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認知症患者の4人に1人に脳に悪影響を及ぼす薬が処方

 認知症のあるメディケア加入高齢者の4人に1人が、抗精神病薬、バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬などの脳機能に影響を及ぼす薬剤によって危険にさらされていることが、新たな研究で明らかにされた。これらの高リスクの中枢神経系(CNS)活性薬は、転倒やせん妄、入院のリスクを上昇させ、特に、認知機能障害のある高齢患者においてはその影響が顕著であることから、ガイドラインでは使用を控えることが推奨されている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医科大学院のJohn Mafi氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月12日掲載された。 Mafi氏は、「正常な認知機能を持つ患者と比較して、有害事象のリスクがより高い認知機能障害のある高齢者で、これらの薬剤の処方頻度が高いことが分かった」とニュースリリースで述べている。 本研究では、米連邦政府の健康・退職研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータとメディケア請求データをリンクさせ、2013年1月1日から2021年12月31日の間に、メディケアパートA・B・Dに連続2年以上加入している65歳以上の患者4,842人を対象に、処方パターンを調べた。対象患者は、正常、認知症ではない認知機能障害(CIND)、認知症の3群に分類された。また、CNS活性薬は、1)抗コリン作用の強い抗うつ薬、2)抗精神病薬、3)バルビツール酸系薬、4)ベンゾジアゼピン系薬、5)非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を対象とし、これらの薬剤を1種類以上、28日以上処方されていた患者の割合を調べた。さらに、各処方の臨床的適応の有無についても判定した。 その結果、潜在的に不適切なCNS活性薬を処方された対象者の割合は、認知機能が正常な人で17.0%、CINDのある人で21.7%、認知症のある人で25.1%と推定され、認知機能の状態が悪いほどこのタイプの薬剤を処方されやすいことが示唆された。潜在的に不適切なCNS活性薬を処方された対象者の割合は、2013年の19.9%から2021年には16.2%へと3.7パーセントポイント有意に低下していた。臨床的に適切な処方は、2013年の6.0%から2021年には5.5%へとわずかに減少したが、統計学的な有意差はなかった。一方、臨床的に不適切な処方は15.7%から11.4%へと有意に減少していた。 Mafi氏は、「この減少は心強いものの、2021年時点で、これらの処方を受けていた患者の3分の2以上に、臨床的に正当化できる記録がなかった。これは、不適切で有害となり得る処方が依然として多いことを示している」と述べている。 対象とした薬剤の種類別に分析すると、2013年から2021年にかけて、以下のような傾向が認められた。・ベンゾジアゼピン系薬は11.4%から9.1%に有意に減少。・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は7.4%から2.9%に有意に減少。・抗精神病薬は2.6%から3.6%へと増加したが、統計学的な有意差なし。・抗コリン作用の強い抗うつ薬は2.6%のままで変化なし。・バルビツール酸系薬は0.4%から0.3%にわずかに減少したが、統計学的な有意差なし。 論文の筆頭著者であるUCLA内科レジデントであるAnnie Yang氏は、「高齢患者やその介護者は、これらの薬剤が本当に適切かどうかを医師と密に相談することが重要だ。不適切と判断された場合には代替治療を検討し、リスクを抑えながら薬剤の減量や中止が可能かどうかをケアチームとともに考えるべきだ」とニュースリリースの中で述べている。

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2月3日 不眠の日【今日は何の日?】

【2月3日 不眠の日】〔由来〕「不眠」について、記念日を通して不眠の改善の適切な情報発信を行うことを目的に「ふ(2)み(3)ん」(不眠)と読む語呂合わせから治療薬などの販売を行うエスエス製薬が制定した。また、同じ語呂合わせから毎月23日も「不眠の日」と制定。関連コンテンツ睡眠時無呼吸症候群アップデート【診療よろず相談TV】看護師の不眠に解決策!? シフト勤務に特化したデジタル認知行動療法の効果【論文から学ぶ看護の新常識】外来ベンゾジアゼピン減少戦略、入院中の不眠症治療標準化がポイント睡眠障害を有するうつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有効性眠気の正体とは?昼間の眠気は異常?/日本抗加齢医学会

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チルゼパチドは肥満症患者などの精神症状のリスクとならない

 肥満症の患者にチルゼパチドを処方した場合、何らかの精神症状を伴うのであろうか。このテーマについてアメリカのペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院精神医学科のThomas A. Wadden氏らの研究グループは、SURMOUNT試験の事後解析を行った。その結果、既往の精神症状のない過体重または肥満症患者にはチルゼパチドはうつなどのリスクと関連しないことがわかった。この結果は、Obesity誌2026年1月15日オンライン版に公開された。チルゼパチドの使用で精神疾患の有害事象はプラセボとおおむね同等 研究グループはチルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT試験1~3より既往の主要精神病理を伴わない肥満成人を対象に、チルゼパチド投与に伴う精神科的変化を事後解析で評価した。 方法としてプラセボ対照群と比較したチルゼパチド投与群(5/10/15mgまたは最大耐容量10/15mg)の4,056例について、抑うつ症状は患者健康質問票-9(PHQ-9)により、自殺念慮(SI)および自殺行動(SB)はコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)により測定し、神経系および精神疾患の有害事象(AE)を収集した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時のPHQ-9スコアの平均値(SD)は、チルゼパチド群で2.7(SD3.0)、プラセボ群で2.6(SD3.1)であり、うつ病の症状は皆無またはごくわずかだった。・72週時点のスコアは、チルゼパチド投与群で1.9(SD2.7)、プラセボ群で2.4(SD3.3)だった(推定治療差[SE]:-0.6[0.1])、p<0.001。・チルゼパチド投与群では、より重症なPHQ-9カテゴリーへの移行率が低かった(18.2%vs.24.3%、p<0.001)。・C-SSRSでは、各群の0.6%がSIを報告したが、そのほとんどは低リスクと評価された。・非致死性SBは、チルゼパチド投与群で0.1%、プラセボ群では0.0%に発生した。・AEは各群でおおむね同様だった。 研究グループは、この結果から「既往の主要精神病理を伴わない過体重または肥満症患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、うつ病リスクの増加と関連していないことが示唆された。チルゼパチド投与群で観察された自殺念慮/自殺行為の発生率は、他のインクレチン系治療薬と同程度だった。重篤な精神疾患を有する患者におけるチルゼパチドの安全性に関しては、さらなる研究が必要」と結論付けている。

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認知症に対する抗精神病薬中止に伴うBPSD再発リスクは?

