進行がんに対する治療薬選択目的で実施されるがんゲノムプロファイリング検査やマイクロサテライト不安定性検査の結果から、2次的所見として消化器領域を含む遺伝性腫瘍の可能性が疑われる症例が増加している。しかし、実臨床でそれらの患者が遺伝コンサルティングを受けることは多くない。これには医療者の理解が不十分であることも要因として考えられる。遺伝性消化器がん(HGC)における多施設多職種ネットワークの取り組みについて、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で富山大学の安藤 孝将氏が発表した。
安藤氏らは、HGC患者・家族に最適な医療を提供することを目的に多施設多職種のネットワークHGiT-N(Hereditary Gastrointestinal Tumor Network)を設立した。HGiT-Nは6つの主要機関(京都大学、三重大学、滋賀医科大学、富山大学、関西医科大学、愛媛大学)とその関連施設を合わせ30施設で運営されている。
HGC患者・家族に適切な医療を提供するため、HGiT-Nは16施設で調査を実施し、多施設へのネットワークを作りオンライン会議を設定した。
調査では半数以上の施設で、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー、遺伝性腫瘍専門医の所属が0人または1人で、HGC診療の経験も半数以上で5例未満であることが明らかになった。2023年10月以来定期的に行われているオンライン会議では、リンチ症候群(LS)、LS疑い、腹膜中皮腫、リ・フラウメニ症候群、家族性膵がん、先天性ミスマッチ修復欠損、遺伝性疑い消化管間質腫瘍(GIST)などの臨床症例が議論されている。
このネットワークは、患者および家族の診療のみならず、臨床医の教育ツールとして機能すると、安藤氏は述べる。また、将来の展望として、遺伝カウンセリングとサーベイランスの協力システムの設立も目的として掲げる。
(ケアネット 細田 雅之)