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第53回 身近な人間関係のストレスが、あなたの「老化」を早めているかもしれないという話

日常生活の中で、「この人と会うとどっと疲れる」「いつも振り回されて嫌な思いをする」そんなふうに感じる相手はいませんか? それが家族や職場の同僚など、どうしても縁を切れない関係だと、毎日のようにストレスを抱え込んでしまいますよね。実は最近、こうした人間関係のストレスが、私たちの心身に及ぼす影響について、興味深い研究成果が報告されました。日々の診療現場でも、身近な人との関係性が患者さんの体調に直結している場面に直面することがありますが、それが細胞レベルでも証明されつつあるのです。「自分を悩ませる人」が細胞の時計を早める?ストレスが体に悪そうだということは、皆さんもイメージしやすいと思います。しかし、それを「生物学的な老化のスピード」という具体的な形で測定することは、これまで困難でした。近年、DNAの働き方の変化(エピジェネティクス)を調べることで、実際の年齢(暦年齢)とは異なる、体内の「生物学的な年齢」を正確に測る技術が進歩してきました。このため、こうした研究が容易になったというわけです。また、これまで、良好な人間関係が健康を守ることはよく知られていましたが、逆に「ネガティブな人間関係」がどう影響するかは十分に分かっていませんでした。そんな中、PNAS誌(米国科学アカデミー紀要)に興味深い論文が掲載されました1)。身近にいる「自分を悩ませる人(ハスラー)」の存在と、DNAの老化マーカーとの関係を調べた研究です。調査によると、約30%の人が身近な人間関係の中に少なくとも1人の「ハスラー」を抱えていることがわかりました。そして驚くべきことに、この「ハスラー」が1人増えるごとに、生物学的な老化のスピードが約1.5%速くなり、生物学的な年齢が約9ヵ月も老けてしまうことが示されたのです。さらに興味深いことに、相手が誰であるかによっても影響が異なりました。配偶者から受けるストレスは老化と明確な関連が見られなかった一方で、親や兄弟、子供といった血縁関係にある人からのストレスが、最も強く老化を早めることに関連していました。また、ハスラーの存在は老化だけでなく、うつや不安といったメンタルヘルスの悪化、BMIの増加、身体的な健康状態の悪化など、幅広い健康被害とも関連していることがわかっています。これらの結果をどう解釈すれば良いかなぜ配偶者では老化との関連が見られず、親や兄弟などの血縁者からのストレスがこれほど強く影響したのでしょうか? 論文では、その理由についても考察されています。考えてみれば、夫婦やパートナーという関係は、日々の摩擦や口うるさい小言(たとえば「健康のためにタバコをやめて」といった愛情や気遣いゆえの干渉)があったとしても、多くの場合お互いを支え合う「ポジティブな側面」も併せ持っています。この親密さや「サポートされている」という安心感が緩衝材となり、ストレスの悪影響を和らげているのかもしれません。一方で、親や兄弟、子供といった血縁関係はどうでしょうか。家族というつながりは「義務感」で強く結びついているため、関係がこじれたり過度な負担に感じたりしても、簡単には縁を切ることができません。論文でも血縁者からのストレスは「構造的に逃れられない」と表現されています。お互いの親密さやポジティブな支え合いが失われているにもかかわらず、「家族だから」というしがらみだけが残り、逃げ場のない慢性的なストレスに長期間さらされ続けることが、私たちの細胞に最も深いダメージを与えているのではないかと推測されています。ただし、この研究結果をただ手放しで鵜呑みにすることもできません。研究には必ず限界があるからです。まず、今回の研究はある時点での関係性を調べたものであり、「人間関係のストレスが原因で老化が早まった」という明確な因果関係を完全に証明するものではありません。また、「ハスラー」の存在はあくまで参加者の自己申告に基づいています。元々気分の落ち込みやストレスを抱えている人ほど、他人の言動を否定的に捉えやすいという偏りが影響している可能性もあります。さらに、すでに亡くなられた方や重い病気で調査に参加できなかった方々のデータが含まれていないため、実際の社会における最も健康リスクの高い人々を含めると、ネガティブな人間関係の真の影響はまた変化する可能性も指摘されています。自分を守る工夫が、一番のアンチエイジングそれでも、この研究は私たちに大切な視点を与えてくれます。避けられない人間関係のストレスは、単なる気の持ちようではなく、細胞レベルで私たちの体に慢性的な負担をかけている可能性があるということです。すべての人間関係を断ち切ることは現実的ではありませんが、つらいと感じる相手とは少し物理的な距離を置いてみる、あるいは一人で抱え込まずに誰かに相談するといった自分を守る工夫が、将来の健康を守る何よりのアンチエイジングに繋がるのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Lee B, et al. Negative social ties as emerging risk factors for accelerated aging, inflammation, and multimorbidity. Proc Natl Acad Sci U S A. 2026;123:e2515331123.

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統合失調症に対するLAI抗精神病薬治療が入院率や再発率に及ぼす影響

 長期作用型注射(LAI)抗精神病薬は、統合失調スペクトラム症の長期治療マネジメントにおいて重要な治療選択肢である。新たなエビデンスは、入院および/または再発リスクといった長期治療アウトカムに有益な影響を与えることを示唆している。イタリア・University Magna Graecia of CatanzaroのRenato de Filippis氏らは、自然発生的な外来診療環境における統合失調スペクトラム症患者を対象に、LAI抗精神病薬治療開始前後3年間の再発率、入院率、入院日数を比較するため、3年間のフォローアップミラー観察デザイン研究を実施した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2026年2月11日号の報告。 統合失調スペクトラム症の外来患者において、経口薬からLAI抗精神病薬へ切り替えた患者を対象に、入院率と入院期間、LAI抗精神病薬治療開始前後3年間の臨床的な総再発数を比較するため、3年間のフォローアップ調査を行うミラーイメージデザインを用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング対象となった83例のうち、第1世代抗精神病薬(FGA)または第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIによる治療を開始した統合失調スペクトラム症の成人患者56例(女性:20例[35.7%])を対象とした。・全体として、経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬への切り替えにより、治療順守患者の入院回数および入院期間(平均10.15日から0.18日へ)が有意に減少し、3年間のフォローアップ期間における総再発数も(平均1.85回から1.10回へ)減少した。・サブグループ解析では、SGA LAIおよびFGA LAIに切り替えた患者の両方において、3年間のフォローアップ期間中に入院回数が減少していたが、これはLAI抗精神病薬治療を6ヵ月超継続した場合のみに認められた。・この効果は、初めてLAI抗精神病薬に切り替えた患者においてのみ報告された。 著者らは「本研究結果は、統合失調スペクトラム症の維持療法としてのLAI抗精神病薬の有効性、とくにLAI抗精神病薬による治療期間が長い患者における有効性が確認された。今後の研究により、LAI抗精神病薬治療により最も効果が得られる可能性のある統合失調スペクトラム症患者の臨床的特徴がさらに明らかになることが望まれる」としている。

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原発性局所多汗症の関連因子は?/神戸大

 原発性局所多汗症は、温熱や精神的な負荷、またそれらによらずに大量の発汗が起こり、日常生活に支障を来す状態と定義されている。本邦における過去の調査では、患者の大部分が医療機関を受診していない可能性が示唆されており、関連のある因子を特定することは、未治療の患者を発見し適切な医療介入を行ううえで有用と考えられる。神戸大学の福本 毅氏らは、多施設共同の横断的質問紙調査(KOBE study)を行い、原発性局所多汗症の関連因子について検討した。Frontiers in Medicine誌2026年2月9日号の報告。 本研究では、2024年4月~7月に日本国内の24の皮膚科医療機関のいずれかを受診し、質問票に回答した5~64歳の患者を対象とした。関連因子を探索するため、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・計3,617例が解析に組み入れられた。原発性局所多汗症の有病率は15.0%(3,617例中544例)であった。・潜在的な関連因子の中でオッズ比(OR)が高かったのは、順に腋臭症(OR:5.440)、乾癬(OR:1.830)、湿性耳垢(OR:1.780)、HADS-A(Hospital Anxiety and Depression Scale - Anxiety subscale)スコアで不安障害が確定的(OR:1.780)、HADS-Aスコアで不安障害の疑い(OR:1.460)、喫煙(OR:1.450)であった。・ROC曲線解析の結果、原発性局所多汗症を疑うに当たりHADS-Aスコア6が最適なカットオフ値であることが示された。