 認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療には、抗精神病薬が使用される。しかし、治療は有害な転帰と関連している。2018年のコクランレビューにおいて、治療群間の試験未完了者数の差を比較した結果、抗精神病薬の中止がBPSDにほとんど影響を及ぼさない可能性を示唆する質の低いエビデンスが示された。また、再発リスクの統合エフェクトサイズは報告されていなかった。英国・St Pancras HospitalのSophie Roche氏らは、認知症患者における抗精神病薬中止後のBPSD再発の統合リスク比(RR)についてメタ解析を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年12月15日号の報告。 本研究では、BPSDの再発リスクに試験デザイン(エンリッチド・レスポンダー・サンプルvs.長期離脱患者)、治療期間、フォローアップ期間、離脱速度、性別が影響を及ぼすという仮説を立てた。2018年1月~2024年6月に公表された研究について、PsycINFO、EMBASE、PubMed、ClinicalTrials.govのデータベースよりシステマティックに検索した。2018年のコクランレビューで特定された研究8件もメタ解析に含めた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象研究は9件、観察結果682件およびイベント135件が報告された。・再発の定義には、BPSD悪化による参加者の除外または抗精神病薬/救急薬の定期処方開始を含めた。・ランダム効果モデルでは、抗精神病薬の中止による再発のプール相対リスクは1.52(95%信頼区間:1.18~1.95、p=0.005)であった。・メタ回帰分析の結果、試験の種類、離脱速度、フォローアップ期間、性別は再発リスクに影響を及ぼさないことが示された。 著者らは「抗精神病薬が不要と判断された患者においては、慎重な処方や減量または中止することが重要であるが、服薬を継続すべき患者も存在する。再発の相対リスクは、試験デザインに影響されず、処方を減らして有効性を証明することを目的とした両試験でエフェクトサイズが同等であったことは、とくに驚くべきことであった。抗精神病薬中止の成功に関連する因子を特定するには、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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前立腺肥大症はうつ病および不安症のリスクと関連

 前立腺肥大症(BPH)はうつ病および不安症のリスク上昇と関連しており、うつ病に対する因果関係が遺伝的根拠によって支持されるとする研究結果が、「International Journal of Psychiatry in Clinical Practice」に11月5日掲載された。 中南大学湘雅第三医院(中国)のJinjing Guo氏らは、UKバイオバンクから得られた横断的・縦断的・遺伝的データを用いて、22万9,001人を対象にBPHとメンタルヘルスとの関連を検討した。ベースラインでの関連を評価したうえで、7年間追跡した5万1,805人および14.9年間追跡した17万1,228人における前向きリスク(ハザード)も評価した。因果関係の特定にはメンデルランダム化解析を用いた。 その結果、ベースラインにおいて、BPHはうつ病および不安症のオッズ上昇と関連していることが分かった(オッズ比はそれぞれ1.42、1.44)。前向きの追跡では、BPHは7年後のうつ病および不安症の発症を予測し(同1.41、1.48)、さらに14.9年間にわたるうつ病および不安症のリスク上昇とも関連した(ハザード比はそれぞれ1.38、1.45)。サブグループ解析では、特に60歳未満、就労中、高所得、身体活動が少ない層でBPHがうつ病および不安症のリスクを有意に上昇させることが示された。双方向メンデルランダム化解析では、BPHはうつ病の原因となることが示されたが(オッズ比1.003〔95%信頼区間1.000~1.006〕)、不安症には因果関係は認められず、むしろ不安症はBPHリスクをわずかに抑制することが示された(同0.998〔0.997~1.000〕)。 著者らは、「遺伝学的解析の結果は、BPHがうつ病に及ぼす因果的寄与はごくわずかであることを示唆しており、慎重に解釈されるべきである。これらの知見は、BPHの心理的負担に関する不確実性を解消するとともに、臨床管理においてメンタルヘルスのスクリーニングおよび支援を組み込むことの重要性を強調するものである」と述べている。

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うつ病から双極症への転換リスク比較、SSRI vs.SNRI

 抗うつ薬、とくに選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の使用に伴う単極性うつ病から双極症への診断転換リスクの潜在的比較については、依然として議論が続いている。韓国・翰林大学校Ka Hee Yoo氏らは、SSRIおよびSNRIの使用と診断転換リスクとの関連性を調査した。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2025年12月14日号の報告。 国際標準規格であるObservational Medical Outcomes Partnership-Common Data Model(OMOP-CDM)韓国版を用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象コホートは、SNRI使用患者で構成され、比較コホートはSSRI使用患者で構成した。主要アウトカムは、抗うつ薬投与開始6ヵ月以上経過後における双極症の新規診断とした。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコア調整後、SSRI使用患者とSNRI使用患者との間で診断転換リスクに有意な差は認められなかった。・分散ネットワーク解析では、1:1傾向スコアマッチング(ハザード比[HR]:1.28、95%信頼区間[CI]:0.90〜1.82、I2=24.1%)および1:2傾向スコアマッチング(HR:1.16、95%CI:0.88〜1.53、I2=0%)のいずれにおいても、SNRI使用患者はSSRI使用患者と比較し、診断転換リスク上昇に有意な関連が認められなかった。 著者らは「本研究では、SSRI使用患者とSNRI使用患者との間で双極症への診断転換リスクに有意差は認められなかった」としている。

