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患者中心の協同介入がうつ病と慢性疾患のコントロールをともに改善

うつ病は、糖尿病や冠動脈心疾患患者で多くみられ、セルフケア力を弱めるため、合併症や死亡のリスク因子になっているという。また、これら複数の慢性疾患を有する患者は多くの医療コストも必要とする。そこで米国ワシントン大学精神・行動学部門のWayne J. Katon氏らは、プライマリ・ケアベースで複数疾患の疾病管理を、患者中心で協同介入することが、これら患者の疾病管理を改善するかどうかを検討する単盲検無作為化対照試験を行った。結果、内科的疾患、うつ病ともにコントロールの改善が認められたという。NEJM誌2010年12月30日号掲載より。ともに働く看護師とガイドラインに即し、リスク因子のコントロール達成を目指す試験は、ワシントン州の統合医療システムに参画する14の診療所で行われた。被験者は2007年5月~2009年10月の間に募集された214例で、糖尿病のコントロール不良、冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方を有し、かつうつ病を有しており、通常ケアを受ける群か介入群かに無作為に割り付けられ、追跡された。介入群には、各患者のかかりつけ医とともに働き医学的指導を受けた看護師が、疾病ガイドラインに即して、複数疾患のリスク因子のコントロールを目標に協同的なケアマネジメントを提供した。主要転帰は、12ヵ月時点での患者のリスク因子の目標達成の割合で、糖化ヘモグロビン、LDL-C、収縮期血圧、SCL-20尺度によるうつ病転帰を同時モデル化し、単一全般的な治療効果の評価が行われた。介入群の方が改善度は大きく、患者QOL・満足度も高い結果、通常ケア群との比較で介入群は、12ヵ月時点の全般的改善度が大きかった。糖化ヘモグロビン値の通常ケア群とのコントロールの差は0.58%、LDL-Cは同6.9mg/dL、収縮期血圧は5.1mmHg、SCL-20スコア差は0.40ポイントであった(いずれもP<0.001)。また、介入群の患者は、インスリン(P=0.006)、降圧薬(P<0.001)、抗うつ薬(P<0.001)の調整を1回以上行われることが多く、良好なQOL(P<0.001)、糖尿病と冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方のケアに対する満足度が高く(P<0.001)、うつ病のケアに対する満足度も高かった(P<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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軽症慢性収縮性心不全へのエプレレノン追加投与、死亡・入院リスクを約4割低減

軽症の慢性収縮性心不全患者に対し、エプレレノン(本邦では「セララ錠」として高血圧症のみ適応)を従来の治療に加え投与すると、心血管系疾患死または心不全による入院リスクが4割近く低減することが、無作為化プラセボ対照二重盲検試験「EMPHASIS-HF」試験グループにより示された。これまで、重症の慢性収縮性心不全や心筋梗塞後の心不全患者への追加投与については、同リスクが低減することは明らかになっていた。NEJM誌2011年1月6日号(オンライン版2010年11月14日号)掲載より。NYHA心機能分類II、駆出率35%以下の2,737例を無作為化し追跡EMPHASIS-HF(Eplerenone in Mild Patients Hospitalization and Survival Study in Heart Failure)試験は、NYHA心機能分類クラスIIで、駆出率35%以下の2,737例を対象に行われた。被験者を無作為に二群に分け、従来の推奨治療に加えて、一方にはエプレレノン(1日最大50mg)を、もう一方にはプラセボを投与した。主要転帰は、心血管系疾患死と心不全による入院の複合イベントとした。被験者の平均年齢は、エプレレノンが68.7歳、プラセボ群が68.6歳、女性はそれぞれ22.7%と21.9%、左室駆出率はそれぞれ平均26.2%と26.1%だった。主要転帰はエプレレノン群で0.63倍、死亡は0.76倍本試験は、あらかじめ設定した基準に達したため当初予定よりも早期に終了となり、追跡期間中央値21ヵ月の時点で試験中止となった。同期間中、主要転帰の発生率は、プラセボ群が25.9%に対し、エプレレノン群が18.3%だった(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.54~0.74、p<0.001)。死亡は、プラセボ群の15.5%に対し、エプレレノン群は12.5%だった(ハザード比:0.76、同:0.62~0.93、p=0.008)。また心血管系疾患死も、プラセボ群が13.5%に対し、エプレレノン群が10.8%だった(ハザード比:0.76、同:0.61~0.94、p=0.01)。心不全または原因を問わない入院の割合も、エプレレノン群で有意に低率だった。安全性に関して、血清カリウム値が5.5mmol/Lを超えていたのは、エプレレノン群が11.8%、プラセボ群は7.2%であった(p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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高齢者の余命予測に歩行速度が有効

 歩行速度が高齢者の余命予測に有効であるとの研究結果が示された。歩行速度と生存率に有意な相関が認められたという。米国ピッツバーグ大学老年医学部門のStephanie Studenski氏らが、高齢者約3万5,000人について行った研究で明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月5日号で発表した。高齢者の歩行速度と生存率について追跡・解析を行った 同研究グループは、65歳以上の高齢者を対象に1986~2000年に行われた9コホート試験について、歩行速度と生存率について追跡・解析を行った。被験者は地域で暮らす合計3万4,485人で、追跡期間は6~21年だった。 被験者の平均年齢は73.5歳(SD 5.9)、うち59.6%が女性、79.8%が白人で、平均歩行速度は0.92m/秒だった。 追跡期間中に死亡したのは、1万7,528人であった。5年生存率は84.8%(95%信頼区間:79.6~88.8)、10年生存率は59.7%(同:46.5~70.6)だった。高齢者の余命予測、歩行速度の正確性はほかの予測法と同等だった 高齢者の歩行速度と生存率との関連についてみたところ、すべての試験で歩行速度が増加するにつれて生存率が有意に上昇しており、0.1m/秒増加による年齢補正後余命ハザード比は試験により0.83~0.94(p<0.001)であった。試験全体の統合ハザード比は、0.88(同:0.87~0.90、p<0.001)だった。 75歳時点での10年予測生存率は、歩行速度によって男性は19%~87%、女性は35~91%を示した。 年齢、性別と歩行速度による余命予測は、年齢、性別と歩行補助具使用、自己申告による身体機能を基にした余命予測や、年齢、性別、慢性疾患、喫煙歴、血圧、BMI、入院歴を基にした余命予測のいずれと比較しても予測の正確性は同等だった。

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副院長 教授 加藤良二 先生「人を助けるために何かをしたい。その動機が医師の原点となる」

