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適量のコーヒーで心不全や脳卒中リスクが低下~AHAステートメント

 カフェインは世界で最も広く消費されている嗜好薬物の1つであるものの、心血管系に対する詳細なリスクや有効性については、摂取形態や個人差による影響を含めて整理が必要とされてきた。米国心臓協会(AHA)専門委員会のGregory M. Marcus氏(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らは、カフェインおよびコーヒー摂取が心血管系に及ぼす影響に関する最新の科学的ステートメントを発表した。習慣的な適量摂取(カフェイン最大400mg/日、8オンスカップ[約240mL]でコーヒー3~5杯/日)は多くの成人において安全であり、冠動脈疾患、心不全、脳卒中、心房細動、2型糖尿病などのリスク低下と関連していることが示された。Circulation誌オンライン版2026年7月20日号に掲載。 本ステートメントでは、カフェインおよび主にコーヒーを中心としたこれまでの観察研究、遺伝学的研究(メンデルランダム化解析)、およびランダム化比較試験(RCT)のエビデンスを包括的に評価した。カフェインの代謝には個人の遺伝的背景や耐性が大きく関与することや、急性摂取と習慣的摂取での作用の違い、コーヒーに含まれる非カフェイン成分(ポリフェノールなど)の寄与についても考察がなされた。 主な結果は以下のとおり。・血圧・糖尿病:習慣的なコーヒー摂取は血圧に対して逆J字型の関連を示し、1日1~3杯の摂取でリスクが増加するものの、摂取量が増えるとリスクが減少する傾向があることが示された。また、習慣的なコーヒー摂取は2型糖尿病の発症リスク低下と一貫して関連していた。・脂質代謝:カフェイン自体は血清コレステロールに影響を与えないが、フレンチプレス、ギリシャ/トルココーヒーなどの「未濾過コーヒー」に含まれるカフェストールはLDLコレステロール値を上昇させるため注意が必要である。・不整脈:カフェイン入りコーヒーの習慣的摂取は心房細動(AF)のリスクを低下させることがRCTなどで実証された一方、心室期外収縮(PVC)の頻度を増加させることが示された。・心血管疾患・脳卒中:軽度(1.5杯/日)~中等度(3.5杯/日)のコーヒー摂取は冠動脈疾患リスクを約10%低下させた。心不全リスク(4杯程度/日で最も低値)や脳卒中リスク(3~4杯/日で最も低値)の低下と関連していた。・高用量カフェインのリスク:エナジードリンクや純粋なカフェインサプリメントなどの高用量摂取は、血圧の上昇や重篤な不整脈など心血管へ害を及ぼす可能性が高い。 著者らは、習慣的な適量のコーヒー摂取は健康的なライフスタイルの一部となり得ると結論付けている。ただし、観察された健康上の利益の多くはカフェイン単体ではなくコーヒーに含まれる抗酸化物質などに起因する可能性があり、多量の砂糖やシロップ、高カロリーな乳製品の添加はこれらのメリットを相殺する可能性があると注意を促している。今後は、ポリフェノールなどの他の成分と切り離して、カフェイン単体の影響や個人差に応じた反応を解明するさらなるRCTが必要であると述べている。

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間欠的な黄疸【日常診療アップグレード】第61回

間欠的な黄疸問題19歳男性。間欠的な黄疸を主訴に受診した。発作中にはこれに伴う症状は認められない。既往歴に特記すべきものはない。薬剤やサプリメントの服用もない。バイタルサインは正常である。身体診察では、軽度の強膜黄染および黄疸が認められる。腹部診察は正常である。血液検査では肝トランスアミナーゼとアルカリホスファターゼの上昇は認めない。総ビリルビン3.8mg/dL(1年前:2.3mg/dL)、直接ビリルビン0.4mg/dL(1年前:0.3mg/dL)である。LDHとハプトグロビンは基準範囲である。全血球計算および末梢血塗抹検査の結果は正常である。抗ミトコンドリア抗体検査をオーダーした。

3.

第329回 マイクロプラスチックの吸収をサプリメントで予防

口にしたマイクロ/ナノプラスチック(微細プラスチック:MNP)を取り除く不活化細菌の効果が、実際に即した臨床試験で裏付けられました1-3)。世界のプラスチック製造がほぼ皆無だったおよそ1世紀前に比べて、今や年間数億トン規模へと急増しました。2000年以降に製造されたプラスチックがこれまでに製造されたプラスチックの半数超を占めます。すなわち、現世代に押しかかるプラスチックの量は過去のどの世代よりも膨大です。プラスチックは朽ちることなく自然環境に蓄積し続け、マイクロやナノ単位の微細な断片であるMNPへとちぎれていきます。MNPは水、空気、食品にあまねく混入しており、生態系へのその蓄積の懸念が日増しに大きくなっています。MNPの混入はヒトも例外ではなく、血液、腸、尿、脳などのさまざまな組織でこれまでに確認されています。MNPに対抗する生理的な手段の検討が始まっており、食物繊維のキトサンや小麦のふすまが腸のマイクロプラスチックを減らしうることが示されています4,5)。興味深いことにマイクロプラスチックを分解する細菌がヒトの腸から見付かっています6)。さらには有益な微生物(プロバイオティック)やその代謝物がプラスチックを吸着して体内に吸収されるのを防ぎうることが示唆されています。たとえば乳酸菌(LAB)の類いがMNPを吸収し、便として排出されるようにすることが動物での検討で示されています。生きているプロバイオティックが腸でどれだけ生き残れるかはヒトによってまちまちです。一方、いわば死んでいる不活化した有益微生物(ポストバイオティック)なら生きた働きを必要としないという利点があります。何年か前のこと、米国のフロリダ州を拠点とするQuorum Innovationsの設立者らは、われわれの体内の微生物のバイオフィルム機能が上皮の表面を守る守護(guardian)の働きを担うらしいことに気付きます7)。その発想を出発点として開発されたQi601という名称のポストバイオティック製品が、どうやらMNPを取り去って細胞に吸収されるのを防ぐ働きを担うことが新たな検討で判明しました。Qi601は乳酸菌の類いのLmosilactobacillus fermentum LfQi6をバイオフィルム培養で増やし、遠心分離して洗い、熱で不活性化したものの凍結乾燥品です。手始めの検討でQi601が主たるナノプラスチックのポリスチレンナノ粒子(PSNP)に確実に結合することが示されました。液中でQi601は用量が多いほどPSNPをより捕らえ、最大で9割近いPSNPを吸着しました。消化を模す環境で試したところ、Qi601はPSNPの92%を吸着しました。また、腸の上皮細胞の表面や中にPSNPが溜まらないようにし、細胞内のPSNPを減らす働きも示しました。最終的に、臨床試験でQi601の効果も裏付けられました。市販のガムを噛んでいるときにさまざまなマイクロプラスチックが唾液中に放たれうることが昨年発表された試験で示されています8)。その発見を拠り所として、ガムを噛んで唾液中に混じったマイクロプラスチックをQi601がどれだけ回収できるかが確かめられました。試験では被験者に市販のガムを5秒ほど噛んでもらい、続いてQi601を口に含んでもらいました。すると唾液中のプラスチックがQi601なしに比べて10分の1ほどに減っていました。腸の立体培養(gut organoid)や動物を使った実験などを含むさらなる検討が進行中と著者は言っています1)。そのような検討の後に、マイクロプラスチックを回避する食品サプリメントとしてQi601がやがて使われるようになるかもしれません。 参考 1) Berkes EA, et al. bioRxiv. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print] 2) First Human Study Shows Qi601 Probiotic Binds Microplastics and Retains 98% During Digestion / EINPresswire.com 3) Supplement that binds to microplastics may remove them from our body / NewScientist 4) Casella C, et al. Foods. 2025;14:2190. 5) Wang H, et al. Food Chem. 2026;514:149161. 6) Jang Y, et al. Sci Total Environ. 2024;929:172775. 7) Quorum Innovations’ Invention: Qi601 Biofilm Shield -Working With Our Evolutionarily Entrained Microbes / Quorum Innovations 8) Lowe L, et al. J Hazard Mater Lett. 2025;6:100164.

4.