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睡眠データから130種類の疾患リスクを予測可能か

 眠っている間に体はさまざまな「メッセージ」を発しており、それを読み取ることで将来の重大な病気のリスクを予測できる可能性のあることが、新たな研究で示された。「SleepFM」と呼ばれる人工知能(AI)を用いた実験的な睡眠基盤モデルは、ポリソムノグラフィー(PSG)データを用いて、約130種類の疾患・健康状態の将来のリスクを予測できるという。米スタンフォード大学医学部生物医学データサイエンス分野のJames Zou氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月6日掲載された。研究グループは、「SleepFMは、がん、妊娠合併症、心疾患、精神疾患など、非常に幅広い疾患の予測において高い性能を示した。また、全死亡リスクの予測も可能だった」と述べている。 PSGは睡眠解析で用いられる検査であり、睡眠中の人の脳波(EEG)、心電図(ECG)、心拍、眼球運動などを測定する。PSGは、多様な生理学的信号を取得できる一方で、標準化や汎用性の確保、また複数の生理学的信号を統合する難しさから十分に活用されてこなかった。 今回、この課題を克服するために研究グループは、PSGを構成する生理学的信号のうちの1つを意図的に隠し、隠された信号と整合する情報を残りの信号から推測するように訓練するleave-one-out contrastive learningと呼ばれる新たな学習方法を開発した。SleepFMは、睡眠センターでPSG検査を受けた約6万5,000人の合計58万5,000時間以上に及ぶ睡眠データを用いて訓練された。睡眠データは5秒単位に分割されている。これは、ChatGPTなどの大規模言語モデルの学習に用いられる「単語」に相当する単位である。Zou氏は、「SleepFMは、本質的には『睡眠の言語』を学習していると言える」とニュースリリースで述べている。また同氏は、「この研究における技術的進歩の一つは、全ての異なるデータ様式を調和させ、それらが一緒になって同じ言語を学習できるようにする方法を見つけ出したことだ」と説明している。 モデルの調整後、研究グループはまず、睡眠段階(レム睡眠、ノンレム睡眠など)の分類や睡眠時無呼吸の重症度診断を実施した。その結果、SleepFMは、現行の最先端モデルと同等以上の性能を示した。そこで、2〜96歳の患者3万5,052人を最長で25年間追跡したスタンフォード睡眠医学センターの長期データを用いて、睡眠データと健康リスクとの関連を解析した。予測性能の評価には、C統計量と呼ばれる指標が用いられた。C統計量は、0.8以上であれば高い予測精度を持つとされる。 電子カルテ内に記録されていた1,000以上の疾患カテゴリーを解析した結果、130種類の疾患・健康アウトカムについては、PSGデータから妥当な精度で予測可能であることが判明した。特に予測精度が高かった疾患は、パーキンソン病(C統計量0.89)、認知症(同0.85)、高血圧性心疾患(同0.84)、心筋梗塞(同0.81)、前立腺がん(同0.89)、乳がん(同0.87)、死亡(同0.84)であった。 こうした結果を受けてZou氏は、「これほど多様な疾患について、モデルが有用な予測を行えることは、私たちにとっても嬉しい驚きだった」と述べている。 研究グループは、「本研究では、心疾患の予測においては心臓の信号が、精神疾患の予測においては脳信号がより重要な要素であった。その一方で、最も正確な予測を達成したのは、全てのデータ様式を組み合わせた場合であった」と指摘。論文の責任著者の1人であるスタンフォード大学クレイグ・レイノルズ睡眠医学教授のEmmanuel Mignot氏は、「疾患予測において最も多くの情報が得られたのは、異なるチャネルを対比させたときだった。例えば、脳は眠っているように見えるのに、心臓は起きているように見えるなどの同期の乱れは、健康上の問題を示唆している可能性がある」と述べている。 研究グループは現在、ウェアラブルデバイスなどの他のデバイスからのデータを追加することで、SleepFMの予測性能をさらに高める方法を模索している。また、SleepFMが実際にどのような特徴に注目して予測を行っているのかを解明する研究も進めている。

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統合失調症患者における遺伝と性差との関係

 親が統合失調症の場合、世代を超えてメンタルヘルスリスクに影響を及ぼすが、性別による伝播パターンは、依然として十分に定量化されていない。中国・北京大学のZhi Sheng氏らは、中国における統合失調症患者の子供における、親が報告した伝播率と家族性のリスク因子を調査した。The Lancet Regional Health誌2025年12月号の報告。 統合失調症患者2万7,315例とその子供3万5,772例を対象に横断研究を実施した。子供の精神疾患の診断は、親が報告し、その後、医療管理システムを通じて確認した。年齢と性別で標準化した伝播率は、2020年の中国国勢調査を参照した。ロバストポアソン回帰分析により、調整伝播率比(aRR)を算出した。多変量ロジスティックモデルを用いて、若年子孫のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・親が報告した子供における伝播率は2.68%(95%信頼区間[CI]:2.52〜2.85)であり、統合失調症スペクトラム障害(1.42%)が大部分を占めた。・人口統計学的標準化後の標準化率は2.53%(95%CI:2.01〜3.05)であった。・親の疾患発症後に妊娠した場合では、子供のリスクが86.0%増加することが示された。・リスク上昇と有意な関連が認められた因子は、第1子(aRR:1.67)、低所得世帯(aRR:1.43)、男児(aRR:1.14)であった。・親の年齢の影響も性別特異性が認められた。・未成年(17歳未満)の子供を対象としたサブグループ解析では、母子間での影響は、親の発症後の出産(オッズ比[OR]:2.48、p<0.001)、世帯収入の低さ(OR:2.32、p<0.001)、出生前の抗精神病薬の使用(OR:1.69、p<0.001)と関連が認められた。・父子間での影響は、父親のみによる養育(OR:2.15、p<0.001)、世帯収入の低さ(OR:1.97、p<0.001)、男児(OR:1.79、p=0.001)と関連していた。・両親による養育は、母子および父子の統合失調症群の両方において、強力な保護効果であることが示唆された(OR:0.75、95%CI:0.51〜1.10)。 著者らは「本研究の結果は、家族集積、性別によって異なる周産期曝露、そして養育環境の間に重要な相互作用があることを浮き彫りにした。政策の優先事項としては、性別に基づいた遺伝カウンセリング、出生前の薬物モニタリング、そして養育の不平等を解消するための家族支援プログラムを統合する必要がある」としている。

