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がんが肺に転移しやすいのはなぜ?

 肺はがん細胞にとって魅力的な場所なのか、進行がん患者の半数以上で肺転移が認められる。その理由の一つとなり得る研究結果が報告された。この研究では、がんが転移した肺の中ではアミノ酸の一種であるアスパラギン酸の濃度が上昇しており、がん細胞が増殖しやすい環境が形成されている可能性のあることが示唆されたという。フランダースバイオテクノロジー研究機関(VIB、ベルギー)がん生物学センターのGinevra Doglioni氏らによるこの研究結果は、「Nature」に1月1日掲載された。 Doglioni氏は、「乳がんに罹患したマウスや患者の肺では、がんに罹患していないマウスや患者の肺に比べてアスパラギン酸のレベルが高いことが分かった。これは、アスパラギン酸が肺転移に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆している」とVIBのニュースリリースで述べている。 この研究でDoglioni氏らはまず、肺に転移したがん細胞の遺伝子発現について調べ、通常とは異なる「翻訳プログラム」が存在することを示すエビデンスを見つけた。翻訳とは、細胞内で遺伝情報を設計図にしてタンパク質を生成するプロセスのことをいう。翻訳プログラムが変化すると生成されるタンパク質の種類も変わり、その結果、がん細胞が肺という環境で成長しやすくなっている可能性がある。 では、このような進行性のがん転移では、何が翻訳プログラムの変化を引き起こす要因となっているのだろうか。Doglioni氏らが転移性乳がんマウスのがん細胞を調べた結果、肺転移におけるがん細胞の攻撃性や増殖性の促進は、タンパク質であり翻訳開始・伸長因子でもあるeIF5Aのハイプシン化という翻訳後修飾の増加により引き起こされる可能性が示唆された。 さらに、腫瘍分泌因子(tumour-secreted factor;TSF)で前処理したマウスと対照マウスの肺間質液中の栄養素濃度を比較したところ、前者ではアスパラギン酸の濃度が顕著に増加していることが確認された。そこで、アスパラギン酸がeIF5Aのハイプシン化に及ぼす影響を検討したところ、アスパラギン酸は、がん細胞に取り込まれるのではなく、がん細胞表面にあるNMDA受容体というタンパク質を活性化させることが判明した。これによりシグナル伝達カスケードが引き起こされ、最終的にeIF5Aのハイプシン化が促進される。がん細胞は、このプロセスを通じて翻訳プログラムを変化させ、肺の環境を自らの増殖に適したものに変えていることが示唆された。 転移性乳がん患者の肺腫瘍サンプルを調査したところ、マウスで観察されたものと同様の翻訳プログラムの存在が確認された。また、肺転移では他の臓器への転移と比較して、アスパラギン酸に結合するNMDA受容体のサブユニットの発現量が増加していることも明らかになった。 論文の上席著者であるVIBのSarah-Maria Fendt氏は、「この相関関係は、臨床的な文脈において本研究結果が重要であることを強調しており、アスパラギン酸によるシグナル伝達が肺で増殖するがん細胞に共通する特徴である可能性を示唆している。さらに、今回特定されたメカニズムを標的とする薬剤はすでに存在しており、さらなる研究によって臨床に応用されるようになる可能性がある」と述べている。

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よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない

 笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。 近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。 2020~2021年の住民健診に参加した年齢60~79歳の1,717人のうち、研究参加への同意を得られ、データ欠落のない916人(平均年齢68.4±5.0歳、男性46.2%)を解析対象とした。両年度とも参加していた人については2020年度のデータを使用した。OFの評価には、「硬い食べ物を食べるのが困難か?」など8項目の質問から成る精度検証済みの質問票(Oral Frailty Index-8;OFI-8)を使用。そのスコアに基づき、OFなしが40.3%、プレオーラルフレイル(OFの予備群〔POF〕)が18.2%、OFが41.5%と判定された。笑いの頻度については、「声を出して笑う頻度は?」という質問で評価。ほぼ毎日が40.8%、週に1~5回が43.3%、月に1~3回が11.1%、ほとんどないが4.9%だった。 笑う頻度が「週1回未満」の群を基準として、年齢と性別の影響を調整した解析(モデル1)の結果、笑う頻度がほぼ毎日の群にはOFが有意に少なく(オッズ比〔OR〕0.38〔95%信頼区間0.26~0.57〕)、頻度が週に1~5回の群もOFが少なかった(OR0.51〔同0.35~0.76〕)。調整因子に、喫煙・飲酒・運動習慣、身体的フレイル、高血圧・糖尿病の既往を追加した解析(モデル2)では、笑う頻度が週に1~5回の群についてはOFとの関連の有意性が消失したが(OR0.66〔0.43~1.02〕)、頻度がほぼ毎日の群では引き続きOFが有意に少ないという関連が認められた(OR0.54〔0.34~0.86〕)。 モデル2において、笑う頻度以外に、抑うつ症状がないこともOFに対する負の有意な関連因子だった(「抑うつ症状あり」を基準とするOR0.39〔0.25~0.61〕)。その一方、高齢(1歳高齢であるごとにOR1.08〔1.05~1.11〕)、女性(OR1.74〔1.14~2.65〕)、喫煙(現喫煙がOR2.63〔1.57~4.40〕、過去喫煙がOR1.75〔1.15~2.66〕)、飲酒(毎日がOR1.70〔1.15~2.51〕、機会飲酒は非有意)は、正の有意な関連因子として特定された。運動習慣や地域活動への参加は、モデル1では有意な負の関連が認められたが、モデル2では非有意となった。 著者らは、本研究が新型コロナウイルスパンデミック中に実施されたことが結果に影響を及ぼしている可能性を否定できないといった限界点を挙げた上で、「交絡因子を調整後、毎日笑うことと抑うつ症状がないことが、OFの少なさと関連していた。公衆衛生戦略として、社会的なコミュニケーションを拡大して人々が声を出して笑える頻度を増やし、抑うつのリスクを抑制することが、フレイル予防・改善を通じて健康寿命を延伸する可能性があるのではないか」と述べている。

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ワクチン接種後の免疫抑制療法患者のリスクを抗体の有無で評価(解説:栗原宏氏)

本研究のまとめ・免疫抑制療法患者において、抗SARS-CoV-2スパイク抗体(抗S Ab)陽性者は感染・入院リスクが低い・感染リスク要因:年齢が若い(18~64歳)、子供との同居、感染対策の実施・入院リスク要因:併存疾患の存在強み(Strong Points)・3つの異なる免疫抑制患者群におけるCOVID-19リスクを大規模データで解析・抗S Abの有無と感染・重症化リスクの関連を明確化・実臨床データとリンクし、健康アウトカムに関する実証的な証拠を提供限界(Limitations)・因果関係ではなく相関関係の分析に留まる・治療介入(抗ウイルス薬、モノクローナル抗体)の影響が不明確・ワクチンの種類や接種時期の詳細な分析が不足・行動要因(マスク着用、社会的距離)の影響が考慮されていない可能性 本研究は、免疫抑制患者におけるSARS-CoV-2スパイク抗体の有無が、感染および入院率にどのような影響を与えるかを評価する約2万人規模のコホート研究である。 免疫抑制療法では、ワクチン接種後の免疫応答が低下する可能性があり、COVID-19感染リスクが高いと考えられる。 英国の全国疾病登録データを用い、以下の3つの免疫抑制患者群において抗体の影響を評価した。1)固形臓器移植(SOT)2)まれな自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)3)リンパ系悪性腫瘍(lymphoid malignancies)主な結果と臨床的意義 いずれの群でも、抗体陽性者のCOVID-19感染率・入院率は、年齢・人種・既存疾患などを調整しても有意に低かった。より具体的には、抗体陰性者の感染リスクは1.5〜1.8倍、入院リスクは2.5〜3.5倍高かった。 これらの結果から、免疫抑制患者に対し抗体検査を活用することで、高リスク群を特定し、追加ワクチン接種や早期治療などの対応を提供できる可能性が示唆された。 しかし、本研究は相関関係の分析に留まるため、・「抗体ができやすい人=健康状態が良く感染リスクが低い」・「抗体ができにくい人=強力な免疫抑制療法を受けており感染・重症化リスクが高い」といった因果関係の逆転の可能性も考慮する必要がある。 また、本研究では、ワクチンの種類・接種回数の影響、抗体価の高低、行動習慣(通勤・外出頻度)の影響は評価されていない。感染リスク要因の考察 感染リスク要因として、年齢が若いこと、子供との同居、感染対策の実施が挙げられた。「感染対策をしている人の感染リスクが高い」という結果は直感的に意外だが、これは 「感染リスクが高い人ほど対策をしているが、免疫が弱いため、それでも感染しやすい」という背景を反映しているという可能性がある。 本研究は、免疫抑制患者における抗S Abの有無とCOVID-19感染・入院リスクの相関を示し、免疫抑制患者のCOVID-19管理戦略を考えるうえで重要な知見を提供していると考えられる。