メラトニン、慢性筋骨格系疼痛に鎮痛効果の可能性

 メラトニンは、概日リズムを調節し、自然な入眠を促すホルモンで、米国では睡眠補助サプリメントとしても販売されているが、筋肉や関節の慢性的な疼痛にも有効かもしれない。新たな研究で、慢性的な筋骨格系(MSK)疼痛に対するメラトニンの鎮痛効果は、オピオイドやアスピリン、ナプロキセン、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬と同程度である可能性が示唆された。シドニー大学(オーストラリア)のKangchao Wu氏らによるこの研究の詳細は、「Pain」に6月30日掲載された。 Wu氏は、「メラトニンを常備している家庭は少なくない上に、安価で安全性も確認されている。注目すべき点は、メラトニンが慢性疼痛の管理にも役立ち、よりリスクの高い薬剤への依存を減らす可能性を秘めている点である」と述べている。 今回の研究では、世界各国で実施された、慢性的なMSK疼痛または術後MSK疼痛を有する患者2,028人を対象とした23件のランダム化比較試験(RCT)のデータを基に、メラトニンの鎮痛効果を鎮痛薬またはプラセボとの比較で検討した。23件の研究のうち14件は主に関節置換術や脊椎手術などの手術後の疼痛に関するRCTで、残る9件は線維筋痛症や変形性膝関節症、腰痛などの慢性疼痛に関するRCTだった。 解析の結果、慢性的なMSK疼痛においては、メラトニンはプラセボと比較して、疼痛スケール(0〜100点)の平均差が−6.76点(95%信頼区間−15.89~2.36)であったが、統計学的に有意な疼痛軽減効果は認められなかった。一方、従来の鎮痛薬との比較では、有意に高い疼痛軽減効果を示した。バイアスリスクが低い6件のRCTを対象とした感度分析では、プラセボとの比較で統計学的に有意な疼痛軽減が認められた(平均差−10.04、95%信頼区間−17.68~−2.39)。術後MSK疼痛についても、メラトニンはプラセボと比べて有意な疼痛軽減効果を示し、その効果は従来の鎮痛薬などのアクティブコントロールと同程度であった。さらに、メラトニンは、慢性的なMSK疼痛においては睡眠の質の改善とも関連していたが、術後MSK疼痛では睡眠の質の改善とは関連していなかった。 Wu氏は、「多くの患者にとって疼痛は単独で存在するものではなく、睡眠の質の低さと密接に関連している。メラトニンはその両方に作用する可能性があり、慢性疼痛を抱える人々に特に有用である」と指摘している。また、論文の上席著者で、シドニー大学(オーストラリア)運動器研究ハブのディレクターであるPaulo Ferreira氏は、「既存薬を新たな疾患に応用するドラッグ・リポジショニングの一例であり、慢性疼痛という世界的に患者数の多い疾患への応用可能性を探る研究といえる」と述べている。 ただし、今回の研究で対象としたRCTのそれぞれで、メラトニンの投与量や投与タイミングは疾患により異なっていた。慢性疼痛では、1日3〜10mgが一般的であり、最も多く用いられていたのは3mgであった。一方、術後疼痛では1〜10mgの範囲で使用され、5〜6mgが最も多かった。しかし、明確な用量反応関係は確認されなかった。こうしたことを踏まえて研究グループは、「より大規模な研究によって、メラトニンの鎮痛効果を確認する必要がある」と述べている。 さらに研究グループは、メラトニンを鎮痛目的で使用しようとする場合は、必ず医師と相談すべきだとしている。Wu氏は、「メラトニンは鎮痛薬の代替にはならないが、特に睡眠に問題を抱えている患者なら、医師との相談の上で既存治療の補助として使用される可能性はある」と述べている。また同氏は、メラトニンに一部の鎮痛薬と同程度の疼痛軽減効果が認められた点について、「これはメラトニンが、それらの薬の代わりになるという意味ではなく、より広い疼痛管理戦略の中で、安全性の高い追加選択肢となり得ることを示している」と説明している。

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ビタミンA高値は喘息患者の良好な肺機能と関連

 ビタミンAは、喘息を有する人の肺機能の改善に役立つ可能性がある。ビタミンAおよびビタミンDの肺機能に対する影響を検討した新たな研究で、血液中のビタミンA濃度が高いことは、喘息を有する小児と成人の双方において良好な肺機能と関連することが示された。一方、ビタミンDについては、効果が見られたのは成人の喘息患者のみであった。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のMichael McGeachie氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に6月30日掲載された。 ビタミンAおよびDは遺伝子発現を調節し、肺の発達に影響すると考えられている。喘息患者ではビタミンA欠乏症が多く見られ、これは気道の過敏性と関連していることが報告されている。一方、ビタミンD欠乏症は、特に喘息患者において肺機能の低下や喘息増悪、病状コントロールの悪化と関連することが示されているが、食事や年齢、日照時間などの因子の影響が研究間で異なるため、一貫した結果が得られていない。ビタミンAは、ニンジン、サツマイモ、ほうれん草などの野菜のほか、卵、牛乳、魚にも含まれている。ビタミンDは、主に日光によって体内で合成されるが、食品やサプリメントからも摂取できる。 この研究でMcGeachie氏らは、ビタミンAおよびDと喘息患者の肺機能、生物学的老化、および遺伝子発現(マイクロ〔mi〕RNA、DNAメチル化)との関連を検討した。対象は、GACRS(Genetic Epidemiology of Asthma in Costa Rica Study)の小児コホート1,165人と、ODOLLFA(Omic Determinants of Longitudinal Lung Function in Asthma)の成人コホート1,041人であった。肺機能は、1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、1秒率(FEV1/FVC)で評価した。FEV1は最大吸気後に思い切り息を吐き出したときの最初の1秒間の呼気量、FVCは最大吸気後に可能な限り吐き出せる総呼気量を示す。FEV1/FVCは気道閉塞の指標であり、一般に0.70未満の場合に閉塞性換気障害が示唆される。 解析の結果、小児では血液中のビタミンA濃度が高いほどFEV1およびFVCは高値であった一方、FEV1/FVCは低値だった。ビタミンDと肺機能の指標との関連はいずれも統計学的に有意ではなかった。一方、成人では、いずれのビタミンもFEV1およびFVCと関連していたが、FEV1/FVCとの間に関連が認められたのはビタミンAのみであった。さらに、ビタミンDの充足は、成人では生物学的老化の進行が遅いことと関連していた。 さらに、ビタミンAおよびDと遺伝子発現調節機構との関連も示された。解析から、両ビタミンの血中濃度と関連する複数のmiRNAが同定され、その標的遺伝子は炎症・免疫関連の経路に集積していた。また、DNAメチル化解析では、ビタミンAおよびDの血中濃度と関連するDNAメチル化部位が多数同定され、特に免疫制御に関与するIRF5遺伝子では、ビタミンAおよびD濃度が高いほどDNAメチル化が低い傾向が、小児・成人の両コホートで一貫して認められた。媒介解析では、miRNAやDNAメチル化がビタミンAおよびDと肺機能および生物学的老化との関連を媒介することが示された。 研究グループは、「本研究は、ビタミン濃度と肺機能、さらにmiRNA発現やDNAメチル化といったエピジェネティック指標を、喘息の小児と成人の両方で統合的に解析した初めての研究である」と述べている。 これらの結果は、食事が喘息コントロールの一つの手段となり得る可能性を示唆している。研究グループは、「栄養が遺伝子発現をどのように変化させるかというエピジェネティックな機構が、喘息におけるビタミンAおよびDの影響を媒介している可能性があり、個別化栄養や治療戦略の標的となり得る」と結論付けている。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬(プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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高用量DHAサプリ、認知機能低下の抑制効果示せず

 多くの米国人が、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐことを期待して魚油のサプリメントを摂取している。魚油に含まれているオメガ3系不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、中性脂肪の低下など健康へのさまざまな効果が報告されている。しかし、「EBioMedicine」に6月18日付で発表された最新の研究で、こうしたサプリメントには期待されるような認知機能向上効果はない可能性が示唆された。 論文の筆頭著者である米南カリフォルニア大学ケック医学部神経学分野のHussein Naji Yassine氏は、「誰もがアルツハイマー病予防の“特効薬”を望んでいる。しかし、今回の研究では、魚油のサプリメントに脳の健康を守る効果は確認されなかった。オメガ3脂肪酸は、認知機能に必要な脳細胞同士の結合を形成する上で重要な役割を果たすものの、今回の結果は、魚油のサプリメントがアルツハイマー病予防策として有効であることを支持するものではなかった」と説明している。 この臨床試験では、DHAの摂取量が1日200mg未満で、認知症ではないが認知症リスク因子を1つ以上有する55~80歳の参加者365人(平均年齢66.4歳、女性58%)を対象に、高用量のDHA摂取(2g/日)により中枢神経系にDHAが十分に取り込まれるかを検証した。中枢神経系へのDHAの取り込みを反映する指標は脳脊髄液中のDHA/アラキドン酸(AA)比とし、これを主要評価項目とした。参加者は、高用量DHAを毎日摂取する群とプラセボを摂取する群にランダムに割り付けられた。 その結果、6カ月後の脳脊髄液中のDHA/AA比は、DHA群で0.17上昇したのに対し、プラセボ群では0.02低下していた。群間差は0.19であり、統計学的に有意であった(95%信頼区間0.16~0.21、P<0.0001)。しかし、24カ月時点の脳容積や認知機能評価については、両群間で有意な差は認められなかった。 これらの結果から研究グループは、「DHAサプリメント単独では、最も一般的な認知症であるアルツハイマー病を予防できる可能性は低い」と結論付けている。Yassine氏は、「アルツハイマー病のリスク低減に最も有効なのは、生涯を通じて健康的な生活を維持することだ。具体的には、定期的な運動、十分な睡眠、そしてバランスの取れた食事が重要だ」と述べている。

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第69回 その関節サプリ、大丈夫ですか? グルコサミンとアルツハイマーの気になる関係

膝や腰の痛みを和らげたいと、グルコサミンのサプリメントを毎日飲んでいる方は少なくないと思います。日本では、ドラッグストアなどでも気軽に買える、いわば国民的サプリの1つです。ところが2026年、そのグルコサミンがアルツハイマー病を「悪化させる」可能性を指摘した研究が発表され、大きな話題を呼びました1)。今回は、この少し不安をかき立てるニュースを読み解いてみたいと思います。脳への「糖の付け過ぎ」という新しい視点この研究がまず注目したのは、アルツハイマー病の脳で起きている、ある変化でした。私たちの体の中では、タンパク質に糖の鎖を付ける「糖鎖修飾」という作業が絶えず行われています。ところがアルツハイマー病の脳では、この糖の付け過ぎ(研究者が「ハイパーグリコシレーション[過剰糖鎖化]」と呼ぶ状態)が起きていたのです。マウスの実験では、糖鎖を作る働きを遺伝子操作で抑えると記憶が改善し、逆にグルコサミンを口から与えると、記憶の成績が悪化しました。グルコサミンはまさに、この糖鎖の材料になる物質です。つまり、材料を余計に足すと病気の脳ではかえって悪さをする、という筋書きが見えてきたわけです。実際の患者データでも同じ傾向が動物実験だけなら「マウスの話でしょう」で片付けることができるでしょう。しかしこの研究チームは、実際の患者さんの電子カルテも調べました。米フロリダ大学のデータベースから、認知症(アルツハイマー型を含む)の患者約2万4千人と、その前段階にあたる軽度認知障害(MCI)の患者約4万2千人を、およそ5年間追跡したのです。すると、グルコサミンを使っていた認知症の患者では、死亡リスクが約25%高いという関連が見られました。さらに、軽度認知障害から認知症へと進んでしまう人の割合も、グルコサミン使用者で約25%多かったのです。対象となった患者のうち、およそ8%がグルコサミンを使っていたと推計されており、決して珍しい習慣ではありません。アメリカだけで100万人を超える認知症の方が、知らずのうちにこのサプリを続けている可能性がある。研究チームはそう警鐘を鳴らしています。ただし、うのみにはできないここで冷静になりたいのが、この研究の「限界」です。患者さんのデータはあくまで過去のカルテをさかのぼって眺めた観察研究であり、「グルコサミンが原因で悪化した」と証明したものではありません。グルコサミンを飲む人は関節に不安を抱えているなど、そもそも背景が異なる可能性があり、その違いが結果に影響したのかもしれません。実際、興味深いことに、認知症のない人や健康なマウスでは、グルコサミンによる悪影響は見られませんでした1)。影響が出るのは、すでに病気が進んだ脳に限られる可能性があるのです。研究者たちも、結論を出すにはきちんと計画された臨床試験(ランダム化比較試験)が必要だと明言しています。では、私たちはどうすればよいのか過度に怖がる必要はありません。少なくとも現時点のエビデンスは、「健康な人が関節のためにグルコサミンを飲むと認知症になる」ことを示したものではありません。一方、すでにアルツハイマー病や認知症と診断されている方、あるいはご家族がグルコサミンを常用している場合には、一度、主治医に相談してみる価値は十分にあるかもしれません。サプリメントは医薬品ほど厳しく品質が管理されていないという事情もあります。「体に良かれ」と続けている習慣を、ときどき立ち止まって見直してみること。それこそが、こうした新しい研究が教えてくれる、一番実用的な学びなのかもしれません。1)Hawkinson TR, et al. Hyperglycosylation is a metabolic driver of Alzheimer's disease. Nat Metab. 2026;8:1410-1425.

