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ADHDとASDに対するビタミン介入の有効性〜メタ解析

 ビタミン介入は、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)のマネジメントにおいて、費用対効果が高く利用しやすいアプローチとして、主に便秘などの消化器症状の緩和を目的として用いられる。最近の研究では、ビタミンがASDやADHDの中核症状改善にも有効である可能性が示唆されている。しかし、既存の研究のほとんどは患者と健康者との比較に焦点を当てており、臨床的に意義のあるエビデンスに基づく知見が不足していた。中国・浙江大学のYonghui Shen氏らは、ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月30日号の報告。 PubMed、Web of Science、Cochrane Libraryより対象研究を検索した。ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビタミン補給は、ASDおよびADHDの両方の症状を有意に改善することが示唆された。・その効果は、ビタミンの種類や障害によって違いがあることが明らかとなった。・ビタミンB群のサプリメントは、とくにASD関連症状の軽減に有効であり、ビタミンD群のサプリメントは、ADHD症状の改善により有効であることが示唆された。 著者らは「さまざまなビタミンが、疾患特異的な治療効果を発揮することが示唆された。ASDおよびADHDに対する個別化された臨床介入を行ううえで、これらのビタミンが役立つ可能性がある」としている。

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シロシビンによるうつ病改善効果、5年後も持続

 「シロシビン」の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する効果は、最長で5年間持続する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。シロシビンはマジックマッシュルームと呼ばれるキノコに含まれている幻覚作用のある成分である。初期のシロシビンに関する臨床試験を追跡調査したこの研究では、試験参加者の3分の2が試験から5年が経過した後もうつ病の完全寛解を保っていたことが判明したという。米オハイオ州立大学コロンバス校幻覚剤研究教育センター所長のAlan Davis氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Psychedelic Studies」に9月4日掲載された。 Davis氏は、「5年が経過した今でも、ほとんどの人はこの治療法が安全で、有意義かつ重要で、生活の改善を促すものだと見なしている」と語っている。同氏はまた、「治療後に起こり得ることを詳細に理解することは重要だ。結果がどうであれ、このような臨床試験に参加したことで彼らの人生が改善されたことを示していると思う」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 米国立補完統合衛生センターによると、シロシビンはアルコール依存症、不安症、うつ病の治療に有効である可能性のあることが、研究で示されている。Davis氏らが2021年に発表した臨床試験では、24人のうつ病患者が心理療法との併用でシロシビンの2回投与を受け、症状が有意に軽減したことが確認された。 今回の研究では、これら24人のうち、試験終了後5年間の追跡調査に同意し、精神的・感情的健康状態を測定する一連のオンラインアンケートに回答した18人が対象とされた。主要評価項目は、ベースラインから5年後の追跡調査時までの臨床医が評価した抑うつ症状のスコアの変化であった。 その結果、追跡調査に参加しなかった6人は寛解していないと仮定した上で解析に含めても、67%の参加者が治療後少なくとも5年間は寛解状態を維持していることが明らかになった。また、不安症状や日常生活の機能障害が改善していることも示された。さらに、参加者に対するインタビューでは、心の持ち方、感情面の健康、人間関係における前向きな変化が長期にわたり続いていることが報告された。 研究グループは、追跡調査時の参加者の健康状態は、5年前のシロシビンによる治療だけで得られたものではないと指摘している。なぜなら、追跡調査参加者のうち、臨床試験以降もうつ病関連の治療を受けていなかったのはわずか3人であり、残りの参加者は、抗うつ薬を使用したり、心理療法を受けたり、幻覚剤を服用したりしていたからだ。しかし、参加者へのインタビューでは、この試験に参加したことで、参加者はうつ病を状況に応じて対処することが可能な疾患として認識するようになったことが示唆された。 Davis氏は、「参加者は、うつ病が再発するかどうかにかかわらず、全体的にポジティブな感情や熱意を抱く能力が高まったと感じていた。多くの人が、こうした変化が抑うつ気分に見舞われた際の対処法に大きな変化をもたらしたと報告していた」と話している。 ただしDavis氏は、本研究はサンプル数が少なく、参加者の経験に基づいて結論を導き出すのは困難であることを認めている。それでも同氏は、「この結果は、うつ病に対するシロシビン療法の潜在的かつ永続的な好影響を垣間見せてくれる」と述べている。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール〜RCTメタ解析

 アジテーションは、苦痛を伴う神経精神症状であり、アルツハイマー病の約半数にみられる。また、アルツハイマー病に伴うアジテーションは、認知機能の低下を促進し、介護者の負担を増大させる一因となっている。セロトニンおよびドーパミンを調節するブレクスピプラゾールは、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する有効性が示されている薬剤であるが、高齢者における有効性、安全性、適切な使用については、依然として不確実な点が残っている。ブラジル・Federal University of PernambucoのAnderson Matheus Pereira da Silva氏らは、アルツハイマー病高齢者のアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月31日号の報告。 本研究は、PRISMA 2020ガイドラインおよびコクランハンドブックに従い、実施した。分析対象には、臨床的にアルツハイマー病と診断された高齢者を対象に、ブレクスピプラゾール(0.5〜3mg/日)とプラセボを比較したRCTを組み入れた。主要アウトカムは、アジテーションの重症度、臨床的重症度、精神神経症状、有害事象とした。アジテーションの重症度、臨床的重症度、精神神経症状の評価には、それぞれCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)を用いた。リスク比(RR)、平均差(MD)、95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて統合した。ランダム効果メタ解析は、頻度主義モデルおよびベイズモデルver.4.3.0を用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・5件のRCT、1,770例を分析に含めた。・ブレクスピプラゾール治療は、CMAIのアジテーション(MD:-5.79、95%CI:-9.55〜-2.04、予測区間:-14.07〜-2.49)の減少、CGI-Sスコア(MD:-0.23、95%CI:-0.32〜-0.13、予測区間:-0.39〜-0.06)の改善との関連が認められた。・NPIスコアに有意な差は認められなかった。・錐体外路症状や日中の眠気などの有害事象は、ブレクスピプラゾール群でより多く発現したが、その範囲は広く、有意ではなかった。・メタ回帰分析では、用量または投与期間は、効果修飾因子として同定されなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、認知機能の悪化を伴わずに、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対し、短期的に中程度の効果をもたらす可能性があるが、安全性に関するシグナルは依然として不明確な部分が残っている。しかし、予測区間には相当の不確実性があり、ブレクスピプラゾール使用は個別化され、綿密にモニタリングすべきであることが示唆された。今後の試験では、長期的なアウトカムや患者中心の指標を優先的に評価すべきである」と結論付けている。

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ナルコレプシー治療にパラダイムシフト、oveporextonが第III相試験の評価項目をすべて改善、先駆的医薬品にも指定/武田

 武田薬品工業の経口オレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬oveporexton(TAK-861)はナルコレプシータイプ1(NT1)に対する第III相試験で有望な結果を示した。その結果は世界睡眠学会で発表された。また、同薬は国内では先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。 NT1は、脳内のオレキシンニューロンが減少することで引き起こされる慢性かつまれな神経疾患であり、日常生活に支障を来すさまざまな症状を引き起こす。oveporextonはオレキシンの欠乏に対処することで、NT1の広範な症状を改善する。現在、NT1の原因となるオレキシン欠乏を標的とする治療薬はなく、認可されればoveporextonがファースト・イン・クラスとなる。世界睡眠学会「World Sleep 2025」での第III相試験結果 2025年9月に行われた世界睡眠学会「World Sleep 2025」では、oveporextonに対する2つの国際共同第III相試験(FirstLightとRadiantLight試験)のデータが発表された。両試験には19ヵ国273例の被験者が登録されている。両試験の主要・副次すべての評価項目で統計学的に有意な改善が認められた。以下が主な項目の結果である。 日中の過度の眠気(EDS):12週時点の覚醒維持検査(MWT)による、平均睡眠潜時およびエプワース眠気尺度(ESS)スコアのベースラインからの変化とも、プラセボ群と比べoveporexton群で統計学的に有意な改善を示した。とくに2mg×2/日投与群においては、被験者の大多数で平均睡眠潜時が正常範囲内(≧20分)まで改善し、健康成人と同程度のESSスコア(≦10)を達成した被験者は85%近くであった。 カタプレキシー(情動脱力発作)発現率:1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)はプラセボ群に比べ、oveporexton群で12週にわたり有意に低下した(ベースラインからの変化率の中央値は80%超)。oveporexton群におけるカタプレキシーが発現しない日の頻度は、ベースライン時の0日/週から12週時には4〜5日/週に改善した。 症状の重症度:ナルコレプシー重症度尺度(NSS-CT)の総スコアにおいて、プラセボ群に比べ、oveporexton群で統計学的に有意な変化を示した。70%を超える被験者が最低重症度(軽度、スコア0〜14)を示した。 安全性プロファイル:oveporextonの忍容性はおおむね良好であり、安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と同様で、治験薬と関連のある重篤な有害事象の報告はなかった。先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定 oveporexton(TAK-861)は、2025年9月29日、NT1を予定される効能又は効果として厚生労働省より先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。今回の指定は国際共同第IIb相臨床試験(TAK-861-2001試験)の結果に基づくものである。 なお、oveporextonは同国際共同第IIb相臨床試験のデータに基づき、米国食品医薬品局(FDA)および中国国家食品薬品監督管理局からも、NT1患者の日中の過度の眠気に対する治療薬としてブレークスルーセラピーに指定されている。