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食物アレルギーの原因食物

食物アレルギーの原因として多いのは?マカデミア ソバナッツ1.1%1.1%0歳大豆 1.3%キウイ1.3%エビ3.0%年齢別にみると…ピスタチオ0.8%1~2歳その他鶏卵 61.8%鶏卵10.6%牛乳 20.9%クルミ 19.6% イクラ 14.1%小麦 13.1%イクラ鶏卵26.7%カシューナッツ4.6%28.7% クルミ 34.5%13.0% 落花生 11.6%カシューナッツ落花生 7.4%9.2%カシューナッツ6.5%7~17歳イクラ5.7%小麦18.9%エビエビ16.5%大豆9.1%12.4%クルミイクラ 7.9%7.0%15.2%カシューナッツ 6.3%※各年齢群で5%以上を占めた原因食物※初発例のみ(n=3,981人)小麦n=6,033人※初発および誤食例を含む18歳以上クルミ 18.7%落花生8.1%3~6歳牛乳13.4%消費者庁「令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」掲載「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」から「即時型食物アレルギーの原因食物(品目別)」・「年齢群別原因食物(初発例)」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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日本薬剤師会からカスハラに備えた保険が登場!? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第145回

前回のコラムで、薬局薬剤師に対するカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)の調査結果を紹介しました。その調査は東京都薬剤師会で行われたもので、カスハラを受けたことが「ある」と回答した薬剤師は約7割にものぼりました。私もカスハラを経験したうちの1人で、全国レベルでも多くの薬剤師がカスハラを経験していると想像できます。今回、日本薬剤師会がカスハラなどに対する対応として、新たな保険の取り扱いを開始すると発表しました。日本薬剤師会は、薬局を利用する住民からのクレーム行為に備えた独自の保険として、2月15日から会員薬局向けに「クレーム対応費用保険」の取り扱いを開始する。補償期間は1年間で保険料は1店舗当たり年間9000円。1事故当たりの弁護士への相談料や着手金、報酬金など補償限度額は100万円、保険期間中1店舗当たり補償限度額は200万円となる。14日から加入対象となる薬局へ薬剤師賠償責任保険等の募集案内として送付する。(2025年1月10日付 薬事日報)今回の保険は薬剤師個人で入るのではなく、加入者は薬局開設者(法人代表者)または管理薬剤師となっており、薬剤師賠償責任保険の加入が条件とのことです。薬局の店舗ごとに入るというイメージでしょう。気になるのは、「どういったトラブルの際にどうやって助けてくれるの?」という補償の内容ですが、補償対象者が患者さんや近隣住民などの第3者から過大な要求を受けた場合、法律にのっとった円満解決を支援してくれます。保険会社設置の専門相談窓口「クレームコンシェル」による無料相談、アドバイスなどのサービスも受けることができます。クレームコンシェル常駐の弁護士との1回の相談時間は15分で、一般的な法律相談や法制度上の助言を行ってくれるとのことです。薬局業務においては、患者さんとの間に薬に関することだけでなく、待ち時間や在庫、コミュニケーションなど、多岐にわたるトラブルが発生します。最近では薬の在庫がないというシチュエーションが多いかと思いますが、調達時間だけでなく連絡やお渡し方法など、芋づる式にトラブルが広がる可能性もあります。また、患者さんだけではなく、医師や病院職員、薬に関係のない近隣住民とも店舗の外装などでトラブルが起こる可能性があります。大きな問題になった際に弁護士に相談できるというのは心強いですよね。2025年2月~2026年2月までの1年間の保険加入を希望する場合の新規加入の申し込みを2月14日まで受け付けています。開設者と管理薬剤師のどちらか1人の申込みでその店舗が補償されるので、どちらかの申し込みでよいとのことです。補償期間は1年間、保険料は1店舗当たり年間9,000円です。個人的には、思ったより安いかもと思いました。東京都薬剤師会は、相談窓口の設置やハラスメント防止を啓発するポスターの薬局内掲示なども推奨しています。本来はクレームやハラスメントがなく、本保険の利用が少ないことが望ましいですよね。ましてや弁護士の助言を求める事例なんてないほうがよいに決まっています。ポスター掲示から保険加入まで、さまざまな「サービス」が出てきましたが、現代の薬局業務においてカスハラは大きな問題の1つになっているため今後も増えていくでしょう。まずはこの保険の加入薬局用に「カスハラを弁護士に相談する体制が整っている薬局です」などのポスターが登場するかもしれません。

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脳外科外来の便秘相談 【Dr. 中島の 新・徒然草】(566)

五百六十六の段 脳外科外来の便秘相談日本中が寒波だ大雪だと大変なことになっています。帯広では観測史上最大の積雪を記録したのだとか。ありがたいことに、今のところ大阪は晴れ。しかし、天気予報では金曜日の降雪確率は45%になっています。油断大敵ですね。さて、外来をやっていてよく聞く訴えが便秘です。ひょっとすると「眠れない」の次に多い訴えかもしれません。なぜ脳外科外来で便秘の相談をされるのか、それは謎です。そもそも高齢の患者さんは、診療科に関係なく、その時に一番困っていることを訴える傾向にあります。とはいえ「ここは脳外科です。便秘のことは消化器内科で相談してください」と言うのもあまりいい考えとは思えません。私のイメージする消化器内科医というのは消化器がんなどと戦っている人たちであり、ただの便秘でコンサルするのも気が引けるからです。結局、脳外科外来では何か有難そうな話をしておいて、後はかかりつけ医にお任せするのが一番ですね。なら、どういうアドバイスをするのがいいのか。それをいつものChatGPTに尋ねてみました。もちろん、私が何か投薬するというのは無し。便秘の患者さんには、すでに何らかの処方がされていることが多く、その上に私が薬を重ねると話が無限にややこしくなるからです。薬以外の対策、その1は食事。便通をよくするためには食物繊維の多いものを食べるべし、というのが定説です。食物繊維には不溶性と水溶性の2種類あるのだとか。お恥ずかしながら私は知りませんでした。不溶性食物繊維は便を膨らませて腸の蠕動運動を促進する作用があるそうです。が、狙いどおりにいかない時はお腹が膨らんでガスがたまり、かえって患者さんに辛い思いをさせるかもしれません。だから、こちらを勧めるのはやめておきましょう。一方、水溶性食物繊維は便を柔らかくして便通を良くすることになっています。こっちのほうは、とくに害もなさそう。リンゴ、バナナ、オートミール、大麦、海藻類(わかめ、昆布)、こんにゃくなどに多く含まれるとのこと。この中では大麦というのがよくわかりませんでした。調べてみると、大麦入りを前面に掲げているパン、パンケーキ、麺、クラッカー、スープ、サラダ、シリアルなどがあるようです。まずは自分で買って試してみるのもいいかも。患者さんにお勧めするときに無難なのは、リンゴ、バナナ、わかめ、昆布あたりでしょうか。2番目に、ツボのマッサージ。経験的には母指球やふくらはぎをマッサージすると腸が動き、便が出やすくなる気がします。あらためてツボ(経穴)を調べてみると、いろいろあることがわかりました。まずは母指球をマッサージすると腸が動くというもの。実は母指球を押すときに、その真裏にあるツボの合谷(ごうこく)も押しているのかもしれません。合谷を押すと腸が動くということになっていますから。次に、ふくらはぎをマッサージすると腸が動くというもの。ふくらはぎのある下腿には、便通に関係したツボが2ヵ所あるそうです。1つは足三里(あしさんり)で、これは膝蓋骨の外側下端から下に4横指のすこしくぼんだところ。ここを押すと消化管全般に効くのだとか。もう1つが三陰交(さんいんこう)で、内果から上に向かって4横指の部分。ここも消化管全般に効くとのこと。2ヵ所のツボとも、自分で押してみると気のせいか体調が良くなったような気が……あとは天枢(てんすう)とか太衝(たいしょう)とかいうツボも便秘に効くことになっています。こういったツボは、患者さんが自分でマッサージすることができる分、使い勝手が良さそうですね。最後に生活習慣です。まずは、よく喋るというのが良いそうです。喋ることによって、無意識のうちに消化管に空気を吸い込むのでしょうか。それとも口の動きに腸が連動しているのかもしれません。私の経験でも、喋ると便通が良くなるという現象はあるように思います。独り暮らしの患者さんなど、喋る相手がいなかったら、本の音読とか読経とかで代用できますね。般若心経なら4分くらいですむので、健康と精神修養を兼ねて自分自身でやってみようかな。次に歩くということ。ちょっと考えても、歩くのが腸運動に好影響を与えるということはありそう。また、毎日同じ時間にトイレに座る習慣をつけるのもいいそうです。ということで、これらの有難い話を毎回1つ、患者さんに伝授することにしましょう。私の場合、3ヵ月毎の通院というのが一番多いパターンなので、1つの話で3ヵ月間は持ちます。求められるたびに1つずつ順番に有難い話をしておけば、3年くらいは続くはず。3年経ったら患者さんのほうも話の中身を忘れてしまっているはずなので、また最初からスタートです。どうやら便秘対応にも自信が出てきました。もう「どこからでもかかってきなさい!」という気分です。最後に1句脳外科で 便秘に悩む 雪の日々