1952年9月25日生まれ。79年群馬大学医学部卒業。専門分野は消化器外科、呼吸器外科、外科免疫。平成21年東邦大学医療センター佐倉病院副院長就任。日本外科学会認定医・指導医、日本胸部外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医であり、日本気管食道科学会理事、日本治療学会代議員、日本臨床外科学会評議員、日本肺学会評議員他。理想とするこれからの外科手術外科手術の習得は決して平易ではありません。人の身体にメスを入れても平常心でいられるまでに十数年はかかります。さらに、外科の手技を習熟するまでは、寝ても覚めても頭の中でシミュレーションを繰り返し、開腹して速やかに対処できるようになるまでは、十数年はかかるでしょう。それまでは、実は怖いのです。正直に言えば最初の1、2年は怖くてしょうがない。5年、6年と経験を積んで後輩を指導する立場になっても、恐怖感をすべて拭えるわけではなく、一つの臓器担当チームのチーフになったとしても怖いという感覚はあります。そのチーフたちを束ねられるようになって、ようやく一人前の外科医になれたかな、と実感するのではないでしょうか。外科は守備範囲の広い分野です。近年では臓器別に守備範囲が細分化されています。しかし、私はむしろ広くあるべきで、外科医は昔のように、一人でどの臓器でもこなせるレベルを目指してほしいと思います。最初から限られた分野だけで臨床トレーニングを行っていると、他分野の進歩についていけず、総合的な臨床力が育成されないことが問題となります。これからの医療は複合的な疾患を持つ高齢者の割合が増えるため、広い臨床的視野が求められます。当科では外科学全般を習熟した後、それぞれの専門分野で臨床・研究活動を行うことが最善と考えております。これが、当外科の最大の特徴です。呼吸器でも消化器でも、外科手術全般においてまず学ぶ。つまり、外科手術の分野においてすべての症例に対応できる医師の育成という日本でも珍しいシステムを構築しています。消化器でも心臓でも当病院の外科に来れば何でも対応できるようになると自負しています。これこそ私の目指す外科医像であり、端的に言えば無医村へ行っても一人で対応できる外科医なのです。私が目指している「患者さんに優しい手術」の具体的なイメージは、笑われるかもしれませんが心霊手術です。患部を撫でたらスーッと切れて、腫瘍だけを取り除いて、またスーッと撫でたら傷も何も残らない。荒唐無稽と思うかもしれませんが、切られる方としては理想です。痛くないのですから。だから「こんなのができたら患者さんの負担がなくていいな、理想だな」と思っていました。すると内視鏡手術が発達してきた。昔だったら30cmも切っていたのに、今では1から3cm程度で済んでしまうことも多い。回復も早く理想に近づいていますよね。映画の『ミクロの決死圏』(20世紀フォックス)では、外科医(この場合は脳外科医)が小さくなって人体に入り込んで治療してしまいます。これはすごい。患者さんにとっては理想の低侵襲手術です。現実の世界では、人は小さくなれませんが、カプセル型の内視鏡を飲み込ませたり、血管の中をカテーテルで進んだりと、映画の世界にどんどん近づいてきています。外科医は法の下に人を切ることができるのです。いかに痛みの少ない手術をするか、それを考えることが外科医の使命でもあるわけです。「あれはオカルトだ」とか「SF映画だからだ」などと馬鹿にしないで、実現したら患者さんのためになることは、常に理想として頭の中に置いておき、少しでもそれに近づける努力をしなければいけないと思っています。模倣とシミュレーションで手術を構築する若手医師には「いい手術だと思ったら、そっくりまねをしなさい」と指導しています。立ち位置からものの言い方まで、すべてその人になりきって覚える。上手いと思った先生の模倣をしろ、ということです。物まねが上手というのもひとつの才能で、早く上手になる秘訣でもあります。なぜならば、より具体的なイメージがつかみやすいからです。上手だと思った先生のイメージを描いて自分の中でシミュレーションし、実践する。実践した中で"なんかおかしいな"と感じたら、そこで修正することができるようになるのです。もしもイメージシュミレーションができなかったとしたら、手術中に何か問題が起きたときに頭の中が真っ白になって、瞬時の対応ができなくなります。こんな時、あの先生だったらどうするかな?と考えられることが大事なのです。だからこそいろいろな場面に立ち会うことが大事で、少しでも多くの手技を学んで、覚えてほしいです。たとえば、初めて虫垂炎の手術を任されたとして、そのシミュレーションが即座に描けなければ実際の手術を遂行するのは無理でしょう。もしも手術を任される場面があったとして、1時間の手術だったとしたら、5分以内に収まるようなシミュレーションをする。もちろん実際に始めると1時間かかりますけどね。(笑)今の若い医師ができないのは、教えてもらうことに慣れてしまっていて、想像力が働かない。現在の教育の弊害というか、勉強とは自分で興味があるから覚えよう、役に立つから覚えようという明確なモチベーションがあってこそ学びますが、今はさしたる動機もなく「さぁ、覚えますから教えてください」というスタンスなのです。学びに対するハングリーさがないのは残念ですね。では、どうしたらいいか?自身の動機付け。なぜ医師になろうと思ったのか?自分の持っている医師としての理想の姿。それを思い出してほしい。そこから始めなければならないと思います。医師になったということは、人のために何かしたい、何かしなくちゃいけない、と思ったはずです。その気持ちを大事にしてもらいたい。その上で人の役に立つためには自分は何をすべきなのかを考えるようにして欲しいです。習得したことはすべて伝播したいこれから私のなすべきことは、教育です。この先教授でいられるのは、あと7、8年。その間に自分の技術を伝えること。今まで私が培ってきたものを、瞬時にして伝えることができたらどんなにいいだろうか、と思います。若手には、気兼ねなくどんどん質問してきてほしいです。何でも教えます。先ほども触れましたが、よいと思ったことはどんどんまねて欲しいです。実は、教えている方も、若い人の手術を見ていて「あっ、こいつは俺のまねをしているな」ってわかった瞬間、すごく嬉しいものなのです。これまで私は、年間約300例、一時は約500例の手術をこなしてきました。それこそ首からお尻まで何でもやりました。消化器だけとか、肺だけとか区切りをつけずにやってきました。今年の正月も、腹腔鏡下虫垂切除術と大腸穿孔の手術をしました。腹腔鏡下虫垂切除術は1月1日、除夜の鐘を聞きながらの執刀でした。何も特別な疾患があって私が執刀したのではなく、当直が一番若い医師だったので「ちょうどいい機会だから直接指導できるな」と思ったのです。昼間のスケジュールに組み込まれた手術は、時間が限られていますが、この場合のようにイレギュラーですと急ぐ必要もないからじっくりと丁寧に指導できるのです。このような機会を得たときに「自分はラッキーだ」と後輩が思ってくれれば嬉しいですね。私達が若いときは、みんな進んで当直しました。多いときで26日、平均20日間くらいは医局に寝泊まりしていました。もう、下宿なんか引き払おうと思ったくらいでしたよ(笑)。たくさんの患者さんを診たい、その一心でした。もちろん毎晩患者さんが来るわけではないのですが、だからこそ毎晩でも当直したかった。昼間の手術なら新人は術野もまともに見られないような手伝いでしたが、夜なら重要な役割をさせてもらえたからです。そういう機会を少しでも得たいと思っていました。今の学生にもそんな気持ちを持ってほしいですね。だからといって無理はいけません。過労死したら元も子もありませんからね。これからも私は"人を助けるために仕事をしている"という初心を忘れない。そして私の理想とする医療を実現するために、常に自身を新陳代謝させて、よいと思ったことは何でも取り入れるように心がけています。大親友の死を期に決意した医師への道医師になろうと思ったきっかけは、小学校の低学年のときに読んだ野口英世の伝記でした。ただ、私が感銘したのは英世にではなく、彼の手を治した医師(現在の形成外科医?)でした。英世の母親は、自分がちょっと目を放した隙に大事な息子の手に大火傷を負わせてしまった。そのことに責任を感じ、悔やみます。そして、少しでも楽に手が使えるように……と願います。後に英世の恩人となる医師によって手の機能が回復し、英世の人生は大きく変わります。つまり、医学の力で手の機能が回復したことによって、その人の人生が大きく変化しただけでなく、母親の気持ちまでをも救えた医師に感動したのです。その事実に気付いたとき、私は医師になりたいと思いました。また、私の出身地である大分県国東半島では、当時風土病とまで言われるほど成人のT細胞白血病発症者が多い地域で、1学年で同級生が1人、2人と亡くなっていました。その頃の治療法は輸血しかなく、採血したばかりの血を直接患者さんに輸血していました。輸血された同級生が「温かい、温かいよ、良ちゃん、ありがとう」って力なく言うのです。その姿を見てますます医師になることへの使命感が高まりました。決して忘れることができないのは、高校生のときに喘息を患っていた大親友がいました。彼とは毎晩一緒に受験勉強をしていました。高校生最後の運動会に、私が応援団長で、彼が私のために太鼓を叩く役を買って出てくれました。そのおかげか、優勝して終えることができました。その夜、夕食時に彼の家族から電話があって「息子は、今日は具合が悪いから一緒に勉強できない」という伝言を受けたのです。1ヵ月前には民間療法の断食道場に行っていて「調子がよくなった」と言っていた矢先だったのですが、運動会の疲れが出たのでしょうか。脱水から来る喘息の重積発作を起こしてその日のうちに亡くなりました。悔しかった。当時の自分は何もできなくてね。この時、医師になると決心しました。深刻な外科医不足と医療の安全管理の問題点深刻なのは外科医不足であること。今は産婦人科医や小児科医の減少が社会問題となっていますが、実は一番減少率が高いのは18%と報告された外科医です。日本外科学会の会員数は約3万5千人で、現役の医師が多く活躍していることから、今まで減少率はあまり問題視されていませんでした。しかし、あと10年もすれば外科医の多い私たちの世代が引退となるので、外科医不足になるのは明らかです。これは由々しき問題です。もしこの先、私に手術が必要になったら誰にやってもらうのだろうと思うと、自分にとっても切実な問題です。人気不足の原因は3K (きつい、汚い、危険)にあるといわれています。以前は、3Kを上回るステイタスがありました。外科医はキング・オブ・ドクターと呼ばれることもありましたが、現在はどうでしょう? 外科は平均的にみて、裁判で訴えられるリスクが比較的高いというデータが検証されています。 けれども、医療ほど不確かなものはない。先進医療ほど不確かです。病院へ行けば皆助かると思っているけれども、病院は亡くなるところでもあるのです。手術がうまくいったからといって助かるとは限らないのです。では、その保障は誰がするのかというと、これは難しい問題です。たとえば、航空機に乗って事故が起きれば保険がおりますが、病気にはこのような事故に対する補償制度はありません。医療保険や医師賠償制度は別として、医療過誤や過失でなく合併症や偶発症によって亡くなった場合の補償がありません。家族あるいは遺族が無念さや怒りのやり場を病院や医療関係者に向けているのが現状です。それはマスコミの煽りによるものも少なくないでしょう。患者さんもしくはそのご家族に何かしてあげたいと思っても、個人の力ではどうしようもありません。そこで、もし過失もないのに招いてしまう不幸な結果に対して何か補填する制度があれば、訴訟も少なくなると思います。その怒りや憤り、悲しみの矛先が、世界に誇れる日本の医療を支えている医師をはじめとした医療従事者に向けられているのは残念です。医療保険制度や政策を充実させて、少しでも患者さん本人や家族の痛みを和らげることができればと思っています。非常に不確かな医療であるからこそ無過失責任補償制度というのも考えるべき一つの方向であると思います。若い医師が訴訟を恐れて萎縮したり、本来の医療ができなくなるのは嘆かわしいことであり、患者さんやその家族が納得のいく方法を考えなければ、と思っています。これは、これからの医療にとって重大かつ深刻な問題です。だからこそ、最善の道を探るのも私自身の大きな課題と考えております。質問と回答を公開中!

