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日本人急性期統合失調症患者の長期予後に最も影響する早期ターゲット症状は?

 急性期統合失調症における早期治療反応の予測は重要であるが、困難である。福島県立医科大学の小林 有里氏らは、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾール治療を行った患者において、2週間後の特定の症状領域改善が、6週間後の全体的な治療反応を予測するかどうかを明らかにするため、観察研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2025年9・10月号の報告。 対象は、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾール治療を行った患者65例(抗精神病薬未使用患者:34例、抗精神病薬未使用再発患者:31例)。ベンゾジアゼピン使用患者は41例(64.1%)であった。治療反応の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および臨床全般印象改善度(CGI-I)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・受信者動作特性(ROC)分析の結果、曲線下面積(AUC)は、PANSS総スコアで0.788、陰性症状スコアで0.783、興奮症状スコアで0.603、認知機能スコアで0.746、陽性症状スコアで0.738、抑うつ/不安症状スコアで0.735であった。・Kendall's tau相関係数とCramer's V係数では、PANSS総スコア(0.413、p<0.001)、陰性症状スコア(0.411、p<0.001)、両スコアで二分した治療反応(0.573、p<0.001)、認知機能スコア(0.364、p<0.001)、陽性症状スコア(0.344、p<0.001)、抑うつ/不安症状スコア(0.344、p=0.001)について有意な予測関係が認められたが、興奮症状スコア(0.15、p=0.151)については有意な予測関係は認められなかった。・ベンゾジアゼピン使用は、これらの予測関係に有意な影響を及ぼさなかった。 著者らは「本研究は、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾール治療を行った急性統合失調症患者におけるPANSSの5因子モデルの予測妥当性を評価した初めての研究である。早期の症状改善、とくに陰性症状の改善は、全体的な治療反応のより強い予測因子である一方で、興奮症状の改善は関連性が弱いことが示唆された。これらの知見は、急性期統合失調症の治療戦略を最適化するために、早期の症状特異的な評価の重要性を強調している。これらの結果を検証するためにも、より大規模なサンプルを用いたさらなる研究が求められる」と結論付けている。

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治療抵抗性再発単極性うつ病と治療抵抗性双極性うつ病との違い

 重度かつ持続的な精神疾患は、英国人の約3%に影響を及ぼしており、重大な障害および平均寿命の有意な低下と関連している。これには、主に治療抵抗性再発単極性うつ病や治療抵抗性双極性うつ病の2つのタイプがある。両疾患おける表現型の違いや抗うつ薬に対する治療反応の違いは、神経異常の違いを示唆している。双極性うつ病は、単極性うつ病との臨床的鑑別が困難な場合もあるが、両疾患で治療法が異なるため、これらを客観的に鑑別する方法の開発は重要である。英国・ダンディー大学のSzabolcs Suveges氏らは、強化学習ドリフト拡散モデルを用いた意思決定および報酬獲得・損失回避タスク中に取得した事象関連fMRIを用いて、治療抵抗性再発単極性うつ病と双極性うつ病患者の一般成人精神医学において長期フォローアップ調査を行った。Brain誌オンライン版2025年8月4日号の報告。 単極性うつ病と双極性うつ病の両方において、報酬学習シグナルが同様に鈍化し、損失回避学習シグナルが増加し、同様の精神運動遅延がみられるとの帰無仮説を検証した。 主な内容は以下のとおり。・帰無仮説と一致し、両疾患タイプにおいて、意思決定の異常な遅延が認められ、個々の患者における強化学習ドリフト拡散モデルのパラメータ推定値は、うつ病の重症度と相関していた。・単極性うつ病では、ポジティブなフィードバックの結果と価値のシグナルが鈍化し、ネガティブなフィードバックのシグナルが増加することが示唆された。・しかし、帰無仮説とは対照的に、双極性うつ病は線条体の報酬予測誤差シグナル伝達が維持され、単極性うつ病でみられた海馬および外側眼窩前頭葉における損失事象の強化符号化が欠如していた。・全体として、治療抵抗性再発単極性うつ病と治療抵抗性双極性うつ病は、外側眼窩前頭皮質の報酬価値シグナルと扁桃体の損失価値シグナルに関して、対照群と比較し、同様の神経異常パターンを示した。・しかし、両疾患は、とくに海馬、線条体、外側眼窩前頭葉の機能に有意な違いがみられ、客観的な鑑別が可能であることが示唆された。・神経画像解析の結果とサポートベクターマシンを用いた場合、精度74.3%で両疾患を鑑別可能であった。 著者らは「本結果を確認するためにも、重度かつ持続的な治療抵抗性再発単極性うつ病および治療抵抗性双極性うつ病患者を対象としたさらなる研究が求められる」としている。

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ギャンブル依存の“やめられない”、複数の脳領域が連動か

 「なぜギャンブルをやめられないのか?」。最新の研究から、その背景には“脳の複数の領域”と“気分の落ち込み”が関わっていることがわかってきた。扁桃体と腹側線条体という脳の領域が連動すると、「ギャンブルをしたい」という強い欲求が生まれ、この関係にはうつ症状が関与しているという。研究は京都大学大学院医学研究科(当時)の石川柚木氏、同大学附属病院精神科神経科/デイ・ケア診療部の鶴身孝介氏らによるもので、詳細は「Addiction Biology」に7月17日掲載された ギャンブル障害(GD)は、持続的なギャンブル行動とその悪影響を特徴とする精神疾患であり、強い欲求(渇望)が中心的な役割を担う。ギャンブルへの渇望は多面的なプロセスであり、楽しいと認識する「期待(Anticipation)」、強い衝動を表す「欲求(Desire)」、ネガティブな気分からの逃避を意味する「解放(Relief)」の3側面から構成される。この構造はコカインやたばこの渇望とも類似している。報酬が存在する際の渇望は、報酬追求行動に関与する扁桃体と腹側線条体(VS)の機能的結合によって調整されると考えられるが、報酬が存在しない際の渇望と両者の安静時機能的結合(rs-FC)との関係は未解明である。さらに、うつ症状がこの関係を仲介する可能性も示唆されている。本研究では、GD患者において扁桃体-VSのrs-FCが渇望と関連するという仮説を立て、うつ症状がその媒介因子として機能するかを検討することを目的とした。 本研究には、日本人のギャンブル障害(GD)患者51名(うち男性48名)と健常者45名(うち男性41名)が参加した。全GD患者はDSM-5-TRのGD診断基準を満たしていた。ギャンブルへの渇望は、スコアが高いほど渇望が強いことを示すリッカート尺度であるギャンブル渇望尺度(GACS)を用いて評価した。GACSは「期待」「欲求」「解放」の3つの下位尺度に分ける尺度であり、それぞれ対応する項目の合計点を算出した。うつ症状はベック抑うつ評価尺度II(BDI-II)により評価した。扁桃体と腹側線条体のrs-FCは、安静時fMRIで取得した両領域のBOLD信号の時系列データ間の相関係数を計算することで評価した。 GD患者では、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCはGACSの「欲求」スコアと有意な負の相関を示した(相関係数ρ=−0.377、95%信頼区間〔CI〕〔−0.591~-0.113〕、P=0.006)。その他のrs-FC値はいずれのGACS下位尺度とも有意な相関を示さなかった。また、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCはBDI-IIスコアとも有意な負の相関を示した(ρ=−0.390、95%CI〔−0.616~−0.130〕、P=0.005)。 次に、GD患者を対象に、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCを独立変数、BDIを媒介変数、GACSサブスケール(欲求)を従属変数とする因果媒介分析を実施した。その結果、有意な全体効果(−0.341、95%CI〔−0.617~−0.069〕、P=0.017)と平均因果媒介効果(ACME)(−0.137、95%CI〔−0.306~−0.018〕、P=0.015)が認められた。 男性GD患者(48名)に限定した感度分析では、右扁桃体‐右腹側線条体のrs-FCとGACS「欲求」スコアとの相関は依然として有意であった(ρ=−0.353、95%CI〔−0.634~−0.070〕、P=0.016)。一方で、ACMEは有意ではなかった(−0.110、95%CI〔−0.278~0.010〕、P=0.069)。 本研究について著者らは、「本研究では、扁桃体‐腹側線条体のrs-FCとギャンブルへの渇望との関連が示された。さらに、因果媒介分析により、うつ症状が渇望に対して媒介的な役割を果たす可能性が示唆された。これらの結果は、ギャンブル障害における渇望に関する重要な知見を提供し、その基盤となる神経メカニズムを標的とした効果的な介入法の開発に寄与すると考えられる」と述べている。(HealthDay News 2025年8月25日)

