TIA/軽症脳卒中後の脳卒中リスク、10年後でも顕著に増大/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/07

 

 一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳卒中を発症した患者は、その後10年間で脳卒中リスクが徐々に高くなり、欧州に比べ北米やアジアでリスクが高く、非選択的患者集団と比較してTIA患者で低いことが、カナダ・カルガリー大学のFaizan Khan氏らWriting Committee for the PERSIST Collaboratorsが実施した「PERSIST共同研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月26日号で報告された。

コホート研究のメタ解析

 研究グループは、TIAまたは軽症脳卒中発症後10年の脳卒中発生率の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。

 医学関連データベースを用いて、2024年6月26日の時点で公表されている文献を検索した。TIAまたは軽症脳卒中を発症した患者を1年以上追跡し、この間の脳卒中リスクを報告した前向きまたは後ろ向きコホート研究を対象とした。

 主要アウトカムは脳卒中の発症とした。

累積発生率:1年5.9%、5年12.5%、10年19.8%

 38件(欧州22件、日本を含むアジア7件、北米5件、オーストラリア1件、複数国3件)の研究に参加した17万1,068例(年齢中央値69歳[四分位範囲:65~71]、男性患者の割合中央値57%[52~60]、退院時に抗血栓薬を処方された患者の割合中央値95%[89~98])を解析の対象に含めた。38件のうち、17件がTIAまたは軽症脳卒中、20件がTIAのみ、1件が軽症脳卒中のみを対象とした研究であった。

 TIAまたは軽症脳卒中後の100人年当たりの脳卒中発生率は、1年目の5.94件(95%信頼区間[CI]:5.18~6.76、38研究、I2=97%)から、2~5年目は年平均1.80件(1.58~2.04、25研究、90%)、6~10年目は年平均1.72件(1.31~2.18、12研究、84%)に減少した。

 脳卒中のリスクは経時的に上昇し続け、累積発生率は1年以内が5.9%、5年以内が12.5%、10年以内は19.8%であった。

長期的な脳卒中予防対策の改善が求められる

 脳卒中発生率は、欧州と比較して北米(率比[RR]:1.43[95%CI:1.36~1.50])およびアジア(1.62[1.52~1.73])の研究で高く、2007年より前に参加者を募集した研究に比べ2007年以降に募集した研究で高かった(1.42[1.23~1.64])。

 一方、非選択的患者集団と比較して、TIA患者(RR:0.68[95%CI:0.65~0.71])および初発のインデックスイベント(0.45[0.42~0.49])に焦点を当てた研究で、脳卒中発生率が低かった。

 著者は、「多くの2次予防クリニックでは、最初の90日しか患者のモニタリングを行っておらず、長期的な予防ケアはプライマリケア医や内科医に移行していることが多いことを考慮すると、今回の結果は、最初の高リスク期以降における継続的な注意深いモニタリングとリスク低減戦略が重要であることを示している」「これらの知見は、この患者集団における長期的な脳卒中予防対策の改善の必要性を強調するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

赤坂山王メディカルセンター脳神経内科部長

J-CLEAR評議員