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うつ病か?せん妄か?うつ病の過剰診断の現状

 精神科以外の臨床医によるうつ病とせん妄の誤診は一般的である。うつ病の過剰診断は、正常な情緒反応へのスティグマやせん妄への対応遅延につながる可能性がある。米国・クリーブランド・クリニックのMolly Howland氏らは、精神科以外の医療サービスとコンサルテーション・リエゾン精神科(CLP)サービスとの間における診断の一致率を調査するため、多施設におけるレトロスペクティブカルテレビューを実施した。Journal of Psychosomatic Research誌2026年2月号の報告。 クリーブランド・クリニックの2施設における入院患者を対象に、うつ病およびせん妄の紹介について調査した。紹介理由とCLPサービスの診断の一致率を評価した。従属変数として、うつ病の過剰診断、うつ病と誤診されたせん妄を、独立変数として、チームの主要専門分野、人口統計学的、臨床的変数を用いて、多変量ロジスティック回帰モデルを実施した。 主な結果は以下のとおり。・診断一致率は、せん妄で88%、厳密なうつ病診断で67%、広義のうつ病診断で80%であった。・CLP精神医学的診断を受けなかったうつ病で紹介された患者のうち、適応障害が49%、不安症/強迫症が18%、せん妄が16%、神経認知障害が4%で診断された。・高齢、過去の精神医学的診断は、うつ病の過剰診断の可能性を低下させた。・向精神薬の使用は、せん妄がうつ病と誤診される可能性を高めた。 著者らは「プライマリケアでは、うつ病が過剰診断されており、せん妄はより正確に診断されていた。しかし、代替診断のほとんどが不安症/強迫症であったことを考えると、プライマリケアは心理的苦痛の特定に長けているように思われ、これは精神科医によるスティグマ解消の啓発や教育活動に関連している可能性がある。プライマリケアでは、過去の精神疾患診断をうつ病のリスク因子として認識し、高齢者の症状にも配慮していたが、過去の向精神薬の使用はバイアスをもたらす可能性が示唆された。直接的な知識や態度の評価を含む、さらなる研究が今後求められる」としている。

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コロナ禍で新規診断が増えた疾患・減った疾患/BMJ

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark D. Russell氏らによる、OpenSAFELY-TPPを用いたコホート研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、うつ病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、骨粗鬆症の新規診断は予測値を下回ったのに対し、慢性腎臓病は2022年以降に診断数が急増し、サブグループ解析ではとくに認知症に関して民族および社会経済的状況により新規診断数の回復パターンに差があることが示された。著者は、「本研究は、日常診療で収集される医療データを用いた疾病疫学のほぼリアルタイムのモニタリングの可能性を示すとともに、症例発見の改善や医療の不平等を検討するための戦略立案に寄与する」とまとめている。BMJ誌2026年1月21日号掲載の報告。イングランドの約3千万例対象、COVID-19パンデミック前後の慢性疾患の新規診断と有病率を解析 研究グループは、2016年4月1日~2024年11月30日に、OpenSAFELY-TPPプラットフォームにデータを提供している一般診療所に登録され、かつ診療所に対して直接の医療に関与しない組織への個人データの共有を希望しない旨の登録をしていない患者2,999万5,025例を対象として、19の慢性疾患について年齢・性別標準化発症(新規診断)率および有病率の経時推移を検討した。 19の慢性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、冠動脈心疾患、慢性腎臓病(ステージ3~5)、セリアック病、COPD、クローン病、認知症、うつ病、2型糖尿病、てんかん、心不全、多発性硬化症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬、関節リウマチ、脳卒中/一過性脳虚血発作、潰瘍性大腸炎。 COVID-19パンデミックが、これら慢性疾患の診断に与えた影響を評価する目的で、パンデミック前のパターンから予測された期待診断率に基づく季節変動自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average:SARIMA)モデルを用い、パンデミック発生後の予測診断率と実際の観察診断率の差を比較した。パンデミック初年度に新規診断が急減、4年後もうつ病などは減少したまま パンデミック発生後の新規診断率はパンデミック前と比較し、初年度(2020年3月~2021年2月)に19疾患のすべてで急減した。ただし、その後の回復傾向は疾患ごとに異なった。 2024年11月時点でも、いくつかの疾患では新規診断数が予測値を下回っており、とくにうつ病(予測より-73万4,800件[-27.7%]、95%予測区間[PI]:-76万6,400~-70万3,100)で減少幅が最も大きく、喘息(-15万2,900件[-16.4%]、95%PI:-16万8,300~-13万7,500)、COPD(-9万100件[-15.8%]、-9万8,900~-8万1,400)、乾癬(-5万4,700件[-17.1%]、-5万9,200~-5万100)、骨粗鬆症(-5万4,100件[-11.5%]、-6万1,100~-4万7,100)も大きく減少した。 一方、慢性腎臓病の診断数は、パンデミック初期に減少したものの、2022年以降はパンデミック前の水準を上回る増加を示した(予測より35万9,000件[34.8%、95%PI:33万3,500~38万4,500]増加)。 人種および社会経済的状況で層別化したサブグループ解析の結果、パンデミック初期の減少後、白人および社会経済的困窮度が低い地域では、認知症の診断率がパンデミック前の水準を上回って増加したが、他の人種および困窮度が高い地域では増加しなかった。

