の澤田雄大氏は、「本研究から、ADSCを用いた骨分化スフェロイドが、脊椎骨折の新たな治療法の開発において有望であることが明らかになった。この治療法では、脂肪由来の細胞を用いているため、人体への負担が少なく、患者の安全性も確保される」とニュースリリースの中で述べている。 この新しい治療法は、現時点ではラットでのみ検証されており、人間を対象にした場合には結果が異なる可能性がある。それでも研究グループは、「この治療アプローチは、骨疾患に対する侵襲性が最小限の治療法につながる可能性がある」と期待を示している。

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