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PPI、P-CABなどに「低マグネシウム血症」の重大な副作用追加/厚労省

 2026年7月14日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、PPIやP-CABなどの消化性潰瘍治療薬の「重大な副作用」および「重要な基本的注意」の項に、「低マグネシウム血症」に関する注意が追加された。  各製剤における低マグネシウム血症関連事象を評価した結果、PPI含有製剤と低マグネシウム血症との因果関係が否定できない症例*1が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。ただし、PPI単剤で因果関係の否定できない症例が複数確認できるため、一部のパック剤および配合剤*2についての集積状況は未確認であるという。*1:医薬品医療機器総合機構(PMDA)副作用等報告データベースに登録され、MedDRA PT「低マグネシウム血症、血中マグネシウム減少、マグネシウム欠乏」で当局報告された症例のうち、CTCAE(ver.6.0)におけるGrade3以上の症例かつPPI中止後に複数点での血中マグネシウム値が測定されている症例を抽出したもの。*2:アスピリン・ランソプラゾール配合剤、アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩配合剤、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール 改訂内容は以下のとおり。【重要な基本的注意】 プロトンポンプインヒビター等の長期投与により低マグネシウム血症があらわれることがあるので、本剤を長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測定すること。 【重大な副作用】 低マグネシウム血症:プロトンポンプインヒビターの長期投与により、QT延長、痙攣、しびれ等を伴う低マグネシウム血症があらわれることがある。また、低マグネシウム血症に起因した低カルシウム血症、低カリウム血症等の電解質異常を伴う場合がある。これらの電解質異常が疑われる症状があらわれた場合には、血中マグネシウム濃度の測定を行い、異常が認められた場合は、マグネシウムの補充等の適切な処置を行うこと。 <医療用医薬品> ・オメプラゾール(商品名:オメプラール錠ほか) ・オメプラゾールナトリウム(オメプラゾール注射用20mg「日医工」ほか) ・ラベプラゾールナトリウム(パリエット錠ほか) ・ランソプラゾール(経口/注射、タケプロンほか)・エソメプラゾールマグネシウム水和物(ネキシウムほか)・ボノプラザンフマル酸塩(タケキャブほか) ・アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩(キャブピリン配合錠)・アスピリン・ランソプラゾール(タケルダ配合錠)・ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン(ボノサップパック) ・ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール(ボノピオンパック)OTCの胃腸薬にも「相談すること」として追加 また、一般用医薬品で要指導医薬品として販売されているオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム含有製剤についても「相談すること」の項に改訂がなされた。服用後に副作用として、「吐き気、嘔吐、食欲不振、体がだるい、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下、手足の筋肉が硬直しガクガクと震える、しびれ、めまい、動悸、気を失う等があらわれる」可能性が追記され、症状があらわれた場合は直ちに医師の診療を受けるよう注意が追加された。 その他の医薬品における重大な副作用等の追加  また、同日付で以下の薬剤等についても改訂が行われたほか、インスリン アスパルト(フィアスプ注)においては、「37℃を超える高温下でのゲル化によるインスリンポンプ内部の閉塞(重篤な高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスの発現リスク)」に関する記載が「重要な基本的注意」に追加となった。<重大な副作用などが追加された製剤>・免疫チェックポイント9成分*3:血管炎・グセルクマブ(トレムフィア):肝機能障害・ドキソルビシン塩酸塩(リポソーム製剤、ドキシル):腎臓限局型血栓性微小血管症・イキサゾミブクエン酸エステル(ニンラーロ):血栓性微小血管症・カルボプラチン(カルボプラチン点滴静注液50mg「NK」):抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)・組換えRSウイルスワクチン(アブリスボ):ギラン・バレー症候群・抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン):血栓性微小血管症*3:アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ*4、レチファンリマブ)*4:血栓性微小血管症も追加

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第326回 GLP-1放出を促す食品添加物を欧州が許可

GLP-1などの食欲/摂食抑制ホルモンの放出を促す食品添加物を欧州連合(EU)が承認しました1-3)。食べても安全と判断されて承認されたのは、英国の研究チームが考案した食物繊維の類いのイヌリン-プロピオン酸エステル(IPE)です。EUの新規食品一覧(list of novel food)に加わり、販売できるようになりました。IPEは大腸の細菌の発酵作用で生じる短鎖脂肪酸(SCFA)のプロピオン酸と主に果糖でできた天然ポリマーのイヌリンのエステル結合で作られます。イヌリンは多くの植物に含まれ、サプリメントとして広く使用されてもいます。食物繊維を多くとることは体重が増えにくいことと関連します。食物繊維の多くは小腸では消化されず、大腸の細菌がそれらを発酵してSCFAを生み出します。SCFAは遊離脂肪酸受容体(FFAR)を活性化し、大腸のL細胞からのGLP-1ともう1つの食欲抑制ホルモンであるペプチドYY(PYY)の放出を促します。加えて、SCFAは脂肪細胞からのレプチン放出も後押しします。レプチンもGLP-1やPYYと同様に食欲抑制を担います。マウスでの検討でSCFAの1つのプロピオン酸が多いことと体脂肪量が少ないことの関連が示されています4)。プロピオン酸は細菌代謝/発酵の最終産物でほかのSCFAに変わってしまうことがなく、FFARのエネルギー消費促進や抗肥満作用に関わるFFAR受容体の1つのGPR41にSCFAの中で最も親和性が高いことがマウスでの検討で示されています5)。実際、プロピオン酸の投与はマウスのエネルギー消費を促進しました。ゆえに大腸のプロピオン酸を増やすことは食欲制御手段となりそうですが、単にプロピオン酸を摂取しただけではその効果は得られそうにありません。というのもSCFAは大腸のL細胞に届く前に小腸にやすやすと吸収されてしまうからです。そこで考案されたのがプロピオン酸と食物繊維のイヌリンを繋いだIPEです。IPEのプロピオン酸の大部分は大腸の細菌がイヌリン部分を発酵することで放出されます。その仕組みによりプロピオン酸を大腸に限って供給できるというわけです。40~65歳の過体重の60例の無作為化試験でIPEの目当ての効果が示されています。1日当たり10gのIPE摂取が血中のGLP-1やPYYを増やし、少食にし、体重増加を抑えました6)。ベースラインに比べて5%以上の体重増加は6ヵ月のIPE投与では一例もいませんでしたが(0/25例)、ただのイヌリン投与では2割弱の17%(4/24例)にみられました。より若い20~40歳の過体重の270例が参加した別の無作為化試験では、IPE摂取とただのイヌリン摂取の1年間の体重増加にあいにく有意差はありませんでしたが、IPE群では除脂肪体重が若干増えていました7)。中高齢者と若者の効果の違いは新たに取り組むべき課題であり、除脂肪体重を増やす効果はさらなる検討の価値があるだろうと臨床試験を担った英国のグラスゴー大学のDouglas Morrison氏は言っています8)。今のところIPEの製造は試行段階で1度に作れるのは数百kgほどです。研究チームが立ち上げたSatisfed社がIPEの開発を手掛けており2,9)、企業と提携して数千トン単位でIPEが製造できるようにすることを目指しています。Morrison氏とその同僚のImperial College LondonのGary Frost氏は、IPE入りのスムージー、シリアル、パンなどの食品の発売に向けて企業に話を持ちかけています。IPE入りの食品が間違いなく向こう1年以内にEUの市場にお目見えするだろうとMorrison氏は言っています3)。 参考 1) Commission Implementing Regulation (EU) 2026/1219 of 9 June 2026 authorising the placing on the market of inulin-propionate ester as a novel food and amending Implementing Regulation (EU) 2017/2470 / European Union 2) Special food additive that helps prevent weight gain is approved / University of Glasgow 3) A type of fibre that stimulates GLP-1 release approved for use in food / NewScientist 4) Ridaura VR, et al. Science. 2013;341:1241214. 5) Kimura I, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2011;108:8030-8035. 6) Chambers ES, et al. Gut. 2015;64:1744-1754. 7) Pugh JE, et al. EClinicalMedicine. 2024;76:102844. 8) New study questions effectiveness of novel ingredient for preventing weight gain / Imperial College London 9) Imperial opens for business with investors from across the UK and Europe

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加工食品の保存料は心疾患リスクを高める?