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 1

今回のキーワード家族システムエマニュエル・トッド地政学権威主義不平等個人主義化情報化硬直化文化進化文化結合症候群前回(その3)、逆に医療保護入院が必要とされてしまう現実的な理由は、強制入院への家族の同意が権利であり義務であると家族、社会、そして国が捉えてしまっているからであることがわかりました。そして、医療保護入院が廃止できない諸悪の根源が扶養義務であることを突き止めました。それでは、この扶養義務をはじめ、そもそもなぜ私たちはこれほどまでに家族のつながりにとらわれるのでしょうか? そして、なぜ私たちは人権意識が乏しいのでしょうか?今回(その4)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、新しい学問である地政学の視点から、これらの疑問を解き明かします。そして、日本ならではの根深い国民性を「直系家族病」と名付け、文化結合症候群として捉え直します。日本人の人権意識はどんだけ低いの?まずは、この映画で、日本人の人権意識の低さを描いたシーンをいくつか紹介します。今回、注目するのは、主人公の明日香と同棲していた放送作家の鉄雄です。彼は、明日香の「自殺未遂」騒動で、大事な企画会議をドタキャンしてしまいました。事情が事情なだけに釈明できないなか、なんとその罰ゲームとして、彼はその後の会議中に番組の企画でいきなり頭に布袋をかぶせられて目隠しのまま、拉致される形で成田空港に直行し、ミャンマーの奥地に連れて行かれます。まるで映画に出てくるテロリストによる誘拐のワンシーンのようです。そして、明日香が入院している精神科病院のホールのテレビに、「超緊急企画!会議バックレ作家、焼畑鉄雄、ミャンマー少数山岳民族R族の村にて、肩にオウムを乗せ、ファッションキャンペーン強行命令!行け!焼畑上等兵!肩にオウムを乗せて行け!」という興奮気味のアナウンスが流れ、鉄雄が映し出されるのです。そして、それを見ている患者たちみんながお腹を抱えてげらげら笑い転げるのです。これは、1990年代から2000年代前半にかけて大ヒットした某バラエティ番組を彷彿とさせます。今で言うリアリティ番組の先駆けだったわけですが、拉致や監禁が定番でした。当時、人権侵害は精神科病院の中だけではなかったのでした。そして、この状況は、げらげら笑っている患者たち自身の境遇に重なり、皮肉めいています。しかし、つい最近まで、この患者たち(医療保護入院)と同じように、日本人には見慣れた光景として、問題視されなかったのでした。明日香が医療保護入院を同意したことについて問いただした時も、鉄雄は「だっておれ基本、言われるがままじゃん」と開き直っています。彼は、明日香の人権よりも、医者などの「上(権威)に逆らわない」ことを選んでいます。これは、日本人の人権意識の低さをよく描いています。それでは、なぜ日本人の人権意識は低いのでしょうか? 実はこれは、家族のつながりにとらわれることと深く関係しています。どういうことでしょうか?次に、世界の国々の家族の形と国民性の関係から、この答えを導いてみましょう。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 2

世界の国々の家族の形と国民性の関係とは?鉄雄を代表として日本人の人権意識は低いことがわかりました。一方で、明日香は、家族と絶縁していたわけですが、父の急死をきっかけに、わざわざ仏壇を買って実家に送りつけるシーンがありました。絶縁しているからと言って単純に割り切れないのでした。それでは、他の国ではどうでしょうか?ここから、世界の国々の家族の形(家族システム)を、地政学の視点から大きく2つ、細かく4つに分けて、国民性(文化)と関係づけてみましょう。この家族システムは、著名な歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏による分類を参考にしています1)。なお、地政学とは、地理と政治の関係を考える新しい学問です。この学問によって、地理的条件による家族のあり方(家族構成や家族関係などの家族システム)と国家のあり方(制度や政治体制などの国家システム)は、実は密接に関係していることを説明することができます。ちなみに、家族システムの進化心理学的な起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。(1)核家族約700万年前に人類が誕生した当初は、まだ母親と子供たちのみが一緒に暮らす母子家庭でした。約300万年前に父親が加わって一緒に暮らすようになり、家族が誕生しました。そして、子供は、大人になったらもとの家族から離れ、自分の新しい家族をつくりました。大きく2つに分類した家族システムの1つは、核家族です。これは、父親と母親と未婚の子供たちが同居する、まさに核となる家族構成です。これが、最初の家族システムです。子供は、成人したら親と一緒にいないため、親の言うことを聞く必要はありません。もちろん、親も口出ししません。けがや病気などで働けなくなっても、そもそも一緒にいなくてわからないので、養うこと(扶養義務)はありません。つまり、このタイプの家族システムでは、家族にとらわれることはありません。もはや「縁」(つながり)が薄いので、明日香のように「絶縁する」という発想すらありません。そして、この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、自由主義(個人主義)の文化を生み出します。もともとは狩猟採集生活をしており、食料は蓄えられません。そのため、その日暮らしで、新しい食料を求めて移動生活をしていました。ところが、約1万数千年前に、「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)で農耕牧畜革命が起こり、食料が蓄えられるようになりました。そして、定住生活が広がっていきました。すると、親は自分が死んだ後に、土地や家などの財産を子供に受け継がせること(相続)ができるようになりました。ここで、この核家族を古いタイプと新しいタイプの2つに分けて、その特徴をまとめてみましょう。a.絶対核家族1つ目は古いタイプの核家族、絶対核家族です。これは、相続を親の遺言によって自由に決める家族です。なぜなら、住んでいた土地がもともと寒冷で作物が育ちにくいなどの理由で、十分な財産を蓄えられなかったり、狩猟採集をそのまま続けていたことで、そもそも子供に相続する財産があまりないからです。たとえたまたま財産ができたとしても、世代交代をするたびに継がせていたわけでないため、子供たちに平等に分け与えるものだという意識が芽生えにくく、平等主義の文化は根付きません。このタイプの国は、もともと英国です。そして、だからこそ近世(16世紀)の英国で世界最初の公的扶助(救貧法)が生まれたのでした。この制度によって、扶養においての家族システムを国家システムが代わりに担うようになったのでした。一方で、相続への執着がないため、家族の伝統やしきたりに縛られず、発想が革新的になります。だからこそ近代(18世紀)の英国で最初に産業革命が起きたのでした。彼らの文化は、逆説的にも原始的で「野蛮」(より自由)です。だからこそ、利益を最大限に追及することができたのでした。そして、大英帝国が栄え、絶対核家族は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの現在の英語圏に広がっていきました。b.平等主義核家族2つ目は新しいタイプの核家族、平等主義核家族です。これは、相続を平等に分ける家族です。なぜなら、農耕牧畜が発展していったことで、世代交代をするたびに継がせる財産があるからです。そうなると、子供たちに平等に分け与える意識が働き、平等主義の文化が根付きます。一方で、相続がもらえるために多少は親に気を遣う分、そして平等主義である分、平等主義核家族は絶対核家族ほど革新的にはなれません。このタイプの国は、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの西側の欧州です。また、かつてスペインやポルトガルから独立したラテンアメリカの国々です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 3