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バーンアウトについて学んでみる【非専門医のための緩和ケアTips】第120回

バーンアウトについて学んでみる緩和ケアに限らず、医療者として働き続けるうえで非常に重要な「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に関する質問をいただきました。今回はバーンアウト全般について考えてみます。今日の質問緩和ケアやお看取りのケアはやりがいを感じる反面、精神的負担を感じるときがあります。知り合いの緩和ケア認定看護師が、うつ病で休職したという経験もあります。緩和ケアはバーンアウトしやすいのでしょうか?私も緩和ケアの仕事を始めた頃に、家族や知人に「亡くなる人ばかりを診ていると、うつ病になるのではないか」と心配されたことがありました。私自身は緩和ケアにやりがいを感じ、キャリアの中で関わることができたことは本当に良かったと思います。ただ確かに、周囲にはうつ病と診断されるかどうかはともかく、メンタル不調で休職が必要になったり、緩和ケアの仕事を続けられなくなったりする方もいました。私は精神科医ではなく、バーンアウトについて専門的に学んだ経験もありませんが、部門の管理者としてスタッフの健康管理をするうえでバーンアウトについて知っておくことは重要だと考えています。では、具体的にバーンアウトのどんな点を知っておく必要があるのでしょうか? 緩和ケア領域は、共感性の高いスタッフが集まりやすい分野だと感じます。緩和ケアを実践するスタッフは、患者はもちろん、家族や介護スタッフ、同僚に対しても思いやりをもつ方が多いと感じます。一方、懸命に取り組むスタッフであればあるほど、仕事において感情的な負担や葛藤を抱えることは多いとも感じます。懸命に取り組むだけに、患者さんの苦痛を緩和できなかったり、家族とのやり取りで負担を感じたりといった場面が続くと、より負担を感じやすくなります。そんな状況で、私たちにとって大切なことは、自分自身の状況に敏感であることです。バーンアウトの分野には「情緒的消耗感」や「脱人格化」という用語があります。「情緒的消耗感」は単なる疲弊だけでなく、情緒的な資源の枯渇を伴う状態です。そして「脱人格化」は他者への対応が思いやりのないものになったり、個別のケアに配慮できなかったりする状態を意味します。まずは自分自身のコンディションに意識を向け、こうした状態の兆候がないか、気を払うことが大切です。管理者目線では、スタッフがこうした状態に陥っていないかを注意する必要があります。また、自分自身に注意を払えるよう、バーンアウトをテーマとした研修を行うことも一手でしょう。いかがでしょうか? バーンアウトについて、皆さんの職場で、それぞれの立場で、考えるきっかけになれば幸いです。今日のTips今日のTipsバーンアウトについて理解すること、自身のコンディションに敏感になることが大切。

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日本人の認知症予防戦略、修正可能なリスク要因とその低減効果は

 世界的に認知症有病率が増加しており、修正可能リスク因子を標的とした予防戦略の重要性がますます高まっている。超高齢化社会を迎えた日本において、認知症は高齢者の障害調整生存年数の増加の主な原因となっている。東海大学の和佐野 浩一郎氏らは、日本特有の有病率データを用いて、高齢者における認知症に対する14の修正可能リスク因子を定量化しようと試みた。The Lancet Regional Health誌2026年1月11日号の報告。 日本の全国調査およびコホート研究より抽出した最近公表されている有病率データ、2024年版ランセット委員会による認知症に関する報告書の相対リスクおよびコミュニティ性重み付けを用いて、人口寄与率(PAF)および潜在的影響率(PIF)を算出した。次に、各リスク要因を10%および20%削減した場合、全国の認知症有病率にどのような影響を与えるかをモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・14のリスク要因全体の加重平均PAFは38.9%であり、日本における認知症症例の約4割が予防可能であることが示唆された。・最大のリスク因子は、難聴(6.7%)、身体活動不足(6.0%)、高LDLコレステロール(4.5%)であった。・すべてのリスク因子を10%削減すると認知症症例の約20万8,000例が予防可能であり、20%削減すると約40万7,000例を予防できる可能性が示された。 著者らは「日本における認知症予防の取り組みでは、聴覚ケア、身体活動、代謝の改善を優先する必要がある。日本固有のデータは、難聴が認知症の主な原因であることを明らかにしており、聴覚介入に対する国民の意識向上とアクセス向上の緊急性を浮き彫りにしている」と結論付けている。

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生涯学習は認知症リスクの低下と関連

 米国の実業家であるヘンリー・フォード(Henry Ford)氏はかつて、「20歳であろうと80歳であろうと、学ぶことをやめた人は老いている。学び続ける人はいつまでも若い」と述べているが、この言葉には確かな根拠があるようだ。生涯にわたり学習を続ける人は、アルツハイマー病(AD)のリスクが低く、脳の老化も緩やかになることが、新たな研究で明らかにされた。米ラッシュ大学医療センター精神科・行動科学分野のAndrea Zammit氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に2月11日掲載された。 Zammit氏は、「われわれの研究では、幼少期から高齢期までの間の知的好奇心をかき立てる活動や環境に着目した。今回の結果は、高齢期の認知機能が、生涯を通じて知的に刺激的な環境に触れてきたかどうかに大きく影響されることを示唆している」と話している。 この研究では、認知症のない平均79.6歳の1,939人(75%女性)を7.6年にわたり追跡し、生涯を通じた認知エンリッチメントと、ADおよび関連認知症(ADRD)の病理指標、および認知的レジリエンスとの関連を検討した。エンリッチメントとは、何かをより良く、より豊かにすることを意味する。試験参加者は、人生のさまざまな段階でどれほど知的な活動に触れてきたかに関するアンケートに回答した。認知エンリッチメントの具体的な指標は、人生の早期段階(18歳まで)では、読み聞かせや読書、家庭に新聞や地図帳があるか、5年以上の外国語学習など、中年期(40歳頃)では、40歳時点の収入、雑誌の購読や図書館カードなどの家庭の文化的資源、図書館や博物館を訪れる頻度、高齢期(平均80歳〜)では、読書、文章を書くこと、ゲーム、退職後の収入などであった。 追跡期間中に551人がADを発症した。解析の結果、生涯の認知エンリッチメントが1単位高いことは、ADリスクの38%の低下と関連していた(ハザード比0.62)。また、認知エンリッチメントの高さが上位10%の人は、下位10%の人と比べて、ADの発症が平均5年遅れることも示された。さらに、生涯の認知エンリッチメントが高い人ほど、研究参加時の認知機能スコアが有意に高く、認知機能の低下速度も緩やかだった。 死亡した948人の脳を用いた解析からは、生涯の認知エンリッチメントと神経病理学的指標との間に意味のある関連は認められなかった。しかし、生涯の認知エンリッチメントが高い人では、死亡前の認知機能が有意に高く、神経病理学的変化の影響を統計学的に補正した後でも、認知機能の低下速度が緩やかだった。 Zammit氏は、「生涯を通じて多様な知的活動に継続的に取り組むことが、認知機能の維持に影響を与える可能性があることを示したこれらの結果には励まされる。公的投資により図書館や幼児教育プログラムなどの学ぶ楽しさを育む環境へのアクセスを拡大することは、認知症の発症を減らす一助になるだろう」と述べている。(HealthDay News 2026年2月18日)