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英語で「食欲不振」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第31回

医学用語紹介:食欲不振 Anorexia今回は「食欲不振」についてお話しします。医療現場では anorexiaという専門用語が使われますが、患者さんとの会話では、どのような一般用語を使って伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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BPSDに対する非薬理学的介護者介入の比較〜ネットワークメタ解析

 認知症の行動・心理症状(BPSD)の軽減に非薬理学的な介護者介入は有用であるが、最も効果的な非薬理学的介入は、依然として明らかとなっていない。中国・杭州師範大学のXiangfei Meng氏らは、BPSDに対するさまざまな介護者介入とそれらの症状に対する介護者の反応を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。International Journal of Nursing Studies誌2025年10月号の報告。 2023年10月18日までに公表された研究を、PubMed、Embase、Cochrane Library、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)、PsycINFOよりシステマティックに検索した。バイアスリスクの評価にはRoB2、エビデンスの信頼性の評価にはCINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いた。頻度主義的枠組みを用いたランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。主要評価項目は、BPSD症状およびBPSDに関連する介護者の反応とした。 主な結果は以下のとおり。・8,336組のペアと12種類の介護者介入が含まれるランダム化比較試験71件を対象とした。・BPSDについては、多要素介入により介入後(SMD:−0.30、95%信頼区間[CI]:−0.47〜−0.12、p=0.001)およびフォローアップ調査時(SMD:−0.61、95%CI:−1.05〜−0.18、p=0.006)において症状の改善が認められた。・BPSDに関連する介護者の反応については、介入後の改善において、次の介入が有用であった。【多要素介入】SMD:−0.37、95%CI:−0.58〜−0.16、p=0.001【スキル構築】SMD:−0.26、95%CI:−0.42〜−0.10、p=0.001【認知行動療法】SMD:−0.22、95%CI:−0.41〜−0.03、p=0.023【教育】SMD:−0.20、95%CI:−0.35〜−0.04、p=0.017・SUCRA解析の結果、多要素介入は、BPSDの症状軽減(SUCRA:83.4%)、これらの症状に対する介護者の反応改善(SUCRA:90.9%)において、最も高い評価を得た介入であることが明らかとなった。・メタ回帰分析およびサブグループ解析の結果、共変数である「自立度」、「平均年齢」、「期間」が多要素介入のエフェクトサイズに影響を及ぼすことが示唆された。 著者らは「多要素介入は、BPSDの症状およびこれらの症状に対する介護者の反応軽減において最も優れた介入であり、持続的な効果を示すことが明らかとなった」としている。

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日本人の日常会話頻度と認知症リスク

 中高年を対象とした大規模集団コホートで、日常会話の頻度と認知症リスクとの関連を検討した結果、会話頻度が低いと認知症リスクが高く、会話が月1回未満の場合は認知症リスクが2倍を超えることが示唆された。国立がん研究センターの清水 容子氏らがArchives of Gerontology and Geriatrics誌オンライン版2025年8月5日号に報告。 本研究は、多目的コホート研究であるJPHC研究において2000~03年に日常会話頻度を報告した50~79歳の参加者について、認知症の発症を2006~16年の介護保険認定記録を用いて追跡した。生活習慣や既往歴などの因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、居住形態(独居もしくは同居)と性別によるサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・3万5,488人中3,334人が認知症と診断された。・会話が「ほぼ毎日」の場合と比較した完全調整HRは、「多くの人と毎日」で0.80(95%CI:0.69~0.93)、「数人と毎日」で0.88(同:0.80~0.97)、「週1~4回」で1.18(同:1.06~1.31)、「月1~3回」で1.17(同:0.97~1.42)、「月1回未満」で2.06(同:1.49~2.85)であった(傾向のp<0.001)。この関連は居住形態で変わらなかった。・独居男性では、会話頻度が高い(「ほぼ毎日」以上)場合のHRが1.71(同:1.26~2.32)、会話頻度が低い(「週1~4回」以下)場合が2.60(同:1.71~3.95)とどちらもリスクが増加したが、独居女性ではリスク増加はみられなかった。

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高齢入院患者におけるベンゾジアゼピン中止パターンとそれを阻害する因子

 退院後のベンゾジアゼピン(BZD)長期使用は、高齢患者におけるBZD依存や重篤な薬物有害事象リスクを高める可能性がある。しかし、高齢者におけるBZD中止パターンとそれに関連する因子についての研究は限られている。米国・ハーバード大学のChun-Ting Yang氏らは、高齢者における入院後のBZD中止のパターンと関連因子を特定するため、後ろ向きコホート研究を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年7月27日号の報告。 本コホート研究は、2004年1月〜2025年2月までのOptum CDMデータを用いて実施した。対象は、入院後30日以内に新たにBZD使用を開始した65歳以上の患者。不安症、精神疾患、アルコール乱用、てんかん発作、ホスピスケアを受けている患者は除外した。BZD中止は、BZD使用終了から15日を超える期間と定義した。主要解析では、カプランマイヤー法を用いて中止率を推定し、患者特性とBZD中止との関連はCox比例ハザードモデルを用いて解析した。死亡の競合リスクを補正するため、打ち切り確率の逆重み付け(IPW)を適用した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は3万3,449例(平均年齢:73.1±5.8歳、男性の割合:51.7%)。・IPW加重BZD中止率は、30日時点で53.3%(95%信頼区間[CI]:52.7〜53.8)、60日時点で86.7%(86.3〜87.1)、90日時点で92.6%(92.3〜93.0)であった。・30日時点でのBZD中止率は、2004年の31.7%(95%CI:29.5〜33.9)から2024年の71.1%(68.7〜73.5)へと増加が認められた。・研究期間中のBZD中止率は、年間4%の増加を示した。・BZD中止を阻害するリスク因子は、次のとおりであった。【不眠症】ハザード比(HR):0.66、95%CI:0.63〜0.69【中等〜重度のフレイル】HR:0.82、95%CI:0.75〜0.85【入院後/初回BZD使用前の抗うつ薬新規使用】HR:0.80、95%CI:0.76〜0.85【入院後/初回BZD使用前の非定型抗精神病薬新規使用】HR:0.90、95%CI:0.82〜0.99 著者らは「精神疾患の病歴のない高齢者における入院後のBZD中止率は、時間経過とともに上昇していた。しかし、とくに不眠症や中等〜重度のフレイルを有する高齢者においては、BZD中止に依然として課題が残存しており、今後の効果的な減量戦略策定のターゲットとなるであろう」とまとめている。