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頭部外傷は自殺企図リスクを高める

 頭部への強い打撃は、自殺リスクを大幅に高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。頭部外傷を経験した人は、経験していない人に比べて自殺企図を抱くリスクが21%高いことが明らかになったという。英バーミンガム大学疫学およびリアルワールドエビデンス分野のNicola Adderley氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」1月27日号に掲載された。 論文の責任著者であるAdderley氏は、「この研究結果は、頭部外傷の影響が身体的な症状や後遺症にとどまらないことを示している。頭部外傷は、心理面にも深刻な影響を及ぼす可能性があるのだ。患者の転帰を改善し、安全を確保するためには、精神疾患の既往にかかわらず、最近、頭部外傷を負った全ての人に対し、自殺リスクの評価を検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、英国の入院データおよび死亡統計データとリンクさせたプライマリケアの20年に及ぶデータを用いて、頭部外傷歴のある患者とない患者との間で、自殺企図(自殺による死亡も含む)リスクや自殺企図および自殺による死亡のリスク因子を比較した。頭部外傷歴のある患者38万9,523人に対し、年齢、性別、居住地域を一致させた頭部外傷歴のない患者を1人につき4人選定し(計148万9,675人)、解析に含めた。 対象者のうち、頭部外傷歴のある患者では5,107件(1,000人年当たり2.4件)、ない患者では9,815件(同1.6件)に自殺企図の記録が残されており、頭部外傷歴のある患者では自殺企図のリスクが21%高いことが示された(ハザード比1.21、95%信頼区間1.17〜1.25)。特に自殺企図のリスクが高かった因子は、頭部外傷後12カ月以内、社会的剥奪の程度の高さ、精神疾患の既往であった。12カ月を過ぎるとリスクは時間とともに低下したが、それでも頭部外傷歴のない人と比べると依然として高い状態が続いていた。一方、自殺による死亡のリスクについては、頭部外傷歴のある患者で有意な上昇は認められなかった。このことから、頭部外傷は致死的ではない自殺企図の増加に関与している可能性が示唆された。 研究グループは、「本研究結果は、全体的には、頭部外傷歴のある患者では回復期において、より多くの精神的支援を必要としていることを示唆している」と述べている。論文の上席著者である英バーミンガム大学疫学分野のNeil Thomas氏は、「これらの結果は、臨床実践と医療政策の双方に重要な示唆を与えるものであり、的を絞ったメンタルヘルスおよびウェルビーイング支援が急務であることを浮き彫りにしている。特に、精神疾患の既往に関係なく、頭部外傷後最初の12カ月間を中心に、自殺リスクを評価し、予防戦略を立てる方法の開発とその検証を進めるべきである」とニュースリリースで述べている。 なお、本論文の付随論評では、頭部外傷と自殺リスクの関連には、情動調整や意思決定に重要な脳構造の損傷が関与している可能性が指摘されている。これらの領域の損傷は、衝動性や抑制の欠如、判断力の低下を引き起こし、自傷行為のハードルを下げる可能性があるという。

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睡眠障害やうつ病は急性冠症候群リスクと関連するか?~メタ解析

 精神疾患と急性冠症候群との関連を評価したシステマティックレビューおよびメタ解析により、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安障害、睡眠障害、うつ病が急性冠症候群のリスク増加と関連し、PTSDと睡眠障害は睡眠の質が心血管疾患アウトカムに潜在的に関与する可能性があることが、カナダ・カルガリー大学のArnav Gupta氏らによって示された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2026年1月14日号掲載の報告。 これまでの研究により、精神疾患は従来の心血管リスク因子と関連し、それらを介して急性冠症候群のリスクを高める可能性が示唆されているが、精神疾患ごとのリスクについては十分明らかにはなっていなかった。そこで研究グループは、精神疾患のない患者と比較して、精神疾患を有する患者における急性冠症候群との関連性を評価するためにシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。MEDLINE、EmbaseおよびPubMedを用いて、精神疾患と急性冠症候群との関連性を調査した観察研究またはランダム化試験を抽出した。データはランダム効果メタ解析で統合した。 主な結果は以下のとおり。●25件の研究が包含基準を満たした。参加者は2,204万8,504例で、年齢中央値は48.0歳、男性は1,301万9,897例(59.1%)であった。●PTSD、不安障害、睡眠障害、うつ病は急性冠症候群のリスク増加と関連していた。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ・PTSD HR:2.73、95%CI:1.94~3.84、p<0.001、エビデンスの確実性:中  ・不安障害 HR:1.63、95%CI:1.40~1.89、p<0.001、エビデンスの確実性:低 ・睡眠障害 HR:1.60、95%CI:1.22~2.10、p<0.001、エビデンスの確実性:低 ・うつ病 HR:1.40、95%CI:1.11~1.78、p=0.01、エビデンスの確実性:非常に低●双極症および精神病性障害は、急性冠症候群のリスク増加との有意な関連は認められなかった。 ・双極症 HR:1.48、95%CI:0.47~4.61、p=0.28、エビデンスの確実性:非常に低 ・精神病性障害 HR:0.97、95%CI:0.01~178.30、p=0.06、エビデンスの確実性:非常に低 研究グループは「本システマティックレビューとメタ解析の結果は、うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害が急性冠症候群のリスク増加と関連していることを示唆している。とくに、PTSDと睡眠障害は急性冠症候群の重要なリスク因子として浮上し、睡眠の質が心血管疾患のアウトカムに潜在的に関与する可能性がある」とまとめた。

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アルコールは認知症を予防するのか?~メタ解析

 アルコール摂取と認知症リスクとの関連を明らかにするため、中国・黒龍江中医薬大学附属第一医院のRen Zhang氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Internal Medicine Journal誌オンライン版2025年12月10日号の報告。 2024年7月22日までに公表された研究をPubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースより網羅的に検索した。対象研究は、アルコール摂取と認知症リスクとの関連を評価した研究とした。研究の質の評価には、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いた。アルコール摂取と認知症リスクの関連性は、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を用いて評価した。アルコール摂取量、地域、年齢に基づいてサブグループ解析を実施した。すべての統計解析は、Stata 15.0を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析では、アルコール摂取とすべての原因による認知症(ACD)リスク、アルツハイマー病(AD)リスク、血管性認知症(VD)リスク、その他の認知症リスクとの間に有意な関連は認められなかった。【ACD】RR:1.03、95%CI:0.84~1.27【AD】RR:0.97、95%CI:0.86~1.08【VD】RR:1.09、95%CI:0.95~1.26【その他の認知症】RR:0.62、95%CI:0.33~1.15・飲酒量別のサブグループ解析では、軽度から中程度の飲酒は、ACD(RR:0.88、95%CI:0.81~0.96)およびAD(RR:0.88、95%CI:0.79~0.97)のリスク低下と関連していた。・しかし、多量の飲酒は、すべての認知症タイプのリスク増加と有意な関連が認められた。【ACD】RR:1.18、95%CI:1.02~1.36【AD】RR:1.29、95%CI:1.21~1.36【VD】RR:1.25、95%CI:1.11~1.40・さらにサブグループ解析を行った結果、軽度から中程度の飲酒による認知症予防効果は、欧州および60~69歳の年齢層でより強いことが示唆された。 著者らは「軽度から中程度の飲酒は認知症を予防することが示唆された。しかし、大量飲酒やアルコール使用障害は認知症のリスクを高める可能性がある」と結論付けている。