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副院長 教授 加藤良二 先生の答え

がん化学療法は外科医が身につけるべき手技でしょうか?一地方病院の21年目の腫瘍内科医です。わが国には腫瘍内科医の養成システムがなく、すべてのに自信を持って化学療法ができるようになったのは、ここ数年のことです。先日も分子標的薬関連の講演会があり出席しましたが、数人の外科医がスペシャリストとして講演していました。外科医の本分は手術であり、化学療法に手を出す前にたとえば消化管の専門にとらわれず尿路変向や子宮付属器切除など隣接臓器の外科的手技を身につける方が合理的ではないかと思っていました。私は血液腫瘍を含め全ての悪性腫瘍の治療をすぐに行えますが、薬物による治療という共通点があるからこそできることで、超人的なこととも思えません。むしろ人材の有効利用につながると思います。外科医が手術をやりながら(手術の技術を身につけながら)化学療法をやることなどは不器用な私などには到底出来そうもありません。私が外科医であれば(細かい手作業が得意で、卒業直後は外科医になるつもりでした)各領域の手術の技術の腕を上げることに邁進するだろうと常々思っています。現在は腫瘍内科医の不足があり外科の医師に手伝ってもらうのはやむを得ないと思いますが、今後も外科医は化学療法を必要な技術として身につけるべきでしょうか。あるいは外科系の診療科や教室に化学療法の専門家が必要なのでしょうか。現在、日本臨床腫瘍学会を中心として数多くの抗がん剤治療(化学療法)の治験が行われています。また日本治療学会と提携して治療専門医を認定しています。現実に多くの施設で外来化学療法室が設置されてきています。この中心は化学療法専門医であるべきと考えます。これからは術前・術後を問わずこれらの治療専門医に化学療法を任せる時代が来ると思ってはいますが、如何せん医師数の絶対的不足が時代の到来を阻んでいます。佐倉病院でも外来化学療法室の大半が外科系医師によって運営されています。我々が外科医となってから、つい最近まで血液腫瘍内科を除いて、術後の補助化学療法は外科医の手によってなされていました。一旦手術を受けた患者さんは外科医を信頼しており(腹の中まで見てもらったから何でも理解していると信じ込んでる?)外来を離れようとしません。他の内科医または放射線治療医を紹介すると放り出された(あるいは見放された)と感じていたようです。一方、外科医は施術した患者さんをなんとか最後まで面倒みようとした結果であると理解しています。今ほどエビデンスも有効な治療薬も無い頃で再発の可能性を肌で感じながら、ああでもないこうでもないと努力しました。勿論、化学療法は片手間にやるものでは無いと思いますが、を治療する上で手術や照射あるいは免疫治療等と同様に集学的治療のひとつであると位置づけています。自分の知らないことは専門医に任せておけばいいと思いますか?各分野がそれぞれの立場を主張し、理解した上で患者さんにとって最良の治療を勧めるべきであると考えます。それには外科医も化学療法、放射線治療に関して充分な知識を持つことが必要です。外科の手術修練は大変ですが、朝から晩まで糸を縛っているだけじゃありません(笑)。外来で患者さんと長く付き合うようになった時、適切なアドバイスをしてあげたいと思います。私は内科へ進む研修医にも暇があれば手術に誘います。自分が診断した結果を見て欲しいからです。手術の何たるかを知らずに患者さんに手術を勧められますか?興味あること全てにチャレンジして欲しいものです。何をやっても患者さんの役に立つと信じています。先生の方針は伝統になりますでしょうか?加藤先生が目指されているように、外科医なら外科領域全般を扱えるように指導することは大変重要だと考えます。ところで、主任教授が変わると方針も変わるかと思います。それでも佐倉病院としては、外科手術全般を学ぶ方針(育成方針?)は変わらず維持されるのでしょうか?大変良い方針なので、変わらず伝統としていただきたいものです。有り難うございます。応援に感謝します。これから育つ若手外科医に全領域を経験させることで、外科の領域全てで怖いものがなくなり何でもやるようになれば、彼らが指導する時に伝統となったということです。佐倉病院外科がひとつである限り、全領域を学ぶ姿勢は変わらないと信じていますし、外科医が溢れかえってもそうあるべきです。佐倉の若手は肺・乳腺や甲状腺同様に腸管や肝胆膵も扱います。いろんな経験をすることで、それぞれの違いが分かってきています。いろんな事をやれば自分は大変な思いをしますが、すべて役に立ちます。幸いなことに当科の若手は順調に育ってきていますし、この考えを踏襲してくれると信じています。 外科医の道現在医学部に通う者です。佐倉病院ではまず外科全般を学ぶとのことですが、何年くらい時間を費やすのでしょうか?また、途中で心臓や脳に興味がでてきた場合、その専門分野に特化する道もあるのでしょうか?拙い質問ですが、ご教示のほど宜しくお願いします。ひととおりの分野を経験し、理解できるのに4年はかかります。また自分で手術をできるようになるのに卒後7、8年を要します。心臓に関しては当科内のローテーションに入っていますが、心臓外科を志望する学生が少ないので希望してくれれば大助かりです。外科としては脳外のローテーションは組んでいませんが、興味が湧いてくればいつでも(1年の途中というわけにはいきませんが)、どこ(どの病院)からでも可能ではないでしょうか?勿論、佐倉病院の脳外科を志望してくれたら、大歓迎です(笑)。また外科的手術手技を学んだ婦人科や泌尿器科医がいても良いと思います。元々は脳外科、泌尿器科、婦人科などは外科から分化したものであり、外科的手技はどの外科系診療の基礎となり得るものであるはずです。日本でも珍しい育成システムについて記事拝見しました。「当外科の最大の特徴です。呼吸器でも消化器でも、外科手術全般においてまず学ぶ。つまり、外科手術の分野においてすべての症例に対応できる医師の育成という日本でも珍しいシステムを構築しています。」とありますが、差し支えなければ、もう少し詳しく教えていただけると幸いです。私が勉強不足なのかも知れないが、あまり聞いたことのないシステムですので、興味があります。宜しくお願いします。全国には数多くの外科学教室がありますが、残念ながら主催する教授の得意とする専門臓器分野に偏る傾向があります。例えば大腸を得意とする教室では食道・上部消化管あるいは肝胆膵が苦手とか、消化器外科医は肺の手術ができないとか、逆に肺を主に扱っている教室では消化管の手術経験が少ないというようにです。消化管主体の教室では外科専門医の資格を得るのに心臓専門の教室や呼吸器を扱っている教室に一時期留学あるいは研修に出なければなりません。当教室では外科専門医資格を得るために必要な手術症例はすべて指導でき、経験できるようになっており、他所にわざわざ出向く必要が無いということです。どのような研究を行っているのでしょうか?東邦大学医療センター佐倉病院さんでは、どのような研究を行っているのでしょうか?また、今一番力を入れている研究はどんなものでしょうか?ホームページには載っていなかったので、教えて頂ければと思います。内科その他の研究に関しては、東邦大学ホームページから閲覧が可能ですので参照して下さい。佐倉病院外科での研究についてご説明します。優しい手術をテーマに「外科侵襲と悪性腫瘍の進展」「外科侵襲・化学療法とストレス」「消化器(管)悪性腫瘍・呼吸器・乳腺・甲状腺の外科治療」「低侵襲手術法の開発」「がんの増殖・転移の抑制」「術前・術後の補助化学療法」「センチネルリンパ節生検による術式の選択」「腫瘍免疫」「分子生物学的手法による悪性腫瘍の診断と治療」「CT・MRI・PET等を用いた術前画像診断」「疼痛管理と遺伝子診断」など多岐にわたっています。残念ながら当施設では動物実験舎を備えていません(現在計画中)ので、基礎研究は東邦大学関連の習志野キャンパス、大森キャンパス(医学部)や筑波にある他機関の研究施設などを利用しています。臨床研究は、随時当施設で行っています。また全国的に実施されている多施設共同の治療研究にも参加しています。外科医になってよかったと思ったことは何ですか?単純な質問で失礼かと思いますが、外科医になってよかったと思ったことは何でしょうか?今臨床研修で色々とローテートしています。どの科も良いなと思っていますが、外科系だけは、短い研修期間の中では何が魅力なのか実感ができません。とはいえ、指導医の先生は、忙しそうですが、なんだか使命感に燃えているような印象があります(他の科の先生よりも特に。)。加藤先生が長年外科医をやってきて、その中で「外科医になってよかったな」と思ったことを教えて頂ければ幸いです。感動を瞬時に得られます。患者さんが治った時あるいは痛み・苦しみから解放されたと解った時の達成感です。外科の手術は、よく大工さんに例えられますが職人が後世に残る家を造り上げるような感じかもしれません。ひとつの作品を造り上げたような満足感に近いものかもしれません。これらは短期間で消えていくものですが、患者さんがいれば、また望まれればいつでも何処でも腕や知恵をフルに使って治療することに力を注ぎます。何度も押し寄せる大波小波を乗り越えることに楽しみを感じています。ですから夜中あるいは緊急の手術ほど燃えてきて、集まった仲間達はみんな生き生きしています。外科医は「鬼手仏心」と言い、仏の心を持ってメスを振るうことを基本としています。人を傷つけるのは嫌ですが、早く治したい、早く苦しみから救いたいという使命感は強いと思います。患者さんの笑顔と沢山会えるようにしたいものです。女性が外科医になることについてメディトウキングの記事を拝見しました。よく聞かれることかも知れませんが、女性が外科医になることについて如何お考えでしょうか?私は是非外科系に進みたいと考えていますが、将来的なことを考えると(出産や家庭の事情など)外科医よりも他の科を考えた方が良いと周囲から言われます。でも本当にそうなんでしょうか?運よく(?)外科医は不足するので、出産して育児をしても、復帰できる場はたくさんありそうですし。忌憚ないご意見いただけると幸いです。佐倉外科は今年、20周年を迎えます。最近になって2名の女性が入局してくれました。今後ますます増えることを期待しています。外科を目指す女性は頑張り屋さんが多いようです。体力的にも一生懸命やっていれば、多くの男性外科医は優しく、みんなでカバーしようとしますから、出産や家庭の事情などは、なんとかなると考えています。外科でもダイナミックな手術から腕力を必要としない手術まで様々な分野があります。乳腺や甲状腺などは力を必要としませんし、消化器や肺などでも鏡視下手術であれば力は要りません。実際、佐倉外科では全麻下腹部手術の約7割、胸腔鏡下手術の9割が鏡視下手術ですから女性外科医の活躍の場は沢山あり、安心して外科医になってください。必要なのは、素直さと情熱です。外科医不足の解消について田舎の総合病院で外科医しています。先生が提言されているように外科医は臓器別に専門化(細分化)され過ぎているように感じています。(大学病院が高度医療のみを提供するという前提であれば良いですが…)今の先生方は、専門化された中で外科医として教育されているので、私どもの病院に来てくれるのはありがたいのですが、最初は盲腸も切れないような先生もいます。逆にいうと、佐倉病院さんのように外科医全般を最初から叩き込んで教育していただくと、私どものような病院にとってはすぐに戦力になります。専門分野は本人の興味次第で後から身につきますし。こう考えると、外科医全般を叩き込んだ先生が増えれば増えるほど外科医の解消につながりそうなのですが。先生のご意見を頂きたいと思います。 専門に特化した外科医も必要です。中央と地方の必要性をバランス良く配分することが必要なのです。しかし学会中心だとどうしても専門性に偏ってしまいます。医学会総会や外科系連合学会など幅広い分野を網羅した学会が、あまり人気の無いのも憂うべきです。しかし、大学病院に盲腸が少ないのも現実ですし、最先端から第一線の診療など、何からなにまで網羅するのも困難です。専門性を追求するのも良いですが、少なくとも外科専門医を取得するまではできるだけ多くの専門分野をまわって多様な経験や勉強を積むべきであると考えます。外科全般にわたって一人前になるのにかなりの時間が必要で、鏡視下手術ができてもアッペも切れない外科医を指導するのも地方の先生方の役割でもあると考えます。自分が育ててもらったように、手間暇掛けてみんなで育てましょう。少しでも多くの若い人達に外科の醍醐味と感動を味わってもらいましょう。ご家族とのコミュニケーションについてプライベートなことで恐縮です。差し支えなければ教えていただきたいことがあります。外科医は患者さんを待たせることできないので、緊急オペが多く、なかなか家族との時間が持てません。先生も同じ状況だとは思いますが、何か家族とのコミュニケーションを円滑にするお知恵があればご教示お願いします。一番は家族の理解です。時間的には短いですが、濃い時間を過ごすことだと思っています。患者さんに使う時間は全知全霊を傾けて行動しているはずですが、家族とも同様に接しなければなりません。外科医に限ったことではありませんが、患者さんの話を良く聞き、状況を理解した上で、持てる力をフルに発揮して適切な治療を行うことは必要なことです。家族も同様に接することであると思います。ちょっと手を抜くとたちまち大変なことになってしまいます。簡単にできることではありませんが、つねに誰とでも真剣に接し、体力知力の続く限り頑張ることだと思います。専門診療科について外科の中の専門診療科に、「消化器」「呼吸器」「心臓血管」「乳腺」とあります。なぜこの4つなのでしょうか?特別な意図があれば是非ご教示いただきたく思います。(とんちんかんな質問でしたら申し訳ありません。)他にも甲状腺や副腎などを扱う「内分泌外科」や「小児外科」もありますが、佐倉外科では充分な診療経験の上で消化器、呼吸器、循環器、乳腺の専門医がおり、それぞれに教育・研究が行われていますので4つの分野を示しました。専門といっても指導する上級医の一人か二人だけで若い連中は特にグループ間の壁を意識していません。私自身が何でもやるので、若い連中はいろんな疾患を担当しても違和感がないようです。甲状腺や副甲状腺は主に呼吸器外科で扱いますが、副腎は消化器を含む腹部外科が担当しています。先天奇形などの小児外科は県の専門子供病院にお願いしておりますが、幽門狭窄、腸重積、鼠径ヘルニアなどは一般外科として消化器や呼吸器のグループでも担当しています。総括外科医は絶滅危惧種です。新入会員が減り続けており、今のままだとあと10年もすれば極端に少なくなります。何でもできる外科医になりましょう。今ならみんな必死になって育てようとしています。10年後、あなた達はスターです。副院長 教授 加藤良二 先生「人を助けるために何かをしたい。その動機が医師の原点となる」