 出来合いの食品や冷凍食品は購入後も比較的長く保存できるという利便性がある一方、心血管疾患リスクを高める可能性もあることが示された。ソルボンヌ・パリ・ノール大学(フランス)およびパリ・シテ大学(フランス)のAnais HasenbÖhler氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal」に5月20日掲載された。 工場で製造される加工食品には、さまざまな保存料が添加されている。HasenbÖhler氏は、「実験的な研究では、一部の保存料が心血管の健康に有害な影響を与える可能性が示唆されている。しかし、こうした成分が人間に与える影響について、これまで十分なエビデンスはなかった。われわれの知る限りでは、これほど幅広い種類の保存料と心血管の健康との関連について調べた研究は、今回が初めてだ」と述べている。 この研究では、フランスの11万2,395人の成人(平均年齢42.8歳、女性78.7%)を対象に、24時間食事記録法を用い、摂取した食事内容を中央値7.9年にわたり追跡調査した。記録された食品に含まれている保存料の種類や量をデータベースや実験分析で評価し、保存料の累積摂取量の経時的変化と健康アウトカムとの関連を解析した。 その結果、いくつかの一般的な保存料が、高血圧や心血管疾患の発症率上昇に関連することが示された。具体的には、カビや細菌の繁殖を防ぐために使用される、抗酸化作用を持たない保存料の摂取量が最も多かった群では、最も少なかった群に比べて高血圧の発症リスクが29%、心血管疾患の発症リスクが16%高かった。また、食品の変色防止などに用いられる抗酸化性保存料の摂取量が多かった群は、高血圧の発症リスクが22%高かった。さらに、高血圧に関連する8種類の保存料も特定された。その中には亜硝酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸などが含まれていた。一方、アスコルビン酸については、心血管疾患の発症リスク上昇との関連が認められた。 この研究結果について、研究論文の上席著者であるソルボンヌ・パリ・ノール大学のMathilde Touvier氏は、米食品医薬品局(FDA)や欧州食品安全機関(EFSA)などの機関が保存料のリスクとベネフィットの再評価を行う必要性を示していると指摘している。同氏は、「再評価の結果が出るまでは、加工されていない食品および加工度の低い食品を優先的に摂取し、不必要な保存料を含む超加工食品はなるべく避けるべきとする現行の推奨を支持する研究結果だといえる。医師やその他の医療専門職は、こうした推奨について一般の人に説明する上で、重要な役割を担っている」とニュースリリースの中で述べている

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糸球体疾患によるCKD、フィネレノンが有用/JAMA

 糸球体疾患を有する非糖尿病性慢性腎臓病(CKD)患者において、フィネレノンにより腎機能低下の抑制、アルブミン尿の減少、および腎不全または著しい腎機能低下リスクの減少が認められた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らFIND-CKD Investigatorsが、24の国・地域で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「FIND-CKD試験」の、事前に規定された探索的解析結果を報告した。糸球体疾患は、CKDおよび腎不全の主たる原因である。非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンは、CKDにおける腎機能低下のリスクを低減するが、糸球体疾患に起因するCKD患者における有効性は不明であった。著者は、「今回得られた知見は、糸球体疾患を有する患者集団における腎機能の維持において、フィネレノンが重要な役割を果たすことを示唆するものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年6月5日号掲載の報告。非糖尿病性CKD患者対象試験の探索的解析 FIND-CKD試験の対象は、18歳以上のCKD患者である。CKDの定義は、(1)推算糸球体濾過量(eGFR)が25mL/分/1.73m2以上60mL/分/1.73m2未満、かつ尿中アルブミン/クレアチニン比が200mg/g以上500mg/g未満、(2)eGFRが25mL/分/1.73m2以上90mL/分/1.73m2未満、かつ尿中アルブミン/クレアチニン比が500mg/g以上3,500mg/g未満、とし、登録前4週間以上レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬)の安定かつ最大耐用量を服用しており、スクリーニング時の血清カリウム値が4.8mmol/L以下とした。 1型および2型糖尿病を有する患者、HbA1cが6.5%以上、駆出率低下を伴う症候性心不全を有する患者などは除外された。 適格患者をフィネレノン10mg群、同20mg群、プラセボ群に無作為に割り付け、RAS阻害薬の安定かつ最大耐用量に加えてそれぞれ1日1回経口投与した。 主要アウトカムは、ベースラインから32ヵ月時までのeGFRの年間平均変化率(総eGFRスロープ)で、探索的評価項目として糸球体疾患を有する患者集団(治験責任医師により糸球体疾患と診断された対象者)における総eGFRスロープ、ベースラインから12ヵ月時までの尿中アルブミン/クレアチニン比の変化、腎不全またはeGFRの40%以上の持続的な低下の複合アウトカムなどを事前に設定した。フィネレノン群で腎不全またはeGFR40%以上低下の複合リスクが26%減少 無作為化された1,584例のうち、903例(57.0%)が糸球体疾患を有していた。このうち416例(46.1%)が免疫グロブリンA腎症、215例(23.8%)が巣状分節性糸球体硬化症、90例(10.0%)が膜性腎症であった。糸球体疾患を有する患者集団は、平均年齢51.1歳(SD 13.6)、女性362例(40.1%)、アジア系558例(61.9%)、平均eGFRは48.8mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は839.6mg/gであった。 糸球体疾患を有する患者集団において、ベースラインから32ヵ月時までの総eGFRスロープは、フィネレノン群で-3.50mL/分/1.73m2/年、プラセボ群で-4.23mL/分/1.73m2/年であった(群間絶対差は年間0.73mL/分/1.73m2、95%信頼区間[CI]:0.22~1.24)。 また、フィネレノン群ではベースラインから12ヵ月時までの尿中アルブミン/クレアチニン比が42%(95%CI:35~48)低下し、腎不全またはeGFRが40%以上低下するリスクをプラセボと比較して26%低減した(100患者年当たり7.42件vs.9.60件、ハザード比:0.74、95%CI:0.57~0.97)。

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グルコサミンがアルツハイマー病の進行を加速させる可能性

 アルツハイマー病(AD)では広範な代謝異常が観察されるものの、どの代謝経路が病態進行を直接駆動しているのか、その分子メカニズムは十分に解明されていない。米国・フロリダ大学のTara R. Hawkinson氏らの研究グループは、ヒト死後脳およびADマウスを用いた解析から、脳内における過剰糖鎖付加(ハイパーグリコシル化)が病態進行の直接的な駆動因子(ドライバー)であることを突き止めた。さらに、電子カルテデータベースの解析から、関節の健康のためのサプリメントとして広く普及するグルコサミンの使用が、ADの進行加速や死亡リスク上昇に関連している可能性が示唆された。Nature Metabolism誌オンライン版2026年6月9日号に掲載。 本研究では、ヒトAD死後脳サンプルの解析およびADマウスモデルを用いた糖鎖代謝の追跡実験を行った。また、糖鎖生合成経路の阻害による影響を評価した。臨床データの検証としては、電子カルテデータベースから抽出したAD関連認知症患者2万4,481例(うちグルコサミン使用者1,896例)および軽度認知障害(MCI)患者4万1,884例(同2,750例)を対象に、追跡期間中央値1,835日における生存率やAD関連認知症への移行率を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・ヒトAD患者の脳内(とくに灰白質)では、病期(Braakステージ)の進行に伴ってN-結合型糖鎖が有意に蓄積していた。・ADマウスにおいて、糖鎖生合成の阻害は社会的記憶を有意に改善させた一方で、グルコサミンの投与は脳内の糖鎖蓄積を加速させ、記憶障害を著しく悪化させた。なお、健康な野生型マウスではこの悪化は認められなかった。・電子カルテ解析の結果、グルコサミンを1年以上使用したAD関連認知症患者では、非使用者と比較して全死因死亡リスクが25%有意に上昇した(p=0.0023)。・MCI患者において、グルコサミン使用者ではAD関連認知症への移行率(疾患進行リスク)が25%有意に上昇した(p<0.001)。 著者らは、脳内の過剰糖鎖付加がADの病態を進行させる能動的なリスク因子であると指摘している。糖鎖生合成経路が新たな治療ターゲットとなる可能性を示唆する一方で、認知症リスクを抱える患者がグルコサミン使用によって病態を悪化させる潜在的リスクが懸念され、今後は厳密な臨床試験による検証が必要であると結論付けている。

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第301回 高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省