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うつ病診療ガイドラインの効果的な使い方

 日本うつ病学会は、2025年12月25日に『うつ病診療ガイドライン2025』1)を公開した。そこで、本ガイドラインの改訂のポイントについて、作成ワーキンググループの代表・責任者を務める加藤 正樹氏(関西医科大学医学部精神神経科学講座)、統括を務める渡邊 衡一郎氏(杏林大学医学部精神神経科学教室)、馬場 元氏(順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院メンタルクリニック)の3名に話を聞いた。「改訂の背景と概要、重症度別の治療」について取り上げた前編に続き、後編では「治療過程のフェーズ別の治療、サブタイプ・ライフステージ別の治療」について、紹介する。難治例の新たな概念「DTD」 これまで、標準的な抗うつ薬治療を行っても改善しない症例は「治療抵抗性うつ病(Treatment Resistant Depression:TRD)」と呼ばれてきた。TRDは主に「2剤以上の抗うつ薬に反応しない」という薬剤への反応性に焦点を当てた定義である。これに対し、本ガイドラインでは「難治性抑うつ(Difficult-to-Treat Depression:DTD)」という概念を導入した。DTDは、単なる薬剤抵抗性だけでなく、機能回復の遅れ、副作用による治療困難、再発頻度なども包括した、より広い臨床概念である。この概念の導入について、加藤氏は「こだわったポイントの1つ。従来のTRDよりも幅広く、社会機能が戻らない、副作用で薬が使いにくい、再燃を繰り返すといったケースも含めて対策を考えようというものである」と語った。 本ガイドラインでは、「初期治療」、初期治療で十分な効果が得られなかった場合の「後続治療」、「さらなる段階の治療」、寛解を維持するための「維持期治療」という縦軸を採用している。DTDには「後続治療」「さらなる段階の治療」の2つが含まれる。これは、従来のTRDとは異なり、再燃・再発が反復する不安定な経過を有する患者、抗うつ薬の忍容性に問題がある患者なども包含する。 後続治療について、渡邊氏は「1剤目が効かなかった場合に、治療の強化が注目されがちであるが、まずは効果や副作用、服薬アドヒアランスなどを確認してほしい」と指摘する。具体的な確認事項については「半年で約半数が服用しなくなるというデータもあるため、そもそも薬を服用していない可能性もある。また、初期用量からの増量が行われず、適切な用量に至っていない場合もあるため、用量の確認も必要だ」と述べる。このようなことをすべて確認したうえで、薬剤の増量や変更、薬剤の追加、精神療法の付加などを検討することが、後続治療の基本となる。ライフステージ別の治療戦略は? 今回の改訂において「児童・思春期」「周産期」「老年期」の各ライフステージについて独立した章が設けられた。その背景について、馬場氏は「それぞれのステージで配慮すべき事柄が多く、それぞれ大きく異なる。しかし、臨床試験ではこれらの集団は除外されていることが多い。そこで、一般成人と同じ治療戦略で良いのかという疑問に答える必要があった」と述べる。<児童・思春期> 児童思春期のうつ病は、成人のような抑うつ気分よりも「易怒性」として表現されることが多い。馬場氏は「これを知らないとそもそも診断に至らない」と指摘する。治療においては、環境調整や心理教育などの基礎的介入、精神療法が優先され、新規抗うつ薬の使用は「選択肢のひとつ」にとどまる。<周産期> 周産期のうつ病は、強い不安、幻覚・妄想といった精神症の症状など、特有な精神症状を伴うことがある。約10%が周産期に抑うつを経験するとされ、重要な集団といえる。治療については、中等度以上であれば抗うつ薬を「使用することを弱く推奨する」としている。授乳中についても、母乳への移行率が低い薬剤が多く、抗うつ薬を「使用することを提案する」としている。なお、本ガイドラインには、母乳への移行率を示す相対的乳児投与量をまとめた表が掲載されているため、参考にされたい。周産期の治療について、馬場氏は「胎児の奇形リスクや発達への影響はほとんど上昇せず、逆に治療しないリスクの方が高いというエビデンスがある。授乳中の服薬についても、母乳への移行が少ない薬剤が多く、使用を提案している」と述べた。<老年期> 高齢者では、身体疾患や脳器質性疾患による抑うつ状態、低活動性せん妄、アパシー(意欲低下)などがみられることがあり、鑑別が重要となる。また、高齢者の場合は薬物治療による有害事象も発現しやすいため注意が必要である。これについて、馬場氏は「高齢者の場合は、薬物治療を控えたほうが良いのではないかと考える方もいるかもしれないが、中等度以上の場合は、抗うつ薬治療を行うことが強く推奨されている」と述べ、有害事象に注意しながらも、適切な治療を検討することの重要性を指摘した。 ライフステージについて、馬場氏は「中等度以上のうつ病に対する薬物療法をみても、児童・思春期では『選択肢のひとつ』、周産期であれば『弱く推奨する』、老年期では『強く推奨する』と異なっており、ライフステージに対する配慮が必要である」と語った。ガイドラインの効果的な使い方 馬場氏は「ガイドラインは治療を決定するルールブックではなく、治療方針を患者と一緒に決めるために情報を共有するツールである」と強調する。たとえば、重症度が中等度で、ライフステージは老年期に該当し、不眠症状を伴う患者の例を考える。この場合は、中等度/重度に関するClinical Question(CQ)3、老年期に関するCQ6、不眠症状に関するCQ8が該当する。これらの情報を患者と共有して、SDMを行う。 実際に各CQをみると、CQ3では新規抗うつ薬による単剤治療が強く推奨され、ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬の併用療法を行わないことが弱く推奨されている。老年期に関するCQ6でも、新規抗うつ薬による単剤治療が強く推奨され、睡眠に関する記載はない。一方で、不眠症状に関するCQ8では、まずは睡眠衛生指導を行ったうえで、必要があれば抗うつ薬に睡眠薬を併用することが弱く推奨されている。これらの情報を患者と共有したうえでの治療方針の一例として、馬場氏は「新規抗うつ薬を使い、不眠に対しては睡眠衛生指導を実践してみよう。それでも不眠が改善しない場合は、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬を併用しようといった選択が考えられるのではないか」と述べた。 本ガイドラインは膨大な情報を含むが、実臨床での使いやすさを重視して設計されている。各章にCQX-1(治療開始に際して考慮すべきこと)とCQX-2(治療概説)が配置され、ここを参照するだけで標準的な診療方針が把握できるようになっている。そのため馬場氏は、非専門医の先生方に向けた活用法として「まずは第1章を読んでうつ病診療の原則を理解していただきたい。そのうえで、実際の診療では該当する章の『CQX-1』と『CQX-2』だけでも見ていただければ、適切な診療方針が立てられる」と活用法を述べた。

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日本の実臨床における片頭痛予防薬CGRP関連抗体の治療継続率は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体は、片頭痛治療に有効な注射剤である。名古屋大学の種井 隆文氏らは、日本の実臨床におけるCGRP関連抗体治療の継続率、再開率、中止率を評価するため本研究を実施した。Neurology International誌2025年12月24日号の報告。 対象は、CGRP関連抗体治療を開始後3ヵ月以上のフォローアップ調査を受けた未治療の片頭痛患者。CGRP関連抗体治療の継続、中止、再開の決定は、患者の自由意思に基づいて行われた。頭痛影響テスト-6(HIT-6)および片頭痛特異的QOL質問票(MSQ)は、治療開始前および各CGRP関連抗体の使用から1ヵ月後に実施された。評価項目は、治療開始後の治療継続率、再開率、中止率、HIT-6スコアおよびMSQスコアの変化、再開群と中止群における背景因子の違いとした。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者1,162例のうち146例が解析対象となった。・CGRP関連抗体治療後の3、6、9、12、18、24ヵ月の時点での継続率は、それぞれ93.2%、80.2%、68.9%、58.8%、55.4%、51.7%であった。・CGRP関連抗体治療を中断した患者における再開率は76.8%、中止率は20.7%であった。・HIT-6スコアおよびMSQスコアは、CGRP関連抗体治療前と比較して、すべての評価時点で有意な低下が認められた。・再開群と中止群の間で統計学的に有意な背景因子の違いは認められなかった。 著者らは「患者が自由に治療を選択できる実臨床の状況においては、CGRP関連抗体治療開始後12ヵ月時点での継続率は58.8%であり、24ヵ月後も半数以上の患者が治療を継続していた。また、再開率は76.8%、中止率は20.7%であった」と報告している。