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直近5年、アクセプトされた論文があると答えた医師は何割?/医師1,000人アンケート

 オンラインジャーナルやオープンアクセスジャーナルの普及に加え、生成AIを活用した検索や翻訳・要約も広まりつつあり、論文の閲覧・執筆を取り巻く状況が大きく変化している。今回CareNet.comでは会員医師約1,000人を対象に、論文閲覧・執筆の最近の状況についてアンケートを実施した(2025年8月26~27日実施)。論文検索の手段、PubMed以外で多かったのは 興味のある論文を見つけるための主な手段について、76.5%の医師がPubMedと回答し、医中誌(39.1%)、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事(38.4%)、所属する学会の学会誌(19.6%)などが続いた。 年代別にみると、PubMedとの回答が最も多いのは共通していたが、20~50代では75%以上を占めたのに対し、60代では59.0%と若干低い傾向がみられた。一方、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事との回答は20~50代では40%以下だったのに対し、60代では51.2%であった。そのほか、XなどのSNSからの情報との回答は全体で4.0%と低いものの、20~30代では10.9%と他世代と比較して高かった。ひと月に読む平均論文数は、アブスト・本文ともに1~5本との回答が最多 アブストラクトのみおよび本文全体について、平均して月何本の論文を読むか聞いた質問では、ともに1~5本との回答が最も多く、アブストラクトのみ1~5本は49.6%、本文全体を1~5本は28.6%であった。 年代別、所属する施設の病床数別にみた結果に大きな差はみられなかったが、月に本文全体を6本以上読むと回答した医師は、200床以上の医療機関に勤務する医師で多い傾向がみられた(12.1%)。 論文を読む主な目的としては、専門領域の情報収集が79.2%と最も多く、他科領域の情報収集(25.7%)、論文執筆・学会発表・講演準備のため(24.4%)、個人的な興味関心(18.5%)が続いた。直近5年、筆頭著者としてアクセプトされた論文がある医師は約4割 直近5年に“筆頭著者”としてアクセプトされた論文の本数は、1~3本(29.2%)、4~6本(5.2%)、7~10本(2.2%)、11本以上(1.7%)と続き、総計すると1本以上との回答は38.3%であった。同じく直近5年に“責任著者”としてアクセプトされた論文の本数は、1~3本(5.5%)、4~6本(1.9%)、7~10本(0.8%)、11本以上(1.7%)と続き、総計すると1本以上との回答は9.9%であった。 年代別にみると、“筆頭著者”としてアクセプトされた論文数が1本以上あると回答した割合は年代が高くなるにつれ減少し、20~30代(51.3%)、40代(49.4%)、50代(34.0%)、60代(20.1%)であった。一方“責任著者”としての論文数が1本以上あると回答した割合は50代で最も高く(13.9%)、60代・40代(9.0%)、20~30代(7.0%)であった。 病床数別にみると、“筆頭著者”および“責任著者”としてアクセプトされた論文数が1本以上あると回答した割合は200床以上の施設に勤務する医師で最も高く、それぞれ48.2%、14.6%であった。自由回答で最近の変化を聞いた質問では、「医局を離れて縁がなくなった(60代、消化器内科)」、「倫理委員会を求められるので、大学などの組織にいないと研究の論文が出せない傾向について、是正したくない人たちも多いことを感じる(60代、小児科)」といった意見が寄せられ、所属施設による影響もうかがわれた。 医学論文を執筆・投稿する主な目的について聞いた質問では、専門医や指導医、学位などの取得・更新のためが最も多く38.5%を占めた。次に多かったのは医学論文を執筆・投稿することはない(34.5%)で、この回答を年代別にみると、60代で最も多く49.6%、50代(35.6%)、40代(28.6%)、20~30代(23.5%)であった。 このほか、診療科別にみた論文閲覧状況、自由回答で聞いた最近感じている変化など、アンケート結果の詳細は以下のページにて公開している。『医師の論文閲覧&執筆状況』

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ケサンラ、新しい用量でARIA-Eの発症リスクが有意に減少/リリー

 日本イーライリリーは2025年9月18日、「認知症の治療現場の今とケサンラの最新使用法に関するメディアセミナー ~新しい投与スケジュールによりARIA-Eの発現割合が低下~」を開催した。「ケサンラ点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ)は、2024年9月に「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」を効能または効果として国内における承認を取得し、同年11月26日に発売された。 ケサンラの従来の用法および用量は、初回から700mgを4週間隔で3回、その後は1,400mgを4週間隔で少なくとも30分かけて点滴静注するスケジュールであった。一方、抗アミロイドβ抗体薬の投与ではARIA(アミロイド関連画像異常)の発現が懸念される。ARIAは抗アミロイドβ抗体薬の投与に伴って起こるMRIの異常所見の総称で、ARIA-E(浮腫/滲出液貯留)とARIA-H(微小出血/脳表ヘモジデリン沈着)に大別される。このARIA発現のリスク低減を目的に、2025年8月、用法および用量について「通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として初回は350mg、2回目は700mg、3回目は1,050mg、その後は1回1,400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する」と投与量を漸増していくスケジュールへの変更承認を取得した。 本セミナーの冒頭で、日本イーライリリーの片桐 秀晃氏(研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部 本部長)は、「国内の65歳以上の高齢者のうち、2022年時点で認知症または軽度認知障害(MCI)に該当する人は約1,000万人、有病率は27.8%と推計され、日本は超高齢化社会に直面している」と述べたうえで、同社の取り組みとして認知症と共生する社会に貢献すべくまい進する姿勢を見せた。認知症は早期の治療開始が鍵 続いて、患者や家族にとっての進行抑制の価値や早期発見・診断の重要性などについて、岩田 淳氏(東京都健康長寿医療センター 副院長)が解説した。まず、一部の患者や家族にある「点滴治療=重症者向け」という認識が、診断・治療開始の遅れを招く原因となることを指摘した。これに対し、専門医の立場ではMCIの段階で速やかにケサンラの投与を開始することが重要とされており、先送りは将来的に投与の適応外となる可能性があるため、MCIを疑う所見があればHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やMMSE(ミニメンタルステート検査)の結果にかかわらず、早期に受診・専門医への紹介につなげる必要があるとした。そのうえで、こうした早期介入の目的は治療自体ではなく、患者の治療後のQOLを高めることにあると述べた。薬剤負荷を抑える用量漸増によりARIA-Eが有意に減少 ケサンラの新しい用法・用量の承認の根拠となった「TRAILBLAZER-ALZ 6試験」の結果や、副作用としてのARIAの発症機序について、猪原 匡史氏(国立循環器病研究センター 副院長・脳神経内科部長)が解説した。TRAILBLAZER-ALZ 6試験とは、アミロイドPET検査により脳内にアミロイドβプラーク沈着が認められた早期アルツハイマー型認知症患者(843例)を対象に、沈着量の変化やARIAの発現割合を検討した多施設共同無作為化二重盲検第III相試験である。被験者を350mg開始群(212例)、700mg開始群(208例)、投与スキップ群(210例)、頻回投与群(213例)の4つの群に無作為に割り付け、同じ総投与量を異なる方法で投与した。 主要評価項目は24週時までのARIA-E関連事象の発現割合で、700mg開始群と比較して投与24週時のARIA-E関連事象の相対リスクが20%減少する事後確率を算出し、これが事前に規定した閾値(80%)を超えるか否かを検討した。結果、24週時のARIA-E関連事象の発現割合は、350mg開始群で13.7%、700mg開始群で23.7%であり、相対リスク減少率は40.5%、相対リスクが20%減少する事後確率は94.1%と、事前に規定した閾値を上回った。 副次評価項目について、76週時のMRI検査に基づくARIA-E関連事象の重症度は、700mg開始群と比較して350mg開始群では軽度であり、有意差が認められた(p=0.015、CMH検定)。ベースラインから76週時までの脳内アミロイドβプラークの減少量は、350mg開始群で70.92センチロイド、700mg開始群で72.14センチロイドと同程度であった。 安全性について、治療開始76週時までの有害事象の発現割合は、350mg開始群で93.9%(199/212例)、700mg開始群で92.3%(191/207例)であった。副作用の発現割合は、350mg開始群で53.8%(114/212例)、700mg開始群で53.1%(110/207例)であった。その中でARIA-Eの発現割合は、700mg開始群が23.2%(48例/207例)であったのに対し、350mg開始群は15.1%(32例/212例)と有意に減少していた。 ARIAは、血管周囲の排泄経路障害や血液脳関門の破綻によりアミロイドβが蓄積し、そこに抗アミロイドβ抗体薬が投与されるとアミロイドβのクリアランスに伴い一過性に血管外漏出を引き起こすことで発症する。TRAILBLAZER-ALZ 6試験の結果について同氏は、「投与初期の薬剤負荷を抑える漸増法によってアミロイドβのクリアランス経路に見合った段階的な除去が促され、過度な蓄積を避けることでARIAリスク低減に寄与する可能性を示唆している」と述べた。さらに、抗アミロイドβ抗体薬の治療対象者の多くは高齢者であるため、既存の脳微小出血や抗血栓薬の併用などのARIAのリスク因子について理解し、定期的なMRI検査などで処方医と読影医が連携することが重要であるとした。最後に同氏は、MRI検査によりARIAを早期に捉え、高血圧などの血管障害リスクとなりうる生活習慣病のマネジメントを行っていく必要性を強調した。

