国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、日本における統合失調症に伴う認知機能(CIAS)の認識、対応、患者負担について評価を行った。Schizophrenia Research. Cognition誌2025年6月27日号の報告。
2023年4〜12月、日本の精神科医149人および統合失調症患者852人を対象に、オンラインで非介入横断研究を実施した。
主な内容は以下のとおり。
・精神科医は、急性期には陽性症状のコントロールを優先し、維持期・安定期には社会機能の改善を最優先していた。
・CIASのマネジメントは、患者が社会復帰する際に最も重要であると考えられていた。
・外来患者よりも入院患者において、CIAS発症率が高いと報告された。
・精神科医の72%はCIASの評価を行っていたが、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を使用した割合は15%にとどまった。
・精神科医の58%から、CIAS介入を受け入れた患者の割合は、担当患者の40%以下であると報告された。
・統合失調症患者の68%は、現在または過去にCIASを経験していると報告した。
・CIASに関連する最も多い負担は、「以前できていたことができなくなった、または時間がかかるようになった」(65%)と「集中力を維持できない」(64%)であった。
・現在CIASを経験していない患者496人では、「以前できていたことができなくなった、または時間がかかるようになった」が52%、「集中力を維持できない」が50%と報告された。
著者らは「CIASは、日本の精神科医に広く認識されているものの、適切な評価ツールの使用および介入が行われていなかった。多くの患者がCIASに関連する負担を報告したが、その多くはCIASを認識していなかった。これらの結果は、CIASに対する認識を高揚させることで、臨床現場でのマネジメントが容易となり、統合失調症患者の社会復帰の向上につながる可能性を示唆している」としている。
(鷹野 敦夫)