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指先からの採血による血液検査でアルツハイマー病の兆候を正確に評価

 指先から採取した血液を郵送して行う血液検査によって、アルツハイマー病に関連するマーカーを正確に検出できることが、新たな研究で示された。これによって脳の変性疾患であるアルツハイマー病の診断や研究がより容易になる可能性があるという。米バナー・ヘルス、フルイド・バイオマーカー・プログラムのシニアディレクターであるNicholas Ashton氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月5日掲載された。 この検査は、指先に針を刺して少量の血液を採取するフィンガー・プリック・テストと呼ばれるもので、リン酸化タウタンパク質(p-tau217)やグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の血中濃度を正確に測定できるという。これらはいずれもアルツハイマー病に関連する脳損傷の指標である。p-tau217は、アルツハイマー病に特徴的なタウ病理を反映するリン酸化タウタンパク質の一種、GFAPは、中枢神経系の支持細胞であるアストロサイトに由来し、脳損傷や神経疾患の指標となるタンパク質、NfLは脳神経細胞軸索に由来し、神経細胞の損傷や神経変性を反映するタンパク質である。 Ashton氏らは、7つのコホートに属する337人を対象に、指先から採取した少量の血液をカード上で乾燥させたサンプルの解析を行い、そのうちの304人については静脈血漿サンプルを用いた測定結果と比較した。その結果、指先採血サンプル中のp-tau217値は静脈血漿サンプル中のp-tau217値と強く相関し、疾患重症度の進行や脳脊髄液バイオマーカー陽性を良好に反映していた。また、GFAPおよびNfLについても、指先採血サンプルと静脈血漿サンプルの測定値との間に強い相関が認められた。 Ashton氏らは、この簡便な検査法によって遠隔地からも研究に参加できるようになり、大規模なアルツハイマー病研究を実施しやすくなる可能性があるとの期待を示している。同氏らは、この検査が一般の患者に対して臨床で使用できるようになるのは、まだ何年も先のことではあるが、現時点でも、アルツハイマー病研究を加速させる一助になる可能性はあると話している。Ashton氏は、「最終的にわれわれは、症状が現れる前段階でアルツハイマー病を治療する方向へと移行しつつある。この流れが続くのであれば、定期的に医療機関を受診しない適格者を特定するための革新的な方法が必要になるだろう。今回の研究は、その方向性における一つのアプローチを示すものであり、さらなる検証が必要だ」とニュースリリースの中で述べている。 共著者の1人である英エクセター大学のAnne Corbett氏は、「私にとっても最も楽しみなのは、この技術によってバイオマーカー研究の民主化が可能になることだ。誰でも、どこにいても、脳疾患の解明に貢献できる未来に向かって、われわれは進んでいる。これは単なる技術的な進歩ではなく、神経科学研究のあり方を変えるパラダイムシフトである」とニュースリリースの中で話している。 研究グループによると、この方法はパーキンソン病や多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳損傷などアルツハイマー病以外の脳疾患に関する研究にも役立つ可能性があるという。

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第303回 がん細胞が作るアルツハイマー病予防タンパク質を発見

中国の研究者らによる10年を優に超える研究が実を結び、がん細胞が放つタンパク質のシスタチンC(Cyst-C)がどうやらアルツハイマー病を阻止する効果を担うことが突き止められました1,2)。がんとアルツハイマー病の併発がまれなことは長く知られており、そのどちらかがもう片方を防ぐ仕組みがあるのかもしれないと考えられてきました。イタリア北部の100万人超を調べた2013年の報告では、アルツハイマー病患者のがんのリスクは50%低く、がん患者のアルツハイマー病のリスクは35%低いことが示されています3)。米国でのFramingham Heart試験も同様で、がん生存者のアルツハイマー病のリスクががんでない人に比べて33%低いという結果となっています4)。最近のメタ解析でもやはりがん患者はアルツハイマー病をより免れていました。2020年9月2日までの22の観察試験の960万例超が解析され、がんと診断された人のアルツハイマー病発生率はがんではない人より11%低いことが示されます5)。アルツハイマー病の病変を抑制するがんの効果を示唆する報告もあります。785例を死ぬまで追跡した試験では、アルツハイマー病のアミロイドやタウ病変の程度ががんと診断された人では低くて済んでいました6,7)。それらの裏付けの数々に背中を押され、中国の武漢市の華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)の神経学者Youming Lu氏らはがんがアルツハイマー病を生じにくくする仕組みを調べることを思い立ちます2)。まずLu氏らは研究に最適なマウス作りに取り掛かります。実に6年の歳月を費やした後に、アルツハイマー病を模すマウスに3種類(肺、前立腺、大腸)の腫瘍を移植する手段に行き着きます。それらのマウスはアルツハイマー病に特有の脳のアミロイド病変を生じずに済みます。続いてがん細胞が放つタンパク質の数々を解析し、血液脳関門を通過して脳に浸透しうるタンパク質が探索されました。6年を超える取り組みの甲斐あって、Lu氏らはとうとうCyst-Cにたどり着きます。Cyst-Cは脳のアミロイド重合体に結合し、続いて脳の免疫細胞のマイクログリアの受容体TREM2を活性化します。そうしてマイクログリアがアミロイド病変を分解できるようにします。水に濡れずに済む抜け道をマウスに覚えさせる迷路実験でCyst-Cの記憶改善効果も確認されました。アルツハイマー病マウスはその抜け道を探すのに苦労しますが、Cyst-Cやがん細胞の分泌タンパク質一揃いを与えたところ手際が良くなり、抜け道をより早く見つけられるようになりました8)。アルツハイマー病の薬といえば大抵が脳の新たな障害の予防が焦点ですが、Cyst-Cはすでに生じてしまったアミロイド病変の除去を促す効果があります。ヒトでもマウスと同様の効果があるなら、認知症の新たな治療法へと通じる道が開けそうです。参考1)Li X, et al. Cell. 2026 Jan 22. [Epub ahead of print] 2)Cancer might protect against Alzheimer’s - this protein helps explain why / Nature3)Musicco M, et al. Neurology. 2013;81:322-328.4)Driver JA, et al. BMJ. 2012;344:e1442.5)Ospina-Romero M, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e2025515.6)Karanth SD, et al. Brain. 2022;145:2518-2527.7)Cancer Tied to Reduced Risk of Alzheimer’s Disease / TheScientist8)Cancer tumors may protect against Alzheimer's by cleaning out protein clumps / Medical Xpress