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外来ベンゾジアゼピン減少戦略、入院中の不眠症治療標準化がポイント

 不眠症は、頻繁にみられる臨床的愁訴であり、入眠障害、夜間の中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害といった症状を呈する。これらの睡眠障害は、さまざまな精神疾患や身体疾患と関連していることが多く、生活の質の低下や広範な社会的負担につながる可能性がある。ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は入院患者の不眠症マネジメントに広く用いられているが、とくに高齢者においては、認知機能低下、転倒、骨折などの有害事象との関連が指摘されている。広島大学病院では、より安全な処方実践を促進するため、入院患者向け処方集およびクリニカルパスガイダンスを2021年11月に改訂し、入院中のBZD新規処方開始抑制を目指している。同病院の大本 亜沙妃氏らは、外来患者における睡眠薬処方を分析し、入院時の不眠症治療薬の標準化が、外来の不眠症治療薬処方に及ぼす影響を評価した。Cureus誌2025年7月29日号の報告。 外来患者における睡眠薬処方について、記述統計学的手法を用いて分析するため、医療記録をレトロスペクティブにレビューした。本分析では、入院患者の不眠症治療薬の標準化が、医師による外来患者への不眠症治療薬処方の動向に及ぼす影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究期間中、BZDおよびBZD以外の薬剤の処方率が低下したことが示された。・さらに、3ヵ月間にわたり、BZDの新規処方が減少傾向にあることが認められた。 著者らは「入院患者における不眠症治療薬としてのBZDの処方を制限することで、医師による外来患者への不眠症治療薬の処方が適正化される可能性があることが示唆された」と結論付けている。

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米国ドラマ「24」【その2】なんで腰抜けや記憶喪失は「ある」の?-進化精神医学から迫る解離症の起源

今回のキーワード迷走神経反射解離性健忘脱力発作離人感・現実感消失症解離性神経学的症状症解離性遁走前回(その1)、失神するメカニズムから、腰抜けや記憶喪失になるメカニズムを、脳科学の視点から仮説を使って解き明かしました。このシネマセラピーの記事では、これまでほぼすべての精神障害の起源を掘り下げてきました。これらの現象も、その起源がありそうです。それでは、そもそもなぜ迷走神経反射、腰抜け、そして記憶喪失は「ある」のでしょうか?この謎の答えに迫るために、今回も引き続き、米国ドラマ「24(トゥエンティ・フォー)」を踏まえて、進化精神医学の視点から、これらの病態の起源に迫ります。なお、正式名称としては、記憶喪失は解離性健忘、腰抜けは脱力発作です。ただ、この記事では、わかりやすさを優先して、よく使われる通称の「腰抜け」「記憶喪失」で表記します。じゃあなんで迷走神経反射、腰抜け、そして記憶喪失は「ある」の?迷走神経反射、腰抜け、そして記憶喪失の病態のメカニズムがわかりました。それでは、そもそもなぜこのような病態は「ある」のでしょうか?ここで、進化医学の視点から、進化の3つの時期に注目して、これらの病態の起源を掘り下げてみましょう。(1)死んだふりで生き延びる―迷走神経反射の起源約5億年前に魚類が誕生してから、天敵が近くにいる時に危険を素早く察知する扁桃体が進化しました。同時に、天敵に追い詰められて戦うことも逃げることもできなくなった時にいったん動かなくなる迷走神経反射も進化しました。これは、その間に天敵を油断させて、また動けるようになったら、すきを見て逃げるための、捨て身の生存戦略です。1つ目の進化は、死んだふり(擬死)で生き延びることです。実際に、現在、迷走神経反射に類似する現象は、魚類から、両生類、爬虫類、鳥類、そして哺乳類まで多くの動物で確認されています2)。たとえば、「タヌキ寝入り」は日常的な言い回しになるくらい有名です。これが、「戦うか逃げるか、または固まるか(”fight, flight, or freeze”)」と呼ばれるゆえんです。そして、これが、迷走神経反射の起源であり、五感や体感の感度が鈍くなり、現実感がなくなる病態(離人感・現実感消失症)の起源でもあります。つまり、迷走神経反射は、太古の私たちの祖先が獲得した進化の産物の名残りだったというわけです。だから、迷走神経反射は「ある」のです。(2)困ったふりで生き延びる―腰抜けの起源約700万年前に人類が誕生して、約300万年前にアフリカの森からサバンナに出て、血縁で集団になって助け合う社会脳が進化しました。そんななか、天敵である猛獣から逃げきれない絶体絶命な状況になった時、先ほどの死んだふりではなく腰が抜けるだけで意識がある方が、一緒にいる仲間たちに運んでもらい、逃げるのを助けてもらえるチャンスは増えるでしょう。これは、仲間頼みの捨て身の生存戦略です。2つ目は、困ったふりで生き延びることです。「ふり」という言い回しをあえて使っていますが、先ほどの「死んだふり」と同じように、もちろん本人が意識してできることではなく、無意識です。これを支持する事実が2つあります。1つは、性差です。実際に、腰抜けを含む解離性神経学的症状症の性差においては、男性よりも女性が2~3倍多いです1)。これは、腰抜けになることによって、女性は周りの体格で勝る男性たちから援助行動を引き出すことができます。一方で、その逆の男性が腰抜けになる状況は、体格差から考えると、負担が大きいため、助けてもらえる可能性が低くなります。この点で、現代でも、「腰抜け」という言葉は、女性ではなく、男性に対しての軽蔑の言葉になっていることも納得がいきます。このような事情によって、腰抜けになる人がとくに女性で増えるような進化の選択圧がかかり、性差に表れていると言えるでしょう。もう1つは、腰抜けになるのは人間だけであるという事実です。人間以外の他の動物で明らかな腰抜けは確認されていないことからも、腰抜けは、動物で唯一助け合いをする人間ならではの現象であると言えるでしょう。なお、ペットの犬や猫が獣医から「腰が抜ける」と指摘されることはあります。しかし、その原因のほとんどは、心理的なもの(重度ストレス)ではなく、ビタミン不足や外傷などの身体的なものであると言われています。(3)知らないふりで生き延びる―記憶喪失の起源約300万年前以降、人類は社会脳の進化によって、家族や部族の絆に思い入れを持つようにも進化しました。そんななか、災害や部族間の争いで、自分の家族が死んだり殺された時、悲嘆にくれたり敵の部族を恨み続けるよりも、そのトラウマ体験をはじめ、家族の顔やそれまでの記憶をいっそ思い出せない方が、その後に引き取ってくれた新しい家族や敵の部族社会の中にスムーズに馴染んでいき、自分の子孫を残す確率を高めます。これは、新しい環境に適応するための生存戦略です。3つ目は、知らないふりで生き延びることです。今回も、「ふり」という言い回しをあえて使っていますが、先ほどの「死んだふり」「困ったふり」と同じように、もちろん本人が意識してできることではなく、無意識です。そもそも、人類が言葉を話すように進化したのは、たかだか約20万年前です。そして、過去、現在、未来などの時間軸を認識するなど概念的な思考ができるようになったのは、人類史ではごく最近の約10万年以降です。つまり、情報化された現代社会と違って、原始の社会では、言葉さえなく、その日暮らしでその瞬間を生きているだけであり、どんな人生を送ってきたかという記憶(全生活史)はそれほど重要ではないため、記憶喪失になってもそれほど困らないでしょう。それどころか、むしろ記憶喪失になった方が新しい社会に溶け込めて好都合だったでしょう。これを支持する事実が2つあります。1つは、思い出せない範囲です。先ほどもご紹介しましたが、トラウマ体験だけ思い出せない記憶喪失(選択的健忘)もあることです。まさにそのトラウマ体験だけを「知らないふり」して何ごともなかったように生き延びていけます。逆に、一般常識が思い出せなくなることはないことです。まるで、それまでの人生を「知らないふり」して、何ごともなかったように新しい環境で生き延びていけます。どちらにしても、あまりにも都合が良く、単なる脳の障害では説明ができません。もう1つは、記憶喪失になって放浪する病態(解離性遁走)があることです。トラウマ体験のあった場所から遠ざかろうとする無意識の回避の心理に加えて、放浪し続けることで、結果的に自分を受け入れてくれる新たな社会に巡り合う可能性が高まる点で、都合が良いです。これも、単なる脳の障害では説明ができません。なお、エピソード記憶と意味記憶は、同じ記憶機能として括られていますが、その心理発達の時期、進化の起源の時期はかなり違うことが考えられます。その詳細については、以下の記事をご覧ください。 1) DSM-5-TR、p330、p352:日本精神神経学会、医学書院、2023 2) 「死んだふり」で生きのびる、p82:宮竹貴久、岩波書店、2022