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優れた臨床家は、睡眠、健康と表情の手がかりを結び付ける術を知っている

観察することの訓練を受けていない人でも、睡眠不足の人を見ると、その人がきちんと寝ている時に比べ、健康を損ない魅力を失い、くたびれていると見て取れることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohn Axelsson氏らによって実証された。Axelsson氏は、「この結果は、人が社会性や臨床的な判断をされる際に、見た目が影響していることを示すものである」としたうえで、「臨床診断において見た目がどれほど影響しているかを理解することの根拠となり、ひいては対診の際に見た目を情報として付加できる根拠ともなる」と結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。訓練を受けていない人が、写真を見て不健康などを認知できるか検証Axelsson氏らは、シャーロックホームズのモデルとして知られるジョセフ・ベル教授の「優れた観察と推論で」という臨床診断の教えを基に本試験を行った。試験は、観察の訓練を受けていない人が、睡眠不足時に撮影された写真を見て、健康や魅力を損なっており、より疲れていると認知するかを検証するというものであった。ストックホルムにある睡眠研究所で、23人の健康な成人(18~31歳、女性11人)と、訓練を受けていない観察者65人(18~61歳、大半がカロリンスカ研究所の学生、女性40人)が参加して行われた。被験者は、通常睡眠(8時間)後と、睡眠不足時(睡眠を5時間に減じられた上で眠らずに31時間後)にそれぞれ顔写真を撮影され、それら写真を観察者にランダムに示し評価をしてもらった。主要評価項目は、観察者が評価した睡眠不足時写真と通常睡眠時写真との、健康度、魅力度、疲労度に関する視覚的アナログスケール(VAS、100mm)の差とした。結果は睡眠と健康の既存モデルに合致結果、健康度に関する平均VASは、睡眠不足時63(SE 2)vs. 通常睡眠時68(SE 2)で、観察者は睡眠不足時の方を健康的ではないと捉えていたことが認められた(p<0.001)。疲労度についても、同53(SE 3)vs. 44(SE 3)、魅力度についても38(SE 2)vs. 40(SE 2)で、睡眠不足時の方が疲労度が高く、魅力に乏しいと捉えていたことが示された(いずれもP<0.001)。また、健康度の評価が低下することと、疲労度の評価の上昇および魅力度の評価の低下は関連していることが認められた。著者は「これら結果は、既存の睡眠と健康の関連モデルに合致していた。今後、臨床設定で、表情の手がかり(facial cue)について検証を行うことが必要と思われる。おそらく優れた臨床家は、睡眠や健康と表情の手がかりとを結び付ける術を知っており駆使しているからだ。このように我々の研究成果は、ベル教授の教えや、俗に言われる“beauty sleep”に隠された健康や魅力に関する判断への洞察を提示するものである」とまとめている。