(2)父系家族大きく2つに分類した家族システムのもう1つは、父系家族です。これは、先ほどの平等主義核家族から変わっていったタイプです。これをさらに古いタイプと新しいタイプの2つに分けて、その特徴をまとめてみましょう。なお、母系家族については、数がきわめて少ないために、この記事の分類には入れていません。a.直系家族約5千年前に最初の文明(メソポタミア文明)が、農耕牧畜革命と同じ「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)で誕生しました。当時、人口が増えていったことで、持てる土地は限られていき、争いも増えていきました。そのため、親は、土地や家の相続先を子供1人だけに絞り、しかもその1人を一番年上の男子(長男)としました。そして、家(財産)を守るために、長男は結婚してもそのまま家にとどまるようになりました。1つ目は古いタイプの父系家族、直系家族です。これは、子供(長男)が成人して結婚してさらにその子供が生まれても、三世代で同居し続ける家族構成です。他の子供(次男以下の息子)たちは結婚して家を出て、親が持っている限られた農地を部分的に借りる形(地主小作関係)で集約的な農作業を一緒に行いました4)。一方で、娘たちは他の家族の妻(嫁)になります。つまり、子供は、成人しても、結局親(娘は義理の親)と一緒にいることが多いため、親の言うことを聞く必要があります。もちろん、親は家長であるため、子供にいろいろ口出しして、けがや病気などで働けなくなったら養う必要(扶養義務)があります。逆に、親が年老いたら子供が介護します。つまり、このタイプの家族システムでは、家族にとらわれます。そして、この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、権威主義の文化を生み出します。また、兄弟の序列が強く意識され、不平等を受け入れる文化が根付きます。相続先に娘は入っていない点で、必然的に女性差別も生まれます。こうして、貧富の差ができて、社会が階層化された封建社会が生まれました。この社会では、相続への執着が強いため、継承することに重きが置かれ、家族の伝統やしきたりに縛られ、発想が保守的になります。このタイプの国は、日本、韓国、北朝鮮などの東アジアと、ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの欧州の東側や北側の一部の国です。ちなみに、江戸時代の日本の識字率が世界で断トツのトップだったのは、資産(相続)だけでなく、読み書きなどの文化資産も継承する文化が根付いていたからであると説明することができます。b.共同体家族約4千年前から、当時の中国でも直系家族が広がっていきました。ところが、紀元前4世紀頃に、モンゴルの遊牧民がやってきたことで、中国の家族システムは再び変わっていきました。そのわけは、彼らは軍隊(騎馬隊)でもあったため、兄弟が横並びになり、一致団結していたからです2)。2つ目の新しいタイプの父系家族、共同体家族(外婚型共同体家族)です。これは、子供(息子)たちが成人して結婚してさらにその子供が生まれても、家を出ずに全員で親と同居する家族構成です。娘たちは、結婚相手の夫の家で同居します。家族全員で農作業を一緒にするのは直系家族と同じですが、さらに家族全員で一緒に暮らす点が違います。そのため、けがや病気などで働けなくなったら、目の前にいるわけですから必ず養います。これは扶養義務というよりは、当然のことになります。大家族であることから、その人数を束ねる父親の権限は強くなります。この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、強い権威主義の文化を育みます。また、一緒に暮らしているわけなので、当然相続も平等になります。これは、息子たち(男性)同士の平等主義の文化が根付きます。一方で、娘たちは、相続先に入っていないうえに、結婚相手の兄弟たちとも一緒に暮らすなかで立場的には弱く、女性差別が大きくなっていきます。このタイプの国は、中国、ロシア、ベトナム、キューバなどです。まさに、もともと共産主義圏の一党独裁(個人崇拝)の国が当てはまっています。なお、アラブ諸国などのイスラム圏も共同体家族です。ただし、いとこ婚が30~50%ときわめて多いという独特の特徴があり、内婚型共同体家族として区別されています。このわけは、やはり砂漠が多く水資源が乏しいことで、略奪などによって生死がかかっているため、なるべく信頼できる身内(部族)で固まろうとするからです3)。彼らの権威は、言うまでもなくイスラム教です。そして、娘たちはいとことして最初から許嫁になっている点でさまざまな制限をされてしまい、女性差別が最も深刻になっていることもわかります。ちなみに、英国が最も古い絶対核家族のままであるのは、島国であり、次々と新しい家族システムができていった「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)や中国などのユーラシア大陸の中心から遠く離れていて、そこで生まれた新しい文化がなかなか辿り着かなかったからであると説明できます。また、欧州の西側の国々が2番目に古い平等核家族のままであるのも、同じように説明することができます。ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの欧州の一部の国については、平等主義核家族から直系家族には変われたのですが、その遠さからその後に共同体家族までは変わり切れなかったと説明することができます。日本、韓国、北朝鮮などの東アジアも同じように説明することができます。このように、方言と同じく、中心から離れた地域(周辺地域)ほど、古い文化(保守性)が同心円状に残るという法則は、周辺地域の保守性原則と呼ばれています1)。参考までに、人類の起源地であるアフリカは、核家族、直系家族、共同体家族、さらには一夫多妻制が混在しています。また、米国は、同じく絶対核家族である英国や他の英語圏とは違い、居住できる国土が広すぎることから、公的扶養の文化が根付きにくいことが指摘されています3)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 4

結局日本人が家族のつながりにとらわれて、人権意識が低いわけは?入院中に明日香は、蕁麻疹が出ただけで看護師から「クワイエット行き」(隔離拘束)にさせられそうになりました。その時とっさに、蕁麻疹の様子をコモノ(明日香を訪ねてきた面会者)に携帯電話で撮らせます。すると、看護師から「閉鎖病棟では写真撮影は禁止ですよ」と言われ、それを取り上げられそうになります。権威主義の常とう手段、証拠隠滅です。しかし、ひるまず、「初耳ですね。ルールを提供する側なら、あらかじめルールを提示しておくのが、フェアなやり方なんじゃないでしょうか」と言い返すのです。当然の権利を主張した瞬間で、私たちもスカッとします。まさにこのフェアであることは、直系家族(権威主義)ではなく、核家族(自由主義)の価値観による人権意識です。しかし、明日香のような人は少ないようです。なぜでしょうか?この原因を、日本の歴史から解き明かしてみましょう。日本は、平安時代までは相続を分ける平等主義核家族でした。争いが増えた鎌倉時代(14世紀)以降に、一人だけ相続する直系家族が農家でも武家でも徐々に広がり、江戸時代に行き渡りました1)。そして明治になり、明治民法(1896年施行)によって家制度として初めて明文化されました。明治民法では、長男が代々家長(家督)となり、単独で相続を継ぐ権利を得ることとされ、その見返りとして家長はその家族(親族)のメンバーを扶養する義務を負うこととされました。これが、扶養義務の法的な起源です。これは、まさに直系家族という日本の家族システムをそのまま明文化したものです。当時の農村では、親族で集まった集落をつくっており、家督相続と扶養義務のセットはとても合理的でした。そもそも当時は、公的扶助(生活保護)が明確には確立していませんでした。すぐ近くに住む親族が一緒に農作業をしており、日常的にも経済的にも助け合うこと(扶養)は、ごく自然でした。そしてこれが、「子供(家長以外の家族)は成人しても親(家長)の言うことを聞くべきであり、困ったら親(家長)を頼るべきである」というその3で説明した現在の日本人の国民性の起源でもあります。以上から、鎌倉時代から現在まで約600年かけて、直系家族という日本の家族システムを確立させ、家族のつながりにとらわれるという日本独特の国民性(文化)を完成させたことになります。同時にこの600年間で、この家族システム(文化)に適応する人(遺伝子)がより生き残り、より子孫を残してきたことにもなります。それでは、そのような人(遺伝子)とはどんな特徴があるでしょうか?それは、権威にひれ伏し(受け身)、不平等でも恐縮して気を遣うこと(不安)です。まさに、先ほどの鉄雄の「だっておれ、言われるがままじゃん」というセリフです。さらに言えば、彼は番組企画で拉致された時も同じスタンスだったわけですが、そこまで彼ができるのも、その後の番組編集で「きっとおいしくしてくれる」というご褒美(権威)を薄々期待していたからです。あとで鉄雄が明かしたように、実は拉致されることはあらかじめ知らされており、パスポートも周到に用意していたのでした。たとえ人権侵害という形になっても「言うことを聞いていれば悪いようにはされない」という暗黙の了解の文化がそこにあります。実際の研究では、日本人は脳内物質の国際比較においても世界で最も受け身(ドパミン不足)で不安(セロトニン不足)になりやすいことがわかっています。この詳細については、関連記事2をご覧ください。なお、その記事では、受け身で不安になりやすい日本人の気質について、他の要因にも触れています。この受け身で不安になりやすい気質は、「自分はだめだ」という自己肯定感の低さにもつながります。その方が、直系家族の文化に適応できて都合が良いからです。むしろそうなる必要があったというわけです。実際の統計でも、日本人は世界で最も自己肯定感が低いことがわかっていますが、これにも納得がいくでしょう。このように、家族システムにおいても、文化進化と遺伝子進化は共進化していることが考えられます。共進化の詳細については、関連記事3をご覧ください。以上より、日本人が家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのは、日本の家族システムが長らく直系家族であったために、権威主義と不平等を受け入れる文化進化と遺伝子進化が共進化してきたからであると説明することができます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 5