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家事をしない人は認知症リスクが高い?米国65歳以上の10年間調査

 身体活動レベルは、アルツハイマー病およびその他の認知症発症リスクに影響を及ぼす。米国・カリフォルニア大学のNan Wang氏らは、65歳以上の米国人を対象に、家事頻度の変化が認知機能に及ぼす影響を評価するため、10年間にわたる家事頻度の変化と認知機能との相関を調査した。The Permanente Journal誌オンライン版2025年9月10日号の報告。 Health and Retirement Studyに参加した65歳以上の米国人8,141例のデータを分析した。2008~10年の家事頻度の変化を「一貫して高い」「低から高へ変化」「高から低へ変化」「一貫して低い」の4つに分類し、評価した。認知機能は、2010~18年に複合スコア(範囲:0~35)を用いて測定し、混合効果線形回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の年齢中央値は75±6.6歳、女性の割合は59.3%であった。・家事頻度が「高から低へ変化」「一貫して低い」と回答した人は、「一貫して高い」と回答した人と比較し、認知機能低下との関連が認められた(各々、0.079[95%信頼区間[CI]:-0.117~−0.042]、0.090[95%CI:-0.126~-0.054])。・家事頻度が「低から高へ変化」と回答した人と「一貫して高い」と回答した人との認知機能低下は、統計的に有意な差が認められなかった(β=-0.027[95%CI:−0.074~0.019]、p=0.252)。・この関連性は、女性と男性で同様であり(Pinteraction=0.765)、80歳以上と65~79歳でも同様であった(Pinteraction=0.069)。 著者らは「高齢期に家事への関与が低い状態から高い状態に移行するか、一貫して高い状態を維持することは、性別や年齢にかかわらず、認知機能の低下を遅らせる可能性が示唆された」としている。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性

 米国・Ohio State University Wexner Medical CenterのJared Stroud氏らは、アルツハイマー型認知症患者に伴うアジテーションの治療に対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を検討するため、2つの臨床試験を統合し、事後解析を実施した。Current Medical Research and Opinion誌2025年9月5日号の報告。 軽度から重度の認知機能低下およびアジテーションを有するアルツハイマー病患者を対象とした2つの国際共同無作為化二重盲検試験において、ブレクスピプラゾール(2mg/日または3mg/日)およびプラセボによる治療のデータを統合した。12週間にわたるアジテーション頻度の変化は、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)を用いて測定した。安全性評価には、治療中に発現した有害事象(TEAE)を含めた。本事後解析では、ケア環境(施設入所、非施設入所)、認知機能低下の重症度(軽度/中等度、重度)、併発する行動症状(精神病、うつ病、不安症、易刺激性、睡眠障害)、認知症治療薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、メマンチン)、精神疾患治療薬(抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬剤)の併用の有無に基づき、臨床的に関連する13のサブグループについて調査した。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化サンプル621例の平均年齢は74歳(範囲:55~90歳)、女性は344例(55.4%)、男性は277例(44.6%)であった。・13のサブグループのうち12において、ブレクスピプラゾールは、プラセボと比較し、12週間にわたるアジテーション頻度の減少率において有意な有効性を示した。・ベンゾジアゼピン系薬剤の併用のサブグループは唯一の例外であったが、本結果は症例数が少なかった(71例)。なお、2次解析では、ブレクスピプラゾールの有効性が示された。・ブレクスピプラゾールとプラセボを比較した場合の最も大きな差が認められたサブグループは、抗うつ薬の併用、睡眠障害の併発、精神疾患の併発であった。・TEAEの全体的な発現率は、サブグループ間でおおむね一貫していた。 著者らは「本探索的解析において、ブレクスピプラゾールは、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対し有効であることが、あらためて示唆された」としている。

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肺炎は認知症リスクを高めるか~メタ解析

 肺炎が認知症や認知機能低下のリスクの上昇と関連するかいまだ不明である。今回、中国・Hangzhou Geriatric HospitalのZhen Yan氏らが系統的レビューとメタ解析で検討した結果、肺炎と認知症リスクの関連が示唆され、高齢者でより顕著であった。Annals of Medicine誌2025年12月号に掲載。 本研究は、MEDLINE(PubMed経由)、EMBASE(Excerpta Medica Database)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Web of Science、Scopus、ClinicalTrials.gov、World Health Organization International Clinical Trials Registry Platform(WHO ICTRP)データベースを用いて、2024年2月29日までに発表され、成人肺炎患者における認知症または認知機能低下に関するアウトカムを報告した研究を対象とした。統合ハザード比(HR)およびオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて算出した。年齢、地域、研究デザイン、肺炎のタイプによるサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・さまざまな母集団を対象とした10研究が含まれた。・プール解析により、肺炎と認知症リスク増加との間に有意な相関が示された(HR:1.738、95%CI:1.358~2.225)が、研究間でかなりの異質性が認められた(I2=97.1%)。・サブグループ解析では、この関連は高齢者においてより顕著であり、地域や研究デザインによって若干異なることが示された。細菌性肺炎と非定型肺炎でリスクに有意差はなかった。 著者らは、「これらの結果は、肺炎から回復した患者、とくに高齢者において、潜在的な認知機能低下を軽減するための注意深いモニタリングと予防戦略の必要性を強調するもの」と結論している。