<先週の動き> 1.高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省 2.OTC類似薬の追加負担、対象外患者を定め2027年3月施行へ/厚労省 3.小児がん拠点病院を集約化、症例集積で医療の質確保へ/厚労省 4.高齢者の窓口負担3割化を提言、包括払い・病院再編も/財政審 5.ドクターヘリ運休相次ぐ、安定運航へ検討会設置/厚労省 6.長崎大病院など3病院、不急の救急搬送に選定療養費7,700円を徴収/長崎市 1.高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省厚生労働省は6月24日に開いた「高齢者医薬品適正使用検討会」で、高齢者のポリファーマシー対策を進めるため、医療従事者向けの普及啓発資材を公表した。多剤服用に伴う薬物有害事象、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などを防ぐため、「高齢者の医薬品適正使用の指針」や病院・地域での業務手順書の内容を分かりやすく整理したもの。主な対象は医師、歯科医師、薬剤師だが、看護師や介護職など多職種での活用も想定している。資材は指針の総論編、各論編のほか、病院向け、地域向けの計4種類。これまで本格的に取り組んでいなかった医療機関でも導入しやすいよう、イラストを多用し、文字量を抑えた構成としている。資材では、「ポリファーマシーとは、単に薬剤数が多い状態(多剤服用)ではなく、多剤服用に関連して有害事象や服薬困難などの問題が生じている状態を指す」としている。高齢者では、加齢に伴う腎機能低下や薬物動態の変化、複数医療機関の受診、処方カスケードなどにより形成されやすい。病院向け資材では、対策開始時の留意点として、剤数だけに着目せず、安全性や治療効果、患者の生活状況を踏まえて処方内容を適正化する必要性を強調した。対象患者を優先順位付けし、小規模から始めること、担当者を明確にして情報を一元化すること、多職種の役割分担を整理することが実践の鍵となる。薬剤服用後の体調不良が疑われる外来患者には受診や相談を促す。実務上は、「お薬手帳」を活用した処方・調剤情報の一元管理に加え、患者の日常生活動作や認知機能、栄養状態、生活環境、服薬管理能力などを総合的に評価することが重要となる。併せて、腎機能や薬物相互作用、同効薬の重複、一般用医薬品やサプリメントの使用状況も確認する。ふらつき、転倒、せん妄、食欲低下、便秘、排尿障害などが出現した場合は、薬剤起因性も疑う。薬剤を見直すときは、中止・減量・変更後の病状悪化や代替薬による有害事象にも注意が必要となる。2026年度の診療報酬改定では、病棟薬剤業務実施加算の見直しにより、ポリファーマシー対策や退院時薬剤情報連携が一層重視されている。薬剤総合評価調整加算などの実績向上にもつながる可能性があり、薬剤部門だけでなく、入退院支援、病棟看護、地域薬局、かかりつけ医を含めた組織的な取り組みが求められる。資材では、剤数だけに着目せず、安全性確保などを踏まえた処方内容の適正化が必要であると強調されている。 参考 1) 第22回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料(厚労省) 2) 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)(同) 3) 高齢者の医薬品適正使用の指針 総論編の概要 普及啓発資材(同) 4) ポリファーマシー対策 普及啓発資材を公表 適正使用指針などの説明で活用 厚労省(CB news) 5) ポリファーマシー対策の始め方と進め方の普及啓発ツールが公表。薬剤総合評価調整加算等の実績向上が期待される(HCナレッジ) 2.OTC類似薬の追加負担、対象外患者を定め2027年3月施行へ/厚労省厚生労働省は6月25日、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の一部追加負担を求める新制度の具体化に向けた有識者検討会の初会合を開いた。新制度は2027年3月の施行を想定し、対象薬剤の薬剤費の4分の1を保険給付から外し、「特別の料金」として通常の1~3割負担に上乗せする。対象は、ロキソニン錠やアレグラ錠、保湿剤、湿布などを含む77成分、1,066品目を機械的に選定した案が示されており、今後効能・効果を踏まえて整理される。制度の目的は、OTC医薬品で対応している患者との公平性を確保し、現役世代を中心とする保険料負担の上昇を抑えることにある。ただし、必要な受診を妨げないよう、追加負担を求めない患者や療養の範囲が大きな論点となる。厚労省案では、高校生年代までの子供、低所得者、入院患者、がん患者や指定難病患者など配慮が必要な慢性疾患患者は対象外とする方向。入院中の処方は退院時処方を含めて追加負担を求めない。がんについては、治療中または治療開始に向け継続診療中の患者や、副作用対策に用いる薬は除外する一方で、治療終了後の経過観察のみの場合や、がんと直接関係しない症状への処方は追加負担を求める方向である。長期使用が医療上必要なケースも除外候補で、内服薬は年間処方日数がおおむね50週以上、外用薬は、塗布剤・貼付剤・点眼剤・点鼻剤・吸入剤などについて、医師が毎日の塗布や貼付など日常的使用を指示している場合を目安とする。厚労省は今後、77成分ごとに医療用医薬品とOTC医薬品の効能・効果の違いを整理し、代替性の有無を検討する。検討会は8月ごろに中間整理を行い、医療保険部会や中医協での議論、患者団体ヒアリングを経て、秋ごろの取りまとめを目指す。医療現場では、対象外となる医学的必要性をどのように判断・記録するかが実務上の焦点となる。 参考 1) 一部保険外療養の施行に向けて(厚労省) 2) 負担対象OTC類似薬議論 除外条件も、厚労省(東京新聞) 3) OTC類似薬の追加負担、がん・通年処方は対象外 厚労省が案提示(日経新聞) 4) 日常使用の湿布は負担対象外 OTC類似薬の新制度-厚労省会議(時事通信) 3.小児がん拠点病院を集約化、症例集積で医療の質確保へ/厚労省厚生労働省は6月23日に開かれた「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」で、小児がん診療提供体制の見直し案を示し、大筋で了承を得た。少子化に伴い小児がん患者数の減少が見込まれる中、高難度医療、希少がん診療、再発・難治例への集学的治療、国際共同治験などを担う施設に症例を集積し、医療の質を維持・向上させる狙い。現在全国15ヵ所の「小児がん拠点病院」は、10ヵ所程度に集約化する方針で、8月上旬までに整備指針を改定する。新たな小児がん拠点病院は、高度専門医療に加え、ドラッグ・ラグ/ロスの解消や新規治療開発への貢献も求められる。診療実績要件は、再発時の紹介を含む年間新規症例数30例以上に加え、年間手術数10例程度を新設する。放射線療法については、自施設で提供できない場合も他施設と連携して提供できる体制を要件化する。医師以外のスタッフの配置も見直し、細胞診断業務に携わる人員について「1人以上必要な数」の配置を求める方向。国立成育医療研究センターと国立がん研究センターは、引き続き小児がん中央機関として、中央診断体制や国際共同治験、医療技術開発を牽引する。その一方で、集約化による患者・家族の医療アクセス低下を防ぐため、新たに「都道府県小児がん拠点病院」を各都道府県に原則1ヵ所整備する。小児がん拠点病院と連携しながら標準的治療を提供し、標準治療が確立していないがんや再発・難治例では診療情報を共有し、必要に応じて専門施設へ紹介する。専門治療後や病状安定後には、地域医療機関へ円滑に逆紹介する体制も求められる。指定要件は、年間新規症例数20例以上、または都道府県内の小児がん年間新規症例の原則半数以上を診療していることとする。現行の小児がん連携病院145ヵ所は「小児がん連携医療機関」に見直され、病院だけでなく診療所も参加可能となる。標準的治療、特定がん種への対応、長期フォローアップ、移行期医療、在宅医療などを担う体制を整える。今後、全国小児がん拠点病院等連絡協議会と都道府県小児がん診療連携協議会を設け、広域・地域双方の課題を協議する。新たな指定類型は2027年4月から適用される見通し。 参考 1) 第5回 小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 小児がん拠点病院を集約化して医療の質を確保し、患者・家族の医療アクセス確保にも配慮する-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 3) 小児がん拠点病院 10ヵ所程度に集約化へ 8月上旬までに整備指針改定 厚労省(CB news) 4) 「小児がん拠点病院」集約化へ 患者減見据え10ヵ所程度に(MEDIFAX) 4.高齢者の窓口負担3割化を提言、包括払い・病院再編も/財政審財務省の財政制度等審議会は6月26日、「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」と題する建議を片山 さつき財務相に提出した。建議は、日本経済がデフレ型から供給制約型へ移りつつあるとし、「強い経済」には未来投資と実質賃金上昇による投資と賃上げの好循環が不可欠とした。その一方で、金利上昇局面では財政資源も制約下にあり、補正予算依存から脱却し、恒常的施策は当初予算で措置する改革の実効性と財政規律の両立を求めた。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」や、債務残高対GDP比の安定的低下を中核目標とする方針についても、成長頼みでは市場の信任を損ないかねないとして、利払い費を含む財政収支の管理を促した。医療・介護分野では、現役世代の保険料負担を抑えるため、社会保障負担率に数値目標と年限を設け、改革工程表を作成すべきだと提言した。医療では「患者アクセスの保障」と「負担抑制」のバランスを掲げ、70歳以上の患者自己負担を可及的速やかに原則3割へ引き上げることを求めた。70~74歳を一律に高齢者扱いする現行の線引きの見直し、75歳以上への経過措置、外来特例の廃止、特定疾病制度の検証・見直しも論点とした。さらに、建議では、医療機関を受診する際の窓口業務のコスト(保険証確認や会計など)について、診療行為そのものではなく、初・再診料で評価する必然性は乏しいとして、保険給付外サービスとして患者に請求できる仕組みの検討を求めた。医療の提供体制については、小規模分散型の病院・診療所では人材不足下の効率化に限界があるとして、病院の集約・再編、地域医療連携推進法人の活用、外来機能の統合・大規模化、かかりつけ医機能強化を提起した。診療報酬についても、入院・外来診療ともに、出来高払い中心からアウトカム評価と包括払い中心へ移行し、医療DXで少ない人員でも質を保つ体制を後押しすべきだとした。あわせて、医療法人の経営情報の見える化、医療機関の職員の職種別給与・人数の提出義務化、医療法人の業務範囲拡大、2027年度薬価改定の完全実施、後期高齢者医療制度の都道府県化や金融所得を含む応能負担の徹底も盛り込んだ。医療界にとっては、患者負担増だけでなく、報酬体系、病院再編、経営情報開示まで含む包括的な制度転換の予告と受け止める必要がある。 参考 1) 人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営(財務省) 2) 「強い経済」へ投資と賃上げ循環 予算編成改革、実効性確保を-財政審建議(時事通信) 3) 70歳以上の医療費窓口支払い「速やかに3割負担を」財制審が意見書(日経新聞) 4) “高齢者も病院窓口負担を原則3割に” “大学は現在の半分程度まで縮減を” 財政制度等審議会が片山さつき財務大臣に意見書(TBS) 5) 診療報酬をアウトカム評価中心の包括払いに 財政審、入院・外来共に(CB news) 5.ドクターヘリ運休相次ぐ、安定運航へ検討会設置/厚労省厚生労働省は、東京や関西などでドクターヘリの運休が相次いでいることを受け、安定的な運航体制の確保に向けた検討会を7月中に立ち上げる。上野 賢一郎厚生労働相が6月26日の閣議後記者会見で明らかにした。検討会には医療関係者、航空関係者、自治体担当者、有識者などが参加し、救急医療搬送体制の在り方や国の関与、財政支援、人材確保策について議論する。ドクターヘリは、救急医療機器を搭載し、専門医と看護師が搭乗して現場に向かうことで、重症患者への早期医療介入と迅速搬送を担う。上野厚労相は「全国各地の救急医療体制を確保する上で極めて重要な役割を果たしている」と述べ、持続可能な運航体制の構築が急務との認識を示した。運休の背景には、運航事業者における整備士不足がある。東京や兵庫などでは昨年以降、整備士を確保できないことによる運航停止が発生しており、自治体からも国の対応を求める声が上がっている。加えて、公共ヘリの操縦には高度な技量と経験が必要で、操縦士の高齢化も課題となっている。ドクターヘリの操縦士は50歳以上が7割超を占め、2030年以降には毎年10人以上が不足するとの見通しもある。国土交通省も航空大学校を活用した若手操縦士の養成や、シミュレーター活用による飛行経験要件の見直し、養成費支援を進める方針。検討会では、医療現場と航空運航の双方の実情を踏まえ、財政支援、人材育成、整備士・操縦士の確保を含めた具体策を検討する。 参考 1) ドクターヘリ検討会設置へ 運休受け、安定運航議論(共同通信) 2) 整備士不足で運休相次ぐ「ドクターヘリ」 安定運航へ厚労省が検討会を立ち上げ(テレビ朝日) 3) 関西などドクターヘリ運休 7月中にも検討会立ち上げ 厚労省(NHK) 4) ドクター・防災ヘリ念頭…国交省、航空大で操縦士養成の背景(ニュースイッチ) 6.長崎大病院など3病院、不急の救急搬送に選定療養費7,700円を徴収/長崎市長崎市内の3病院は7月1日から、緊急性が認められない症状で救急搬送された患者に対し、選定療養費7,700円を徴収する。対象は長崎みなとメディカルセンター、長崎大学病院、日赤長崎原爆病院で、いずれも200床以上の急性期病院として脳卒中、心筋梗塞、重症外傷などに対応する役割を担う。これまで救急搬送では紹介状なし受診に伴う選定療養費の徴収対象外としていたが、救急車要請時の緊急性が医師により認められない場合に負担を求める運用へ改める。背景には、救急搬送件数の増加と大病院への軽症患者集中がある。長崎市消防局管内では、2022年度以降の救急搬送が2万5,000件超で高止まりし、医療機関の応需率は2019年度の80.7%から、近年は60%台前半まで低下している。長崎みなとメディカルセンターでは2023年度の救急搬送3,987人のうち36%が軽症だった。市消防局が病院へ11~20回問い合わせた搬送事例も、2019年度の2件から2024年度には109件へと急増しており、搬送先選定の長期化が問題となっている。同センター救命救急センターは年間約4,200台の救急車と約4,500人のウォークイン患者を受け入れる。輪番日の夜間は救急医1人、研修医4人、看護師5人で対応する体制だが、午後5~7時ごろに搬送が集中し、初療室5床が短時間で埋まることもある。早川 航一センター長は、安易な救急車利用の抑制により、真に緊急性の高い患者の治療時間と病床を確保する必要性を強調している。その一方で、制度運用には課題も残る。第三者が救急車を呼んだ場合や観光客でも、緊急性がないと判断されれば徴収対象となる一方で、警察など公的機関からの要請は原則対象外とされる。徴収判断は医師がガイドラインに基づき行うが、病院間で判断に差が出れば不公平感につながりかねない。救急車の有料化ではなく、救急医療資源を守る施策として位置付けつつ、個別事例の検証や市民への周知が不可欠となる。救急車を呼ぶか迷う場合は、救急安心センター「#7119」の活用も促されている。 参考 1) 救急搬送における選定療養費について(長崎市) 2) 不急の救急搬送に長崎市内の3病院が7月から特別料金、救急車の適正利用が狙い…「緊急性」線引きに課題も(読売新聞) 3) 「これ以上は危うい…」長崎県内最多の救急搬送患者を受け入れる救命救急センター、切迫する最前線の現状(長崎新聞) 4) 「とりあえず救急車」の前に…7月1日~長崎市の3病院で「救急搬送における選定療養費徴収」スタート 迷ったときは?(長崎放送)