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退職は健康改善と関連、とくに女性で顕著――35ヵ国・10万人規模の国際縦断研究/慶大など

 退職が高齢者の健康に与える影響は一様ではない。近年、多くの国で公的年金の受給開始年齢が引き上げられ、退職時期の後ろ倒しが進んでいる。こうした状況に対し、退職の健康影響を検討した研究は数多いが、「認知機能を低下させる」「影響はない」「むしろ有益である」と結果は分かれていた。 慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らの研究グループは、米国のHealth and Retirement Study(米国健康・退職調査:HRS)をはじめとする35ヵ国の縦断調査データを統合解析し、50〜70歳の10万6,927例(観察数39万6,904例)を対象に、退職と健康・生活習慣の関連を検証した。本研究の結果はAmerican Journal of Epidemiology誌オンライン版2025年6月13日号に掲載された。 本研究のアウトカムは、退職後の認知機能(単語記憶テスト)、身体的自立度(ADL/IADL)、自己評価による健康度(5段階)、生活習慣(身体的不活動[中等度~強度の運動が週1回未満]、喫煙、大量飲酒[男性1日5杯以上、女性4杯以上])の変化であった。参加者は2年ごとに調査され、平均6.7年間追跡された。各国の年金受給開始年齢を操作変数とした固定効果付きIV回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 参加者の男女比は半々で、就労者と比較して退職者は年齢が高く、男性・既婚者・高学歴の割合が低かった。また、肉体労働や職務裁量が低い職歴の経験割合も低かった。【女性】・認知機能:+0.100標準偏差(SD)改善・身体的自立度:+3.8%改善・自己評価健康度:+0.193 SD改善・身体的不活動:-4.3%減少・喫煙:-1.9%減少【男性】・自己評価健康度:+0.100 SD改善認知機能、身体的自立度、生活習慣には有意な改善なし。 退職はとくに女性において認知機能や身体的自立を高め、生活習慣の改善を伴うことが示された。 研究者らは「なぜ退職は女性だけに有益なのか」という問いに対し「背景に退職後の生活行動に性差がある可能性がある」と指摘している。「女性は退職後に社会参加や余暇活動に積極的に関わる傾向が強く、身体活動の機会が増える。また、職場ストレスからの解放が喫煙行動の減少につながる可能性がある。これらの行動変化が、認知機能や身体機能の維持・改善に寄与していると考えられる。一方、男性は退職後にそのような生活習慣の改善が目立たず、効果は自己評価の健康度の改善にとどまった。通勤・労働負担の減少や余暇の拡大が主観的な健康感を高めたものとみられる」とした。 さらに、研究者らは「退職は健康状態を改善するが、年金受給開始年齢の引き上げによってこの効果を享受できる時期が遅れる可能性がある」と警鐘を鳴らす。「とくに女性にとっては、退職が認知症や身体機能障害のリスク低減に結び付く可能性があり、退職時期の遅延が社会的コストを増大させかねない。政策的な年金受給開始年齢引き上げの影響は慎重に検討する必要がある。また、退職後の健康的なライフスタイルを推進することは、公衆衛生全体を改善するための不可欠な取り組みとなるだろう」としている。

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ブレクスピプラゾールによるアジテーション治療は認知症患者だけでなく介護者にとっても有効

 香川大学の中村 祐氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する日本人患者を対象に、ブレクスピプラゾール治療が患者の神経精神症状および介護者の苦痛に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌2025年7月号の報告。 第II/III相多施設共同二重盲検試験において、ブレクスピプラゾール1mgまたは2mg/日群およびプラセボ群に3:4:4でランダムに割り付け、10週間の治療を行った。評価には、NPI(Neuropsychiatric Inventory)を用いた。患者の症状および介護者の苦痛は、NPIおよびNPI-Distressで定義した。 主な結果は以下のとおり。・10週目におけるNPI総スコアのプラセボ群との差は、ブレクスピプラゾール1mg/日群で−1.2(p=0.5891)、ブレクスピプラゾール2mg/日群で−8.4(p<0.0001)であった。・10週目におけるNPI-Distress総スコアのプラセボ群との差は、ブレクスピプラゾール1mg/日群で−1.1(p=0.2292)、ブレクスピプラゾール2mg/日群で−3.9(p<0.0001)であった。・ブレクスピプラゾール2mg/日群とプラセボ群を比較したところ、NPIスコアは2ポイント以上、NPI-Distressの興奮/攻撃性スコアは1ポイント以上の改善を示した。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人の急性期認知症における患者の症状改善および介護者の苦痛軽減に有効である可能性が示唆された」としている。

