早期glatiramer acetate治療、多発性硬化症の臨床的進行を抑制:PreCISe試験

提供元:ケアネット

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公開日:2009/11/12

 



glatiramer acetateによる早期治療は、多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)が疑われる最初の臨床症状(clinically isolated syndrome; CIS)とMRI上で活動性の脳病変が検出されている患者が、臨床的に確実なMS(clinically definite MS; CDMS)へ移行するのを遅延させることが、イタリアSan Raffaele科学研究所生命・健康大学実験神経学のG Comi氏ら実施した無作為化試験(PreCISe試験)で示された。MSは軸索の損傷および消失を伴う中枢神経系の炎症性脱髄性疾患で、軸索損傷の範囲は炎症の程度と密接に関連しており、罹患期間や臨床的カテゴリー分類が重要とされる。glatiramer acetateは、欧米ではすでに再発・寛解を繰り返すMS(relapsing-remitting MS; RRMS)における再発回数の減少効果について承認を得ており、1日1回皮下注法による再発率、MRI上の活動性病変数、疾病負担の低減効果が確認されているという。Lancet誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月7日号)掲載の報告。

16ヵ国80施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験




PreCISe試験の研究グループは、早期glatiramer acetate治療によるCDMSへの進行の遅延効果を検証する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。

2004年1月~2006年1月までに16ヵ国80施設から、CISとして単巣性の臨床徴候が見られ、MRI T2強調画像上で6mm以上の脳病変が2箇所以上検出された481例が登録された。これらの症例が、glatiramer acetate 20mg/日を皮下注する群(243例)あるいはプラセボ群(238例)に無作為に割り付けられ、36ヵ月あるいはCDMSが発症するまで治療が行われた。

患者および試験に直接関係する全研究者は治療の割り付け情報を知らされなかった。主要評価項目はCDMS発症までの期間とし、CDMSは2回目の臨床的な発病に基づいて判定された。

CDMS発症率が45%低減、基礎疾患化への進展防止の選択肢に




無作為割り付けされたすべての症例が主要評価項目の解析対象となった。glatiramer acetate群では、CDMSの発症率がプラセボ群よりも45%低減した(ハザード比:055、p=0.0005)。患者の25%がCDMSに移行するまでの期間は、プラセボ群の336日に比べてglatiramer acetate群では722日まで延長され、115%の増分の遅延効果が認められた。

glatiramer acetate群で最も高頻度に見られた有害事象は、注射部位反応(glatiramer acetate群:56% vs. プラセボ群:24%)および即時型注射後反応(19% vs. 5%)であった。

著者は、「glatiramer acetateによる早期治療は、CISが見られMRI上で活動性の脳病変が検出されている患者の病態がCDMSへと進行するのを有意に抑制した」と結論し、「今回は短期的な再発抑制効果が確認されたが、不可逆的な障害の蓄積を長期的に低減する可能性もある。MSが基礎疾患と化するのを防止するために早期に治療を開始することを選んだCISの患者とって、治療選択肢の一つとなるだろう」とコメントしている。

(菅野守:医学ライター)