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統合失調症患者の平均寿命が17年も短い理由とは

 統合失調症患者の死亡率は、一般人口に比べて有意に高く、平均余命が15~20年短縮するといわれている。ルーマニア・Transilvania University of BrasovのAndreea-Violeta Popa氏らは、ルーマニアの統合失調症患者コホートにおける10年間の全死亡率とその臨床的相関関係を、実際の臨床記録、病院記録、法医学記録を用いて調査した。Schizophrenia (Heidelberg, Germany)誌2025年8月29日号の報告。 2010〜13年に入院した統合失調症患者635例を対象に、10年間フォローアップ調査を実施した。死亡率、死因、リスク因子は、Cox回帰モデルおよび標準化死亡比(SMR)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・フォローアップ期間中に死亡した患者は123例(19.37%)、1,000人年当たり21.3例であった。・ルーマニアの一般人口と比較したSMRは1.58であり、統合失調症患者の死亡リスクが有意に高いことが示唆された。・死因は、非暴力的な死因が優勢で、心血管疾患(27.64%)および感染症(17.07%)が最も多かった。・自殺や事故を含む暴力的な死因は、全死亡率の17.07%を占めた。・死亡時の平均年齢は58.97歳であり、平均寿命の17年短縮が認められた。・年齢は死亡率の最も強い独立予測因子であった(ハザード比[HR]:1.07、p<0.001)。・第2世代抗精神病薬の使用(HR:0.37、p<0.001)および入院頻度の低さ(HR:0.09、p<0.001)は、全死亡率および原因別死亡率の低下と有意な関連が認められた。 著者らは「統合失調症は、主に予防可能な身体疾患や暴力的な死因により、早期死亡率の有意な上昇と関連していることが示唆された。生存転帰を改善するためには、早期介入、持続的な治療順守、統合的な医療ケアが不可欠である」としている。

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睡眠不足・睡眠障害は緑内障リスクに関連か

 多くの人が悩まされる睡眠障害。しかし、放置すると思わぬ疾患を引き起こす可能性がある。短い睡眠時間や不眠症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)といった睡眠障害が、視神経の変性や緑内障の発症リスクと関連することが、大規模研究で明らかになった。睡眠の質を整えることが、緑内障予防につながる可能性があるという。研究は京都大学大学院医学研究科眼科学教室の赤田真啓氏、畑匡侑氏らによるもので、詳細は8月15日に「American Journal of Ophthalmology」に掲載された。 緑内障は、世界中の高齢者における重度の視覚障害や失明の主な原因の一つである。緑内障の主な危険因子は加齢であるものの、その発症機序は多因子的であり、眼科的要因と全身的要因の双方が関与している。全身的要因の中では、近年の研究により、異常な睡眠パターンが緑内障の発症に関与する可能性があることが指摘されている。著者らは以前、滋賀県長浜市で実施された地域ベースの前向きコホート研究(長浜コホート研究)より、SASが緑内障進行の指標である網膜神経線維層(RNFL)の菲薄化と関連する可能性を示した。しかし、全国規模の大規模調査は不足しており、睡眠時間がRNFL厚や緑内障リスクに与える影響も十分に検討されていない。このような背景から、著者らは睡眠不足、不眠症、SASが成人のRNFLの菲薄化および緑内障の発症と関連しているかどうかを検証するために、地域ベースの横断研究と全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。 地域ベースの横断研究には、長浜コホート研究から40~80歳の成人5,958人が参加した。睡眠は手首装着型アクティグラフィーで評価され、RNFL厚は光干渉断層計(OCT)で測定された。睡眠パラメータとRNFL厚との関連を検討するため、多変量線形モデルを用いた横断解析が行われた。一方、全国規模の後ろ向きコホート研究には、厚生労働省が運用するNDBデータベースが利用された。解析対象は、40歳以上の不眠症患者98万5,136人、SAS患者7万2,075人、そしてこれらの疾患をもたない対照群であった。最大7.5年間追跡し、Cox比例ハザードモデルを用いて緑内障発症の調整ハザード比(aHR)が推定された。 地域ベースの横断研究では、参加者の睡眠時間と睡眠効率をそれぞれ4群、5群に分類し一元配置分散分析を実施した。その結果、睡眠時間(P=0.021)および睡眠効率(P<0.001)のいずれにおいてもRNFL厚に有意差がみられた。RNFL厚は6~7時間睡眠群で最も高く、睡眠時間が短くなるほど減少する傾向を示した。さらに年齢、性別、眼圧、および全身因子で調整後も、睡眠時間が6時間未満であることはRNFLの菲薄化と独立して関連していた(β=-0.76、95%信頼区間〔CI〕 -1.33~-0.19、P=0.008)。 全国コホートでは、追跡期間中に、不眠症患者98万5,136人のうち1万8,954人、SAS患者7万2,075人のうち1,276人が新たに緑内障と診断された。年齢、性別、既存の併存疾患で調整したCox比例ハザード回帰分析の結果、不眠症(aHR 1.30、95%CI 1.28~1.32、P<0.001)およびSAS(aHR 1.43、95%CI 1.35~1.51、P<0.001)は、いずれも緑内障リスクの上昇と独立して関連していた。 本研究について著者らは、「今回の結果は、臨床的に診断された不眠症や睡眠時無呼吸症候群と、緑内障の発症との間に有意な関連があることを裏付けている。睡眠評価と管理を眼科診療に取り入れることは、緑内障の予防に役立つ可能性がある」と述べている。 なお、不眠症とSASが緑内障リスクを高める機序について、著者らは、不眠症は網膜の老廃物排出システム(脳のグリンパティック系に類似する仕組み)の不調を介してリスクを高め、SASではこの不調に加えて低酸素、酸化ストレスや炎症などが関与し、さらにリスクを高めているのではないかと考察している。

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災害時に不眠を訴える避難者への対応【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第7回