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足でお酒が飲めるというデンマークの都市伝説は……

デンマークには、「ウォッカに足を沈めることで酔っぱらうことができる」という都市伝説があるという。デンマーク・Hillerod病院循環器・内分泌科のChristian Stevns Hansen氏らは、その伝説を検証するオープンラベルの実証試験「Peace On Earth」を行った。結果、伝説は伝説でしかなかったが、あくまでウォッカに沈めた場合に限った話で、もっと強いお酒やジュースとお酒とを飲んだ場合はわからないため、新たな楽しみ(たとえば眼球飲酒)も浮かび上がったと結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。ウォッカ3本に3時間、足を漬けてみたが酩酊状態にはならずPeace On Earth(Percutaneous Ethanol Absorption Could Evoke Ongoing Nationwide Euphoria And Random Tender Hugs)は、平均年齢32歳(範囲:31~35歳)の、慢性皮膚疾患や肝疾患を有しておらず、アルコールや向精神薬に非依存の3人の病院職員を対象に行われた。主要エンドポイントは、血漿エタノール濃度[検出限界:2.2mmol/L(10mg/100mL)]で、700mLのウォッカ3本で満たされた皿洗い容器に、足を3時間浸漬している間、30分ごとに測定をした。副次エンドポイントは、自己評価による酩酊状態(自信過剰になる、衝動的言動がみられる、突発的に抱きつきたくなる)で、0~10スコアで記録された。結果、実験(足を浸漬している)の間に、血漿エタノール値が検出限界を超えることはなかった。試験開始時よりも自信過剰で、衝動的言動がみられたが、それらはset upによるものと思われ、酩酊状態の有意な変化は認められなかった。Hansen氏は、「アルコールの経皮摂取は、足をウォッカに漬けることでは不可能だった」と結論。「しかし依然として、胃腸管壁以外でのアルコール摂取に関する疑問は残ったままで研究結果が待たれる」とまとめている。

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プライマリ・ケアにおけるうつ病、非医療者カウンセラーによる共同介入が有効

うつ、不安障害などの「よくみられる精神障害(common mental disorders:CMD)」の症状を呈する患者をプライマリ・ケアで治療する場合、訓練を受けた非医療者カウンセラーとの共同ケアによって病状の回復率が改善することが、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のVikram Patel氏らがインドで実施した「MANAS」試験で示された。CMDは世界的な神経精神医学的疾病負担の主原因であり、自殺の増加や医療コストの増大を招き、経済的な生産性を低下させているという。プライマリ・ケアにおけるCMDに対する共同介入の系統的レビューでは、1)スクリーニングのルーチンな実施、2)スタッフの専門的な技量、3)精神科専門医による監督によりアウトカムが改善する可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年12月14日号)掲載の報告。共同介入と強化通常ケアを比較するクラスター無作為化試験MANAS試験の研究グループは、プライマリ・ケアにおけるCMDに対する非医療者カウンセラーによる介入のアウトカム改善効果を評価する、クラスター無作為化対照比較試験を実施した。インド、ゴア市のプライマリ・ケア施設を受診し、CMDの判定基準を満たした患者が、訓練を受けた非医療者カウンセラーによる共同的な段階的ケアを受ける群、あるいは強化通常ケアを受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。共同的な段階的ケアによる介入は、訓練を受けた非医療者であるカウンセラーが患者マネジメントおよび心理社会的な介入を行うもので、プライマリ・ケア医が抗うつ薬を処方し、全体の監督は精神科専門医が行った。主要評価項目は、治療6ヵ月の時点におけるWHOの『疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版(ICD-10)』の定義によるCMDの回復とした。共同介入により回復率が約12%改善、開業医では差を認めず公的プライマリ・ケア施設と開業医の割合が同じ24のクラスターが、非医療者カウンセラー共同介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。アウトカムの評価が可能であったのは、介入群が85%(1,160/1,360例)、対照群は88%(1,269/1,436例)であった。治療6ヵ月におけるCMDの回復率は、介入群が65.0%(620例)と、対照群の52.9%(553例)に比べ良好であった[リスク比:1.22(95%信頼区間:1.00~1.47)、リスク差:12.1%(95%信頼区間:1.6~22.5%)]。介入による効果は公的プライマリ・ケア施設で大きく[65.9%(369例) vs. 42.5%(267例)、リスク比:1.55(95%信頼区間:1.02~2.35)]、開業医受診者では対照群との間に差を認めなかった[64.1%(251例) vs. 65.9%(286例)、リスク比:0.95(95%信頼区間:0.74~1.22)]。介入群で3例が死亡、4例が自殺を企図し、対照群ではそれぞれ6例ずつであった。自殺死は認めなかった。著者は、「訓練を受けた非医療者カウンセラーとの共同による段階的な介入は、公的なプライマリ・ケア施設を受診するCMD患者の回復率を改善する」と結論し、「このエビデンスは、メンタル・ヘルスケアの専門家の体制が十分でない環境において、CMDに対するサービスの改善に活用できる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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急性腎障害の予後に、蛋白尿、eGFRは影響するか?

急性腎障害(acute kidney injury)による入院のリスクは、蛋白尿が重篤なほど、また推定糸球体濾過量(eGFR)が低下するほど上昇することが、カナダ・カルガリー大学のMatthew T James氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。eGFRの低値は急性腎障害を示唆し、蛋白尿は腎疾患のマーカーであるが、急性腎障害のリスクの予測におけるeGFRと蛋白尿双方の意義は明確ではなく、急性腎障害や有害な臨床アウトカムには先行する腎疾患は影響しないとの見解もある。さらに、急性腎障害のリスクやアウトカムの評価には蛋白尿やeGFRは寄与しないとする最近の報告もあるという。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年11月22日号)掲載の報告。eGFR低下と蛋白尿の連携的な影響を評価研究グループは、eGFRと蛋白尿が急性腎障害やその後の有害な臨床アウトカムに連携的に及ぼす影響を評価するコホート試験を実施した。対象は、2002~2007年にカナダ・アルバータ州に居住した92万985人であり、ベースライン時に透析を受けておらず、血清クレアチニン値または蛋白尿(試験紙あるいはアルブミン-クレアチニン比で判定)のいずれかを外来で1回以上測定された者とした。主要評価項目は、急性腎障害による入院率とし、全死亡、腎臓関連の複合アウトカム(末期腎疾患、血清クレアチニン値倍加)の評価も行った。急性腎障害は、より長期的な予後情報をもたらす追跡期間中央値35ヵ月(範囲:0~59ヵ月)の時点で、6,520例(0.7%)が急性腎障害で入院した。eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合の急性腎障害による入院のリスクは、試験紙検査で高度と判定された蛋白尿の4倍以上に達した(蛋白尿がみられない場合とのリスク比:4.4、95%信頼区間:3.7~5.2)。試験紙検査で高度蛋白尿の場合、eGFR値にかかわらず、急性腎障害および透析を要する腎障害による入院のリスクが上昇した。急性腎障害で入院した患者では、死亡および腎関連の複合アウトカムのリスクも高かったが、ベースライン時にeGFR低値および高度蛋白尿がみられた場合はこのリスクの上昇が抑制されていた。著者は、「急性腎障害による入院のリスクは蛋白尿の重篤化やeGFRの低下に伴って上昇した。eGFR低下や蛋白尿がみられる場合は、その程度にかかわらず、長期的な死亡率は急性腎障害発症後に上昇した。臨床的に問題となる腎機能の低下は急性腎障害によって増加するが、ベースラインのeGFRが最低値の場合や蛋白尿が最高度な例では影響はなかった」とまとめ、「これらの知見は、急性腎障害のリスクが確認された場合にはeGFRおよび蛋白尿を考慮すべきであり、急性腎障害の存在はeGFRや蛋白尿に加え、さらに長期にわたる予後情報をもたらすことを示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ICD+CRTは死亡・心不全入院率を低下するが有害イベント増加も