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日本におけるベンゾジアゼピン処方制限が向精神薬使用による自殺企図に及ぼす影響

 ベンゾジアゼピン系薬剤の過剰摂取では、自殺企図が問題となる。日本では、2012年からベンゾジアゼピン系薬剤の多剤使用に対する政府の規制が開始された。その結果、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方数と多剤使用数が減少した。帝京大学の赤羽 晃寿氏らは、この規制後、日本において向精神薬の過剰摂取による自殺企図が減少したかどうかを検証した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年12月号の報告。 帝京大学医学部附属病院の高度救命救急センター集中治療室に入院した患者4,183例(2013年4月〜2015年3月の2年間、規制導入直後:第1期)および4,140例(2018年4月〜2020年3月の2年間、規制強化後:第2期)の診療記録から、それぞれ2年間の情報をレトロスペクティブに収集した。自殺企図、向精神薬の過剰投与、患者の臨床的特徴について両期間で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の過剰投与による自殺企図患者の割合は、第1期では4.1%であったのに対し、第2期では2.8%と有意な減少が認められた(p=0.004)。・過剰投与群におけるジアゼパム換算の1日平均投与量は、第1期では32.0±33.3mgであったのに対し、第2期では25.6±30.0mgとなり、有意な減少が確認された(p=0.01)。・ベンゾジアゼピン系薬剤の平均併用数においても、第1期の2.8±1.4から第2期の2.0±1.0へと有意な減少が認められた(p=0.0002)。 著者らは「日本におけるベンゾジアゼピン系薬剤の多剤使用を抑制する政府の規制により、処方されたベンゾジアゼピン系薬剤の数と用量が減少し、処方された向精神薬の過量投与による自殺企図が減少したことが明らかとなった」としている。

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体内時計の乱れが認知症リスクの上昇に関連

 概日リズムの乱れは認知症の初期兆候である可能性が新たな研究で示された。概日リズムの相対振幅(最も活動的な時間帯と最も活動が少ない時間帯の差)が低く、リズムの断片化が進んでいることは、認知症リスクの上昇につながることが明らかになったという。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター疫学・内科学分野のWendy Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に12月29日掲載された。 Wang氏は、「概日リズムの変化は加齢に伴い起こる。また、概日リズムの乱れは、認知症のような神経変性疾患のリスク因子になり得ることを示すエビデンスがある。今回の研究で、休息・活動リズムのメリハリが弱く、断片化している人や、1日の遅い時間に活動量がピークに達する人では、認知症リスクの高いことが明らかになった」とニュースリリースの中で述べている。 体内時計とも呼ばれる概日リズムは、24時間周期の睡眠サイクルを調整している。脳によって制御され、光への曝露からも影響を受ける概日リズムは、ホルモンの分泌や消化、体温などの身体機能の調整にも関わっている。Wang氏らによると、概日リズムが明瞭な人では、体内時計が24時間周期にうまく同調し、身体のさまざまな機能に明確なシグナルが送られるだけでなく、スケジュール変更や季節による日照時間の変化があっても、規則正しい睡眠サイクルが維持される傾向にある。一方、概日リズムの相対振幅が低い人は、季節の変化やスケジュール変更によって体内時計が乱れやすいという。 Wang氏らは今回の研究で、平均年齢79歳の男女2,183人の追跡データを分析した。研究開始時点では、認知症を発症していた参加者はいなかった。全ての参加者に胸に貼り付けるタイプの小型の心臓モニターを平均で12日間装着してもらい、概日リズムに関するデータを収集した。その後、参加者を中央値で3年間追跡した。その間に176人(8%)が認知症と診断された。モニターの測定データから、昼と夜の活動のメリハリを示す相対振幅、生活リズムの断片化(乱れ)を示す日内変動、日々のリズムの一貫性(規則性)を示す日間安定性を算出し、参加者の休息―活動リズムを評価した。 その結果、相対振幅の1標準偏差(SD)の減少および日内変動の1SDの増加は、それぞれ認知症リスクの54%(95%信頼区間32~78%)、および19%(95%信頼区間2~38%)の増加と関連していた。また、相対振幅を三群に分けて解析したところ、相対振幅が低い群では727人中106人が認知症を発症していたのに対し、高い群では728人中31人にとどまっていた。年齢や血圧、心疾患などを調整した解析では、低い群の認知症リスクが高い群に比べて約2.5倍高いことが示された。さらに、概日リズムのピークが午後の遅い時間に現れる人も、認知症のリスクが高かった。具体的には、活動量のピークが午後2時15分以降に現れる人では、ピークが午後1時11分から2時14分の間の人と比べて認知症のリスクが45%高かった。活動量のピークが遅いことは、体内時計が季節による光の変化と同調できていない可能性があることを意味している。 Wang氏は、「概日リズムの乱れは炎症などの生体プロセスの変化を招いたり、睡眠を妨げたりする可能性がある。さらに、認知症に関連するアミロイド斑の増加、あるいは脳内のアミロイド除去の減少につながる可能性が考えられる」と述べている。その上で、「光療法や生活習慣の改善といった概日リズムへの介入が認知症リスクの低下に役立つかどうかを検討するため、今後さらなる研究が必要だ」と付け加えている。