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富裕層の医師はどれくらい?/医師1,000人アンケート

 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポート1)によると、2023年の日本の富裕層・超富裕層の世帯数は前回調査(2021年)から11.3%増加し、合計約165万世帯となった。これは全体の約3%に当たる。では、医師のなかに富裕層・超富裕層はどれくらいいるのだろうか。そこで、CareNet.comでは20~60代の医師1,005人を対象に、世帯年収・純金融資産額に関するアンケート調査を実施した(2025年7月27日~8月2日実施)。本アンケート調査では、世帯年収と純金融資産額を調査し、富裕層・超富裕層の割合を算出した。また、資産運用の成功/失敗のエピソードも募集した。世帯年収1,400万円以上は53.1%、3,000万円以上は16.1% 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポート1)では、共働きで世帯年収1,500万円以上の家庭を「パワーファミリー」、都市部居住の共働きで世帯年収3,000万円以上の家庭を「スーパーパワーファミリー」としている。 では、医師の世帯ではどうだろうか。CareNet.comが実施したアンケート調査では、世帯年収1,400~3,000万円が49.8%、3,000万円以上が10.8%であった。この数字には、既婚かつ片働きの世帯(431人)や独身世帯(177人)が含まれている。そこで、共働き世帯(397人)に絞ってみると、世帯年収1,400~3,000万円が53.1%、3,000万円以上が16.1%であった。すなわち、共働き世帯のうちパワーファミリー相当は7割近くに上り、スーパーパワーファミリー相当も2割弱ということになる。富裕層・超富裕層は約13% 次に、世帯の純金融資産保有額※について聞いた。富裕層・超富裕層は純金融資産保有額に基づいて定義され、富裕層は「1億円以上5億円未満」、超富裕層は「5億円以上」である。野村総合研究所のレポート1)では、日本の富裕層は153.5万世帯(2.8%)、超富裕層は11.8万世帯(0.2%)とされている。 こちらも医師の世帯をみてみると、富裕層に当たる「1億円以上5億円未満」は11.2%、超富裕層に当たる「5億円以上」は2.0%であった。富裕層と超富裕層を合わせると13.2%に上り、日本全体の3.0%を大きく上回った。 富裕層・超富裕層の割合を開業医・勤務医別にみると、開業医では19.3%、勤務医では7.2%であり、開業医が高かった。また、共働き世帯は富裕層・超富裕層の割合が高く17.2%であった。片働き世帯は10.4%、独身世帯は11.3%であった。年代別にみると、年代が上がるほど富裕層・超富裕層の割合が高く、60代では18.3%に上った。※ 純金融資産は、現金・預金や株式などの金融資産総額から住宅ローンなどの負債総額を差し引いたものを指す。不動産や車などは含まない。資産運用の実施、20~40代は7割超 資産運用の実施状況を聞いた。その結果、運用中と回答した割合は、全体では64.7%であった。しかし、年代別にみると20代、30代、40代がそれぞれ71.4%、78.5%、75.6%と高かった一方で、50代、60代はそれぞれ55.1%、54.7%と低い傾向にあった。また、50代、60代の3割超が、資産運用を一度も実施したことがないと回答した。日本株、オルカンやS&P500などの投資信託が人気 資産運用の内訳をみると、運用対象は「日本株」が最も多く(60.0%)、次いで「投資信託/ETF(全世界):オールカントリーなど」(46.7%)、「投資信託/ETF(米国):S&P500など」(43.8%)であった。不動産(12.4%)、金・プラチナ(12.4%)、暗号資産(8.4%)なども一定数を占めた。 また、「投資・資産運用の成功/失敗エピソード」を募集したところ、成功例として「新型コロナ流行期の押し目買い」「S&P500の長期積立」「ドルコスト平均法」などが挙げられた。一方、失敗例としては「証券会社や銀行の勧誘で購入した商品の暴落」「FXなどでの大損」「株式を保有していた会社の倒産」などが目立った。【成功エピソード】・コロナショックの時、日本株を買いあさって、5,000万円の含み益がある(50代、腎臓内科)・駅直結の新築マンションを購入したら、期待通りに値上がりした(50代、その他)・S&P500を堅実に積み立てており、元本の倍くらいになっている(40代、精神科)・2022年ごろから、ひたすらドルコスト平均法。失敗は感じていない(20代、眼科)【失敗エピソード】・証券会社に勤める患者さんに勧められて人生で初めて購入した株があっという間に値下がりし、現在は100分の1になっている。その患者さんは来なくなった(50代、内科)・投資会社に勧められた株を買ったあと暴落した。すぐに損切りしてしまったが、その後10年経って株価が上がった。塩漬けでも持っておけばよかったと思った(60代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・FXなどで一瞬で5,000万円くらい溶かしたことがあるので、リスクの高い投資は行わないようにしている(50代、産婦人科)・トルコリラの投資をしたら1/3になった(50代、泌尿器科)・株式を保有していた会社が倒産した(60代、内科)・研修医時代にワンルームマンションに投資。売却したがとんとんだった。苦労のほうが多い(40代、皮膚科)・最近株を盗まれた(60代、腎臓内科)・かなり前に株で大損して(2,000万円くらい)以後株の世界から足を洗った(60代、内科)・いつも損ばかり(60代、内科)【その他のエピソード】・知らないものには手を出さない(40代、内科)・投資信託に現金を使い過ぎて、給料日まで現金がギリギリとなり、ひもじい日々を過ごした(30代、放射線科)・株を買ったら買いっぱなし。その後の株価を見ることもない(60代、泌尿器科)・損失が怖くて大きなお金は株式投資できない(40代、脳神経外科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の世帯年収・資産はどれくらい?/医師1,000人アンケート(ケアネット 佐藤 亮)■参考文献・参考サイトはこちら1)株式会社野村総合研究所ニュースリリース(2025年2月13日)

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医師の終末期の選択、95%が延命治療を拒否

 医師が進行がんや末期アルツハイマー病になった場合、どのような終末期医療を希望するのか? ベルギー・ブリュッセルのEnd-of-Life Care Research GroupのSarah Mroz氏らによる研究結果が、Journal of Medical Ethics誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。 研究チームは2022年5月~2023年2月に一般開業医、緩和ケア専門医、その他臨床医の1,157人を対象に横断的調査を実施した。ベルギー、イタリア、カナダ、米国(オレゴン州、ウィスコンシン州、ジョージア州)、オーストラリア(ビクトリア州、クイーンズランド州)の8エリアで、参加した医師に進行がんと末期アルツハイマー病という2つの仮想の臨床シナリオを提示し、終末期医療の意向に関する情報を収集した。 主な結果は以下のとおり。・出身国に関係なく、進行がんとアルツハイマー病の両ケースで90%以上の医師が症状緩和のための薬物療法を希望し、95%以上が心肺蘇生、人工呼吸器、経管栄養を避けることを希望した。・医師が心肺蘇生、人工呼吸器、経管栄養の延命治療を「良い選択肢」だと考えることはまれだった(心肺蘇生:がんの場合0.5%・アルツハイマー病の場合0.2%、人工呼吸器:同0.8%・0.3%、経管栄養:同3.5%・3.8%)。・医師の約半数が安楽死(積極的安楽死・医師幇助による自殺)を良い選択肢だと考えていた(がんの場合54.2%、アルツハイマー病の場合51.5%)。安楽死を良い選択肢だと考える医師の割合は、がんの場合はイタリアの37.9%からベルギーの80.8%、アルツハイマー病の場合は米国・ジョージア州の37.4%からベルギーの67.4%と幅があった。・安楽死の法的選択肢がある地域で開業している医師は、がん(オッズ比[OR]:3.1)とアルツハイマー病(OR:1.9)の両方に対して、安楽死を良い選択肢だと考える傾向が強かった。 研究者らは「医師の多くは、終末期における症状の緩和を強化し、延命治療を避けることを好む傾向があった。進行がんやアルツハイマー病の場合、半数以上の医師が安楽死を希望した。安楽死の希望は地域によって大きなばらつきがあり、安楽死の合法化が、地域ごとの希望に影響を与えているようだ」としている。

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玄関付近に植物のある家に住んだほうが日本人のうつ病リスクが低い

 高齢者のうつ病は、認知機能低下や早期死亡リスク上昇につながる可能性がある。住居環境とうつ病との関連は、多くの研究で報告されているものの、玄関付近の特性とうつ病との関連性を調査した研究は限られている。千葉大学の吉田 紘明氏らは、日本人高齢者における玄関付近の特性とうつ病との関連を明らかにするため、横断的研究を実施した。Preventive Medicine Reports誌2025年6月20日号の報告。 2022年1月〜2023年10月、65歳以上の日本人を対象にコホート研究を実施した。解析対象は、東京都23区内に居住する2,046人(平均年齢:74.8±6.2歳)。2023年におけるうつ病の状況は、老年期うつ病評価尺度(GDS15)を用いて評価した。2023年の玄関エリアの特性を説明変数として用いた。修正ポアソン回帰分析を用いて、うつ病有病率比および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象者2,046人中458人(22.4%)がうつ病に分類された。・玄関付近に植物や花のある住宅に住む人は、そうでない人と比較し、うつ病の有病率が低かった(有病率比:0.84、95%CI:0.71〜0.98)。・住宅種別による層別解析では、集合住宅居住者における植物や花のある住宅に住む人のうつ病有病率比は0.72(95%CI:0.52〜0.99)であった。・戸建て住宅に住む人では、有意な関連が認められなかった(有病率比:0.85、95%CI:0.70〜1.03)。 著者らは「日本人高齢者のメンタルヘルスをサポートするためには、玄関付近の特性に配慮することが重要である。植物や花を配置できる玄関周りのデザインとマネジメントシステムは、高齢者のうつ病予防に役立つ可能性が示唆された」と結論付けている。