植込み型除細動器(ICD)に心臓再同期療法(CRT)を追加した治療を行うと、心不全による死亡および入院の割合が減少したことが示された。ただしこの改善には有害イベントの増加も伴っていた。報告は、カナダ・コロンビア大学のAnthony S.L. Tang氏ら「RAFT」試験グループが、軽症~中等症(NYHA心機能分類IIまたはIII)の心不全でQRS幅が広く(内因性120msec以上またはペーシング200msec以上)左室収縮機能不全を呈する患者1,798例を、平均40ヵ月間追跡した結果によるもので、NEJM誌2010年12月16日号(オンライン版2010年11月14日号)で発表された。CRTは、QRS幅が広く左室収縮機能不全を呈する患者にベネフィットがあることが明らかになっている。そしてそれら患者の大半がICD適応の患者であることから、ICD+CRTと至適薬物療法により死亡・罹患率が低下するかが検討された。ICD-CRT群の主要転帰発生が有意に延長多施設共同二重盲検無作為化試験のRAFT(Resynchronization–Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial)は、カナダ24施設、ヨーロッパとトルコ8施設、オーストラリア2施設から被験者を募り行われた。対象は、NYHA心機能分類IIまたはIIIの心不全を有し、左室駆出率30%以下、内因性QRS幅120msec以下もしくはペーシングQRS幅200msec以上の患者で、ICD単独療法かICD+CRT療法(ICD-CRT)のいずれかに無作為に割り付けられた。主要転帰は、全死因死亡または心不全による入院とした。被験者は、ICD単独群904例、ICD-CRT群894例の計1,798例で、平均40ヵ月間追跡された。結果、主要転帰は、ICD-CRT群では33.2%(297/894例)であった一方、ICD単独群は40.3%(364/904例)で、ICD-CRT群の主要転帰発生が有意に延長した(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.64~0.87、P<0.001)。術後30日時点の有害事象、ICD単独群58例、ICD-CRT群124例死亡は、ICD-CRT群では186例、ICD単独群では236例発生し、ICD-CRT群の方が死亡までの有意な期間延長(相対リスク25%低下)が認められた(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62~0.91、P=0.003)。入院についても、ICD-CRT群174例、ICD単独群236例で、ICD-CRT群の発生割合がより低下した(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.56~0.83、P<0.001)。しかし一方で、ICD施術後30日時点の有害事象発生が、ICD単独群58例に対してICD-CRT群は124例で認められた(P<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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2009年新型インフルエンザワクチンの安全性と有効性:中国・北京

中国・北京における、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)ワクチン接種の安全性と有効性について、安全性プロファイルは季節性インフルエンザワクチンと同等であり、また新型インフルエンザウイルス感染が確定した学童期の子どもで有効だったとの報告が、北京疾病管理予防センターのJiang Wu氏により発表された。中国では、2009年9月以降に単価ワクチンが利用可能となり、ただちに当局による北京での集団ワクチン接種のプログラム実行が指示されたという。Wu氏らは、同ワクチンの安全性と有効性について評価を行った。NEJM誌2010年12月16日号掲載より。北京のワクチン接種者、小児・成人9万5,244例を評価Wu氏らは、2009年9月21~25日の5日間で、PANFLU.1ワクチン(Sinovac Biotech社製)の接種を受けた、北京の小児および成人合計9万5,244例を対象に評価を行った。ワクチンは非アジュバンドの赤血球凝集素抗原15μg含有単価スプリットビリオンワクチンであった。評価は、強化受動サーベイランスシステム(日記)とアクティブサーベイ(電話インタビュー)を用いて、接種後の有害事象について行われた。また神経疾患のアクティブサーベイを、市内全病院で行った。ワクチン有効性の評価は、学生を対象に行われ、集団予防接種の2週間後から報告された、2009年新型インフルエンザウイルス感染の検査確定例の発生率を、ワクチン接種群と非接種群とで比較した。推定ワクチン有効率は87.3%結果、2009年12月31日時点で、接種者の有害事象の報告例は193例あった。病院ベースのアクティブサーベイの結果では、集団予防接種後10週間以内で、362例の新規神経疾患が発生していたことが明らかになった。そのうち27例がギラン・バレー症候群であった。神経疾患の発症例にワクチン接種者はいなかった。学生の評価は、245校を対象に行われた。集団接種を受けた学生は2万5,037例、非接種の学生は24万4,091例であった。そのうち2009年10月9日~11月15日の間に、2009年新型インフルエンザ感染確定症例の発生率は、接種学生群では10万人あたり35.9例(9/25,037例)、非接種学生群は同281.4例(687/244,091例)であり、推定ワクチン有効率は87.3%(95%信頼区間:75.4~93.4)であった。(武藤まき:医療ライター)

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動脈硬化は心臓・頭以外にも起きるが、認知度は低い

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、同社が行った「動脈硬化に関する意識」調査結果を発表した。この調査は2010年12月上旬、国内に居住する40~70歳代の男女800名に対してインターネット上で行われたもの。動脈硬化の危険因子有無について聞いたところ、「高血圧」が30.4%と最も多く、続いて「肥満」(24.1%)「脂質異常症」(18.1%)「喫煙習慣がある」(15.6%)「糖尿病」(11.8%)「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした」(5.4%)の順となり、一つでも持っている人は64.5%にのぼった。この結果は、3人に2人が動脈硬化の危険因子を持っているということを示している。性別年代別で見た場合には、60代以上の男性においては8割が動脈硬化の危険因子を持っていることもわかった。動脈硬化が起きる部位として知っているものについて聞いたところ、「心臓」(86.9%)「頭」(77.6%)という回答が多かったのに対し、「足」(32.1%)「首」(29.8%)「腹部」(17.1%)「腎臓」(8.9%)は昨年の調査結果同様、わずか約3割程度にとどまった。また、動脈硬化が起きる部位によっては5年後の生存率ががんより低いことを知っていると回答した人は15.1%で、動脈硬化の危険因子を持つ人においても、認知度はわずか16.7%であった。同社は、「全身に起きる動脈硬化は、部位によっては症状が出にくい場合もあり、発見や遅れによりQOL(Quality Of Life)の低下や生命予後を悪化させるケースがあります」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2010/1227/index.html

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抗菌性創傷被覆・保護材「アルジサイト銀」新発売

 スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社は、本邦初のアルギン酸カルシウム繊維に銀イオン効果をプラスさせた抗菌性創傷被覆・保護材『アルジサイト銀』を2011年1月1日に発売した。アルジサイト銀は滲出液と細菌の両方をコントロール アルジサイト銀は、創傷の治癒を遅らせる過剰な滲出液と細菌の両方をコントロールできる製品。天然素材由来のアルギン酸繊維が創傷の滲出液を吸収し、ゲル化することにより創傷に適切な湿潤環境を提供し、治癒を促進するという。また、滲出液の吸収と同時に放出された銀イオンには、滲出液と共に被覆材内に流入した細菌や創傷接触面の細菌に対し抗菌効果を発揮することにより、創傷を清浄化し、治癒を促進する効果があるという。また、血液凝固第IV因子であるカルシウムイオンの効果も期待できるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://wound.smith-nephew.com/jp/node.asp?NodeId=4117

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液状経口の米国小児用OTCの付属計量器、約99%が説明書の単位と不一致など不適切表示

米国で、液状経口の小児用市販薬(OTC)について調べたところ、調査対象で付属計量器が付いていた製品のうち約99%で、付属の計量器と説明書で示されている投与量単位とが一致しておらず、また投与量単位が製品によって異なり、複数の単位が使われていることが認められたという。米国ニューヨーク医科大学/ベルビュー・ホスピタルセンター小児科のH. Shonna Yin氏らが、2009年時点で最も売れている200製品について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月15日号(オンライン版2010年11月30日号)で発表した。付属計量器が付いていたのは74%米国食品医薬品局(FDA)では液状経口小児用OTCを過剰服薬するケースが頻発している事態を受け、2009年11月、業界に対し、計量器を付属することや計量器の単位と説明書の単位を一致するなどを盛り込んだ自主規制ガイドラインを発表した。本調査は、このガイドライン発表に合わせて行われたもので、Yin氏らは、2009年10月30日までの52週間にわたり、米国で最も売れている液状経口小児用OTCについて、付属計量器の有無や説明書に書かれた投与量単位との整合性、使用されている計量単位、省略形の定義の有無などについて調査を行った。調査対象となったのは200製品で、12歳未満への投与量に関する説明があり市場の99%を占める、鎮痛薬、咳・かぜ薬、アレルギー薬、胃腸薬であった。結果、調査対象200製品のうち、付属計量器が付いていたのは、74.0%にあたる148製品であった。81%の付属計量器に余計な印付属計量器の付いていた148製品のうち、説明書の投与量と計量器の印が一致していないものが、98.6%にあたる146製品あった。具体的には、計量器の印が欠けているものが36製品(24.3%)、余計な印がついているものが120製品(81.1%)だった。投与量の単位としては、ミリリッター単位を使っていたのは調査対象の71.5%にあたる143製品、ティースプーンが77.5%の155製品、テーブルスプーンが18.5%の37製品だった。その一方で、通常は使われない「ドラム」(drams)や「cc」といった単位を使っていたのが、5.5%にあたる11製品あった。また、「mL」以外の通常は使用しないミリリッター単位の省略形を使っていたのは、97製品あった。投与量単位の省略形を使っていた165製品のうち、省略形の定義を一つ以上示していなかったものは163製品に上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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18~30歳から20年間、身体活動を活発に維持した人は、体重・ウエストが増えにくい