逆になんで今は家族のつながりにとらわれ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなってきたの?明日香が運ばれた救急病院で、救急医は鉄雄に「あんた、よっぽどひどいことしたんじゃないのか!」と、まるで一昔前の父親のように怒鳴っていました。その医者は勘違いしていたわけですが、そう言うのが正しいと思っている様子でした。また、すぐに退院したいと言う明日香に対して、担当看護師は「早期退院で自殺を繰り返されたら、責任を問われるのはこちら側ですから」と釘を刺していました。彼女は、自分たちが責任を取ると言い切れるほど正しいことをしていると思っているのでした。実際は、「権威は常に正しい(正しくなければならない)」ため、横暴にもなれて、しかも間違えるわけがないので責任を取ることはありません。これらは、典型的なパターナリズム(父権主義)で、直系家族の価値観(文化)に由来します。しかし現在では、このように父親が怒鳴るのは、モラルハラスメントと呼ばれます。医者が患者に説教するだけでもドクターハラスメントと呼ばれます。何が変わったのでしょうか? 言い換えれば、なぜ今は家族のつながりにとらわれ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなってきたのでしょうか?その答えは、戦後の社会構造の変化です。この変化を大きく2つ挙げてみましょう。(1)個人主義化戦後(1945年)からまもなく、家族システムが核家族である欧米による自由主義(個人主義)と平等主義の価値観による法整備が進み、相続は遺言か法定相続(平等原則)によるものとされ、夫婦間や兄弟間で不平等な家督相続(家制度)は廃止されました。そして、工業化や都市化に伴い、成人した子供は実家近くに住むとは限らなくなりました。また、長男であっても結婚して同居し続けるとは限らなくなりました。そして、2000年代以降の情報化によって、SNSをはじめとして便利な世の中になりました。一人でいても寂しさも紛らわすものはいくらでもあり、ますます個人主義化が進みました。このようにして、現在(2023年統計)では、核家族は約60%、一人暮らしは30%台で、戦前で圧倒的な多数派だった三世代世帯家族(直系家族)はごく数%の少数派になってしまいました。明日香のように家族関係は希薄となりました。このように、個人主義化によって現在の日本の家族システムが絶対核家族に変わってしまったからこそ、家族のつながりにとらわれるのが当たり前に思えなくなったのでした。(2)情報化これまで「権威は常に正しい」としてみんな受け入れていました。なぜなら、正しいかの真実(証拠)を確かめることができなかったからです。しかし、科学が進歩し情報化した現代では、正しさを測る判断基準(科学的根拠)に個人がアクセスできます。伝統や経験論で語られる政治、経済、医療、教育などのさまざまな権威が必ずしも正しくないということがバレてしまうようになりました。さらに、だれでもSNSで発信できるため、権威による横暴が映像や音声で詳らかに晒されるようになりました。もはや立場が上の人(権威)がその権威を守るために、隠蔽することも難しくなりました。このように、情報化によって「権威は常に正しい」という前提(フィクション)が崩れてしまい、人権よりも権威を優先することは難しくなってしまったからこそ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなったのでした。ちなみに、この点で、日本よりも権威主義の強い共同体家族の中国やロシアが、情報統制に必死になっているのも、理解できるでしょう。じゃあなんで当たり前に思えなくなっているのに変えられないの?今は、家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのが当たり前に思えなくなっているのに、結局なかなか変えることができません。なぜでしょうか?その答えは、先ほど説明した日本人の受け身で不安になりやすい気質(遺伝子)はなかなか変わらないからです。この気質の人(遺伝子)が広がり多数派になるまで、鎌倉時代から少なくとも600年かかりました。一方、個人主義化(核家族化)という社会構造の変化が起きて、まだたかだか50年ちょっとです。この新しい文化が広がる、つまりこの文化に不適応な受け身で不安になりやすい気質(遺伝子)が減り(淘汰され)、適応的な積極的で不安になりにくい気質(遺伝子)が増える(選択される)には、まだ時間がかかることが推測できます。そして、この事実から、もともと直系家族の文化が、継承は得意であっても革新は不得意であり、その凝り固まった文化を引きずる状態(硬直化)を説明することができます。これを名付けるなら、「直系家族病」です。この病の症状は、医療保護入院を廃止できないだけにとどまりません。不登校、ひきこもり、新型うつ、非婚、少子化、介護、過激なバッシングなど、実は日本ならではの社会問題が挙げられます。つまり、これらの問題は、驚いたことに、この病の症状(結果)として説明できてしまい、根っこの部分ですべてつながっていたということになります。これは、もともと直系家族であった日本の文化に強く結びついた国民性であり国民病、つまり文化結合症候群と言えるでしょう。なお、文化結合症候群の詳細については、関連記事4をご覧ください。1)「我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上」p.68、pp.74-79、pp.87-88:エマニュエル・トッド、文藝春秋、20222)「家族システムの起源I ユーラシア 上」pp.208-209:エマニュエル・トッド、藤原書店、20223)「トッド人類史入門」p.123、p.143:エマニュエル・トッドほか、文藝春秋、20234)「現代家族のパラダイム革新」p.8:野々山久也、東京大学出版会、2007「直系家族病」(文化結合症候群)の関連記事不登校映画「かがみの孤城」(その1)【結局なんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 3非婚私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】過剰なバッシング(正義中毒)苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1<< 前のページへ■関連記事女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 2苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 2ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 2NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 1

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医師介入が死亡率に影響?がん患者診療のための栄養治療ガイドライン発刊

 日本人がん患者の栄養管理は、2022年より周術期栄養管理加算や外来栄養食事指導料が算定できるようになったことで、その管理体制は改善傾向にある。しかし、栄養治療が必要な患者に十分届いているとは言い難く、適切な栄養管理によってより良い予後をもたらすことが日本栄養治療学会(JSPEN)としての喫緊の課題になっている。そんな最中、2024年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版 総論編』が発刊されたため、作成ワーキンググループのガイドライン委員会前委員長である小谷 穣治氏(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 教授)にがん患者の栄養管理の実際やガイドラインで押さえておくべき内容について話を聞いた。がん患者への栄養管理の意味 がん患者の場合、がんの病状変化や治療により経口摂取に支障が生じ、体重減少を伴う低栄養に陥りやすくなるため、「食事摂取量を改善させる」「代謝障害を抑制する」「筋肉量と身体活動を増加させる」ことを目的として栄養治療が行われる。 国内におけるがん治療に対する栄養治療は、食道診療ガイドラインや膵診療ガイドラインなど臓器別のガイドラインではすでに示されているが、海外にならって臓器横断的な視点と多職種連携を重要視したガイドラインを作成するべく、今回、JSPENがその役割を担った。本書では、重要臨床課題として「周術期のがん患者には、どのような栄養治療が適切か?」「放射線療法を受けるがん患者には、どのような栄養治療が適切か?」といった事柄をピックアップし、Minds*方式で作成された4つのClinical Question(CQ)を設定している。本書の大部分を占める背景知識では現況のエビデンス解説が行われ、患者団体から集まった疑問に答えるコラムが加わったことも特徴である。*厚生労働省委託業務EBM普及推進事業、Medical Information Distribution Service なお、がん患者に対する栄養治療が「がん」を増殖させるという解釈は、臨床的に明らかな知見ではないため、“栄養治療を適切に行うべき”と本書に記されている。医師に求められる栄養治療 医師が栄養治療に介入するタイミングについて、p.39~40に記された医師の役割の項目を踏まえ、小谷氏は「(1)診断時、(2)治療開始前、(3)治療中、(4)治療終了後[入院期間中、退院後]と分けることができるが、どの段階でも介入が不足しているのではないか。とくに治療開始前の介入は、予後が改善されるエビデンスが多数あるにもかかわらず(p.34~35参照)、介入しきれていない印象を持っている。ただし、入院治療が始まる前から食欲低下による痩せが認められる場合には、微量元素やビタミン類を含めた血液検査がなされるなどの介入ができていると見受けられる」とコメントした。 介入するうえでの臨床疑問はCQで示されており、CQ1-1(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療を行うことは推奨されるか?[推奨の強さ:弱い、エビデンスの確実性:弱い])については、日本外科感染症学会が編集する『消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン』のCQ3-4(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療[経口・経腸栄養、静脈栄養]を行うことは推奨されるか?)と同様に術前介入について言及している。これに対し同氏は「両者に目を通す際、日本外科感染症学会で評価されたアウトカムはSSI※であり、本ガイドラインでの評価アウトカム(術後合併症数、術後死亡率、術後在院日数など)とは異なることに注意が必要」と述べた。※Surgical Site Infectionの略、手術部位感染 また、CQ1-2(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、周術期に免疫栄養療法を行うことは推奨されるか?[推奨の強さ:強い、エビデンスの確実性:中程度])で触れられている免疫栄養療法については、「アルギニン、n3系脂肪酸、グルタミンが用いられるが、成分ごとに比較した評価はなく、どの成分が術後合併症の発生率低下や費用対効果として推奨されるのかは不明」と説明しながら、「今回の益と害のバランス評価において、免疫栄養療法を実施することによって術後合併症が22%減少、術後在院日数が1.52日短縮することが示された。また、術後の免疫栄養療法では術後の非感染性合併症も減少する可能性が示された(p.135)」と説明した。<目次>―――――――――――――――――――第1章:本ガイドラインの基本理念・概要第2章:背景知識 1. がん資料における代謝・栄養学 2. 栄養評価と治療の実際 3. 特定の患者カテゴリーへの介入第3章:臨床疑問 CQ1-1:頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療(経口・経腸栄養、静脈栄養)を行うことは推奨されるか? CQ1-2:頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、周術期に免疫栄養療法を行うことは推奨されるか? CQ2:成人の根治目的の治療を終了したがん罹患経験者(再発を経験した者を除く)に対して、栄養治療を行うことは推奨されるか? CQ3:根治不能な進行性・再発性がんに罹患し、抗がん薬治療に不応・不耐となった成人患者に対して、管理栄養士などによる栄養カウンセリングを行うことは推奨されるか?第4章:コラム――――――――――――――――――― 最後に同氏は、「現代は2人に1人はがんになると言われているが、もともとがん患者は栄養不良のことが多い。また、その栄養不良ががんを悪化させ、栄養不良そのもので亡くなるケースもある。周術期や治療前にすでに栄養状態が悪くなっている場合もあることから、栄養管理の重要性を理解するためにも、がんに関わる医療者全員に本書を読んでいただきたい」と締めくくった。

