産後出血の転帰を予測する臨床マーカーは?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/16

 

 従来閾値よりも低値の失血量と血行動態異常の兆候の組み合わせで、産後出血による死亡または生命を脅かす合併症のリスクがある女性を正確に予測でき、産後出血の早期診断と治療のサポートが可能であることを、WHOのIoannis Gallos氏らWHO Consortium on Postpartum Haemorrhage Definitionが、被験者個人データを用いたメタ解析の結果で示した。産後出血(産後の過多出血)は、世界中で母体死亡・合併症の要因になっている。しかしながら、過度の出血の最適な定義や母体の有害アウトカムを確実に予測する臨床マーカーについて、世界的なコンセンサスはなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月4日号掲載の報告。

5つの臨床マーカーの予後予測精度を評価

 研究グループは、母体の死亡や重篤な合併症に関する産後出血の臨床マーカーの予後予測精度を評価した。適格としたデータセットは、WHOの呼び掛けによる募集データと、PubMed、MEDLINE、Embase、Cochrane LibraryおよびWHO trial registriesのシステマティックな検索(データベース開始から2024年11月6日まで)を通じて特定した。

 客観的測定に基づく失血量または血行動態不安定性に関するその他の臨床マーカーを有する被験者が200例以上含まれ、対象の臨床アウトカムが少なくとも1つ以上報告されている研究を適格とした。

 すべての適格研究について被験者の個人データ(IPD)を求め、各データセットについて、母体死亡または重篤な合併症(輸血、外科的介入またはICU入室)の複合アウトカムに関する5つの臨床マーカー(失血量、脈拍数、収縮期血圧、拡張期血圧、ショック指数)の予後予測精度を算出した。

 2レベル混合効果ロジスティック回帰モデルを用いてメタ解析を行い、2変量ノーマルモデルを用いて要約精度を推定した。

 臨床マーカーと閾値の選択は、WHO専門家コンセンサスプロセスに基づき、予後の特異度(50%以上が望ましい)よりも予後の感度(80%超が望ましい)の最大化に重点を置いて評価が行われた。

失血量と血行動態異常の兆候の組み合わせで予測能は改善

 33データセットが適格の可能性があり、18データセットのIPDデータの入手に成功した。このうち12データセットの全データ(女性31万2,151例)を解析した。

 従来閾値の500mLは失血量の要約予後予測感度が75.7%(95%信頼区間[CI]:60.3~86.4)であり、複合アウトカムの予後予測特異度は81.4%(95%CI:70.7~88.8)であった。

 望ましい予後の感度(80%超)の閾値は300mLで達成されたが(83.9%、95%CI:72.8~91.1)、特異度は低かった(54.8%、38.0~70.5)。

 予測能は、失血量の閾値500mL未満(≧300mL~≧450mL)と血行動態異常の兆候(脈拍数>100回/分、収縮期血圧<100mmHg、拡張期血圧<60mmHg、ショック指数>1.0のいずれか)の組み合わせ、または失血量500mL以上のいずれかを用いた決定ルール(複合ポイントスコアリングシステム)で、感度(範囲:86.9~87.9%)と特異度(66.6~76.1%)の精度およびバランスがより改善された。すなわち、失血量閾値450mLのルール3(複合ポイントスコアリングシステムで2点以上[失血量450~499mLは1点、その他血行動態異常の兆候は1点、失血量500mL以上は2点])において感度86.9%、特異度76.1%、失血量閾値300mLのルール3(同2点以上[失血量300~499mLは1点、その他血行動態異常の兆候は1点、失血量500mL以上は2点])において感度87.9%、特異度66.6%であった。

(ケアネット)