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小児のドラベ症候群、zorevunersenが有望/NEJM

 ドラベ(Dravet)症候群は、主にSCN1A遺伝子のハプロ不全によって引き起こされる重篤な発育性てんかん性脳症であり、てんかんを有する一般集団と比較して、てんかんによる予期せぬ突然死および認知機能障害のリスクが高いとされる。米国・Northwestern University Feinberg School of MedicineのLinda Laux氏らは、2つの臨床試験(MONARCH試験およびADMIRAL試験)と、その延長試験(SWALLOWTAIL試験およびLONGWING試験)において、zorevunersenの投与により、痙攣発作の頻度が大幅に低下し、有害事象の多くは軽度または中等度であったことを示した。zorevunersenは、ドラベ症候群の基盤となるチャネル病(channelopathy)を標的とし、NaV 1.1ナトリウムチャネルの発現を亢進するようデザインされたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。研究の成果は、NEJM誌2026年3月5日号に掲載された。米国と英国の非盲検第I/IIa相試験+延長試験 MONARCH試験およびADMIRAL試験は、それぞれ米国および英国で実施した多施設共同非盲検第I/IIa相試験(Stoke Therapeuticsの助成を受けた)。MONARCH試験は2~18歳、ADMIRAL試験は2~<18歳のドラベ症候群で、標準的な抗痙攣薬による治療を受けている患者を対象とした。 MONARCH試験は、単回投与の用量漸増コホート(5つの用量[10、20、30、45、70 mg]のzorevunersenを1日目に髄腔内投与)および複数回投与の用量漸増コホート(3つの用量[20、30、45mg]のzorevunersenを1、29、57日目に髄腔内投与)から成る。ADMIRAL試験は、複数回投与の用量漸増コホート(3つの用量[30、45、70mg]のzorevunersenを1、57、85日目に髄腔内投与)を擁する。 これらの試験を完了し、適格基準を満たした患者を、それぞれの非盲検延長試験であるSWALLOWTAIL試験およびLONGWING試験に登録し、4ヵ月ごとにzorevunersen(≦45mg)の投与を継続した。 主解析では、zorevunersenの安全性と薬物動態を評価し、臨床効果の評価も行った。腰椎穿刺後症候群が25%に発現 2つの第I/IIa相試験に合計81例(平均年齢9.9[±5.1]歳、女児40例[49%])を登録し、2025年5月30日現在、延長試験に合計75例(10.4[±5.0]歳、37例[49%])を登録した。第I/IIa相試験のベースラインにおいて、患者の81%が3種以上の抗痙攣薬の投与を受けていた。 第I/IIa相試験の78例(96%)および延長試験の75例(100%)に有害事象が発現したが、ほとんどが軽度または中等度であった。第I/IIa相試験で最も頻度の高かった有害事象は腰椎穿刺後症候群(25%)であり、延長試験では脳脊髄液(CSF)中タンパク質濃度上昇(45%)の頻度が最も高かった。 予期せぬ重篤な有害反応が疑われる患者が1例、試験中止に至った有害事象が1例、てんかんによる予期せぬ突然死が2例、栄養失調による死亡が1例に認められた。 複数回投与の用量漸増コホートでは、最終投与後3ヵ月時のCSF中zorevunersen濃度が、初回または2回目投与後1ヵ月時よりも高値を示した。この所見は、月1回または2ヵ月ごとの投与で、CSF中へのzorevunersenの蓄積が生じることを示唆する。延長試験で、臨床状態、生活の質、適応行動も改善 第I/IIa相試験でzorevunersen 70mgを投与され、その後延長試験で最大45mgの投与を受けた患者では、延長試験開始後20ヵ月間における、1ヵ月ごとの痙攣発作の頻度のベースラインからの変化量中央値は、-58.82%から-90.91%の範囲にあり、どの時点でも大幅に低下していた。 延長試験における最長36ヵ月間の継続治療では、全般的な臨床状態、生活の質、適応行動の改善が、データによって裏付けられた。 著者は、「患児の介護者は、新しい治療法では発作以外の症状の緩和が重要と指摘しており、zorevunersenによる全般的な臨床状態や適応行動の変化について、さらなる検討を進める必要がある」「本研究の良好な安全性プロファイルと初期の臨床的改善は、ドラベ症候群に対する疾患修飾治療薬として、zorevunersenの開発を続けることを支持するものである」としている。 現在、zorevunersenの初回投与量70mg、継続投与量45mgによる第III相試験が進行中だという。

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うつ病診療ガイドライン、ゼロベースの改訂でどう変わったか