災害時に不眠を訴える避難者への対応大地震の後、余震が続く避難所において、不眠を訴える高齢の避難者がいます。本人はこれまで睡眠障害を経験したことはないものの、慣れない避難生活により睡眠が十分に取れず、体調を崩すことへの不安を口にしています。こうした状況にどのように対応すればよいでしょうか?災害時の不眠私自身、東日本大震災の医療支援として南三陸町に入った際、小学校の校舎を避難所として使用しました。当時は灯油が不足し、暖房が使えない中、寝袋にくるまっても寒さでまったく眠れなかった経験があります。避難者は、住居の損壊、親族の安否への不安、さまざまな環境要因により、十分な睡眠が得られないことは容易に想像できます。事実、東日本大震災後には、東京において不眠を訴える人が普段の1.5~2倍に増加し、被害の少なかった大阪でも、繰り返される被災映像の影響で急性ストレス障害に似た症状が現れ、不眠が増加したことが報告されています1)。避難所や車中泊は、自宅と比較して、睡眠環境(騒音・寒冷/暑熱・硬い寝具・プライバシー欠如)が悪く、睡眠連続性を悪化させ、自律神経・血糖変動にも影響することが示されました2)。今回は、災害時の睡眠障害について、その対応を概説します。DPATの介入が必要な不眠避難者に対して、まずせん妄や精神病症状の有無を確認することが大切です。強い不眠を訴え、その後、朦朧状態になったり、不穏・興奮状態のほか、手の震えや発汗、動悸などがみられればせん妄を疑います。習慣的に飲酒のある方が震災後に急に断酒した後、せん妄が出現することがあります(振戦せん妄)。また、大切な人を亡くして自殺念慮がある場合もあります。これらの症状がみられた場合には、DPAT(災害派遣精神医療チーム)へ相談が必要です3)。DPATは、被災地域の支援を目的とした専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームであり、私は何度も一緒に活動したことがありますが、とても親身になり専門的な介入をしてくれます。非薬物療法が原則せん妄や精神症状でない場合には、原則、非薬物療法が最優先されます。「眠れないから薬がほしい」と希望される方もいますが、災害など大きな精神的ストレスがかかった直後の睡眠問題は一般的であり、決して珍しいことではないこと、自然軽快が多いことを説明します。避難所の管理者と相談し、環境を整えるように努めることも大切です。具体的には、マットや毛布など寝具の整備、夜間の騒音・光の低減、就寝スペースの区画、耳栓・アイマスク配布などが推奨されています2)。夜間に消灯して眠る、というのは実は容易ではなく、逆に目がさえることもあり、寝なくてはいけない、という強迫観念も不眠を助長します。そのようなときは、昼寝を取り入れる、夜中起きていられるスペースを作ってあげることも有効です。不眠には、睡眠に対する考え方(認知)が関与しているといわれています。睡眠に対する考え方を指導してくれるCognitive Behavior Therapy for Insomnia(CBT-I)と呼ばれる不眠症に対する認知行動療法があり4)、これもDPATに相談してもいいでしょう。実際の例として、私自身も不眠を感じるときにはYouTubeで漫才を聴くようにしています。すると条件反射のように眠りにつくことができ、漫才を最後まで聴き終えたことはほとんどありません。やむを得ない場合の薬物療法もともと不眠で睡眠薬が処方されている場合、離脱症状が出現する場合があるので継続することが必要です。残量が少ない場合には錠剤を半分に割るといった工夫をするように指導します。どうしてもやむを得ない場合には、短期間のベンゾジアゼピン系の睡眠剤を短期間使用することもありますが、依存性・転倒のリスクもあり、例外的です。小児や思春期には原則処方しないこととされています5)。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島 和夫先生が書かれた「震災時の睡眠マニュアル6)」はわかりやすく、とても読みやすいので参考にしていただければ幸いです。また、非専門家や一般の方向けに、被災者や犯罪の被害を受けた方などと関わる時の対応として、「サイコロジカルファーストエイド(心理的応急処置)」を知っておくことが推奨されています7)。WHOが中心となって開発したものが最も広く用いられています。 1) Sugiura H, et al. Prevalence of Insomnia Among Residents of Tokyo and Osaka After the Great East Japan Earthquake: A Prospective Study. Interact J Med Res. 2013;2:e2. 2) Ogata H, et al. Evaluation of Sleep Quality in a Disaster Evacuee Environment. Int J Environ Res Public Health. 2020;17:4252. 3) DPAT(災害派遣精神医療チーム) 4) Edinger JD, et al. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17:255-262. 5) Sateia MJ, et al. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13:307-349. 6) 三島和夫. 震災に関連した不眠・睡眠問題への対処について. 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 7) 国立精神・神経医療研究センター ストレス・災害時こころの情報支援センター. WHO版PFAマニュアル

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双極性うつ病に対する抗うつ薬治療後の躁転リスク〜ネットワークメタ解析

 抗うつ薬の躁転リスクは、双極性うつ病の治療において依然として大きな懸念事項である。しかし、抗うつ薬の種類による躁転リスクへの具体的な影響は、依然として不明である。スペイン・バルセロナ大学のVincenzo Oliva氏らは、各抗うつ薬とプラセボを比較することにより、双極性うつ病における躁転リスクを評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析(NMA)を実施した。EClinicalMedicine誌2025年8月7日号の報告。 2025年2月19日までに公表された研究をClinicalTrials.gov、CENTRAL、PsycINFO、PubMed、Scopus、Web of Scienceのデータベースよりシステマティックに検索した。対象は、双極性うつ病における急性期抗うつ薬治療を評価したランダム化比較試験(RCT)とし、言語制限なしに抽出した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療後の躁転リスクとした。頻度主義NMAを用いてリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を推定した。感度分析は、治療レジメン(単剤療法または併用療法)、ベースライン時の重症度、躁転の定義、研究設定、精神疾患合併症、治療期間、非薬物療法の併用、企業スポンサード、バイアスリスクに基づき実施した。エビデンスの確実性の評価には、CINeMAフレームワークを用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた2,434件のうち、13件のRCT(1,362例)において、女性818例(60.1%)、男性511例(37.5%)、性別不明33例(2.4%)をNMAに含めた。・躁転リスク増加を示すエビデンスはいくつか認められたものの、プラセボと比較し、躁転リスクが有意に高い抗うつ薬は認められなかった。・ベンラファキシンは、抗うつ薬の中で最も高いリスク推定値を示したが、統計的に有意なRRは示されなかった(RR:4.53、95%CI:0.47〜43.25)。しかし、各研究において、躁転リスク増加の一貫したシグナルを示した唯一の薬剤であった。・エビデンスベースでは、併用療法のほうがより大規模であったのに対し、単剤療法については利用可能なデータが少なかった。・これらの結果は、感度分析により裏付けられた。また、異質性は低かった。・エビデンスに対する全体的な信頼性は、低いと評価された。 著者らは「抗うつ薬は、とくに併用療法として、急性双極性うつ病の治療選択肢である。しかし、抗うつ薬の使用は、患者固有のプロファイルおよびその他の潜在的なリスクを考慮し、的確な精神医学的アプローチに沿って個別化されるべきである。抗うつ薬治療による長期的な安全性を明らかにするには、さらなる研究が必要である」としている。

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大豆製品の摂取と不眠症との関係

 不眠症は、中高年にさまざまな悪影響を及ぼす疾患である。食生活の調整により、不眠症の改善が期待できることが注目を集めている。中国・温州医学大学のLanrong Sun氏らは、中高年における大豆製品の摂取と不眠症の関連性を調査し、炎症性因子の役割を検証するため、横断的研究を実施した。Nature and Science of Sleep誌2025年8月13日号の報告。 対象は、台州市温嶺病院の心臓内科を受診または入院した45歳以上の中高年877例(女性の割合:35.01%)。大豆製品の摂取量は、食品摂取頻度質問票(FFQ)を用いて評価した。睡眠状態は、不眠症重症度指数(ISI)を用いて定量化した。大豆製品の摂取量の中央値(IQR)は週1回以下(週1回以下、週2~6回)であり、不眠症スコアの平均値は、5.43±5.13であった。 主な結果は以下のとおり。・中国の中高年成人において、大豆製品の摂取量は不眠症(|r|s≧0.117、ps<0.001)と負の相関を示した。・また、C反応性タンパク質(CRP、調整済みβ:-0.139、95%信頼区間[CI]:-0.265~-0.012)、腫瘍壊死因子α(TNF-α、調整済みβ:-0.049、95%CI:-0.091~-0.006)、トリグリセライド(TG、調整済みβ:-0.043、95%CI:-0.085~-0.000)との負の相関を示した。・大豆製品の摂取量と白血球数、好中球絶対数、血小板数、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-6、ヘモグロビン、赤血球数、低密度リポタンパク質コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール、総コレステロールとの間に有意な相関は認められなかった。 著者らは「中高年において、大豆製品の摂取量が少ないと不眠症の発生率が高くなることが示された。さらに、大豆製品の摂取量は、末梢血のCRP、TNF-α、TGレベルと負の相関関係にあることも明らかとなった。バランスの取れた食事を通じて中高年の睡眠を改善するための新たな臨床的視点を提示するものであり、睡眠には炎症や脂質が重要な役割を果たす可能性があることが示唆された」と結論付けている。

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睡眠障害を有するうつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有効性