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第67回 「長生き」を買おうとする富豪たち、その方法に科学はあるのか

「死なない男」として知られる起業家ブライアン・ジョンソン氏は、2019年から、寿命を延ばす目的で、ある薬を毎日のように自分に注射し続けてきました。本来は臓器移植の拒絶反応を防ぐために使う免疫抑制薬「ラパマイシン」です。ところが2024年9月、彼はこの「実験」をやめます。皮膚の感染症や血糖値の上昇、脂質の異常などが現れ、利益よりも害が上回ると判断したからでした。彼のように、自分の体を「ハッキング(改造)」して数年でも長く生きようとするIT長者たちが増えています。そして、その試みをSNSなどで世界中に発信しています。今回は、こうした「バイオハッキング」ブームの実態を伝えたNature誌の記事1)をもとに、ご紹介します。富豪たちが試す、さまざまな「若返り術」ジョンソン氏は「ブループリント」と名づけた自己流の健康法を公開し、多くの追随者を生んでいます。彼が取り入れている方法の1つが、若い人から血液をもらう「若年血漿(けっしょう)輸血」です。これは米国食品医薬品局(FDA)が2019年と2024年に「効果の根拠がなく危険」と警告したものでした。ほかにも、別の富豪が「120歳まで生きたい」と成長ホルモンを使っていることを公言したり(医療機関は健康な大人への効果を疑問視しています)、集中力を高めるとして染料由来の物質やニコチン製品を勧めたりと、その種類はさまざまです。これらに共通するのは、効果や安全性がはっきりしないまま広まっている点です。科学的な裏づけは、どこまであるのかもちろん研究者たちは慎重です。老化そのものに働きかけて人の寿命を延ばすと明確に証明された方法は、いまのところ1つもないからです。ある専門家は、わずかなデータの中に「期待できそうな兆し」と「雑音」が入り交じり、一般の人にはその区別が難しいと指摘します。たとえば話題のラパマイシンは、マウスの寿命を23~60%延ばしたという研究があります2)。しかし、ヒトで同じことを示すのは簡単ではありません。ヒトでの研究はごくわずかで、65歳以上の200人余りでワクチンの効きがよくなったという2014年の報告3)や、高齢者の呼吸器感染症が減ったという2018年の報告4)がある程度です。研究者が333人の使用者を調べた2023年の調査では「生活の質が上がった」との声が多かったものの、本人の自己申告に頼っており、悪い経験をしてやめた人が含まれていない可能性が高いと、研究チーム自身が限界を認めています5)。一方で、糖尿病薬のメトホルミンや、肥満症で使われるGLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)のように、加齢に伴う病気を遅らせる可能性が期待され、臨床試験が進んでいる薬もあります。「自分1人のデータ」という落とし穴最大の問題は、富豪たちが自分1人の体で試した結果が、そのまま一般の人へと「正しい基準」のように広まってしまうことです。本来、薬の効果を確かめるには、数千人規模で慎重に比較する臨床試験が欠かせません。「科学は『1人(n=1)』では成り立たない」のです。しかし、健康長寿を支援するクリニックには「ブループリントをやりたい」「あの成分が欲しい」と、検査も受けないうちに名指しで求める人が増えているそうです。また、影響力のあるインフルエンサーの中には、自分のブランドのサプリメントを売る人もいますが、商売上の利害がからんでいることが、見ている側には伝わりにくい構造もあります。きちんとした臨床試験には大規模な費用がかかりますが、それは富豪たちの資産からすればごく一部にすぎません。しかし、その熱意と資金は本物の科学に向けられているとは言えない実情があります。日本でも、海外の健康トレンドはSNSを通じてすぐに入ってきます。「海外の有名人がやっているから」は、効果や安全の証拠にはまったくならない。そんな冷静な視点を、私たち一人ひとりが持っておきたいものです。1)Stokel-Walker C. Tech tycoons are biohacking for a longer life: is there science behind their methods? Nature. 2026;654:589-591.2)Miller RA, et al. Rapamycin-mediated lifespan increase in mice is dose and sex dependent and metabolically distinct from dietary restriction. Aging Cell. 2014;13:468-477.3)Mannick JB, et al. mTOR inhibition improves immune function in the elderly. Sci Transl Med. 2014;6:268ra179.4)Mannick JB, Morris M, Hockey HP, et al. TORC1 inhibition enhances immune function and reduces infections in the elderly. Sci Transl Med. 2018;10:eaaq1564.5)Kaeberlein TL, Green AS, Haddad G, et al. Evaluation of off-label rapamycin use to promote healthspan in 333 adults. GeroScience. 2023;45:2757-2768.

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フィネレノンが原因疾患や糖尿病の有無を問わずCKD患者の腎・心リスクを低減/Lancet

 原因疾患や血糖値、推算糸球体濾過量(eGFR)、アルブミン尿の程度が異なる慢性腎臓病(CKD)の患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンは腎不全単独を含むCKD進行リスクを抑制し、心不全による入院、心血管死および全死因死亡リスクを低下させることが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らFIND-CKD, FIDELIO-DKD and FIGARO-DKD Investigatorsが行ったメタ解析の結果で示された。フィネレノンは、2型糖尿病合併CKDにおいて腎関連および心血管系への有益性が示されているが、広範なCKD患者集団における有効性や安全性は評価されていなかった。結果を踏まえて著者は、「フィネレノンは多岐にわたるCKD患者の基礎治療として支持される」と述べている。Lancet誌2026年6月13日号掲載の報告。3つの無作為化二重盲検プラセボ対照試験の患者個別データをメタ解析 研究グループは、CKD患者におけるフィネレノンについて評価した3つの無作為化二重盲検プラセボ対照試験(FIDELIO-DKD試験[2015年9月17日~2020年4月14日]、FIGARO-DKD試験[2015年9月17日~2021年2月2日]、FIND-CKD試験[2021年9月21日~2026年2月2日])の、被験者個々のデータを用いてメタ解析を行った。 Cox比例ハザードモデルを用いて、腎関連および心血管アウトカムへの相対的有効性を評価した。腎関連の主要アウトカムは、腎不全またはeGFRの57%以上の持続的な低下であり、心血管系の主要アウトカムは、心不全による入院または心血管死であった。腎関連複合アウトカムリスクを24%、心血管系複合アウトカムリスクを20%低下 3試験には1万4,574例が登録されており、平均年齢は63.7歳(SD 10.6)、女性4,467例(30.7%)、男性1万107例(69.3%)で、平均eGFRは56.4mL/分/1.73m2(SD 21.4)であり、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は567.4mg/g(四分位範囲:233.6~1,164.7)であった。 フィネレノンはプラセボと比較して、腎関連複合アウトカムのリスクを24%低下させ(22.3 vs.28.8件/1,000患者年、ハザード比[HR]:0.76[95%信頼区間[CI]:0.68~0.86])、腎不全単独のリスクも低下させた(HR:0.85[95%CI:0.74~0.99])。 また、フィネレノンはプラセボと比較して、心血管系複合アウトカムのリスクを20%低下させた(19.1 vs.23.9件/1,000患者年、HR:0.80[95%CI:0.70~0.91])。心不全による入院のHRは0.78(95%CI:0.66~0.92)、心血管死のHRは0.82(95%CI:0.67~0.999)であった。 フィネレノンは、全死因死亡のリスクも低下させた(HR:0.88、95%CI:0.79~0.99)。 腎関連複合アウトカムへの治療効果は、血糖値、CKDの原因疾患、ベースラインのeGFR値、アルブミン尿およびSGLT2阻害薬の使用状況を問わず一貫していた。 フィネレノン群ではプラセボ群よりも高カリウム血症が高頻度に認められたが、入院に至る高カリウム血症の絶対的な発現頻度は低かった。

