双極性うつ病に対する抗うつ薬治療後の躁転リスク〜ネットワークメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/01

 

 抗うつ薬の躁転リスクは、双極性うつ病の治療において依然として大きな懸念事項である。しかし、抗うつ薬の種類による躁転リスクへの具体的な影響は、依然として不明である。スペイン・バルセロナ大学のVincenzo Oliva氏らは、各抗うつ薬とプラセボを比較することにより、双極性うつ病における躁転リスクを評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析(NMA)を実施した。EClinicalMedicine誌2025年8月7日号の報告。

 2025年2月19日までに公表された研究をClinicalTrials.gov、CENTRAL、PsycINFO、PubMed、Scopus、Web of Scienceのデータベースよりシステマティックに検索した。対象は、双極性うつ病における急性期抗うつ薬治療を評価したランダム化比較試験(RCT)とし、言語制限なしに抽出した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療後の躁転リスクとした。頻度主義NMAを用いてリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を推定した。感度分析は、治療レジメン(単剤療法または併用療法)、ベースライン時の重症度、躁転の定義、研究設定、精神疾患合併症、治療期間、非薬物療法の併用、企業スポンサード、バイアスリスクに基づき実施した。エビデンスの確実性の評価には、CINeMAフレームワークを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・スクリーニングされた2,434件のうち、13件のRCT(1,362例)において、女性818例(60.1%)、男性511例(37.5%)、性別不明33例(2.4%)をNMAに含めた。
・躁転リスク増加を示すエビデンスはいくつか認められたものの、プラセボと比較し、躁転リスクが有意に高い抗うつ薬は認められなかった。
・ベンラファキシンは、抗うつ薬の中で最も高いリスク推定値を示したが、統計的に有意なRRは示されなかった(RR:4.53、95%CI:0.47〜43.25)。しかし、各研究において、躁転リスク増加の一貫したシグナルを示した唯一の薬剤であった。
・エビデンスベースでは、併用療法のほうがより大規模であったのに対し、単剤療法については利用可能なデータが少なかった。
・これらの結果は、感度分析により裏付けられた。また、異質性は低かった。
・エビデンスに対する全体的な信頼性は、低いと評価された。

 著者らは「抗うつ薬は、とくに併用療法として、急性双極性うつ病の治療選択肢である。しかし、抗うつ薬の使用は、患者固有のプロファイルおよびその他の潜在的なリスクを考慮し、的確な精神医学的アプローチに沿って個別化されるべきである。抗うつ薬治療による長期的な安全性を明らかにするには、さらなる研究が必要である」としている。

(鷹野 敦夫)