18~30歳の青年期から20年間にわたり身体活動を活発に維持した人は、体重・ウエスト周囲の増加が、そうでない人に比べ有意に抑制されていることが明らかになった。この傾向は特に、女性で顕著だったという。米国ノースウェスタン大学Feinberg校予防医学部門のArlene L. Hankinson氏らが、約3,500人について20年間追跡した「Coronary Artery Risk Development in Young Adults」(CARDIA)試験の結果から報告したもので、JAMA誌2010年12月15日号で発表した。これまでに、体重増リスクの最も高い時期についての身体活動と長期体重増予防との関連を調べた研究はほとんどないという。身体活動レベルが高い人の体重増加量は低い人に比べ、男性2.6kg、女性は6.1kg少ないHankinson氏らは、1985~86年に18~30歳であった3,554人について調査を開始し、その後2年、5年、7年、10年、15年と20年まで追跡した。身体活動レベルについては、調査時点の前年の活動について調べスコア化し、体重増とウエスト周囲増との関連について分析した。その結果、人種、調査開始時点のBMI、年齢、教育レベル、喫煙の有無、アルコール摂取、エネルギー摂取量について補正を行った後、身体活動レベルが高い三分位範囲の男性は、低い三分位範囲の男性に比べ、体重増加量は2.6kg少なかった。BMI単位の年間増加幅は、活動レベルが高い三分位範囲は0.15 BMI単位/年(95%信頼区間:0.11~0.18)だったのに対し、低い三分位範囲は0.20 BMI単位/年(同:0.17~0.23)だった。女性については、活動レベルが高い三分位範囲の体重増加量は、低い三分位範囲に比べ6.1kgも少なかった。またBMI単位の増加幅も、活動レベルが高い三分位範囲は0.17 BMI単位/年(95%信頼区間:0.12~0.21)だったのに対し、低い三分位範囲は0.30 BMI単位/年(同:0.25~0.34)だった。ウエスト周囲増加量は、男性3.1cm、女性3.8cm少ないまた、ウエスト周囲についても、男性では活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、増加量が3.1cm少なかった。年間増加量では、高い三分位範囲が0.52cm/年(95%信頼区間:0.43~0.61)に対し、低い三分位範囲は同0.67cm/年(同:0.60~0.75)だった。女性についても、活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、ウエスト周囲増加量が3.8cm少なかった。年間増加量では、高い三分位範囲が0.49cm/年(95%信頼区間:0.39~0.58)に対し、低い三分位範囲が同0.67cm/年(同:0.60~0.75)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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アルツハイマー型認知症・軽度認知障害(MCI)の治療・診断の現状と今後とは・・・・・・

株式会社シード・プランニングは12月28日、アルツハイマー型認知症・軽度認知障害(MCI)の治療・診断の現状と今後の方向性に関する調査の結果を発表した。同調査は、通常型のアルツハイマー型認知症について、神経内科、精神科、老齢病科で診療している医師120人に調査を行った。また、同認知症の家族を持つ方、同認知症のオピニオンリーダーへの調査も行い、アルツハイマー型認知症医療の現状を詳細に把握するとともに、今後の展望を取りまとめた。調査結果によると、アルツハイマー型認知症患者数は高齢化とともに年々増加し、2020年には167万人に達するという。また、診断技術、治療薬の開発の進展にともない、より早期の患者が治療対象に加わった場合、2025 年には220万人に達すると予測されるとのこと。また、アルツハイマー型認知症治療薬の市場規模は2020年には2010年比2.7倍の 2,900億円にまで拡大する可能性があるという。詳細はこちらhttp://www.seedplanning.co.jp/press/2010/2010122801.html

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無煙タバコをやめたい人にも、禁煙補助薬バレニクリンは有効

 無煙タバコの常飲が多くの国で増加しているという。特に北欧ではその地位が確立しており、スウェーデンでは常飲者が逆転(19% vs. 11%)、ノルウェーでは16~35歳の32%が毎日無煙タバコを喫煙しているという。背景には、無煙タバコは有煙タバコより有害ではないと広く信じられていることがあり、そのことが禁煙補助薬の有効性の試験で無煙タバコに関する報告をみかけないことに反映されているとして、スウェーデンFagerstrom Consulting ABのKarl Fagerstrom氏らは、無煙タバコをやめたい人を対象に禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)の有効性と安全性について検討を行った。スウェーデンではタバコをやめたい人の約30%が無煙タバコ常飲者だという。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月6日号)掲載より。無煙タバコ常飲者で禁煙希望者を対象、投与12週間+14週間の禁煙率を評価 試験は、ノルウェー7つ、スウェーデン9つの医療施設(大半はプライマリ・ケア診療所)で行われた二重盲検プラセボ対照パラレル群の多施設共同無作為化試験。 参加者は新聞で公募され、18歳以上男女で、無煙タバコを1日8回以上常飲し、スクリーニング前1年以内では3ヵ月以上禁煙していた期間がなく、完全に禁煙をしたいと思っている人を被験者とした。3ヵ月以内に、有煙タバコを除く他のニコチン含有製品を常飲していた人、禁煙治療を受けていた人、その他先行する疾患治療、精神疾患治療を受けていた人は除外された。 被験者は無作為に、バレニクリン1日2回1mg(最初の1週間は滴定)投与群もしくはプラセボ投与群に割り付けられ、12週間治療され、その後14週間追跡調査された。 主要エンドポイントは、治療最終4週間(9~12週)の禁煙率で、コチニン濃度で確認した。副次エンドポイントは、9~26週間の持続性の禁煙率であった。安全性と忍容性の評価も行われた。 無作為化後に1回以上の試験薬投与を受けた被験者は431例(バレニクリン群213例、プラセボ群218例)だった。被験者の実態的人口統計学的背景、ベースラインでの無煙タバコ消費に関するデータは両群で同等だった。たとえば、男性被験者の割合はバレニクリン群89%(189例)、プラセボ群90%(196例)、平均年齢は両群とも43.9歳、無煙タバコ常飲は両群とも1日約15回、寝起き30分以内に常飲する人は両群とも約80%など。治療9~12週のバレニクリン群禁煙率の相対リスク1.60、優位性はその後も持続 結果、治療最終4週間(9~12週)の禁煙率は、バレニクリン群の方が有意に高かった。禁煙率はバレニクリン群59%(125例)に対しプラセボ群39%(85例)で両群差20ポイント、相対リスク1.60(95%信頼区間:1.32~1.87、P<0.001)、治療必要数(NNT)は5例だった。 このバレニクリン群の優位性は治療後の追跡調査期間14週の間も持続した。9~26週間の禁煙率は、バレニクリン群45%(95例)に対しプラセボ群34%(73例)で両群差11ポイント、相対リスク1.42(95%信頼区間:1.08~1.79、P=0.012)、NNTは9例だった。 プラセボ群との比較でバレニクリン群で最も共通してみられた有害事象は、嘔気(35%対6%)、疲労感(10%対7%)、頭痛(10%対9%)、睡眠障害(10%対7%)であった。治療中断に至った有害事象の発生(9%対4%)、また重篤な有害事象の発生(1%対1%)は両群ともにわずかであった。 結果を受けてFagerstrom氏は、「バレニクリンは、無煙タバコをやめたい人の安全な助けとなる」と結論。また最後に「本試験では、プラセボ群の禁煙率が高かったが、それは禁煙に後ろ向きの人が少なかったためだ」とも述べている。