 うつ病患者では、睡眠障害を伴うことが多い。デンマーク・H. Lundbeck A/SのFerhat Ardic氏らは、うつ病および睡眠障害患者におけるブレクスピプラゾール併用療法の有効性を評価するため、3つのランダム化比較試験(RCT)の事後解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年8月7日号の報告。 抗うつ薬治療で効果不十分なうつ病患者を対象とした、ブレクスピプラゾール併用療法に関する3つのプラセボ対照RCTのデータを統合した。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)の睡眠障害因子(SDF、不眠症に関する3項目の合計)を用いて、対象患者をベースラインの睡眠障害レベルにより高SDF群(SDF:4以上)と低SDF群(SDF:4未満)に分類した。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコア、SDFスコア、その他の有効性スコアの変化について、抗うつ薬治療にブレクスピプラゾール2mgまたは3mgを併用した群(ブレクスピプラゾール併用群)と抗うつ薬治療にプラセボを併用した群(プラセボ群)との比較を行った。安全性は、治療関連有害事象(TEAE)の発現率により評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン(1,160例)では、高SDF群が689例(59.4%)、低SDF群が471例(40.6%)であった。・6週目において、ブレクスピプラゾール併用群は、プラセボ群と比較し、両サブグループにおいてMADRS合計スコアの改善がより大きく(高SDF:p<0.0001、低SDF:p=0.0058)、高SDFサブグループではSDFスコアの改善がより大きかった(p=0.021)。・TEAEの発現率は、高SDF群および低SDF群のいずれにおいて、ブレクスピプラゾール併用群のほうがプラセボ群よりも高かった。【高SDF群】ブレクスピプラゾール併用群:59.8%、プラセボ群:51.6%【低SDF群】ブレクスピプラゾール併用群:62.4%、プラセボ群:40.9% 著者らは「ベースラインの睡眠障害の有無にかかわらず、6週間にわたりブレクスピプラゾール併用群はプラセボ群と比較し、うつ病の重症度の改善と関連していた。ベースラインの睡眠障害がより重度な患者においては、ブレクスピプラゾール併用群はプラセボ群と比較し、睡眠障害の改善が良好であり、日中の過鎮静を伴うことは少なかった。また、新たな安全性上の懸念も見当たらなかった」としている。

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全身だるくて食後に眠い【漢方カンファレンス2】第6回

全身だるくて食後に眠い以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】50代後半女性主訴全身倦怠感、不眠既往腹圧性尿失禁、アレルギー性鼻炎生活歴仕事:事務職(人手不足で忙しい)、入退院を繰り返す母の介護中。病歴2〜3年前から不眠に悩んでいる。午前中から眠気がつらくて体がだるく仕事がはかどらない。12月に漢方治療を希望して受診。現症身長157cm、体重49kg。体温36.3℃、血圧119/80mmHg、脈拍60回/分 整。経過初診時「???」エキス3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後寝つきがよくなった。全身倦怠感は変わらない。2ヵ月後夜中に目が覚めなくなった。仕事中も眠くならない。4ヵ月後忙しいが体調はよい。よく眠れている。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む問診<陰陽の問診>寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?横になりたいほどの倦怠感はありませんか?寒がりの暑がりです。冷えの自覚はありません。倦怠感はありますがいつも横になりたいほどではありません。入浴は長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は苦手ですか?入浴で温まると体は楽になりますか?入浴時間は短いほうです。冷房は好きです。入浴してもとくに倦怠感の変化はありません。のどは渇きますか?飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きません。温かい飲み物を飲んでいます。<飲水・食事>1日どれくらい飲み物を摂っていますか?食欲はありますか?胃は丈夫ですか?だいたい1日1L程度です。食欲はあります。胃は弱くてすぐにもたれます。<汗・排尿・排便>汗はよくかくほうですか?尿は1日何回出ますか?夜、布団に入ってからは尿に何回行きますか?便秘や下痢はありませんか?汗はよくかきます。尿は1日7〜8回です。夜は尿に1回行きます。便は2日に1回で、便秘です。便秘するとお腹が張りますか?お腹は張りません。<ほかの随伴症状>全身倦怠感はとくにいつが悪いですか?朝がとくにきついですか?食後に眠くなりませんか?朝はそこまできつくありません。朝は比較的元気なのですが、午後がきついです。昼食後と夕食後は眠たいです。睡眠について教えてください。悪夢はありませんか?毎晩0時頃に就寝しますが1時間以上寝つけません。午前3時くらいに目が覚めて朝まで眠れない日が多いです。悪夢はありません。動悸はしませんか?抜け毛は多いですか?集中力がなかったりしませんか?皮膚は乾燥しますか?動悸はありません。抜け毛は多くありません。集中はできています。皮膚の乾燥はありません。イライラしたりやる気がなかったりすることはありませんか?そんなことはありません。そのほかに困っていることはありませんか?風邪をひきやすくて困っています。年に5〜6回風邪をひいてしまいます。診察顔色は正常。眼に力がなく声も小さい。脈診ではやや浮で弱の脈。また、舌は淡紅色で腫大・歯痕、湿潤した薄い白苔をまだら状に認める。腹診では腹力は軟弱、軽度の胸脇苦満(きょうきょうくまん)、心下痞鞕(しんかひこう)、小腹不仁(しょうふくふじん)あり、腹部大動脈の拍動は触知せず。四肢の触診では冷感なし。カンファレンス今回は50代女性の全身倦怠感、不眠の症例です。全身倦怠感を訴える患者さんは多いですね。感染症、内分泌疾患、悪性腫瘍、薬物の副作用、うつ病など、鑑別すべき疾患が多いので苦手です。発症から持続時間を1ヵ月以内、1〜6ヵ月、6ヵ月以上と分けると絞り込みが容易になりますよ。急性では感染症、慢性の場合では抑うつや不安などの精神疾患の割合が高くなります。とくに結核、甲状腺疾患、肝炎などは要注意と学びました。しかし検査を行っても異常がないケースが1/3ほどあるといわれます。原因が特定できない、かつ精神的な不調も目立たないケース、全身倦怠感が高度で日常生活に支障をきたしている症例もあって悩ましいですね。今回の症例は不眠があって仕事や介護の負担が背景にありそうですね。うつ病の除外は必要ですね。当科が初診時に行っている漢方医学的な問診票のなかには、気持ちが沈みがちである、気力がない、物事に興味がわかない、朝調子が悪い、集中力の低下など、精神症状に関する項目が複数あります。それでは、漢方診療のポイントの順番にみていきましょう。温かい飲み物を好む、寒がりのほかは、暑がり、冷えの自覚なし、冷房を好む、他覚的な四肢の冷感なしということで陽証を示唆する所見のほうが多いです。そうですね。全体としては陽証ですね。寒がりの暑がりはどう考えるかな?陰陽の判断はつかないということでしょうか?寒がりかつ暑がりは、陰陽の判断ではなく、虚証を示唆します。体力がなくて環境の変化についていけないイメージです。六病位ではどうだろう?太陽病ではなく、陽明病の強い熱感や腹満はないので少陽病です。そうですね。漢方診療のポイント(2)虚実はどうでしょう?脈の力は弱、腹力も軟弱で闘病反応の乏しい虚証です。陽証・虚証でいいようだね。(3)気血水の異常はどうだろう?本症例は、仕事や介護の負担で疲弊しているようですね。そうだね。生体のエネルギー量が不足した状態を気虚とよぶよ(気虚については本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。気虚の主な症状として、全身倦怠感、疲れやすい、食欲がない、風邪をひきやすいなどが挙げられるんだ。本症例にみられる「食後の眠気」は気虚に特徴的な症状だね。本症例は全身倦怠感とともに食後の眠気があるので気虚ですね。気虚以外にも全身倦怠感が生じることを覚えていますか?気鬱や水毒などでも全身倦怠感が生じるのでした。気鬱の全身倦怠感は、朝調子が悪い、抑うつ傾向、膨満感などが出現します。そのとおり。水毒の全身倦怠感は雨降り前に体が重く感じるよ。本症例ではそのほかの気虚の所見はわかるかな?風邪をひきやすいも気虚ですね。ほかには舌苔にも着目しましょう。本症例のような舌苔がまだら状になっている場合は気虚を示唆します。舌苔は消化機能を反映していると考えます。そのほかにも診察で、眼に力がない、声が小さいということも気虚を示唆するよ。江戸時代には、眼勢無力(がんせいむりょく)、語言軽微(ごげんけいび)と記されているよ。たしかに眼力があって、声が大きい人は元気ですね。漢方の診察は、五感をフルに使って行わないといけないのだ。また、本症例のように不眠がある場合は、漢方薬の鑑別のために気逆の有無を確認しています。気鬱でなく気逆ですか?ドキドキして眠れないというイメージです。どこを確認するかわかりますか?自覚症状で動悸があるかどうかでしょうか?自覚症状の動悸に加え、腹診での腹部大動脈の拍動を確認します。また悪夢が多いことも気逆になります。本症例では悪夢や腹部の動悸はありません。それでは気以外の異常はどうでしょう?気虚以外は目立ちません。脱毛、集中力の低下、皮膚の乾燥を問診していますが、血虚の症候はありません。気虚と血虚が同時にある場合は気血両虚(きけつりょうきょ)といいますが、それはなさそうですね。では本症例をまとめよう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?冷えの自覚なし、冷房好き、入浴は短い、脈:やや浮→陽証(少陽病)(2)虚実はどうか寒がり・暑がり 脈:弱、腹:軟弱→虚証(3)気血水の異常を考える全身倦怠感、食後の眠気、風邪をひきやすい、地図状の舌苔→気虚(動悸や悪夢など気逆はなし)(脱毛や集中力の低下など血虚はなし)(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む眼勢無力、語言軽微解答・解説【解答】本症例は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で治療しました。【解説】補中益気湯は、中(ちゅう:消化吸収能という意味)を補って、気(き)を益(ま)すという意味です。補中益気湯は人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)の補気作用のある生薬に加え、弛緩した筋トーヌスを引き締める作用(升堤[しょうてい]作用)をもつ生薬(柴胡[さいこ]・升麻[しょうま])が含まれることがポイントです。そのため、補中益気湯は、筋肉が弛緩傾向を示すサイン、四肢がだるい、眼に力がない、声が小さいなどが使用目標になります。最近ではあまり使われませんが内臓下垂、胃下垂といわれるような病態や子宮下垂、脱肛なども筋の弛緩傾向により生じることから、補中益気湯の適応とされています。また柴胡・升麻は抗炎症作用を併せ持ち、風邪や肺炎や尿路感染などの急性感染症が治癒した後、微熱があってなんとなく活気がない、食欲がないといった場合に良い適応になります。江戸時代の漢方医・津田玄仙は補中益気湯の8徴候として、四肢倦怠、眼勢無力、語言軽微、食失味、口中白沫、熱湯を好む、脈散大無力、臍動悸を挙げており、このうち2〜3該当すれば用いてよいと述べています。補中益気湯を投与すると、COPD患者の感冒罹患回数を減少させ、体重増加をもたらしたという報告1)があります。また、女性腹圧性尿失禁患者に対して補中益気湯の4週間の投与で尿失禁の回数が減少傾向、QOLのパラメーターや患者満足度が改善したという報告2)があり、女性下部尿路症状ガイドラインの腹圧性尿失禁に推奨グレードC1として掲載されています。今回のポイント「気虚」の解説漢方では生体内を循環する「気・血・水」の変調として病気を捉えます。気血水は陰陽・六病位とは別のパラメーターで、経度と緯度の関係にも例えられます。気血水のうち身体を巡る液体成分は血と水ですが、気は目に見えない、形がない、生命活動を営む根源的なエネルギーです。現在でも「活気がある」、「気が滅入る」などと日常で使われます。気の異常のうち、気の量的な不足、または作用力の不足を気虚といいます。気虚の主な症状として、全身倦怠感、疲れやすい、食欲がない、風邪をひきやすいなどが挙げられます。また食後は食事により少ないエネルギーが消化管に集中してしまうと考えられるため、「食後の眠気」は気虚に特徴的な症状です。気虚に対する基本となる漢方薬が四君子湯(しくんしとう)です。四君子湯は、茯苓、人参、白朮、甘草の4つの生薬を中心に構成されます。また気虚に対する漢方薬は人参とともに黄耆を含むことから参耆剤(じんぎざい)とよびます。補中益気湯や十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)がその代表です。今回の鑑別処方人参と黄耆が含まれる漢方薬を参耆剤とよびます。人参は消化管から、黄耆は体表面から気を補うイメージです。補中益気湯は全身倦怠感・食後の眠気などの気虚に加え、四肢がだるい、声が小さい、眼力がないといった筋トーヌスの低下した徴候がある際に用います。気虚に血(けつ)が不足した状態(血虚)を合併している場合、具体的には皮膚の乾燥、脱毛が多い、目が疲れる、集中力がない、爪がもろい、頭がぼーっとするなどの症状を伴う場合は、気血両虚に対する漢方薬が適応になり、十全大補湯がその代表です。十全大補湯と類似の漢方薬に人参養栄湯(にんじんようえいとう)があります。人参養栄湯には、遠志(おんじ)、陳皮(ちんぴ)、五味子(ごみし)といった喀痰、咳嗽などの呼吸器症状に対応する生薬が含まれることが特徴です。非定型抗酸菌症に対して人参養栄湯が有効であったという報告3)があるように、慢性の感染症で体力低下に加え、呼吸器症状があるのが典型で、近年ではフレイルに対する漢方薬として注目されています。大防風湯(だいぼうふうとう)は十全大補湯に附子(ぶし)と鎮痛作用のある生薬が加わった構成で、冷えと関節痛を伴う場合に用います。疲労感を伴う関節リウマチなどの膠原病の患者にしばしば用います。帰脾湯(きひとう)、加味帰脾湯は気虚に加え、くよくよ思い悩んでしまう(思慮過度)、不眠、抑うつがある場合に用います。全身倦怠感が投与目標というよりも不眠や抑うつなどの精神心理症状を主体に訴える場合に用いることが多いです。加味帰脾湯は帰脾湯に柴胡、山梔子(さんしし)が加わって熱感やイライラといった症状にも対応します。その他、人参と黄耆をともに含む参耆剤には、清暑益気湯(せいしょえっきとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、当帰湯(とうきとう)、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)があります。最後に気虚に冷えを合併している場合は、第5回で解説したように陰証と診断して、太陰病の人参湯(にんじんとう)や少陰病〜厥陰病(けついんびょう)の茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう:人参湯エキス+真武湯エキス)による治療が最優先であることにご注意ください。参考文献1)杉山幸比古. 日本胸部臨床. 1997;56:105-109.2)井上雅ほか. 日東医誌. 2010;61:853-855.3)Nogami T. J Family Med Prima Care. 2019;8:3025-3027.

