血圧高値または高血圧症を有する成人コホートにおいて、起立性高血圧は一般的にみられ、厳格降圧治療が起立性高血圧の発生をわずかだが低減することが示された。米国・ハーバード大学医学大学院のStephen P. Juraschek氏らが、個別患者データを用いたメタ解析の結果で報告した。著者は、「今回示された所見は、座位で認められる高血圧症に一般的に用いられるアプローチが、立位で認められる高血圧症も予防可能であることを示すものである」とまとめている。BMJ誌2025年3月25日号掲載の報告。
個別患者データのメタ解析で評価
研究グループは、起立性高血圧への厳格降圧治療の有効性を、システマティックレビューと個別患者データのメタ解析で評価した。2023年11月13日時点でMEDLINE、Embase、Cochrane CENTRALのデータベースを検索した。
包含試験基準は、対象集団が18歳以上の高血圧症または血圧高値を有する成人500例以上であり、介入期間が6ヵ月以上の厳格な降圧薬治療(降圧目標がより低値または強化治療)の無作為化試験で、対照群は非厳格降圧治療(降圧目標がより高値またはプラセボ)、アウトカムが起立時の血圧測定値であったものとした。
主要アウトカムの起立性高血圧は、座位から起立時の測定値の変化が収縮期血圧≧20mmHg上昇、拡張期血圧≧10mmHg上昇の場合と定義した。2人の試験担当者が個別に論文を要約し、システマティックレビューによって特定された9試験からの個別患者データを1つのデータセットとして集約して評価した。
起立性高血圧のリスクは厳格降圧治療でわずかに低下
3万1,124例の31万5,497件の起立時血圧値の評価において、8.7%が起立性低血圧(起立後の血圧が収縮期血圧≧20mmHg低下、拡張期血圧≧10mmHg低下)、16.7%が起立性高血圧であり、3.2%に起立後の収縮期血圧≧20mmHg上昇かつ起立時血圧≧140mmHgがベースラインで認められた。
厳格降圧治療の効果は、試験間で同等であり、起立性高血圧に関するオッズ比(OR)は0.85~1.08の範囲にわたっていた(I
2=38.0%)。追跡期間中に起立性高血圧を呈したのは、厳格降圧治療群17%に対して、非厳格降圧治療群は19%であった。非厳格降圧治療と比較して、起立性高血圧のリスクは厳格降圧治療で低下した(OR:0.93、95%信頼区間:0.90~0.96)。
効果は、非黒人成人群が黒人成人群と比較してより大きく(OR:0.86 vs.0.97、相互作用のp=0.003)、非糖尿病群が糖尿病群と比較してより大きかったが(0.88 vs.0.96、相互作用のp=0.05)、75歳以上群や性別、ベースラインの座位血圧値≧130/≧80mmHg、肥満、慢性腎臓病ステージ3、脳卒中、心血管疾患、起立時血圧≧140mmHg、無作為化前の起立性高血圧による差は認められなかった(相互作用のp≧0.05)。
(ケアネット)