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統合失調症における認知機能、日本の医師と患者はどう考えているか

 国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、日本における統合失調症に伴う認知機能(CIAS)の認識、対応、患者負担について評価を行った。Schizophrenia Research. Cognition誌2025年6月27日号の報告。 2023年4〜12月、日本の精神科医149人および統合失調症患者852人を対象に、オンラインで非介入横断研究を実施した。 主な内容は以下のとおり。・精神科医は、急性期には陽性症状のコントロールを優先し、維持期・安定期には社会機能の改善を最優先していた。・CIASのマネジメントは、患者が社会復帰する際に最も重要であると考えられていた。・外来患者よりも入院患者において、CIAS発症率が高いと報告された。・精神科医の72%はCIASの評価を行っていたが、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を使用した割合は15%にとどまった。・精神科医の58%から、CIAS介入を受け入れた患者の割合は、担当患者の40%以下であると報告された。・統合失調症患者の68%は、現在または過去にCIASを経験していると報告した。・CIASに関連する最も多い負担は、「以前できていたことができなくなった、または時間がかかるようになった」(65%)と「集中力を維持できない」(64%)であった。・現在CIASを経験していない患者496人では、「以前できていたことができなくなった、または時間がかかるようになった」が52%、「集中力を維持できない」が50%と報告された。 著者らは「CIASは、日本の精神科医に広く認識されているものの、適切な評価ツールの使用および介入が行われていなかった。多くの患者がCIASに関連する負担を報告したが、その多くはCIASを認識していなかった。これらの結果は、CIASに対する認識を高揚させることで、臨床現場でのマネジメントが容易となり、統合失調症患者の社会復帰の向上につながる可能性を示唆している」としている。

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ADHDの薬物療法、自殺・犯罪リスクも減少/BMJ

 注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法は、コア症状だけでなく自殺行動、物質乱用、交通事故、犯罪行為の発生を有意に低減することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らの調査で示された。ADHDの治療において、薬物療法はコア症状の軽減に有効であることが無作為化対照比較試験で示されているが、自殺行動や物質乱用などの、より広範で重要な臨床アウトカムに関するエビデンスは十分でないという。研究の成果は、BMJ誌2025年8月13日号に掲載された。5つのアウトカムをtarget trial emulation研究で評価 研究グループは、経験者との協議の下で、ADHDの影響を受ける人々の現実的なニーズに合わせて選出した5つのアウトカムに関して、薬物療法の有効性を評価する目的で、target trial emulation研究を行った(Swedish Research Council for Health, Working Life and Welfareなどの助成を受けた)。 スウェーデン居住者で、2007年1月1日~2018年12月31日に、年齢6~64歳でADHDの初回診断を受けた患者を対象とし、2年間追跡した。診断から3ヵ月以内に薬物療法を開始し、追跡期間中も処方薬の使用を継続した群(開始群)と、薬物療法を開始しなかった群(非開始群)を比較した。 研究期間中に同国でADHDの治療薬として承認を受けていたのは、アンフェタミン、デキサンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート(以上、中枢神経刺激薬)、アトモキセチン、グアンファシン(以上、中枢神経非刺激薬)の6剤であった。 主要アウトカムとして、ADHDの診断から2年間における5つのアウトカム(自殺行動、物質乱用、不慮のけが、交通事故、犯罪行為)の初発および再発イベントの発生を評価した。同国で刑事責任能力および運転能力が問われる最低年齢は15歳であることから、交通事故と犯罪行為の評価は15~64歳のサブコホートで行った。イベント既往歴を有する患者で、より良好な結果 ADHD患者14万8,581例(年齢中央値17.4歳[四分位範囲:11.6~29.1]、女性41.3%)を解析の対象とした。このうち8万4,282例(56.7%)が薬物療法を開始し、開始時に最も多く処方されたのはメチルフェニデート(7万4,515例[88.4%])で、次いでアトモキセチン(6,676例[7.9%])、リスデキサンフェタミン(2,749例[3.3%])の順だった。 ADHDの薬物療法により、5つのアウトカムのうち次の4つで初発率の有意な改善を認めた。自殺行動(1,000人年当たりの重み付け発生率:開始群14.5 vs.非開始群16.9、補正後発生率比:0.83[95%信頼区間[CI]:0.78~0.88])、物質乱用(58.7 vs.69.1、0.85[0.83~0.87])、交通事故(24.0 vs.27.5、0.88[0.82~0.94])、犯罪行為(65.1 vs.76.1、0.87[0.83~0.90])。一方、不慮のけが(88.5 vs.90.1、0.98[0.96~1.01])には、両群間に有意差はみられなかった。 過去に5つのアウトカムのイベント既往歴のない患者では、薬物療法により自殺行動(発生率比:0.87[95%CI:0.79~0.95])、交通事故(0.91[0.83~0.99])の発生率が有意に改善した。これに対し、イベントの既往歴を有する患者では、薬物療法により5項目すべてが、より顕著かつ有意に改善し、発生率比の範囲は自殺行動の0.79(95%CI:0.72~0.86)から不慮のけがの0.97(0.93~1.00)にわたっていた。再発への効果が顕著、刺激薬でより良好な結果 再発率は、以下のとおり、5つのアウトカムのすべてで薬物療法により有意に改善した。自殺行動(1,000人年当たりの重み付け発生率:開始群22.7 vs.非開始群24.3、補正後発生率比:0.85[95%CI:0.77~0.93])、物質乱用(166.1 vs.201.5、0.75[0.72~0.78])、不慮のけが(119.4 vs.122.8、0.96[0.92~0.99])、交通事故(31.6 vs.37.2、0.84[0.76~0.91])、犯罪行為(111.3 vs.143.4、0.75[0.71~0.79])。 また、中枢神経非刺激薬と比較して中枢神経刺激薬は、初発率および再発率とも5つのアウトカムのすべてで有意に良好であった。初発率の発生率比の範囲は、物質乱用の0.74(95%CI:0.72~0.76)から不慮のけがの0.95(0.93~0.98)まで、再発率の発生率比の範囲は、犯罪行為の0.71(0.69~0.73)から不慮のけがの0.97(0.95~0.99)までだった。 著者は、「この全国的な登録データを用いたtarget trial emulation研究は、実臨床の患者を反映したエビデンスをもたらすものである」「これらの知見は、ADHD患者全体において、広範な臨床アウトカムに対するADHD治療薬の有益な効果を示している」「本研究は、現在の無作為化比較試験では捉えきれていない、有益性に関する重要な情報を提供する」としている。

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男性部下の育休に対する上司の怒り、背景に職場の不公平感とストレス