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日本人アルコール関連肝疾患に対するナルメフェンの影響

 完全な禁酒は、アルコール関連肝疾患(ALD)マネジメントにおいて重要である。しかし、多くの患者が禁酒の達成または維持に難渋しており、ハームリダクション戦略、とくにアルコール摂取量を減らすための薬理学的介入への関心が高まっている。オピオイド受容体モジュレーターであるナルメフェンは、アルコール依存症患者の飲酒量減少に対する有効性を示している薬剤であるが、ALDにおける肝パラメーターへの影響については、実臨床において、これまで十分に検討されていなかった。奈良県立医科大学の花谷 純一氏らは、ALD患者に対するナルメフェンの有効性および安全性、飲酒量、肝機能、肝予備能の変化に焦点を当て、評価を行った。Hepatology Research誌オンライン版2025年8月16日号の報告。 2019年9月〜2023年12月に奈良県立医科大学でナルメフェン治療を行ったALD患者21例を対象に、レトロスペクティブ観察研究を実施した。アルコール摂取量、肝機能検査、肝予備能、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)スコアに関するデータは、ベースライン時および治療開始6ヵ月後に収集した。有害事象も記録した。 主な結果は以下のとおり。・ナルメフェン投与開始後1ヵ月以内に、重度の飲酒日数および総アルコール摂取量の有意な減少が認められた。・これらの減少は、肝機能パラメーターの改善を伴っていた。・しかし、肝予備能には統計的に有意な変化は認められなかった。・有害事象のほとんどは軽度から中等度(Grade1または2)であり、重篤な有害事象は認められなかった。 著者らは「ナルメフェンは、ALD患者のアルコール摂取量を減少させ、肝機能を改善するための安全かつ効果的な薬理学的選択肢であると考えられる」とし、「これらの調査結果は、完全な禁酒を達成できない人に対する危害軽減アプローチの一部として、ナルメフェンの使用を支持するものである」と結論付けている。

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