 日本うつ病学会は、2025年12月25日に『うつ病診療ガイドライン2025』1)を公開した。今回の改訂は、既存のガイドラインへの加筆修正ではなく、ゼロベースからの再構築となっている。そこで、本ガイドラインの改訂のポイントについて、作成ワーキンググループの代表・責任者を務める加藤 正樹氏(関西医科大学医学部精神神経科学講座)、統括を務める渡邊 衡一郎氏(杏林大学医学部精神神経科学教室)、馬場 元氏(順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院メンタルクリニック)の3人に話を聞いた。改訂のポイントについて「改訂の背景と概要、重症度別の治療」と「治療過程のフェーズ別の治療、サブタイプ・ライフステージ別の治療」に分け、前編と後編の2回にわたって紹介する。ゼロベースで作成、実臨床に即したガイドラインに 今回の改訂では、国際的なガイドライン作成基準であるMindsに準拠し、科学的妥当性と透明性を担保する作成方法へと一新された。そのため、システマティックレビューに基づくエビデンス評価を基盤としながら作成されているが、実臨床での思考過程に焦点を当てた構成とするため、ナラティブな記載も織り交ぜられている。また、作成グループには薬剤師・看護師・心理師などのメディカルスタッフ、当事者やその家族も含まれる。 推奨の決定にあたっては、推奨決定会議において投票者の70%以上の合意形成を必須とするルールが採用され「強く推奨」「弱く推奨」という推奨度と、推奨までには至らない「提案」「選択肢のひとつ」が設定された。診療の「現在地」が把握できるマトリクス構造 本ガイドラインの特徴は、複雑化するうつ病診療を整理するために導入された「横軸」と「縦軸」によるマトリクス構造である。横軸:重症度(軽度、中等度・重度)、ライフステージ(児童・思春期、周産期、老年期)、サブタイプ(不眠症状を伴ううつ病、特定用語:不安性の苦痛、混合性の特徴など)縦軸:初期治療、後続治療、さらなる段階の治療、維持期治療 この構造について、加藤氏は「うつ病治療では、どの薬が良いか、目の前の患者にどうフィットさせるか悩みやすい。そこで、患者を横軸と縦軸に当てはめて読めるようにした」と意図を述べた。実際に、目の前の患者をガイドラインの項目に当てはめながら読めるようにするため、うつ病診療のアルゴリズムが掲載されている。 第1章「治療計画の策定」は、あえてナラティブな記載とし、臨床の原則を網羅している。さらに「診断基準を満たさない閾値下の抑うつエピソード」など、エビデンスを基に作成するのは難しいものの臨床上重要なテーマは、トピックスとして7テーマ取り上げている。 今回の改訂では、Clinical Question(CQ)の構成にも工夫が施されている。各章のCQX-1では「治療に際して何を考慮すべきか?」という臨床的視点からの問いかけが提示され、CQX-2では「システマティックレビューの概要など、治療の総論」がまとめられている。すなわち、CQX-1、X-2を読むことで、各章の治療方針の立て方がわかるような構成になっている。これについて、馬場氏は「すべて読むことが難しい場合は、まずは第1章を必須として読んでもらい、以降は診療する患者に該当する章のCQX-1、X-2を読んでほしい」と述べた。軽度うつ病の薬物療法は「選択肢のひとつ」 軽度うつ病への介入は、支持的な傾聴、生活における負担の軽減、心理教育などの基礎的介入が基本となる。本ガイドラインでは、これらを実施したうえで、新規抗うつ薬を使用することを「選択肢のひとつ」と位置付けている。 これについて、加藤氏は「軽度うつ病のみを対象とした無作為化比較試験、システマティックレビューおよびメタ解析は存在しなかった。そこで、本邦で実施された新規抗うつ薬の無作為化比較試験について、2,464例を対象とした個人データのメタ解析を実施したところ、重症度と抑うつ症状の改善には相互作用がなかった。つまり、重症度にかかわらず抗うつ薬は有効と考えることができる。また、軽度うつ病では症状の改善の余地が小さいため、プラセボとの差はみられにくいが、抗うつ薬によりいずれの試験でも症状が改善していた。これらを考慮して、安全性の高い新規抗うつ薬は『選択肢のひとつ』となると判断した」と根拠を述べた。 そのほか、認知行動療法、それを基盤とした集団プログラムやガイド付きのプログラム、集団あるいは指導下での運動療法も「選択肢のひとつ」となっている。中等度・重度うつ病への抗うつ薬は強く推奨 中等度・重度のうつ病に対しては、新規抗うつ薬による単剤治療を「行うことを強く推奨する」としている。一方、治療初期からの抗うつ薬とベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬の併用療法※については「行わないことを弱く推奨する」となっている。ただし、カタトニアを伴ううつ病の治療法に関するCQ7-6-2では、急性期の薬物療法としてベンゾジアゼピン系薬剤による補助療法は「提案する」とした。これについて、馬場氏は「全体としては、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の併用は勧められないが、使用すべき患者もいる。このようにサブタイプ別にも見ることで、より適切な治療を行うことができるというのが、本ガイドラインの特徴である」と述べた。 構造化された精神療法や電気けいれん療法(ECT)については、有用性に関するエビデンスがあるものの、推奨度は「提案する」にとどまっている。これについて、加藤氏は「エビデンスは存在するが、実施可能な施設が限られることなどから『提案する』にとどめる判断となった」と述べた。※:本ガイドラインでは、治療初期から同時に開始することを併用療法と定義している。どのように治療を使い分けるか? うつ病治療の基本は、共同意思決定(SDM)に基づいて患者自身が積極的に治療に関わるようにすることである。SDMでは、病状や各種治療選択肢、予想される経過などについて治療者が説明し、リスク・ベネフィットを共有したうえで、患者の意見や価値観も聞きながら治療を選択していくことが重要となる。 本ガイドラインでは、抗うつ薬の副作用に関するヒートマップや、薬物相互作用をまとめた表が掲載された。これらは、SDMを通じた抗うつ薬の使い分けにも、用いることが可能である。これらを用いた使い分けの例として、加藤氏は「会社に行きながら治療するのであれば、眠気の少ない薬を提案する。一方で、睡眠が十分に取れていない場合は、副作用として眠気が出てしまうかもしれないが、しっかりと睡眠が取れる薬を提案する。薬物相互作用については、高齢者や併用薬の多い患者には薬物相互作用の少ない薬剤を提案するといった使い分けができる」と説明した。治療の質を向上させる「MBC」 本ガイドラインでSDMと共に強調しているのが、測定に基づく診療(Measurement-Based Care:MBC)の実践である。MBCは、標準化された評価尺度を用いて治療反応を定期的に評価し、その結果を共有しながら治療を調整するアプローチである。MBCを実践することで、MBCを用いない標準治療と比較して寛解率が45%向上したという研究結果も存在する2)。 MBCの実践に当たっては「自己記入式の評価尺度を用いるのが良い。自己記入式の評価尺度は、患者の自己洞察や意思決定を促進するほか、症状の伝え漏れを防ぐことができる」と加藤氏は述べる。 評価の頻度と使用しやすい評価尺度について、渡邊氏は「最初に寛解を達成するまでは、できるだけ毎回、少なくとも2週間に1回は評価するのが良いのではないか。自己記入式の評価尺度としては、QIDSやPHQ-9が推奨される。これらは、うつ病の診断基準に合った9項目で構成されており、残遺症状のピックアップができるというメリットもある」と語った。(後編に続く)

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急性期統合失調症、24種の抗精神病薬をネットワークメタ解析/Lancet

 急性期統合失調症の薬物療法では、抗精神病薬の有効性には各薬剤間で臨床的に意義のある小~中の違いが存在し、忍容性はドパミンパーシャルアゴニストが全般的に良好で、新たな薬剤クラスのムスカリン受容体作動薬xanomeline-trospium(ドパミン受容体を主な標的としない初めての抗精神病薬[2024年にFDA承認])はドパミン拮抗薬にみられる有害作用を伴わないものの、コリン作動性および抗コリン作動性の有害事象を引き起こすことが、ドイツ・ミュンヘン工科大学のJohannes Schneider-Thoma氏らの調査で示された。研究の成果はLancet誌2026年2月28日号に掲載された。24種の抗精神病薬のネットワークメタ解析 研究グループは、急性期統合失調症に対する抗精神病薬の有効性と忍容性に関して、統計学的有意性だけでなく臨床的に重要な治療効果を重視した最新知見の提示を目的に、系統的レビューとネットワークメタ解析を実施した(ドイツ研究振興協会などの助成を受けた)。 対象とした抗精神病薬は、ドパミン受容体遮断薬を主とする23種と、ムスカリン受容体作動薬xanomeline-trospiumの24種の薬剤であった。医学関連データベースを用いて、2024年7月26日までに発表された、これらの薬剤に関する試験の論文を抽出した。適切な無作為化が行われた試験のみを解析に含めた。 主要アウトカムは、評価尺度で測定された統合失調症の全体的症状(有効性)とし、変量効果モデルを用いた頻度論的ネットワークメタ解析で分析した。副次アウトカムは、さらに32項目の有効性および忍容性のアウトカムで構成された。有効性はクロザピンが最も高い 438件の無作為化臨床試験を解析の対象とした。このうち388件(参加者7万8,193例[女性2万8,448例・36.4%、男性4万9,745例・63.6%]、年齢中央値37.28歳[四分位範囲:33.58~40.50]、二重盲検試験315件[81%])が、少なくとも1つのアウトカムについて使用可能なデータを提供した。5,117件の中国の試験が特定されたが、その多くで、著者が問い合わせに応答しなかったか、方法論上の懸念が報告されていたため、採用されたのは24件のみだった。 主要アウトカムに関して、256件の二重盲検試験(参加者5万8,948例)が使用可能なデータを提供した。 24種の抗精神病薬のすべてが、プラセボに比べ症状を軽減し、各薬剤の標準化平均差(SMD)は、クロザピンの-0.90(95%信頼区間[CI]:-1.03~-0.77)からlumateperoneの-0.23(95%CI:-0.39~-0.06)の範囲であった。 とくに、クロザピン、amisulpride(SMD:-0.68、95%CI:-0.81~-0.55)、オランザピン(-0.57、-0.62~-0.52)、リスペリドン(-0.53、-0.57~-0.48)は、他の3種以上の抗精神病薬より有効性が高かった。xanomeline-trospium(-0.57、-0.76~-0.37)の有効性は上位6番目だった。 また、23種の抗精神病薬のすべてが、プラセボに比べ陽性症状を軽減し(SMD:-0.90[95%CI:-1.06~-0.73]~-0.16[-0.67~0.34])、陰性症状も軽減した(-0.65[-0.95~-0.34]~-0.16[-0.27~-0.05])。体重増加が83%で 有害事象は、各薬剤で多岐にわたっていた。ドパミンパーシャルアゴニスト(アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazine)は、有効性では上位に含まれなかったが、全体としてドパミン拮抗薬よりも良好な忍容性を示した。 22種の抗精神病薬のうち12種(55%)で、コリン作動性有害事象のオッズがプラセボより高く、「非常に小さい」以上のオッズ比(OR)は、xanomeline-trospiumの4.11(95%CI:2.27~7.43)からスルピリドの1.27(0.40~4.02)の範囲であった。 また、24種の抗精神病薬のうち18種(75%)で、抗コリン作動性有害事象のオッズがプラセボより高く、ORはゾテピンの3.55(95%CI:1.31~9.66)からリスペリドンの1.28(1.03~1.59)の範囲であった。 プラセボと比較した体重増加は、23種の抗精神病薬のうち19種(83%)にみられ、平均差はゾテピンの3.21kg(95%CI:2.21~4.22)からペロスピロンの0.51kg(-1.36~2.39)の範囲だった。 著者は、「本研究で明らかとなった各種抗精神病薬の有効性の臨床的に意義のある違いについては、臨床ガイドラインにおいて、より強調し具体的に記述すべきであり、個別の薬剤選択の際には忍容性の重要な差異を考慮する必要がある」「今後の研究では、xanomeline-trospiumの有効性を確認するために、他の抗精神病薬との直接比較を行うべきである。また、統合失調症の初期段階におけるクロザピン使用に関する先進的な試験を実施し、アウトカムの改善や疾患の慢性化の予防効果を確立する必要がある」としている。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの最適な投与量は