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日本における妊娠中の抗うつ薬継続投与、約10年の変化は

 近年、複数の日本の学会より周産期の抗うつ薬治療に関する治療ガイドラインが発表されており、最新の動向や妊娠中の抗うつ薬継続投与を評価し、出産前抗うつ薬処方を最適化することが重要であると考えられる。東北大学の石川 智史氏らは、日本での2012〜23年における妊娠中の抗うつ薬処方の変化を評価した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年1月10日号の報告。 対象は、2012〜23年に日本で出産した女性。妊娠中の抗うつ薬処方率、傾向、継続性について、大規模行政レセプトデータを用いて評価した。年次変化は、出産時女性の年齢に合わせて調整された多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産時の平均年齢が32.5歳であった女性17万9,797例のうち、妊娠中に抗うつ薬を処方されていた女性は1,870例(1.04%)。・抗うつ薬処方率は、2012年の0.63%から2023年の1.67%へと増加していた(p<0.0001)。・妊娠初期に抗うつ薬が処方されていた女性1,730例(0.96%)のうち、妊娠中に抗うつ薬処方を継続していた女性は670例(38.7%)であり、抗うつ薬継続率は2012年の19.51%から2023年の50.70%へと有意な増加が認められた(p<0.0001)。・妊娠中に最も処方されていた抗うつ薬クラスは、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり(0.74%)、なかでもセルトラリン(0.33%)およびエスシタロプラム(0.23%)の有意な増加が認められた。 著者らは「今回の評価には、妊娠中絶または死産に至った女性に対する抗うつ薬処方は評価されていない」としながらも「妊娠中の抗うつ薬処方および処方継続が一般的になっていることを考慮すると、妊娠前のケアおよび共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)の促進を含め、ガイドラインの内容が専門医および出産年齢女性により広まることが求められる」と結論付けている。

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コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19はインフルエンザと比較して、男性に多く(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.23~1.74)、肥満度が高い人に多かった(平均差[MD]:1.43、95%CI:1.09~1.77)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、現在喫煙者の割合が低かった(OR:0.25、95%CI:0.18~0.33)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、入院期間(MD:3.20、95%CI:2.58~3.82)およびICU入院(MD:3.10、95%CI:1.44~4.76)が長く、人工呼吸を必要とする頻度が高く(OR:2.30、95%CI:1.77~3.00)、死亡率が高かった(OR:2.22、95%CI:1.93~2.55)。・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、上気道症状がより顕著で、併存疾患の割合が高かった。

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コロナワクチン、免疫抑制患者への接種継続は必要か?/Lancet

 英国・NHS Blood and TransplantのLisa Mumford氏らは、英国の全国疾病登録を用いた前向きコホート研究において、免疫抑制状態にあるすべての人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防戦略を継続的に受ける必要があることを示した。英国では、免疫が脆弱と考えられる人々に対し、年2回のCOVID-19ワクチンブースター接種が推奨されている。著者らは、3回以上のワクチン接種を受けた免疫抑制状態にある患者において、抗SARS-CoV-2スパイク蛋白IgG抗体(抗S抗体)と感染リスクおよび感染の重症度との関連を集団レベルで調査した。結果を踏まえて著者は、「大規模に実施可能な抗S抗体の評価は、免疫抑制状態にある人々のうち最もリスクの高い人々を特定可能で、さらなる個別化予防戦略のメカニズムを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2025年1月25日号掲載の報告。固形臓器移植、希少自己免疫性リウマチ性疾患、リンパ系悪性腫瘍患者を対象に評価 研究グループは、英国の全国疾病登録を用いて固形臓器移植(SOT)患者、希少自己免疫性リウマチ性疾患(RAIRD)患者、リンパ系悪性腫瘍患者を特定して研究への参加者を募集した。抗S抗体のラテラルフロー検査を行うとともに社会人口学的および臨床的特性に関するアンケート調査を実施した後、英国国民保健サービス(NHS)のデータを用いて6ヵ月の追跡調査を行った。 アウトカムは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院とした。SARS-CoV-2感染は主に英国健康安全保障庁(UKHSA)のデータを用いて特定し、COVID-19による入院および治療に関する記録で補完した。COVID-19関連入院は、検査陽性から14日以内の入院と定義した。抗S抗体陽性、COVID-19の感染や入院のリスク低下と関連 2021年12月7日~2022年6月26日に登録された適格患者2万1,575例を解析対象とした(SOT患者8,466例、RAIRD患者6,516例、リンパ系悪性腫瘍患者6,593例)。 抗S抗体陽性率は、SOT患者77.0%(6,519/8,466例)、RAIRD患者85.9%(5,594/6,516例)、リンパ系悪性腫瘍患者79.3%(5,227/6,593例)であった。 抗S抗体検査後6ヵ月間のSARS-CoV-2感染は、全体で3,907例(18.1%)に認められ、COVID-19関連入院は556例(2.6%)に発生した。そのうち17例(<0.1%)が感染後28日以内に死亡した。 感染率は社会人口学的および臨床的特性によって異なるが、多変量補正解析の結果、抗S抗体の検出は感染発生率の低下と独立して関連しており、発生率比(IRR)はSOT患者集団で0.69(95%信頼区間[CI]:0.65~0.73)、RAIRD患者集団で0.57(0.49~0.67)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.62(0.54~0.71)であった。 また、抗S抗体陽性はCOVID-19関連入院のリスク低下とも関連しており、IRRはSOT患者集団で0.40(95%CI:0.35~0.46)、RAIRD患者集団で0.32(0.22~0.46)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.41(0.29~0.58)であった。

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認知症ケア、積極的介入でアウトカムに差はなし/JAMA

 認知症ケア専門家による医療システムを基盤とするケアとソーシャルワーカーや看護師による地域ケアのいずれにおいても、認知症患者の行動症状および介護者の負担に関して、積極的介入と通常ケア(介入なし)による有意な違いは認められなかった。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDavid B. Reuben氏らが、米国の4施設で実施した無作為化試験の結果を報告した。認知症に対するさまざまなケアの有効性は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月29日号掲載の報告。医療システム型ケア、地域密着型ケア、積極的介入なしの3群に無作為化 研究グループは、地域居住の認知症患者とその介護者を、医療システムを基盤とするケア(医療システム型ケア)群、地域密着型ケア群、および積極的介入なし(通常ケア)群のいずれかに、7対7対1の割合で無作為に割り付けた。 医療システム型ケア群では、医療システム内の認知症ケア専門家がUCLAアルツハイマー病・認知症ケアプログラムに基づく包括的な認知症ケアを行った。地域密着型ケア群では、Benjamin Rose Institute on Aging(BRI)のケア相談モデルを用いてBRIケアコンサルタントとして認定されたソーシャルワーカー、看護師または認可セラピストが電話で包括的な認知症ケアを行った。通常ケア群では、追加の介入は行わなかった。 主要アウトカムは、介護者による認知症患者の神経精神目録-質問票(Neuropsychiatric Inventory Questionnaire:NPI-Q)の重症度スコア(範囲:0~36、高スコアほど行動症状の重症度が高い、臨床的に意義のある最小差[MCID]:2.8~3.2)、ならびに修正介護者負担指標(Caregiver Strain Index:CSI、範囲:0~26、高スコアほど負担が大きい、MCID:1.5~2.3)であった。また、副次アウトカムとして、介護者の自己効力感(範囲:4~20、高スコアほど自己効力感が高い)など3項目を評価した。 2019年6月28日~2022年1月31日に計2,176組(認知症患者とその介護者)が登録され、医療システム型ケア群1,016組、地域密着型ケア群1,016組、通常ケア群144組に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年8月21日であった。積極的介入と介入なしでアウトカムに差はなし 認知症患者2,176例は平均年齢80.6歳、女性58.4%、黒人またはヒスパニック系20.6%、介護者2,176例は平均年齢65.2歳、女性75.8%、黒人またはヒスパニック系20.8%であった。主要アウトカムは参加者の99%以上で評価され、1,343例(登録者の62%、91%が生存しており、かつ試験を中止していなかった)が18ヵ月間の試験を完了した。 主要アウトカムに関して、医療システム型ケア群、地域密着型ケア群と通常ケア群との間に有意差は認められなかった。 NPI-Qスコアの最小二乗平均値(LSM)は、医療システム型ケア群9.8、地域密着型ケア群9.5、通常ケア群10.1であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は0.30(97.5%信頼区間[CI]:-0.18~0.78)、同通常ケア群との差は-0.33(-1.32~0.67)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は-0.62(-1.61~0.37)であった。 修正CSIのLSMは、医療システム型ケア群10.7、地域密着型ケア群10.5、通常ケア群10.6であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は0.25(97.5%CI:-0.16~0.66)、同通常ケア群との差は0.14(-0.70~0.99)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は-0.10(-0.94~0.74)であった。 副次アウトカムでは介護者の自己効力感のみが、両ケア群と通常ケア群を比較した場合に有意な改善が認められたが、ケア群間では有意差は認められなかった。介護者の自己効力感のLSMは、医療システム型ケア群15.1、地域密着型ケア群15.2、通常ケア群14.4であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は-0.16(95%CI:-0.37~0.06)、同通常ケア群との差は0.70(0.26~1.14)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は0.85(0.42~1.29)であった。