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妊娠初期の抗てんかん薬カルバマゼピン、二分脊椎症と関連

妊娠第一トリメスターにおける抗てんかん薬カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)服用と先天異常との関連について、バルプロ酸(商品名:デパケンなど)よりも低リスクではあったが、二分脊椎症が特異であると認められることが、システマティックレビュー、ケースコントール試験の結果、示された。オランダ・フローニンゲン大学薬学部門のJanneke Jentink氏らによる。カルバマゼピンは、妊娠可能な欧州女性において最も一般的に服用されている。これまでその先天異常との関連を示唆する試験は複数あるが、個々の試験は小規模でリスク検出力が統計的に不十分なものであった。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月2日号)掲載より。文献レビューと380万分娩登録ベースのEUROCATデータを用いて解析試験は、妊娠第一トリメスターにおけるカルバマゼピン曝露と特異的な主要先天異常との関連を同定することを目的とし、Jentink氏らは、これまで公表されたすべてのコホート試験で試験目的のキーとなるインディケーターを同定し、住民ベースのケースコントロール試験で、そのインディケーターを検証した。レビューは、PubMed、Web of Science、Embaseを使って文献検索を行うとともに、1995~2005年に欧州19の先天異常レジストリから登録されたデータを含むEUROCAT Antiepileptic Study Databaseのデータも解析に含んだ。被験者は、文献レビューからは8試験のカルバマゼピン単独療法曝露2,680例、EUROCATからは先天異常が報告登録された9万8,075例(分娩全体数は380万例)であった。主要評価項目は、妊娠第一トリメスターでのカルバマゼピン曝露後の主要先天異常の全出現率、文献レビューで規定した5つの先天異常のタイプの症例群とコントロール群の2群(非染色体症候群と染色体症候群)との比較によるオッズ比であった。バルプロ酸よりもリスクは低い結果、文献レビューでの全出現率は3.3%(95%信頼区間:2.7~4.2)であった。先天異常登録例では131例の胎児がカルバマゼピンに曝露していた。先天異常のうち二分脊椎症だけが、カルバマゼピン単独療法群との有意な関連が認められた(非抗てんかん薬群との比較によるオッズ比:2.6、95%信頼区間:1.2~5.3)。しかし、そのリスクはバルプロ酸と比べると低かった(オッズ比:0.2、95%信頼区間:0.1~0.6)。その他の先天異常についてはエビデンスが得られなかった。総肺静脈還流異常症はカルバマゼピン単独療法群では0例であり、唇裂(口唇裂有無含む)オッズ比は0.2(95%信頼区間:0.0~1.3)、横隔膜ヘルニアは同0.9(同:0.1~6.6)、尿道下裂は同0.7(同:0.3~1.6)であった(オッズ比はすべて非てんかん薬群との比較)。さらに探索的解析の結果では、単心室欠損症と房室中隔欠損症のリスクが高いことは示された。Jentink氏は、「バルプロ酸よりもリスクは低いが、カルバマゼピンの催奇形性として相対的に二分脊椎症が特異である」と結論。また、データセットは大規模であったが、複数の主要な先天異常のリスク検出力は不十分であったとも述べている。

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ゾレドロン酸のbenefits beyond bone healthを確認、多発性骨髄腫で全生存、無増悪生存改善

第三世代ビスホスホネート製剤であるゾレドロン酸(商品名:ゾメタ)は、多発性骨髄腫患者において骨関連イベントの予防効果とは別個に全生存の改善をもたらし、骨の健常性の保持にとどまらない抗腫瘍効果を有する可能性があることが、イギリスInstitute of Cancer Research、Royal Marsden NHS Foundation TrustのGareth J Morgan氏らNational Cancer Research Institute Haematological Oncology Clinical Study Groupの検討で示された。ビスホスホネート製剤は、悪性骨病変を有する患者の骨関連イベントのリスクを低減することが確認されており、加えてゾレドロン酸は前臨床試験および臨床試験において、抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。第一世代ビスホスホネート製剤のclodronic酸と比較する無作為化試験研究グループは、多発性骨髄腫に対する一次治療において、ビスホスホネート製剤が臨床アウトカムに及ぼす効果を評価する無作為化対照比較試験を実施した。イギリスの120施設から登録された18歳以上の新たに診断された多発性骨髄腫患者が、ゾレドロン酸4mgを3~4週ごとに静注投与する群あるいはclodronic酸1,600mg/日を経口投与する群に無作為に割り付けられた。これらの患者は、さらに強化寛解導入療法あるいは非強化寛解導入療法を施行する群に割り付けられた。担当医、医療スタッフ、患者には治療割り付け情報は知らされず、ビスホスホネート製剤および維持療法は病勢進行となるまで継続された。主要評価項目は全生存、無増悪生存、全奏効率とした。全生存と無増悪生存の解析にはCox比例ハザードモデルを用い、全奏効率はロジスティック回帰モデルで解析した。抗腫瘍効果の観点からも、ゾレドロン酸による迅速な治療を2003年5月~2007年11月までに登録された1,970例のうち1,960例がintention-to-treat解析の適格基準を満たした。ゾレドロン酸群は981例(強化療法群555例、非強化療法群426例)、clodronic酸群は979例(それぞれ556例、423例)であった。治療カットオフの2009年10月5日の時点で、病勢進行となるまでのビスホスホネート製剤の投与期間中央値は350日[四分位範囲(IQR):137~632日]で、フォローアップ期間中央値は3.7年(IQR:2.9~4.7年)であった。ゾレドロン酸群は、clodronic酸群に比べ死亡率が16%[95%信頼区間(CI):4~26%]低下し(ハザード比:0.84、95%CI:0.74~0.96、p=0.0118)、全生存中央値は5.5ヵ月延長した[50.0ヵ月(IQR:21.0ヵ月~未到達) vs. 44.5ヵ月(IQR:16.5ヵ月~未到達)、p=0.04]。ゾレドロン酸群は、clodronic酸群に比べ無増悪生存が有意に12%(95%CI:2~20%)改善し(ハザード比:0.88、95%CI:0.80~0.98、p=0.0179)、無増悪生存中央値は2.0ヵ月延長した[19.5ヵ月(IQR:9.0~38.0ヵ月) vs. 17.5ヵ月(IQR:8.5~34.0ヵ月)、p=0.07]。完全奏効(CR)、最良部分奏効(very good PR)、部分奏効(PR)を合わせた全奏効率は、強化療法施行例[432例(78%) vs. 422例(76%)、p=0.43]および非強化療法施行例[215例(50%) vs. 195例(46%)、p=0.18]ともに、ゾレドロン酸群とclodronic酸群で有意な差は認めなかった。二つのビスホスホネート製剤はいずれも全般的に良好な忍容性を示し、急性腎不全や治療によって発現した重篤な有害事象の発生率は同等であった。しかし、顎骨壊死の発生率はゾレドロン酸群が4%(35例)と、clodronic酸群の<1%(3例)に比べ多かった。結果を受け著者は、「新規診断の多発性骨髄腫患者に対しては、骨関連イベントの予防のみならず抗腫瘍効果の観点からも、ゾレドロン酸による迅速な治療が支持される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高齢急性骨髄性白血病に対する強化寛解導入化学療法の予後を予測するスコア法

高齢の急性骨髄性白血病(AML)患者に対する強化寛解導入療法による完全寛解(CR)の可能性および早期死亡(ED)のリスクの予測に有用なスコア法が、ドイツ・ミュンスター大学血液腫瘍科のUtz Krug氏らGerman Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group and the Study Alliance Leukemia Investigatorsによって開発された。60歳以上のAMLのうちAML以外は健康な状態(すなわち強化寛解導入療法が施行可能な病態)の患者の約半数は強化化学療法によってCRが達成されるが、若年の患者に比べEDのリスクが高いという。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。AMLCG1999およびAML1996のデータを別個に解析研究グループは、60歳以上のAML患者において標準的な臨床因子および検査値とCR、EDの関連を検証し、強化化学療法のリスクを評価するウェブベースのアプリケーションを開発するための検討を行った。German Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group 1999 study(AMLCG1999)に登録された60歳以上の、AML以外は健常な患者1,406例について、細胞遺伝学的および分子的リスクプロフィール情報の有無別のリスクスコア法を開発するために、多変量回帰分析を用いた解析を行った。これらの患者は、以下の二つのレジメンのいずれかによる強化寛解導入療法を2コース施行された。(1)tioguanine+標準用量シタラビン(商品名:キロサイド)+ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)併用療法→高用量シタラビン+ミトキサントロン(商品名:ノバントロン)併用療法、(2)高用量シタラビン+ミトキサントロン併用療法。AMLCG1999に基づくリスク予測の妥当性は、Acute Myeloid Leukaemia 1996 study(AML1996)で、シタラビン+ダウノルビシン併用療法を2コース施行された60歳以上のAML患者801例において別個に検証された。治療法の決定が困難な場合の医師支援に有用CRあるいはEDと有意な相関を示す因子として、体温、年齢、骨髄異形成症候群(MDS)を経ずに発症した白血病(de-novo leukaemia)か抗がん剤治療あるいは先行する血液疾患に起因する二次性の白血病か、ヘモグロビン、血小板数、フィブリノーゲン、血清乳酸脱水素酵素濃度が確認された。CRの確率は、細胞遺伝学的および分子的リスクがある場合(スコア1)は12~91%、ない場合(スコア2)は21~80%であった。EDリスクの予測値はスコア1の場合は6~69%、スコア2の場合は7~63%であった。リスクスコアの予測能は個々の患者コホートにおいて確定された(CRスコア1:10~91%、CRスコア2:16~80%、EDスコア1:6~69%、EDスコア2:7~61%)。著者は、「AMLスコアは、AML以外は健常な高齢患者に対して強化寛解導入療法を施行した場合のCRおよびEDの確率の予測に使用可能である」と結論し、「これらの情報は、治療法の決定が困難な場合の医師の支援に有用と考えられる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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