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第66回 SNSが広げる「合成ペプチド」ブーム。米国で何が起きているのか

筋肉を付けたい、けがを早く治したい、若さを保ちたい。そうした願いに応える「特効薬」として、いま米国で急速に広がっているのが、注射で使う「合成ペプチド」です。BPC-157やipamorelinといった成分が、SNSを通じて若者を中心に人気を集めています。2026年5月時点で、ペプチド関連の投稿はInstagramで13万件を超え、TikTokでは2億3,000万回も再生されているといいます1)。しかし、その大半は有効性も安全性も十分に確かめられていません。2026年6月、JAMA誌に掲載された論考は、この現象の裏にある「規制の穴」を指摘しています1)。今回は、その内容をかみ砕いてご紹介します。揺れ動く規制が、かえって混乱を生んでいるまず押さえておきたいのは、これらのペプチドの多くが、効果のはっきりした根拠を欠いているという点です。逆に、動物実験などからは、異常な血管新生(本来できるべきでない血管がつくられること)や、毒性をもつ代謝産物の発生といったリスクも指摘されており、ヒトでの安全性データはほとんどないのが現状です2)。それにもかかわらず、米国の規制は一貫していません。米国食品医薬品局(FDA)は安全性への懸念からBPC-157などを「調剤」の対象から外す動きを見せる一方3)、政界からは規制を緩めようという声も上がっています。ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の掲げる「Make America Healthy Again」には、ペプチドへのアクセスを広げる提案も含まれているのです4)。こうした「締めては緩める」の繰り返しが、医師にも消費者にも混乱をもたらしています。そして規制が厳しくなっても需要そのものは消えず、むしろ管理の及ばない闇ルートへと利用者を押しやってしまう。これが大きな問題だと論考の著者は警鐘を鳴らします1)。「薬」と「サプリ」の境界が溶けているペプチドのやっかいさは、その立ち位置の曖昧さにあります。たとえば肥満症治療で広く使われるセマグルチドやチルゼパチド(GLP-1受容体作動薬)のように、正式に承認された医薬品もペプチドの1種です。その一方で、まったく同じ「ペプチド」という言葉のもとに、オンライン専門のクリニックや「研究用試薬」を称する業者が、未承認の製品を売りさばいています。つまり、承認薬・調剤品・健康増進グッズ・違法な増強薬が、すべて「ペプチド」として地続きにつながってしまっているのです。販売サイトは「高純度」「即日発送」「まとめ買い割引」といった宣伝文句を並べ、用途別に商品を並べています。これでは、どこからが医療でどこからが違法なのか、その線引きがきわめて難しくなります。とりわけ心配なのが若い世代です。SNSで理想の体型をあおられた10代の男の子や若い男性が、リスクを軽く見たまま、こうした商品に出会ってしまう。従来の規制は製造や流通の一点を狙い撃ちするだけで、需要を生み出すデジタル空間そのものには手が届いていないのです。いま求められる「しなやかな」対策禁止や輸入規制といった従来型の手法だけでは不十分でしょう。必要なのは、システム全体を見据えた柔軟な対応です。具体的には、FDAによる承認前の評価基準の強化、根拠の乏しい成分の調剤制限、違法な業者への警告や輸入差し止め、そしてインフルエンサーの誇大広告への取り締まりなどが挙げられています。販売後の副作用を追う監視体制の拡充も欠かせません。加えて見過ごせないのが、研究の不足です。これらの物質は比較的調べやすいにもかかわらず、利用実態や健康被害についてのデータがほとんどありません1)。この問題は米国だけのものではありません。オーストラリア5)やカナダ6)でも、オンラインで購入した未承認ペプチドへの安全性勧告がすでに出されています。日本でも、SNS発の健康情報が国境を越えて入ってくる時代です。「みんなが使っているから安全」とは限らない。この視点は、私たち一人ひとりが持っておきたいものです。1)Piatkowski T, et al. Illicit injectable peptides and regulatory gaps. JAMA. 2026 Jun 15. [Epub ahead of print]2)McGuire FP, et al. Regeneration or risk? a narrative review of BPC-157 for musculoskeletal healing. Curr Rev Musculoskelet Med. 2025;18:611-619.3)US Food and Drug Administration. Certain bulk drug substances for use in compounding that may present significant safety risks. 2026 Apr 22.4)Jewett C, Blum D. Heeding Kennedy's wishes, FDA is expected to lift restriction on peptides. New York Times. 2026 Mar 31.5)Australian Government Therapeutic Goods Administration. Understanding your responsibilities when importing, compounding and supplying unapproved peptide products. 2026 Apr 13.6)Government of Canada. Think twice before injecting peptides bought online: unauthorized products can seriously harm you. 2026 Apr 9.

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サプリ「メーカー推奨量超え」約2割、長期使用や錠剤タイプで多い可能性

 健康維持のために利用されることの多いサプリメントだが、摂取量によっては栄養素の過剰摂取につながる可能性もある。今回、日本の成人を対象とした調査で、サプリメント利用者の約2割がメーカーの表示する推奨摂取量(メーカー推奨量)を超えて摂取していることが明らかになった。長期使用や錠剤タイプの製品で多い傾向もみられ、過剰摂取の実態と関連要因が示された。研究は、東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野の杉本南氏、同予防医療学分野の朝倉敬子氏らによるもので、詳細は3月19日付の「Interactive Journal of Medical Research」に掲載された。 近年、健康維持や栄養補給を目的としたサプリメントの利用は世界的に増加している。一方で、食事に加えてサプリメントから栄養素を摂取することで耐容上限量(UL)を超える可能性があり、過剰摂取による健康リスクが懸念されている。これまでにもサプリメント利用者における上限量超過の実態は報告されているが、メーカー推奨量を利用者が実際に守っているかについての研究は限られている。また、多くの研究は自己申告によるサプリメント使用情報に依存しており、製品特定や摂取量の正確性に課題があった。本研究では購入履歴データを活用し、メーカー推奨量を超えるサプリメント摂取の関連要因と、栄養素のUL超過の実態について検討した。 著者らは2024年11~12月にかけて、日本の成人を対象とした横断研究としてオンライン調査を実施した。消費者モニターを利用し、主要25種類のサプリメント製品のいずれかの購入履歴があり、直近1カ月以内に使用している、または日常的に使用している18~74歳の成人2,002人を対象とした。質問票で1日当たりのサプリメント摂取量を把握し、製品パッケージに記載されたメーカー推奨量と比較した。さらに、日本人の食事摂取基準に基づくULを基準とし、サプリメント由来のビタミンおよびミネラル摂取量のみからUL超過の有無を評価した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、推奨量を超える摂取と社会人口学的要因との関連を検討した。 参加者の平均年齢は43.7歳で、女性が75.6%を占め、平均BMIは21.6であった。調査対象2,002人のうち371人(18.5%)が、メーカー推奨量を上回ってサプリメントを摂取していた。 推奨量を超える摂取は、中年層、パートタイムまたはフルタイムで就労している人、錠剤型のサプリメント使用者(特に水溶性ビタミンの単剤錠)、サプリメントを6カ月以上継続している人、さらに意図的にメーカー推奨量を超えて摂取していることとも関連していた。メーカー推奨量を超えて摂取していた人のうち15.4%は、自ら過剰摂取であると認識していた。一方で57.1%は推奨量と同程度、10.8%は推奨量以下と認識しており、過剰摂取の自覚がないケースも多かった。 メーカー推奨量を超えて摂取していた群では、実際の摂取量がメーカー推奨量の数倍に達する例もみられ、平均すると水溶性ビタミン単剤では実際の摂取量がメーカー推奨量の3.9倍、葉酸や鉄を含む錠剤型サプリメントでは5.4倍に達していた。 ULが設定されている栄養素を含むサプリメントを摂取していた1,705人のうち、17.4%(297人)がメーカー推奨量を超えて摂取していた。このうち61.9%(184/297)は、少なくとも1種類の栄養素でULを上回っていた。特にビタミンA、ナイアシン、葉酸、マグネシウム、亜鉛では、メーカー推奨量を超えて摂取している人の40~60%がULを超過していた。 著者らは、中年層や長期使用者などでメーカーの表示するサプリメントの推奨量超過が多くみられたと指摘する。こうした摂取は栄養素の過剰摂取につながる可能性があり、過剰摂取の健康リスクについて認識を高める必要があるとしている。 なお、著者らは本研究の限界として、オンライン調査モニターを対象とした点や、摂取量が自己申告である点、複数サプリメントの併用を評価していない点などを挙げている。

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ジギタリス配糖体の再評価――復権ではなく再配置として読む(解説:野間重孝氏)