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妊娠中のアセトアミノフェン、神経発達症と関連なし

 アセトアミノフェンは、妊娠中の解熱・鎮痛の第1選択薬であり、非ステロイド性抗炎症薬やオピオイドより安全性が高いとされる一方で、近年自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症への影響が議論され、注目を集めた。そこで、イタリア・University of ChietiのFrancesco D'Antonio氏らは、妊娠中のアセトアミノフェン使用と児のASD、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害(ID)リスクの関連を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、妊婦のアセトアミノフェン使用とこれらの神経発達症のリスクとの間に関連はみられなかった。本研究結果は、The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health誌オンライン版2026年1月16日号に掲載された。 研究グループは、MEDLINE、Embase、ClinicalTrials.gov、Cochrane Libraryを用いて、2025年9月30日までに発表されたコホート研究を検索した。対象の研究は、妊娠中のアセトアミノフェン使用と小児アウトカム(ASD/ADHD/ID)を評価し、調整済み推定値が示されているものとした。本研究の主要解析では、きょうだい比較を用いた研究に限定して、妊娠中のアセトアミノフェン使用とASD、ADHD、IDの関連を評価した。また、バイアスリスクが低い研究や追跡期間が5年以上の研究についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには43件の文献が抽出され、そのうち17件がメタ解析の対象となった。・きょうだい間比較を用いた研究において、妊娠中のアセトアミノフェン使用は、児のASD、ADHD、IDのいずれとも関連がみられなかった。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値、I2値は以下のとおり。 ASD:0.98、0.93~1.03、p=0.45、I2=0% ADHD:0.95、0.86~1.05、p=0.31、I2=18% ID:0.93、0.69~1.24、p=0.63、I2=48%・バイアスリスクが低い研究のみに限定した解析でも、児のASD、ADHD、IDのいずれとも関連はみられなかった。OR、95%CI、p値、I2値は以下のとおり。 ASD:1.03、0.86~1.23、p=0.78、I2=75% ADHD:0.97、0.89~1.05、p=0.49、I2=10% ID:1.11、0.92~1.34、p=0.28、I2=57%・調整済み推定値を報告したすべての研究を含めた解析や、5年以上の追跡期間を有する研究に限定した解析においても、一貫して関連はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「現在のエビデンスでは、用法・用量どおりにアセトアミノフェンを使用した妊婦の児において、ASD、ADHD、IDが臨床的に重要な程度で増加することは示されなかった。これらの知見は、妊娠中のアセトアミノフェンの安全な使用に関する現在の推奨を支持するものである」とまとめている。

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精神疾患早期介入プログラムで治療を受けた患者のLAI抗精神病薬継続率は?

 精神疾患の早期介入プログラムで治療を受けた患者は、通常治療を受けた患者と比較し、治療成績が良好であり、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用率が20~50%と高くなるといわれている。このプログラムでは通常2~3年間治療が行われ、その後、多くの患者は他の精神保健サービスへ移行し退院する。また、罹病期間がより長期の統合失調症患者を対象とした研究において、経口抗精神病薬への切り替えが一般的に行われている可能性が示唆されている。しかし退院後のフォローは、複数の臨床サービスや医療提供者間での患者記録の移行という課題によって複雑化しているのが現実である。カナダ・ダルハウジー大学のCandice E. Crocker氏らは、精神疾患の早期介入サービス(EIS)から退院した後に、LAI抗精神病薬の使用が継続されるかどうかを調査した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2025年10月16日号の報告。 本レトロスペクティブコホート研究では、精神疾患のEISによる治療を完了した患者を対象に、LAI抗精神病薬による治療の継続または中止の影響を検討した。2016~18年の3年間にわたる、精神疾患のEISを受け退院した患者のレトロスペクティブコホートを作成し、退院時および退院後6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月時点での、その後2年間の精神保健アウトカムと処方された抗精神病薬についてフォローアップ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・カナダの3州にある3施設から退院し、完全なフォローアップ調査が実施可能であった85例の患者のうち、60例(71%)が24ヵ月後もLAI抗精神病薬を継続していた。・EIS入院時のコホートにおける患者の平均年齢は22±4.7歳であった。・退院時に最も多く使用されたLAI抗精神病薬はアリピプラゾールであり、LAI抗精神病薬を継続していた患者の多くは24ヵ月後も同一製剤を使用していた。・中止の主な理由は、患者からの希望であった。・LAI抗精神病薬を継続した患者と継続しなかった患者では、再入院の減少という点において臨床転帰に有意差が認められた。 著者らは「精神疾患のEISの利用は、退院後24ヵ月が経過しても、LAI抗精神病薬継続の良好なアドヒアランスと関連していることが示唆された」としている。

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高齢者の健康関連QOL低下の最も強い予測因子は?/名古屋大学

 最大12年間にわたり縦断的に収集された日本の地域在住高齢者データを用いて健康関連QOLの長期的な変化パターンとその予測因子を調査した結果、一部の健康関連QOLは一律に低下するのではなく、維持する群と急速に低下する群に分かれ、その分岐を最も強く予測していたのは睡眠の質の悪化であったことを、名古屋大学の大島 涼賀氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2025年12月7日号掲載の報告。 主観的な身体・精神・社会的健康を包括的に評価する健康関連QOLは将来の死亡率や心血管疾患の発症などと関連することが報告されている。そのため、健康関連QOLは高齢者の健康状態を早期に捉えるうえで有用な指標となり得るが、これまでの研究は単一時点の評価が中心であり、時間経過による変化やその要因については十分に明らかにはなっていなかった。そこで研究グループは、2007~18年の「岩木健康増進プロジェクト健診」のデータを解析し、国際的な健康関連QOL指標であるSF-36下位尺度をもとに加齢に伴う身体的・精神的なQOLの変化を分析する縦断研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、2007~18年の岩木健康増進プロジェクト健診に参加した60歳以上の910人のデータを用いた。女性が588人(64.6%)で、年齢中央値は男女ともに64.0歳であった。・潜在クラス混合モデルで解析した結果、身体的役割機能と精神的役割機能は年齢とともに一律に低下するわけではなく、ベースライン時のスコアが同様に高値であっても維持する群と急速に低下する群に分かれた。・身体的役割機能と精神的役割機能の低下に共通する最も一貫して関連していた予測因子は睡眠の質の悪化であった。・身体的役割機能低下のその他の予測因子は、週1回以上の運動習慣がない、開眼片足立ちテストの成績不良であった。・精神的役割機能低下のその他の予測因子は、抑うつ傾向、過体重/肥満であった。・就寝時刻・入眠時刻・起床時刻などの睡眠習慣は、健康関連QOLと関連しなかった。 研究グループは「われわれの知る限り、本研究は日本の地域在住高齢者を対象とした健康関連QOLの長期的な変化とその予測因子を明らかにした初の報告である。日常生活機能に関連する健康関連QOLを維持するためには、日中の眠気を予防するために睡眠の質を向上させることが重要である」とまとめた。

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