 アジテーションは、アルツハイマー病による認知症患者にとって最も苦痛な神経精神症状の1つであり、患者のQOLに重大な影響を及ぼし、介護者の負担を増大させる。ドーパミン受容体パーシャルアゴニストであるブレクスピプラゾールは、アジテーションのマネジメントに有望な薬剤である。パキスタン・King Edward Medical UniversityのHammad Javaid氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションのマネジメントに対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neurological Sciences誌2026年1月29日号の報告。 2025年1月までに公表された研究をPubMed、Cochrane、Scopus、Embase、ClinicalTrials.govより包括的に検索した。ランダム効果モデルを用いて、二値アウトカムをリスク比(RR)、連続アウトカムを平均差(MD)として、95%信頼区間(CI)とともに統合した。異質性の評価には、I2統計量およびカイ二乗検定を用いた。p値0.05未満を統計的に有意と判定した。すべての計算はRevMan 5.4を用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病に伴うアジテーションを呈する認知症患者1,440例(944例vs.496例)を対象とした4つの研究をメタ解析に含めた。・ブレクスピプラゾールは、CMAI(MD:-3.94[-6.21~-1.67]、p<0.001)およびNPI-NH(MD:-0.67[-1.08~-0.26]、p=0.002)において、2~3mg/日で最適な効果を示し、アジテーションの有意な軽減を示した。・SASスコアには、わずかな悪化が認められたが(MD:0.38[0.18~0.58]、p=0.0002)、MMSE(p=0.06)およびCGI-S(p=0.06)は安定していた。・重篤な有害事象、死亡率、めまい、錐体外路症状については統計学的に有意な差が認められなかった(各々、p>0.05)。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、軽度の運動機能への影響が認められたものの、安全性に関する重大な懸念はなく、アルツハイマー病に伴うアジテーションを効果的に軽減した。本研究の限界としては、中程度の異質性と試験期間の短さが挙げられる。今後の研究において、長期的なアウトカムおよび患者の層別化について検討する必要がある」としている。

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日本における妊娠および授乳中のブレクスピプラゾール投与、その安全性を評価

 ブレクスピプラゾール(BPZ)は、本邦において2018年に承認された抗精神病薬であり、現在では統合失調症やうつ病、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する適応を取得し、広く臨床応用されている薬剤である。しかし、BPZを使用している母親から生まれた乳児に対する授乳中の影響は、これまでよくわかっていなかった。東北大学の福田 朱理氏らは、授乳中の母親によるBPZ使用の安全性を評価した。Breastfeeding Medicine誌オンライン版2026年2月6日号の報告。 2018~23年、東北大学病院において3組の母子を評価した。各母親は、妊娠中および出産後1ヵ月以内の授乳期間中、BPZ単剤療法(1~2mg/日)を継続していた。母子の健康状態、ならびに新生児および乳児の離脱症状または有害事象に関するデータを診療記録から収集した。 主な結果は以下のとおり。・3例すべての新生児および乳児において、離脱症状および重篤な有害事象は認められなかった。・3例すべての新生児および乳児において、軽度の新生児黄疸および座瘡が認められたが、これらはBPZ使用とは無関係と判断された。・しかし、粉ミルクによる授乳が時折必要であったことから、BPZが乳汁分泌量を減少させた可能性が示唆された。 著者らは「授乳中のBPZ単剤療法(1~2mg/日)は、産後1ヵ月以内の新生児および乳児に離脱症状または重篤な有害事象を引き起こさないことが示唆された。この初期のエビデンスは、BPZ単剤療法を受けている母親の母乳育児に関する意思決定に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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PHSは過去のもの?それとも現役?/医師1,000人アンケート

 医療現場のICT化による業務効率化が期待される中、厚生労働省も補助金制度を設けるなど、生産性向上を目指す支援策が行われている。しかし、現場の環境整備・活用状況には施設ごとに大きな差がある状況と考えられる。CareNet.comでは会員医師(勤務医)1,025人を対象に、勤務先で実際どのような環境が整えられているか、デバイスの貸与・使用状況とメールの使用状況についてアンケートを実施した(2026年2月19~20日実施)。勤務先からPCの貸与ありと回答した医師は約3割 勤務先からのパソコン(ノート・デスクトップどちらでも)貸与状況について聞いた結果、「自分専用で貸与あり」と回答したのは23.6%、「共用で貸与あり」と回答したのは9.2%で計32.8%となり、およそ7割の医師は勤務先からのパソコンの貸与はないという結果となった。タブレットについてはより少なく、「自分専用で貸与あり」が5.7%、「共用で貸与あり」が4.8%にとどまった。 年代別にみると、パソコンの貸与率(自分専用あるいは共用のいずれかで貸与あり)は年齢が高くなるほど上がり、20代では26.7%だったのに対し、60代では41.2%であった。また、病床数が少ない施設ほど貸与率が高い傾向がみられ、20~99床の施設勤務の医師では貸与ありとの回答が44.2%だったのに対し、200床以上の施設勤務の医師では30.2%であった。PHSは約7割が貸与ありと回答、スマホは2割強にとどまる 勤務先からのPHS貸与状況については、「自分専用で貸与あり」と回答したのは63.2%、「共用で貸与あり」と回答したのは7.9%で計71.1%となり、およそ7割が勤務先からPHSを貸与されていることがわかった。一方でスマートフォンの貸与は自分専用・共用で計23.9%にとどまった。 PHSの貸与状況について年代別に大きな差はみられなかったが、スマートフォンについては20~30代で貸与率がやや高い傾向がみられた(20代:計31.1%、30代:計29.2%)。また、スマートフォンは20~99床の施設(計7.7%)と比較して200床以上の施設(計26.1%)勤務の医師で貸与率が高かった。 スマートフォン貸与ありと回答した医師を対象にその用途について複数回答で聞いた質問では、「内線通話」が79.7%と最も多く、「電子カルテの閲覧・入力」は13.4%、「医療画像などの閲覧」は13.0%にとどまった。「グループチャット」との回答は36.0%だった。業務用メアドをチェックするツール、主力は私物デバイスか 勤務日に業務用メールアドレスをチェックする頻度について、使用するデバイスごとに聞いた質問では、貸与デバイスについては「使用しない/貸与なし」が53.4%だったのに対し、私物デバイスでは「使用しない」と回答した医師は26.0%であった。私物デバイスで業務用メールアドレスを1日1回以上チェックすると回答した医師は63.3%に上った。 年代別にみると、1日5回以上と頻回にチェックすると回答した医師は、デバイスを問わず50~60代で多く、20~30代で少ない傾向がみられた。 貸与デバイスからのネット接続状況など、その他のアンケート結果・詳細は以下のページに掲載中。「勤務先からのデバイス貸与・メールの使用状況/医師1,000人アンケート」