 私が循環器内科医として臨床の現場に入ったのは1980年(昭和55年)である。当時、心不全治療においてまず教えられたのは、利尿薬の使い方とジギタリスの使い方であった。病棟では、浮腫や肺うっ血に対して利尿薬をどう調節するか、また心不全例あるいは心房細動合併例に対してジギタリスをどのように用いるかが、循環器診療の基本手技の1つとして扱われていた。しかし、当時は現在のように、大規模ランダム化比較試験によって薬剤の有効性を検証し、その結果に基づいてガイドライン上の位置付けを定めるという考え方は、まだ一般的ではなかった。利尿薬もジギタリスも、経験的に症状を改善する薬として使用されていたのである。 その後、心不全治療は大きく変化した。ACE阻害薬、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、さらにARNIやSGLT2阻害薬が、次々に生命予後を改善する薬剤として位置付けられた。一方、ジギタリスは、症状や心不全入院を減らす可能性は示されながらも、死亡率を改善しない薬剤として、次第に主役の座から退いていった。これは、必ずしもその臨床的有用性が完全に否定されたからではない。むしろ、心不全治療の評価軸が大きく変化したことが大きかった。 大規模臨床試験の時代に入り、死亡率あるいは心不全入院を減らす薬剤が次々に登場すると、心不全治療は、経験的治療から、臨床試験によって生命予後改善効果を示した薬剤を基軸とする治療へと移行していった。その中で、ジギタリスは不利な立場に置かれた。DIG試験では、ジゴキシンは心不全入院を減らす一方で、全死亡を減らすことは示せなかった。以後、ジギタリスは「症状や入院には効くかもしれないが、生命予後を改善する薬ではない」と理解され、心不全治療の主役から次第に外れていった。またジギタリスは治療域が狭く、腎機能低下、低カリウム血症、薬物相互作用などによって中毒を来しやすいという古典的な問題がある。新しい薬剤が次々に登場する中で、エビデンスが明確で安全域の広い新規治療を導入する方向へ臨床の関心が移ったことは、ある意味で自然であったといえる。 今回のメタ解析は、そのような歴史を持つジギタリス配糖体を、現代の心不全試験で用いられる評価項目に照らして再評価しようとしたものである。本研究の成果は、ジギタリス配糖体を現代心不全治療の中で再評価した点にある。解析の結果、ジギタリス配糖体は、HFrEFまたはHFmrEF患者において、心血管死または初回心不全悪化イベントからなる複合エンドポイントを有意に減少させた。しかし、その効果の主体は心不全悪化イベントの減少であり、心血管死および全死亡については有意な低下を示していない。 したがって、本研究から導かれる臨床的メッセージは、ジギタリス配糖体を生命予後改善薬として復権させることではなく、標準的心不全治療を行ってもなお心不全悪化リスクが残るHFrEF/HFmrEF患者において、低用量のジギタリス配糖体が心不全悪化・入院を減らす補助的治療となりうる、という点にある。この意味で、本研究は「ジギタリスの復権」を示したというより、長い歴史を持つ古典的薬剤を、現代の心不全治療体系の中でどこに置き直すべきかを考えるための研究と位置付けるべきであろう。 ただし、その臨床的射程は明確に限定しておく必要がある。本研究における複合エンドポイントの改善は、主として心不全悪化イベントの減少によるものであり、心血管死および全死亡の低下は示されていない。また、対象はHFrEFまたはHFmrEFに限られており、HFpEFへの外挿はできない。さらに、心不全の原因疾患別の検討は十分ではなく、虚血性心筋症、非虚血性心筋症、弁膜症性心疾患、心房細動関連心不全などにおいて、ジギタリス配糖体の意義が同一であるかどうかは、本研究からは明らかでない。 今回のメタ解析に取り上げられた3つの試験は、それぞれ異なる時代的背景を持っている。DIG試験は、ジギタリスがなお心不全治療の重要な薬剤として用いられていた時代に、その有効性を大規模臨床試験の枠組みで検証しようとした研究であった。当時問われた中心的課題は、ジゴキシンが全死亡を減らすかどうかであった。その結果、ジゴキシンは全死亡を減らさなかったが、心不全入院を減少させることが示された。 これに対して、DIGIT-HF試験とDECISION試験は、ジギタリスをかつてのような中心的治療薬として復活させようとした研究ではない。むしろ、ACE阻害薬/ARB/ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬などの標準治療が普及した後にもなお残る心不全悪化リスクに対して、低用量のジギタリス配糖体が追加療法として意味を持つかどうかを検討した研究と位置付けるべきである。3者は同じ薬剤群を扱ってはいるが、問われている臨床的意味は同一ではない。 今回統合された3つの試験は、いずれもジギタリス配糖体を扱っているとはいえ、同じ臨床的問いに答えた試験ではない点には、十分な注意が必要である。DIG試験の主要エンドポイントは全死亡であり、DIGIT-HF試験では全死亡と心不全入院、DECISION試験では心血管死と反復性心不全悪化イベントが用いられている。さらに、DIG試験は現代的心不全治療が確立する以前の試験であり、最近の2試験とは背景治療が大きく異なる。すなわち、対象患者、治療背景、評価項目のいずれもそろっていない。 本メタ解析では、これらの試験を「心血管死または初回心不全悪化イベントまでの期間」という現代的複合エンドポイントに組み替えて統合している。これは統計学的には可能であっても、臨床的にはかなり人工的な再構成である。したがって、本研究は「3つの大規模試験が一貫してジギタリス配糖体の有効性を示した」と読むべきではない。むしろ、異なる時代、異なる背景治療、異なる評価項目を持つ試験を、現代的な物差しで読み替えた研究と理解すべきである。 さらに重要なのは、本メタ解析の結果が、量的にはDIG試験に大きく依存している点である。主要複合エンドポイントにおける試験ごとの重みをみると、DIG試験が全体の約8割を占めており、DIGIT-HF試験およびDECISION試験の寄与は相対的に小さい。したがって、本研究の統合結果は、3つの試験が均等に支えた結論というより、DIG試験で示されていた心不全悪化イベント抑制効果を、最近の2試験が大きく否定しなかったために成立している、と読むべきである。 つまり、本研究は古典的なDIG試験の結果を、近年の2試験を加えて現代的評価項目のもとに再解釈した研究と位置付けるのが妥当であろう。したがって、この論文はジギタリスの復権を宣言するものではなく、心不全悪化イベントを減らす補助薬として、現代的文脈で再評価した研究である。ただし、その結論は異質な3試験の再構成に基づくものであり、慎重に読む必要がある。

20.

心不全のカリウム至適範囲は4.2〜5.0mmol/L/EHJ

 心不全患者における安全なカリウム至適範囲について、左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)と駆出率が保たれた心不全(HFpEF)で同じであるかは明らかにされていない。今回、英国・グラスゴー大学の小野 亮平氏らが心不全患者を対象とした12のランダム化比較試験の個別患者データを用いてメタ解析を実施。その結果、HFrEFおよびHFpEFのいずれにおいても、カリウムの至適範囲は4.2〜5.0mmol/Lであることが示された。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年5月28日号掲載の報告。 心不全患者においては神経体液性因子の活性化や薬剤(利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]など)、併存疾患(腎機能障害など)によって血清カリウム値の変動を来すが、これまでに実施されてきた研究では、LVEF別の層別化は行われておらず、一般的な低カリウム血症(3.5mmol/L未満)・高カリウム血症(5.5mmol/L)の基準値が、心不全患者の臨床アウトカムとどのように関連しているかは不明であった。 研究グループは、HFrEFに関する7つの試験(CHARM-Added、CHARM-Alternative、EMPHASIS-HF、ATMOSPHERE、PARADIGM-HF、DAPA-HF、GALACTIC-HF)およびHFpEFに関する5つの試験(CHARM-Preserved、I-PRESERVE、TOPCAT Americas、PARAGON-HF、FINEARTS-HF)から、計4万6,069例(HFrEF:3万2,346例、HFpEF:1万3,723例)の個別患者データを取得。ベースラインの血清カリウム値(mmol/L)を6つのカテゴリー(3.5未満、3.5以上4.0未満、4.0以上4.5未満、4.5以上5.0未満、5.0以上5.5未満、5.5以上)に分類して統合解析した。主要評価項目は全死因死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・HFrEFとHFpEFの各試験における追跡期間中央値は、それぞれ24.2ヵ月と36.8ヵ月であった。・HFrEFでは血清カリウム値とアウトカムの間に逆J字型の関連が認められた。4.0~4.5mmol/Lを基準とした場合、3.5mmol/L未満群では、全死因死亡の大幅なリスク上昇と強く関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.27~1.76)。また、心血管死(aHR:1.58、95%CI:1.32〜1.88)、突然死(aHR:1.58、95%CI:1.18〜2.12)、ポンプ不全死亡(aHR:1.71、95%CI:1.29〜2.25)も、3.5mmol/L未満群で最も高かった。・HFpEFのリスク曲線は、HFrEFと比べ緩やかなU字型で、全体的なイベント発生率も低かった。また、全死因死亡リスクが最も高かったのは5.5mmol/L以上群(aHR:1.29、95%CI:0.96〜1.74)であったが、基準群との差は緩やかであった。心血管死やポンプ不全による死も同様の傾向であり、突然死との関連はさらに緩やかであった。・全アウトカムを考慮した結果、最もリスクが低いベースラインの血清カリウム値の範囲は4.2~5.0mmol/Lであったが、軽度高カリウム血症に該当する5.0~5.5mmol/L群(HFrEFの約13%、HFpEFの約10%)であっても、多変数調整後は死亡や心不全入院のリスク上昇と有意に関連していなかった。・初回心不全入院、ならびに複合アウトカム(心不全入院または全死因死亡、心不全入院または心血管死)についても、全死因死亡や心血管死と同様の関連が認められた。 研究者らは、「HFrEFにおいて、低カリウム血症は予後不良と強く関連していた。安全性の観点から、いずれの心不全表現型であっても最適な血清カリウム値は4.2〜5.0mmol/Lの範囲に維持することが望ましい。また、5.0〜5.5mmol/Lであってもガイドライン推奨治療薬(MRAなど)を一律に中止するのではなく、ほかの原因の排除や厳密なモニタリング実施などのアプローチ検討が望まれるかもしれない。本結果より、心不全患者における「低カリウム血症」の定義を4.0mmol/L未満に再定義することを検討すべきであるという議論も支持される」としている。

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