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プレシジョン・オンコロジーの恩恵は平等か

 1998年以来、米食品医薬品局(FDA)により承認されたがん治療薬の43%は、がん細胞のゲノムバイオマーカーのプロファイリングを用いて患者を選択する、精密医療(プレシジョン・メディシン)に基づく治療法である。しかし、米国の民族的および人種的マイノリティーに属する人は、このようながん領域の精密医療(プレシジョン・オンコロジー)の恩恵を十分に受けておらず、がん治療へのアクセスにおける格差が依然として存在していることが、新たな研究により明らかになった。米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSK)のKanika Arora氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に1月9日掲載された。 これまでの研究で、がん患者では、DNAに基づく祖先の系統(以下、遺伝的系統)の違いによりがんに関連する遺伝子変異の発生率に違いがあることが明らかにされている。しかし、遺伝的系統が異なる患者が、経時的に見て、標準的なプレシジョン・オンコロジーに基づく治療法の恩恵を同等に受けているかどうかはいまだ明確になっていない。 この点を明らかにするために、Arora氏らは、2014年1月から2022年12月までの間に、プレシジョン・オンコロジーのためにがんゲノムプロファイリング検査(MSK-IMPACT)を受けた固形がん患者5万9,433人のデータを後ろ向きに解析した。データには、66種類の固形がんに関する最大505種類のがん関連遺伝子の配列情報が含まれていた。また、1998年1月から2023年12月までにFDAが承認したがん治療薬のラベルに記載されている、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)などの分子バイオマーカーを有する患者の割合を遺伝的系統グループごとに算出した。その上で、それらのバイオマーカーに基づく治療薬への適合率が、異なる遺伝的系統グループ間で均等であるかどうかを評価した。 対象者の遺伝的系統は、ヨーロッパ系(非アシュケナージ系ユダヤ人60.1%、アシュケナージ系ユダヤ人15.6%)、アフリカ系5%、東アジア系5.7%、南アジア系1.9%、ネイティブアメリカン0.4%、複数の遺伝的系統を持つ人11.3%で構成されていた。論文の上席著者であるMSKのDebyani Chakravarty氏は、「これらのデータセットに含まれるサンプルの80%以上は、主に、自身をヨーロッパ系の白人と称する患者に由来する。これは、歴史的に臨床試験に参加する可能性が最も高く、また参加することができたのが、これらの患者だったからだ。このことは、バイオマーカーの発見とそれに基づく薬の開発が、圧倒的にヨーロッパ系の患者のデータをベースに進められてきたことを意味する」と述べている。 2012年から2023年にかけて、FDAが承認したプレシジョン・オンコロジーに基づく治療法への患者の適合率は経時的に上昇していたものの、その増加傾向は遺伝的系統によって異なり、ヨーロッパ系で9.1倍、東アジア系で8.5倍、南アジア系で6.8倍、アフリカ系で6倍と推定された。Arora氏は、「プレシジョン・オンコロジーに基づく治療法が実施されるようになった当初は、遺伝的系統グループによる大きな差は見られなかったが、承認される薬剤が増えるにつれて差が広がっていった」と話す。同氏はさらに、「2019年以降、アフリカ系と見られる患者は、他の遺伝的系統を持つ人と比較して、FDA承認のプレシジョン・オンコロジーに基づく治療法の対象となることが著しく少ないことが判明した」と付言している。 研究グループは、「プレシジョン・オンコロジーに基づく治療法の進歩が全ての人に恩恵をもたらすよう、今後の臨床試験では、より多様な患者集団を登録すべきだ」と提言している。

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ニンジンが糖尿病治療の助けになる?

 2型糖尿病の患者がニンジンを食べると、健康に良い効果を期待できるかもしれない。その可能性を示唆する、南デンマーク大学のLars Porskjaer Christensen氏らの研究結果が、「Clinical and Translational Science」に12月3日掲載された。同氏は大学発のリリースの中で、「われわれは、ニンジンが将来的には2型糖尿病の食事療法の一部として利用されるという、潜在的な可能性を秘めていると考えている」と記している。 この研究でChristensen氏らは、デンプン質の野菜に含まれる栄養素が生体に引き起こす代謝効果に着目し、マウスモデルを用いた実験を行った。特に、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)に対する作用を持つことが報告されている、ニンジンの可能性に焦点を当てた。なお、PPARγは、チアゾリジン薬という経口血糖降下薬の主要な作用標的でもある。 2型糖尿病を誘発させたマウスを3群に分けて、1群は低脂肪の餌を与えて飼育。他の2群は、非健康的な人の食習慣を模して、高脂肪の餌を与えた。さらに、高脂肪食群の一方の餌には、フリーズドライのニンジン粉末を10%の割合で混ぜて与えた。このような条件で16週間飼育して、その前後で糖負荷試験を行ったほか、腸内細菌叢の組成を比較検討した。 ベースラインの糖負荷後の血糖値の推移には有意な群間差はなかったが、16週後には、低脂肪食群の血糖変動が最も少なく、高脂肪食の2群では負荷後の血糖上昇が大きいという差が生じていた。しかし、高脂肪食の2群で比較した場合、ニンジン粉末を混ぜて飼育した群のほうが、糖負荷直後の血糖上昇幅が少なかった。腸内細菌叢の分析からは、ニンジン粉末を混ぜて飼育したマウスは細菌叢の多様性が高いことが明らかになった。 では、ニンジンはヒトの健康維持にも役立つのだろうか? 著者らは、本研究の結果を直ちにヒトに適用することには慎重な姿勢を示しながらも、ニンジンがヒトの健康にも影響を及ぼし得るかを検証するため、新たな研究資金の確保を目指しているとのことだ。もし、ニンジンに含まれている化合物が、ヒトに対してもマウスと同様の作用を発揮するとしたら、米国に住む膨大な数の2型糖尿病患者に恩恵をもたらす可能性がある。また、本研究で得られた知見から、糖尿病治療薬の効果をより高める手段が見つかるかもしれない。 なお、著者らは、ニンジンの健康効果を期待して摂取する場合には、調理の手をあまり加えずに食べることを勧めている。調理の工程で、健康へのプラス作用が期待される化合物が全く失われることはないものの、量が減ってしまう可能性があるとのことだ。