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GLP-1受容体作動薬、物質使用障害の予防や治療に有効か/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の使用は、さまざまな物質使用障害(SUD)の発症リスク低下と一貫して関連し、複数の物質タイプにわたる幅広い予防効果があること、また、SUD既往患者においても有害な臨床アウトカムのリスク低下に関連していることが、米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムのMiao Cai氏らによる観察研究の結果で示された。GLP-1受容体作動薬の使用がアルコール、タバコ、大麻使用障害の発症および再発リスクを低下させることが示されていたが、他の物質に関するエビデンスや、SUD既往患者の臨床アウトカムの改善に有効かどうかを評価する大規模研究は不足していた。著者は、「今回のデータは、GLP-1受容体作動薬がさまざまなSUDの予防と治療の両方において潜在的な役割を果たす可能性を示唆しており、さらなる評価が必要である」とまとめている。BMJ誌2026年3月4日号掲載の報告。退役軍人の医療記録を用いて8件の実薬対照比較試験をエミュレーション 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療記録を用いて新規投与開始者に関する8件の実薬対照標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った。内訳は、SUD既往のない患者における新規SUD発症に関する7試験(プロトコール1)と、SUD既往患者における有害アウトカムに関する1試験(プロトコール2)であった。 2型糖尿病を有する米国退役軍人60万6,434例をベース集団とし、患者を2つのプロトコールのいずれかに割り付け、最大3年間追跡した。 プロトコール1(主要試験)では、GLP-1受容体作動薬新規投与開始者12万4,001例およびSGLT2阻害薬新規投与開始者40万816例の計52万4,817例が、プロトコール2では、それぞれ1万6,768例および6万4,849例の計8万1,617例が対象となった。 主要アウトカムは、アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイドの使用障害、その他のSUD発症、およびこれらの複合アウトカムとした。SUD既往患者における有害アウトカムには、SUD関連の救急外来受診、SUD関連入院、SUD関連死、薬物過剰摂取、自殺念慮または自殺企図などが含まれた。 ハザード比(HR)および3年間の純リスク差(NRD、1,000人当たり)を、逆確率重み付けを用いた原因特異的Cox生存モデルに基づいて報告した。アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイド、他のSUD発症リスクの低下と関連 SGLT2阻害薬の開始と比較し、GLP-1受容体作動薬の開始は以下の使用障害のリスク低下と関連していた。・アルコール(HR:0.82[95%信頼区間[CI]:0.78~0.85]、NRD:-5.57[95%CI:-6.61~-4.53])・大麻(0.86[0.81~0.90]、-2.25[-3.00~-1.50])・コカイン(0.80[0.72~0.88]、-0.97[-1.37~-0.57])・ニコチン(0.80[0.74~0.87]、-1.64[-2.19~-1.09])・オピオイド(0.75[0.67~0.85]、-0.86[-1.19~-0.52]) また、主要アウトカムとした、その他のSUD発症(0.87[0.81~0.94]、-1.12[-1.68~-0.55])、複合アウトカム(0.86[0.83~0.88]、-6.61[-7.95~-5.26])のリスク低下も認められた。 SUD既往患者では、GLP-1受容体作動薬の投与開始は、次のリスク低下と関連していた。・SUD関連救急外来受診(HR:0.69[95%CI:0.61~0.78]、NRD:-8.92[-11.59~-6.25])・SUD関連入院(0.74[0.65~0.85]、-6.23[-8.73~-3.74])・SUD関連死(0.50[0.32~0.79]、-1.52[-2.32~-0.72])・薬物過剰摂取(0.61[0.42~0.88]、-1.49[-2.43~-0.55])・自殺念慮または自殺企図(0.75[0.67~0.83]、-9.95[-13.14~-6.77]) 治療アドヒアランスに基づく解析でも、新規SUD発症およびSUD既往患者における有害アウトカムの両方について、治療開始に基づく解析と一貫した結果が示された。

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身体活動習慣を維持することが中年期の累積ストレスの少なさと関連

 成人期の初期から日常的に運動などで体を使っていないと、中年期に入った時点で累積ストレスによる身体への影響が強く現れるとする研究結果が報告された。オウル大学(フィンランド)のMaija Korpisaari氏らが、累積ストレスの程度を意味する「アロスタティック負荷」をスコア化して過去の身体活動習慣との関連を検討した結果であり、詳細は「Psychoneuroendocrinology」2月号に掲載された。 この研究で検討したアロスタティック負荷とは、慢性的なストレスによって引き起こされる心身の生理学的な消耗を指す。アロスタティック負荷の標準化された評価方法はまだ確立されていないが、本研究では先行研究を基に、13項目(BMI、ウエスト周囲長、血圧、血清脂質、空腹時血糖値、HbA1c、心拍数、高感度C反応性蛋白、コルチゾールなど)からスコア化する指標と、より絞り込んだ5項目からスコア化する指標を用いて評価した。 解析対象は1966年にフィンランドで生まれ、31歳および46歳になった時点で調査に参加した3,358人(男性42.6%)。世界保健機関(WHO)の身体活動に関するガイドラインの推奨(週に中~高強度運動を150分以上)を満たしているか否かに基づき、全体を以下の4群に分類した。一つ目は31歳と46歳のいずれの時点においてもガイドラインの推奨を満たしていた運動維持群(12.4%)、二つ目はいずれの時点においてもガイドラインの推奨を満たしていなかった非運動群(55.4%)、三つ目は31歳時点では満たしていなかったものの46歳時点では満たしていた運動量増加群(19.4%)、四つ目は31歳時点では満たしていたものの46歳時点では満たしていなかった運動量減少群(12.8%)。 結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、教育歴、婚姻状況、仕事上のストレスの認識)の影響を調整し、運動維持群を基準とする解析の結果、身体活動量が少ない群ではアロスタティック負荷が強いことが明らかになった。例えば13項目のスコアでは、非運動群は負荷が18%高く、運動量減少群は10%高いことが示された。また5項目のスコアでは、非運動群は17%高く、運動量減少群は有意差がなかった。運動量増加群に関しては、13項目の指標と5項目の指標のいずれにおいても、運動維持群と有意差がなかった。 論文の筆頭著者であるKorpisaari氏は、「この研究結果は、身体活動はライフステージの特定の時期のみに重要というわけではなく、成人期を通して習慣的に運動を続けることで、慢性的なストレスの有害な影響から身体を守ることができる可能性を示唆している」と述べている。ただし研究者らは、この関連性を確認し、身体活動がストレス負荷をどのように軽減するかをより深く理解するため、さらなる研究の必要性も指摘している。

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片頭痛に対するCGRP関連抗体薬、2年間の長期治療継続の有用性評価

 スペイン・バルセロナ自治大学のEdoardo Caronna氏らは、片頭痛におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体の長期的有効性と治療持続性および2年間の治療継続に関連するベースライン特性を明らかにするため、プロスペクティブコホート観察多施設レジストリ研究を実施した。Neurology誌2026年2月24日号の報告。 治療期間が24ヵ月に到達した群(ON群)における1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)の変化をベースラインと比較した。6、12、18、24ヵ月の4つの時点における治療反応パターンを解析した。持続的効果の定義は、4つの時点のうち3つ以上でMHDが50%以上減少した場合とした。ON群と、効果不十分のため中止した群(OFF群)のベースライン特性を比較した。 主な結果は以下のとおり。・ON群の患者は1,340例(年齢中央値:48.0歳[範囲:41.0〜55.0歳]、女性:81.7%)。・ベースラインにおけるMHD中央値は20.0(13.0〜28.0)日であった。・24ヵ月到達時点でMHDが50%以上減少した患者の割合は60.4%(1,340例中809例)。・24ヵ月到達時点で持続的効果が認められた患者の割合は53.8%(264例中142例)。・ON群(1,340例)と比較しOFF群(1,057例)は、ベースラインのMHD(20.0[13.0〜28.0]vs.25.0[16.0〜28.0])が統計学的に有意に高く、片頭痛の前兆(16.2%vs.22.9%)、うつ病(22.8%vs.37.9%)、肥満(7.2%vs.19.1%)を有する患者の割合が高かった(各々、p<0.001)。 著者らは「CGRP関連抗体によるMHDは、2年間で持続的に減少した。治療開始の遅延、片頭痛の前兆、うつ病、肥満は、治療継続に悪影響を及ぼす可能性がある」とまとめている。