 男性が育児休業(育休)を取りにくい職場の空気はどこから生まれるのか。今回、男性の育休に対する上司の怒りは、業務負担や部下に対する責任感といった職場ストレスが原因となり、不公平感を介して生じている可能性があるとする研究結果が報告された。研究は筑波大学人間系の尾野裕美氏によるもので、詳細は「BMC Psychology」に7月1日掲載された。 日本では男性の育児休業制度は国際的にみても手厚く整備されており、法的には長期間の取得が可能で、一定の所得補償も用意されている。しかし現実には、男性の育休取得率やその取得期間は依然として低く、制度が十分に活用されているとは言いがたい。従来の研究では、育休取得によるワークライフバランスの向上や仕事満足度の向上といった肯定的側面に主に焦点が当てられてきた。一方で、制度活用が職場内で生じさせる不公平感や、上司が感じる感情的な負担といった側面には、これまで十分な検討がなされてこなかった。そこで本研究では、男性部下の長期育休取得に対する上司の否定的感情が、職場におけるストレッサー(不明確な役割や能力を超えた業務など)を通じてどのように形成されるのかを明らかにすることを目的とした。不公平感が怒りの媒介要因となるという仮説モデルに基づき、その相互関係を検証するためのオンライン調査を実施した。 2024年3月にインターネット調査会社を通じて、30~60歳の民間企業の管理職400名(男女各200名)からデータを収集した。質問項目は、男性育休への怒り、男性の育休に関する不公平感喚起状況(育児関与の希薄さ、手厚い恩恵の享受、自身の仕事量の増加)、職場のストレッサー(質的負荷、量的負荷、部下に対する責任)、属性情報(性別、年齢、職業など)で構成された。 性別と子の有無を要因とする二元配置分散分析を行った結果、「育児関与の希薄さ」「手厚い恩恵の享受」において性別の主効果が有意で、女性の得点が高かった。一方、怒りと不公平感喚起状況との交互作用は認められなかった。職場ストレッサーでは「部下への責任感」にのみ有意な交互作用が認められた。単純主効果検定により、子どものいない男女間では男性が有意に高く、また女性では子ありの方が有意に高かった。一方、「質的負荷」「量的負荷」には交互作用・主効果ともに認められなかった。怒りは、男性育休に関する「育児関与の希薄さ」「手厚い恩恵の享受」「自身の業務負担の増加」の3つの不公平感要因および職場ストレッサーと正の相関を示し、不公平感要因は職場の様々なストレッサーとも関連した。 次に共分散構造分析により、職場のストレスが不公平感を介して上司の怒りに至る理論モデルを検証した。質的・量的負担や部下への責任感が、「育児関与の希薄さ」「手厚い恩恵の享受」「自身の仕事量の増加」といった男性育休に関する不公平感を高め、これらのうち「育児関与の希薄さ」「自身の仕事量の増加」が怒りと有意に関連した。また、量的負担は怒りに直接影響し、責任感は怒りを抑制する効果を示した。モデルの適合度指標はいずれも良好で、仮説モデルの妥当性が確認された。 本研究について著者は、「職場のストレスにより、男性社員の育休取得に対して上司が不公平だと感じ、それが怒りにつながることがある。ワークライフバランス施策には、意図しない負の影響が生じる場合もあり、本研究は、男性の育休に対する職場の反応がどのように職場環境に左右されるかを示すことで、職場の公平性に関する理解を深める手がかりとなる」と述べている。