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医師のスキルはお見合いでも生かせる!【アラサー女医の婚活カルテ】第7回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前回は、結婚相談所での活動期間を通じた筆者のお見合い回数や、オンラインお見合いと対面お見合いの比較について書きました。今回も引き続き、お見合いでの経験を皆さんにシェアしたいと思います。お見合いにも生かせる!「傾聴と共感」のスキル前回触れたように、私は活動期間を通じて「31回」のお見合いを経験しました。自慢ではありませんが(笑)、これは同年代の婚活女性に比べてかなり多い回数です。その中で、お見合い後にはほとんどのお相手から「交際希望」のお返事をいただき、「お断り」だったお相手はわずか2、3人だったと記憶しています。女性医師は、婚活市場で意外と(?)人気のようですよ!今回は、そんな私なりの、お見合いに臨むうえでの心掛けについて、少し触れておきたいと思います。お見合いをするうえで役立ったのが、意外にも医師としての仕事のスキルでした。われわれ医師は、学生時代に「傾聴と共感」の心構えを叩き込まれます。言わずもがな「患者さんの話をよく聴いて、その気持ちに寄り添う態度を見せることが、医師-患者間の円滑なコミュニケーションを実現するためには大切だ」ということですが…、お見合いも、突き詰めれば「人と人とのコミュニケーション」ですから、この「傾聴と共感」の姿勢が大いに役に立ちました。たとえば、お相手の職業がシステムエンジニア(SE)なら、こんな具合です。こん野「SEさんって、どんなお仕事ですか?」お相手「クライアントから依頼を受けてシステムをつくっています」こん野「システム……、、、畑違いなのでよくわからないのですが、システムって、具体的にはどんなものですか?」お相手「たとえば、工場にある材料の在庫を社内で共有できるようなソフトウエアを開発したり、メンテナンスしたりします」こん野「なるほど! それは重要なお仕事ですね。じゃあ、今まで一番つくるのが大変だったシステムって、何でしたか?」お相手「銀行のATMのシステムを担当していたときは、送金トラブルなどで夜中の呼び出しも多くて、激務でしたよ」こん野「わぁ、それは大変そう(共感)。医師にとっての、当直みたいなものですかね」こんなふうに、患者さんから症状や病歴を一つひとつ聞き出すような調子で会話をすれば、お相手はノリノリで話をしてくれます。仮に交際に至らないお相手でも、お見合いの1時間はお互いに気分良く過ごしたいものですし、畑違いの職業のことを知れば、良い社会勉強にもなります(後々、ほかのお見合い相手との雑談に生かせるかも!?)。お見合い相手の「カルテ」を作成お見合いが好感触で、私から「交際希望」を出す場合には、その人と話した内容を忘れないように、スマホのメモ帳アプリにお相手一人ひとりの「カルテ」をつくって、いつでも見返せるようにしました。外来での診察中、年配の患者さんに「そういえば、前にお話しされていた東京のお孫さん、お元気ですか?」などと雑談をすると、患者さんにとても喜んでもらえるものです。それと同じような感覚で、交際中のデート前には「カルテ」を確認し、「前にお好きだと仰っていた○○、私も食べてみましたよ!」などと、さりげなく話題を出すようにしました。また、何人もの方とお見合いや仮交際をする中で、話した内容がごちゃ混ぜになってしまっては相手に失礼です。実際、私も婚活中にお相手から、明らかに別の交際女性と混同しているであろう話題を振られたことがあって、表情にこそ出さなかったものの、スーッと気持ちが冷めてしまったことがありました。この時、私のほうからはこのような失礼なことをしないように気を付けよう、と心に決めました。このような事態を避けるためにも「カルテ」づくりは重要だと思います。「おごり・おごられ」問題、婚活中はどう対処?よく、男女の「おごり・おごられ論争」がSNS上で白熱しているのを見かけます。この連載では「男が○○、女が○○」というような“主語の大きな”一般論を持ち出すつもりはありませんが、私自身は、あくまで“個人の好み”として、男性からご飯をごちそうになればうれしいですし、大切に扱ってもらっているなぁと感じます。ただ、婚活中はお互いの条件を擦り合わせる期間でもありますから、おごってもらってばかりでは、お相手が将来の結婚生活のことを考えて、不安になってしまうかもしれません。そこで、ご飯をごちそうになった際には、次のカフェでは私がごちそうしたり、お礼にデパ地下の小さな菓子折を渡したり…、といった心遣いを、形にして表すように心掛けていました。いかがでしたか?今回は、私が婚活中に心掛けていたことをシェアさせていただきました。ご参考になれば幸いです。次回は、私がお見合いで遭遇した、(良くも悪くも)印象に残ったお相手を何人かご紹介したいと思います。お楽しみに。

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第249回 フジテレビの第三者委員会設置で改めて考える、医療界の第三者機関、医療事故調査・支援センターが抱える”アキレス腱”(前編)

東京女子医大への私学助成金、全額不交付が決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先月の本連載、「第247回 どこか似ているフジテレビと女子医大、大学に約1億1,700万円の損害を与えた背任の疑いで女子医大元理事長逮捕、特定機能病院の再承認も遠のいた病床利用50%の医科大学に未来はあるか?」で書いた、フジテレビと東京女子医大、ともに大きな動きがありました。まず、東京女子医大ですが、1月30日、日本私立学校振興・共済事業団は2024年度分の同大学への私学助成金を全額不交付にすると決めました。2023年度は約20億円が支給されていましたので、大学運営に及ぼす影響は甚大と考えられます。また、元理事長が所得税法違反罪で有罪判決を受けた事件やアメリカンフットボール部での違反薬物問題などで不交付が続いていた日本大学も2024年度の全額不交付が決定しています(同大への直近の交付額は2020年度で約90億円)。そして、2月3日には、東京女子医大の元理事長、岩本 絹子容疑者が再逮捕されました。理由は、別の新病棟建築工事でも報酬など約1億7,000万円を不当に支払わせたという背任容疑です。フジテレビも「日弁連ガイドラインに沿った第三者委員会」に調査を委ねる一方、フジテレビは中居 正広氏の女性とのトラブルに編成局の幹部社員が関与していたとされる報道や、ガバナンスが問題となっています。社会からのさまざまな批判などを背景に企業のCM見合わせが起こる中、1月23日、同社は日本弁護士連合会(日弁連)のガイドラインに沿った第三者委員会を設置し、調査を全面的に委ねることを決めました。さらに1月27日には出席メディアの制限をしない2回目の記者会見を開きました。10時間を超える2回目の記者会見のグダグダ振りは、改めてフジテレビにおけるガバナンス不在を世間に知らしめることとなりました。とは言え、当初フジテレビ側が言っていた「第三者の弁護士を中心とする調査委員会」という曖昧かつ会社寄りの組織から、完全に独立した「日弁連ガイドラインに沿った第三者委員会」に調査が委ねられた点は評価できるでしょう。もっともなぜ最初からそうしなかったか、とも思いますが。これによって、中居氏の女性とのトラブル(人権侵害があったと報道されています)の概要や、誰が誘ったのか、フジテレビ社員の関与の度合い、事件後も中居氏の番組を続けたフジテレビにおいてどんな経営判断がなされていたか、経営陣の責任なども明らかにされると思われます。ちなみに、この第三者委員会の委員長を務めるのは、東京女子医大の第三者委員会の副委員長を務めた竹内 朗弁護士です。第三者委員会による調査・報告のプロ中のプロがこの問題に対処することになったわけで、その報告が待たれるところです。内部関係者も入れた“なんちゃって第三者委員会”は企業・組織寄りの報告になりがちさて、日弁連のガイドラインにおいて第三者委員会は当該企業・組織などと利害関係がなく完全に独立した委員のみで構成し、調査で判明した事実やその評価については経営陣に不利となる場合でも報告書に記載すると定めています。また、報告書の内容を提出前に当該企業・組織に開示しないともされています1)。つまり、問題を起こした企業・組織にまったく忖度することなく、調査を進め、報告・提言ができるわけで、極めて独立性が高い調査組織です。記憶に新しいところでは、旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による性加害問題を調査した外部専門家による再発防止特別チームがあります。同チームは日弁連のガイドラインに沿って組織されていました。この問題については、2023年、同チームが多数の被害者へのヒアリングを実施し、同氏が「性加害を長期にわたり繰り返していたことが認められる」と認定しました。この調査結果をきっかけにジャニーズ事務所は、社名変更、補償問題の検討に入ることになりました。一方で、内部関係者も入れた中途半端な“なんちゃって第三者委員会”は、企業・組織寄りの報告になりがちでトラブルをさらに混乱させてしまうケースが少なくありません。その典型例は2023年に発覚した宝塚歌劇団におけるパワハラ問題でしょう。劇団員の自殺は上級生からのパワハラが原因ではなかったか等について調査した弁護士チームは、同劇団主導で組織されたものでした。当初、弁護士チームがまとめた報告書ではパワハラの認定をしていませんでした。その後、さまざまな批判が巻き起こり、再調査が行われ、最終的に劇団側がパワハラを認め謝罪するという展開になりました。元理事長のさまざまな所業を暴き、退任、逮捕へとつながった東京女子医大第三者委員会では、医療の世界における第三者委員会はどうでしょう。記憶に新しいのは、東京女子医大の元理事長を追い詰めた東京女子医大第三者委員会です。その報告書の内容については、本連載の「第226回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)『金銭に対する強い執着心』のワンマン理事長、『いずれ辞任するが、今ではない』と最後に抗うも解任」、「第227回 同(後編)『“マイクロマネジメント”』と評された岩本氏が招いた『どん底のどん底』より深い“底”」で詳しく書きました。この報告書は、元理事長の医科大学トップとしてあるまじき、さまざまな所業を暴き、結果として退任、逮捕へとつながりました。しかし一方で、「大甘」な第三者委員会もあります。その一例が、私も取材した滋賀県の地方独立行政法人・市立大津市民病院の医師大量退職に関連して組織された調査委員会です。(この項続く)参考1)企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン/日本弁護士連合会

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