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わが国初の「男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版」

 男性の勃起障害(ED)の患者は、約1,130万例と推定されていたが、近年の調査ではそれ以上の患者数と推定されている。また、若者の草食化が昨今言われているなかで「性欲低下」や「射精障害」を訴える人が多いことも、さまざまな調査でわかってきた。そこで、2018年に上梓された『ED診療ガイドライン 第3版』を拡大し、今回『男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版』が発刊された。 本稿では、ガイドラインの作成委員長である辻村 晃氏(順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授)にガイドライン作成の経緯や内容、ガイドラインの活用などについて聞いた。早漏へのドラッグ・ラグ問題を提起--今ガイドラインの領域拡大の狙いについて 男性の泌尿器科診療における性機能領域ではEDを主訴とする患者が圧倒的に多かった。そこで、2008年に『ED診療ガイドライン』が発刊され、2012、18年と第3版まで改訂された。そして、第4版を制作するかどうかという議論のなかで、2024年に『男性不妊症診療ガイドライン』(日本泌尿器科学会編、日本生殖医学会後援)が発刊され、少子化が進む現在、男性不妊症の原因として極めて増加している性機能障害の注目度が高まっていた。その一方で、日本性機能学会は、臨床研究促進委員会がシルデナフィル(商品名:バイアグラ)が発売された1998年から25年経った2023年、男性性機能障害の現状を明確にするため、6,000人超に全国調査を実施した。調査の結果、「性欲低下」や「射精の問題」で悩んでいる方や治療を希望する方がかなり多いことが判明した。こうした経緯から第4版とはせずに、さらに疾患領域を広く「男性性機能障害」と捉えて、今回のガイドラインを制作した。--ガイドラインの読み方:CQ、BQ、FQの使い分け 男性の性機能障害に関する研究論文やエビデンスは、他の疾患領域と比較して少ないものの、そのなかからエビデンスの比較的多い内容をクリニカルクエスション(CQ)、一般的な知識として共有しておくべき内容をバックグラウンドクエスション(BQ)とし、ここまでは教科書的な内容とした。そして、現時点では標準的ではなく、推奨を議論する段階ではないものの、最新情報として理解しておくべき内容をフューチャークエスション(FQ)として解説している。また、臨床的な知見のCQでは、エビデンスレベルと推奨グレードを入れているが、BQとFQは解説にとどめている。とくにFQは、今はまだわが国では臨床で応用するようなレベルではないが、たとえば海外で発表されたことや近い将来起こり得ることを特徴としている。そのほか、目次には推奨グレードとエビデンスレベルを記載することで、一目でわかるように表記も工夫している。--新項目(射精障害、性欲低下など)の具体的な内容について 「射精障害」について触れると、射精障害が世界的に非常に問題となっている。それは、「早漏か遅漏か」ということになる。「早漏」に関しては、世界的に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬の薬物治療が全世界でなされている一方で、それらの薬剤はわが国では保険適用になっていないため、早漏への薬物治療の選択肢がわれわれにはないのが現状。先述した臨床研究促進委員会の2023年のアンケート調査で「早漏が気になるか」「早漏の治療が気になる」「早漏に対する治療意欲があるか」などを聞いたが、早漏に対する治療意欲がかなり高い結果だった。回答者の約25%が早漏を自覚し、そのうち半分以上が治療を希望していた。ただ、そうした状況にもかかわらず治療選択肢がないのが今日のわが国の現状であり、本ガイドラインで示唆するとともに、今後さまざまなジャーナルなどでこの問題を提起していく。 「性欲低下」については、先に紹介した『男性不妊症診療ガイドライン』を制作したときの調べで、1997年に性機能障害が原因で不妊になっている方が約3%いた。その後、2015年の調査では4倍以上に急増し、約13%であった。同じく若年男性で「性機能障害のために子供ができない」と訴える方が、この20年ぐらいで増えた。その1つの原因にEDもあるが、配偶者や恋人などに対する性的な欲求をまったく感じないとか、性欲が低下しているというようなことも明確になってきた。こうした性欲低下の最大の原因としては、ウェブ社会における性的な動画の過剰な接触であり、動画や仮想現実のなかで十分になってしまっていることがある。これは将来のさらなる少子化の原因ともなり得ることであり、治療をしなければいけないということで今回追加を行った。--非専門医の活用法や今後の展望について 非専門の医師には、BQのところをとにかく最初に読んでいただき、性機能障害の基礎知識を付けてもらいたい。そのうえで、目の前の患者にどう診療していくのかは、CQを読んで対応していただきたい。 次回のガイドライン改訂は、5年後ぐらいをめどと考えている。その一方で、わが国は性機能分野の研究が諸外国と比較し、だいぶ遅れている。世界では、普通に行われている治療内容がわが国では保険適用になっていないなどのドラッグ・ラグがある。同様にMinds診療ガイドラインに準拠した作成を行いたいが、エビデンスレベル、エビデンスを持ったジャーナルなどが非常に少なく、今回は近い形で制作を行った。これからの5年で新しい治療薬、治療法の登場も期待されるので、5年後をめどに学会などでよく検討し、改訂することになる。【目次】第I章 性欲低下第II章 ED第III章 射精障害第IV章 ペロニー病第V章 持続勃起症索引【CQなどの項目総数】CQ:24項目BQ:19項目FQ:9項目

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薬剤性パーキンソニズムリスク、8つの抗精神病薬比較

 薬剤性パーキンソニズムは、主に抗精神病薬によるドパミンD2受容体阻害により引き起こされる。しかし、in vitro試験では、実臨床における臨床転帰の変動性を十分に反映できないケースが多くみられる。韓国・Gachon UniversityのWoo-Taek Lim氏らは、in vitroの薬理学的指標が抗精神病薬使用に伴う薬剤性パーキンソニズムの実臨床リスクと一致するかどうかを評価するため、本研究を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2026年1月28日号の報告。 一般的に使用される8種類の抗精神病薬について、D2受容体およびセロトニン2A受容体の阻害定数(Ki)、D2受容体の解離速度(Kr)、血液脳関門(BBB)通過速度など、主要なin vitroパラメーターを集計し、6つの複合薬剤性パーキンソニズムリスク指標を構築した。Seoul National University Hospital共通データモデル(2002~21年)を用いて、実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクを評価した。抗精神病薬使用者と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)使用者は、傾向スコアマッチングを用いて1:1でマッチングし、Cox比例ハザード回帰分析を用いて薬剤性パーキンソニズムリスクのハザード比(HR)を推定した。各in vitro指標と実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクとの相関は、対数回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・8つのマッチングコホートから4万4,664例の患者を抽出した。・薬剤性パーキンソニズムリスクが最も高かった薬剤はハロペリドール(HR:4.56、95%信頼区間[CI]:2.29~9.07)、最も低かった薬剤はアリピプラゾール(HR:2.11、95%CI:1.56~2.86)であった。・実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクと最も強い相関を示した指標はpKr×BBB透過率であった(R2=0.95)。・この相関は、D2受容体パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールを解析に含めると低下が認められた(R2=0.58)。 著者らは「受容体結合動態とBBB透過を統合することで、D2受容体阻害作用を有する抗精神病薬の実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクの変動を反映するin vitroフレームワークを構築できる可能性が示唆された。これらの知見は、早期安全性評価において薬物動態パラメーターと中枢神経系曝露パラメーターを組み合わせることの重要性を裏付けている」と結論付けている。

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