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BPSDには抑肝散???【漢方カンファレンス2】第4回

BPSDには抑肝散???以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう) 【今回の症例】 90代男性 主訴 奇声、介護への抵抗 既往 高血圧、アルツハイマー型認知症 病歴 5年前に認知症が悪化して施設入所。数ヵ月前から昼夜を問わず「あ゛ーっ」といった奇声や噛みつくなどの行動が目立ち始めた。介護への抵抗やほかの入居者からのクレームもあり、連日、抗精神病薬の頓服で対応していた。漢方薬で何とかならないかと受診。 薬剤歴 ドネペジル錠5mg 1回1錠、クエチアピン錠25mg 1錠頓用(1日4〜5回使用) 現症 身長165cm、体重52kg。体温36.7℃、血圧150/60mmHg、脈拍83回/分 整 経過 初診時 「???」エキス3包 分3で治療を開始。(解答は本ページ下部をチェック!) 2週後 夜間に奇声を発することが少なくなった。 1ヵ月後 介護への抵抗がなくなった。 2ヵ月後 精神的に落ち着き、笑顔もみられるようになった。 3ヵ月後 抗精神病薬の頓服が0〜1回/日で落ち着いている。 問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<陰陽の問診> 寒がりですか? 暑がりですか? 体の冷えを自覚しますか? 顔はのぼせませんか? 横になりたいほどの倦怠感はありませんか? 暑がりです。 冷えは自覚しません。 顔がのぼせます。 体はきつくありません。 入浴で長くお湯に浸かるのは好きですか? 冷房は苦手ですか? 入浴は長くできません。 冷房は好きです。 のどは渇きますか? 飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか? のどが渇きます。 冷たい飲み物が好きです。 <飲水・食事> 1日どれくらい飲み物を摂っていますか? 食欲はありますか? 1日1.5L程度です。 食欲はあります。 <汗・排尿・排便> 汗はよくかくほうですか? 尿は1日何回出ますか? 夜、布団に入ってからは尿に何回行きますか? 便秘や下痢はありませんか? 汗かきで顔に汗が多いです。 尿は5〜6回/日です。 夜は1〜2回トイレに行きます。 便は毎日出ます。 <ほかの随伴症状> よく眠れますか? 悪夢はありませんか? 毎晩、眠れません。 悪夢はありません。 昼食後に眠くなりませんか? 動悸はありませんか? 足をつったり抜け毛が多かったりしませんか? 昼食後の眠気はありません。 動悸はありません。 足のつりや抜け毛はありません。 ほかに困っている症状はありますか? いつもイライラしています。 自然と怒りがこみあげて大きな声が出ます。 【診察】顔色は紅潮して怒った表情。脈診では浮沈間・やや強の脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白黄苔が中等量。腹診では腹力は中等度、心下痞鞕(しんかひこう)、小腹不仁(しょうふくふじん)を認めた。四肢の触診では冷感はなし。※(いつも赤ら顔で怒った表情で大声を出している。布団はかぶっていないことが多い、食欲はあり、オムツ交換時、便臭が強い、夜間も眠らず大声を出していることが多い)カンファレンス 今回はアルツハイマー型認知症で施設入所している高齢者の症例ですね。自分は訪問診療にも行っているので、このようなケースによく遭遇します。認知症の周辺症状といえば、抑肝散(よくかんさん)ですね! 病名から漢方薬に飛びついてはいけませんよ。まずBPSD(behavioral and psychological symptom of dementia)による症状は、易怒性、興奮、妄想などの「陽性症状」と抑うつ、無気力などの「陰性症状」に分けられます。抑肝散は陽性症状に用いるのが原則です1)。 認知症の症例では、コミュニケーション困難で自覚症状の問診ができないことが多いです。今回の提示した問診はできたと仮定して記載しています。実際は自覚症状の問診はできず、「診察」の項の※のような情報を参考にすることも多いです。また普段の様子をよく知る看護師や介護スタッフからの情報収集が役立つことも多いですね。 高齢者では病歴がとれずに困りますからね。 問診以外でも、脈は動脈硬化で硬くなって不明瞭、舌は開口指示に従えない、お腹はオムツで診察するのに手間がかかる、などとなかなか所見が取りづらいことも多いですね。そのぶん、望診を重視して、診察時の見た目の印象が処方決定に役立つことも多いです2)。 そのため高齢者の漢方診療では、五感をフルに使う必要があるね。患者の表情、触診で冷えを確認、オムツの中の便や尿の臭いなどで虚実を判定するよ。便や尿の臭いが強い場合は実証、臭いが少ない場合は虚証を示唆する所見だね。だけど日常的にオムツ交換をやっている看護師や介護スタッフに質問すると、臭いに耐性ができているためか実際は臭いが強くても、便臭は強くないですっていうこともあるから注意だよ。可能であれば自分で確認したほうがよいけどね。 なるほど〜。高齢者の漢方治療のコツですね。 では、いつものように漢方診療のポイント(1)陰陽の判断からしてみましょう。 本症例は、暑がり、長く入浴できない、冷水を好むなどから陽証です。 そうだね。たとえ問診ができなくても、赤ら顔、布団をかぶっていないことが多い、四肢に冷えなし、便臭が強いなどの情報からも陽証だね。そのほかには乾燥した白黄苔、口渇なども熱を示唆する所見だね。 陰証の高齢患者さんは、布団にくるまっている、厚着、活気が乏しい、いつも寒がっているといった特徴がありますね。 高齢者だから、寝たきりだからといって、陰証・虚証と決めつけてはいけないよ。長生きできている高齢者だからこそ、生命力が強く体力があると考えることもできるのだ。 なんとなくイメージがわきますね。 六病位はどうですか? 陽明病ほど熱が強くないので少陽病です。ほかに腹満や便秘があることも陽明病の特徴でしたが、それらもないですね。 よくわかっているね。少陽病は慢性疾患において「川の流れがよどむ淵のように停滞する時期」といわれるんだ。陽証において、太陽病は悪寒・発熱、陽明病では身体にこもった強い熱と腹満・便秘といった特徴的な症状があるため、「慢性疾患で明らかな冷えがなければ少陽病」とも表現され、慢性疾患に対して漢方治療を行うことの多い現代では重要だよ(少陽病については本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。 なるほど。冷えがなくて、陰証が否定されれば、少陽病と考えることが多いのですね。納得です。 それでは、漢方診療のポイント(2)の虚実の判断に移ろう。 脈はやや強、腹力も中等度とあるので虚実間〜実証です。 漢方診療のポイント(3)気血水の異常はどうでしょうか? 食欲不振や全身倦怠感などの気虚はありません。 赤ら顔や顔に汗は気逆と捉えることができますか? 気逆でよいね。そのほかにも気逆には、動悸、驚きやすい、焦燥感、悪夢などがあるけどそれらはないようだ。血水に関しては、舌の暗赤色と舌下静脈の怒張は瘀血で、水の異常はあまり目立たないね。 あとはイライラ、不眠といった精神症状が目立ちます。 怒りっぽいことも含めて、精神症状として漢方診療のポイント(4)のキーワードで考えよう。本症例をまとめるよ。 【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?暑がり、長湯はできない、顔面紅潮、冷水を好む→陽証(少陽病)(問診ができない場合)顔面紅潮、布団をかけていない、便臭強い、四肢に冷えなし→陽証(少陽病)(2)虚実はどうか脈:やや強、腹:中等度→虚実間〜実証(3)気血水の異常を考える赤ら顔、顔に汗が多い→気逆舌暗赤色→瘀血(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込むイライラ、不眠、怒りっぽい、心下痞鞕(+)、胸脇苦満(−)解答・解説【解答】本症例は、陽証・実証・気逆に対して用いる黄連解毒湯(おうれんげどくとう)で治療をしました。【解説】黄連解毒湯は少陽病・実証に用いる漢方薬で、のぼせの傾向があって顔面紅潮し、精神不安、不眠、イライラなどの精神症状を訴える場合に用います。黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)とすべて清熱作用をもつ生薬で構成されます。腹診では、心下痞鞕や下腹部に横断性の圧痛があるのが典型です。精神症状以外にも、のぼせを伴う鼻出血、急性胃炎、皮膚疾患などに活用されます。またお酒を飲むとすぐに顔が赤くなる人が黄連解毒湯を飲むと二日酔い予防になるといわれます。統合失調症患者の睡眠障害に対する報告3)や湿疹、皮膚炎に対する症例4)などが報告され、熱を伴うさまざまな疾患に用いられています。今回のポイント「少陽病」の解説太陽病では表(ひょう:体表面)に闘病反応がありました。少陽病は生体の内部に影響がおよび、表と裏(り:消化管)の間である半表半裏(はんぴょうはんり)が病位になります。実際は、半表半裏はのど〜上腹部あたりを指していると考えられます。そのため口が苦い、のどが乾く、ムカムカする嘔気、食欲不振などの症状が出現します。太陽病では着目しなかった舌や腹部の所見も重要になります。具体的には舌では舌苔が厚くなり(写真左)、腹診では両側季肋部に指を差し込むと抵抗感や患者の苦痛が出てきて、胸脇苦満(きょうきょうくまん)とよびます(写真右)。少陽病ではその場で闘病反応を鎮める治療を行い、「清解(せいかい)」といいます。少陽病の適応として発症から数日が経過したこじれた風邪が典型です。また、少陽病は慢性疾患において「川の流れがよどむ淵のように停滞する時期」といわれます。陽証において、太陽病は悪寒・発熱、陽明病では身体にこもった強い熱と腹満・便秘といった特徴的な症状がありますから、「慢性疾患で明らかな冷えがなければ少陽病」とも表現され、慢性疾患に対して漢方治療を行うことの多い現代では重要です。柴胡と黄芩が含まれる柴胡剤が少陽病期によく用いられ小柴胡湯(しょうさいことう)がその代表です。柴胡剤はこじれた風邪以外にも、ストレスと関連するイライラや不眠などの症状に用います。少陽病では柴胡剤以外にもさまざまな種類の漢方薬が準備されています。なお、黄連解毒湯は「赤い怒り」といわれ、赤ら顔、顔面紅潮が使用目標です。一方、抑肝散は「青い怒り」で、顔色があまりよくないのが典型です。したがって、のぼせや熱が目立つ症例では抑肝散よりも黄連解毒湯を考えてください。また、黄連解毒湯は止血作用があるので、鼻出血で顔ののぼせがあるような場合には黄連解毒湯を内服しながら、鼻を圧迫するとよいでしょう。上下部消化管内視鏡で止血困難な消化管出血の症例に黄連解毒湯を活用したという報告もあるのです5)。今回の鑑別処方BPSDの陽性症状に対して、黄連解毒湯と同じように、顔面紅潮、興奮などの精神症状があり、便秘を伴う場合には三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)が適応になります。同じ気逆の症状でも、動悸や悪夢を伴う不眠があり、イライラしているような場合は柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれうとう)を用います。この場合は腹診で胸脇苦満や腹部大動脈の拍動が触知されるのが特徴です。黄連解毒湯や三黄瀉心湯の場合は、胸脇苦満はなく心下痞鞕が目標になり、腹診所見で鑑別する場合もあります。柴胡加竜骨牡蛎湯はメーカーによって瀉下作用のある大黄(だいおう)の有無に違いがあるので便秘によって使い分ける必要があり、大黄を含むほうがより実証の漢方薬です。このように興奮や不穏に対する症状には瀉下作用のある大黄が含まれることが多いです。これは大黄には瀉下作用だけでなく鎮静作用があり、単に便秘の改善を目標にしているのではないことを意識する必要があります。古典では統合失調症のような状態に大黄を一味(将軍湯とよぶ)で煎じて鎮静させたというような記載もあります。また抑肝散よりも怒りが目立たず、活気の低下や食欲不振がある場合は釣藤散(ちょうとうさん)を考えます。釣藤散は脳血管性認知症に対する二重盲検ランダム化比較試験(DB-RCT)6)があり、夜間せん妄や不眠などに加え、会話の自発や表情の乏しさといった意欲の低下の改善を認めています。このRCTを参考に当科では「療養型病床群において釣藤散投与を契機に経管栄養状態から経口摂取が可能となった高齢者の3例」を報告しました2)。当科では、釣藤散はBPSDの抑うつ、無気力などの陰性症状や低活動性せん妄に対して用いることが多いです。 1) 桒谷圭二. 誰もが使ったことのある漢方薬 〜でもDo処方だけじゃもったいない〜 3. 抑肝散。Gノート増刊. 2017;4:1066-1076. 2) 田原英一ほか. 日東医誌. 2002;53:63-69. 3) 山田和男ほか. 日東医誌. 1997;47:827-831. 4) 堀口裕治. 日東医誌. 1999;50:471-478. 5) 坂田雅浩ほか. 日東医誌. 2017;68:47-55. 6) Terasawa K, et al. Phytomedicine. 1997;4:15-22.

