FIT大腸がんスクリーニング、返送期限の設定で受検率向上/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/07

 

 免疫学的便潜血検査(faecal immunochemical test:FIT)による大腸がんスクリーニングでは、案内状に返送期限を一文追加することでFIT返送が改善し、返送期限が2週間の場合に返送率が最も高く、リマインダーレター送付の必要性が減少したことが明らかになった。英国・グラスゴー大学のKathryn A. Robb氏らが、FITへの返送期限の設定と問題解決計画ツールによる介入効果を検討した、スコットランド大腸がん検診プログラムに組み込まれた2×4要因8群無作為化比較試験「TEMPO試験」の結果として報告した。FIT検体の自己採取による大腸がん検診は、大腸がんによる死亡率を低下させることが示されているが、受検率は十分ではない。著者は、「計画ツールはFIT返送にプラスの影響を与えなかったが、返送期限の設定は日常診療で簡単に実施できる費用対効果の高い介入である」とまとめている。Lancet誌2025年3月29日号掲載の報告。

4万例を8群に無作為化し行動介入の有効性を比較

 研究グループは2022年6月19日~7月3日に、大腸がん検診プログラムの対象者(年齢50~74歳)連続4万例を、ブロック無作為化法を用いて次の8群に無作為に割り付けた。(1)介入なし(標準的な案内)(対照群)、(2)FIT返送期限1週間を推奨、(3)返送期限2週間、(4)返送期限4週間、(5)計画ツール(期限なし)、(6)計画ツール+返送期限1週間、(7)計画ツール+返送期限2週間、(8)計画ツール+返送期限4週間(各群5,000例)。

 計画ツールによる介入群では、検査キットを使用するに当たり起こりうる問題について解決策を提示したA4用紙1枚が同封され、また返送期限付きの介入群では、スクリーニングの標準的な案内状の中央に、期限を太字で強調した文章を記載した。

 主要アウトカムは、FITが個人に郵送されてから3ヵ月以内に、大腸がんスクリーニング検査機関で陽性/陰性の結果が得られるよう正しく記入されて返送された割合とした。

 4万例のうち、郵便番号をデータゾーンにひも付け、社会経済的指数(Scottish Index of Multiple Deprivation)の5分位および都市・地方区分を明らかにすることができなかった266例を除外し、解析対象は3万9,734例(女性1万9,909例[50.1%]、男性1万9,825例[49.9%]、平均年齢61.2[SD 7.3]歳)であった。追跡不能者はいなかった。

返送期限の設定で早期返送率が上昇、計画ツールの有効性は確認できず

 (1)対照群(期限なし、計画ツールなし)の3ヵ月FIT返送率は66.0%(3,275/4,965例)であった。

 返送率が最も高かったのは、(3)返送期限2週間群の68.0%(3,376/4,964例)で、対照群との群間差は2.0%(95%信頼区間[CI]:0.2~3.9)であった。一方、返送率が最も低かったのは(5)計画ツールのみ群(期限なし)で63.2%(3,134/4,958例)、対照群との群間差は-2.8%(95%CI:-4.7~-0.8)であった。

 2つの介入の効果が独立していると仮定した主要解析では、「期限設定」には明らかなプラス効果があることが示唆されたが(補正後オッズ比[aOR]:1.13、95%CI:1.08~1.19、p<0.0001)、「計画ツール」には効果が認められなかった(aOR:0.98、95%CI:0.94~1.02、p=0.34)。

 ただし、これら2つの介入による相互作用があることが示唆された(相互作用のp=0.0041)。期限が設定された群では、計画ツールの提供による返送率への影響は認められなかった(aOR:1.02、95%CI:0.97~1.07、p=0.53)が、期限が設定されていない場合に、計画ツールの提供は返送率への悪影響がみられた(aOR:0.88、0.81~0.96、p=0.0030)。一方で計画ツールなしの場合、期限設定が返送率に何らかの影響を与えたというエビデンスはほとんど確認されなかった。

 副次解析では、期限設定は早期返送率(1週間、2週間、4週間以内、とくに締め切り前後)を高め、6週間後のリマインダーレターの送付を減少させたが、計画ツールがプラスの影響を与えたエビデンスはなく、介入間の相互作用も認められなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)