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認知症診断後の経過に男女差は?

 認知症の男性患者は、年齢や人種/民族、社会経済要因、併存疾患などで調整した後でも女性患者と比較して死亡率が高く、入院などの医療サービスの利用率も高いことを、米国・Duke University School of MedicineのJay B. Lusk氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌オンライン版2025年8月11日号掲載の報告。 認知症の発症率は女性で高いことが知られており、性差は認知症のアウトカムにも影響する可能性が示唆されている。そこで研究グループは、認知症の男性患者と女性患者における、認知症と診断された後の死亡率や医療サービスの利用率を調査するために全国コホート研究を行った。 調査はメディケア加入データを用いて2014~21年に実施され、最大8年間の追跡調査が行われた。解析は2024年4月〜2025年4月に行われた。対象は、国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づく認知症の診断コードを有し、過去1年以上の出来高払い制メディケア加入歴のある65歳以上の患者であった。 主要評価項目は、Cox比例ハザード回帰分析で推定された全死亡率のハザード比(HR)であった。副次評価項目は、一般的な医療サービスの利用(入院、専門看護施設やホスピス入所、神経画像診断サービスや理学療法/作業療法など)のHRであった。 主な結果は以下のとおり。・研究には、2014~21年に認知症と診断された572万1,711例(女性330万2,579例、男性241万9,132例)が含まれた。・女性患者は、男性患者と比較して1年粗死亡率および全原因入院率が低かった(いずれもp<0.001)。 -1年粗死亡率:女性21.8%、男性27.2% -全原因入院率:女性46.9%、男性50.5%・男性に関連する死亡の未調整HRは1.30(95%信頼区間[CI]:1.29~1.31、p<0.001)であった。・年齢、人種、民族、メディケイドの二重受給資格、併存疾患、医療アクセスで調整すると、この関連性はわずかに弱まった(調整HR:1.24、95%CI:1.23~1.26、p<0.001)。・男性に関連する全原因入院の未調整HRは1.13(95%CI:1.12~1.14、p<0.001)、調整HRは1.08(95%CI:1.08~1.09、p<0.001)であった。・男性患者では、ホスピス入所、神経画像検査、神経変性疾患の診断または行動障害による入院のリスクも高かった。 これらの結果より、研究グループは「認知症の男性患者の死亡率を低下させ、医療サービスの利用を減らす戦略は、認知症による負担を軽減するうえでとくに効果的である可能性がある。女性は認知症の発症率が高いため、発症予防に重点を置くことが性差による認知症関連死亡率の格差を解消するために重要である」とまとめた。

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音声で日本人の軽度認知障害を検出可能か?

 軽度認知障害(MCI)では、発声パターンやテンポの変化がみられることがあるため、音声は認知機能障害の潜在的なバイオマーカーとなる可能性がある。音声バイオマーカーの予測特性をタイムリーかつ非侵襲的に検出するうえで、人工知能(AI)を用いたMCIの検出は、費用対効果に優れる方法であると考えられる。国立循環器病研究センターの清重 映里氏らは、日本の地域住民における非構造的な会話の音声データからAIで生成した音声バイオマーカーを用いて、MCIを検出する予測モデルを開発し、その効果を検証した。The Lancet Regional Health. Western Pacific誌2025年6月12日号の報告。 日本の地域在住成人1,461人を対象に横断的デザインによる観察研究を実施した。アウトカムは、MCIスクリーニングの記憶パフォーマンス指数スコアにより評価した認知機能障害とした。音声データは、3分間の自由解答式インタビューより収集し、音声生成器Wav2Vec2を用いて、音響的特徴と韻律的特徴に基づき、512次元の個々の音声情報ベクトルとして音声バイオマーカーを抽出した。その他の重要な予測因子として、年齢、性別、教育歴を含めた。979人の参加者を対象に、極度勾配ブースティング決定木アルゴリズムとディープニューラルネットワークモデルを適用し、認知障害予測モデルを開発した。モデル開発に含まれなかった482人の参加者において、曲線下面積(AUC)を用いて予測性能を検証した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の内訳は、女性が967人(66.2%)であり、認知障害が526人(36.0%)でみられた。・平均年齢は79.5±6.3歳、平均教育年数は11.6±2.2年であった。・音声バイオマーカーの導入により、年齢・性別モデルでは、AUCが0.80(95%信頼区間[CI]:0.76〜0.84)から0.88(0.84〜0.91)へ有意な改善が認められた(DeLong検定:p<0.0001)。・また、年齢・性別・教育モデルでは、AUCが0.78(95%CI:0.73〜0.82)から0.89(0.86〜0.92)へ有意な改善が認められた(DeLong検定:p<0.0001)。 著者らは「音声バイオマーカーを用いた認知障害の予測モデルは、MCIスクリーニングにかかる時間を大幅に短縮し、高い予測性能示すことが明らかとなった。音声バイオマーカーは、予測性能の向上に大きく貢献することが示唆された」とまとめている。

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日本における統合失調症患者に対する終末期ケアの実態

 東北大学のFumiya Ito氏らは、日本全国のレセプトデータベース(NDB)を用いて、統合失調症入院患者の終末期ケアの実態を調査した。BMJ Supportive & Palliative Care誌オンライン版2025年7月15日号の報告。 2012~15年に死亡した20歳以上の入院患者を対象に、NDBのサンプリングデータセットを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは、最期の14日間に終末期ケアを受けた患者の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・終末期患者4万9,932例のデータを分析し、そのうち統合失調症患者は530例であった。・死亡場所については、統合失調症患者は精神科病棟で死亡していた(44.8%、95%信頼区間[CI]:41.7~48.9)。・統合失調症患者は非統合失調症患者と比較し、心肺蘇生(16.6%vs.20.5%、p<0.001)、人工呼吸器(13.4%vs.20.9%、p<0.001)を行った割合が低かったが、オピオイド投与の割合は高かった(20.8%vs.19.0%、p=0.30)。・多変量ロジスティック回帰分析では、統合失調症患者は心肺蘇生(調整オッズ比[aOR]:0.50、95%CI:0.38~0.65、p<0.001)、人工呼吸器(aOR:0.48、95%CI:0.36~0.63、p<0.001)の実施と負の相関を示し、オピオイドの投与とは正の相関を示した(aOR:1.57、95%CI:1.18~2.09、p=0.002)。

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