糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

糖尿病予防、メトホルミンも長期効果

 米国糖尿病予防プログラム(DPP)は、2型糖尿病の発症リスクが高い成人3,234人を対象とした3年間のランダム化臨床試験で、生活習慣介入(Intensive Lifestyle Intervention:ILS、食事・運動・体重管理への集中的介入)、メトホルミン投与、プラセボ投与の3群における、2型糖尿病発症率の違いを比較することを目的としていた。2002年に糖尿病発症率がILS群で58%、メトホルミン群で31%減少したことが報告されている。  DPP試験はプロトコル改訂を経て、DPPアウトカムズ研究(DPPOS試験)として継続された。参加者を長期(20年以上)追跡し、治療効果の長期的な影響を評価した。本試験の結果を米国・ジョージ・ワシントン大学のWilliam C. Knowler氏らが、The Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2025年4月28日号で報告した。

栄養士が調整した医療食の提供は医療費削減に有効

 米国では、栄養を医療の一環としてとらえ、慢性疾患の予防や治療に役立てる目的で栄養士が患者の状態に応じて調整した医療食(medically tailored meal;MTM)を提供する「食は薬(Food is Medicine)」プログラムが広範に実施されている。過去の小規模研究では、MTMが患者の健康管理に有効なだけでなく、医療費の削減につながる可能性が示唆されている。こうした中、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院のShuyue Deng氏らが、全国規模でMTMを保険適用とした場合の影響を検討した結果、初年度だけで321億ドル(1ドル142円換算で4兆5582億円)の医療費を削減できる可能性が示唆された。この研究の詳細は、「Health Affairs」4月号に掲載された。

複数の食品添加物の相互作用が2型糖尿病リスクを高める

 ダイエット飲料や超加工食品に使われている添加物が、2型糖尿病のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のMarie Payen de la Garanderie氏らの研究の結果であり、詳細は「PLOS Medicine」に4月8日掲載された。複数の添加物による相互作用が、リスク上昇に関与している可能性があるという。  約11万人を対象に行われたこの研究によると、人工甘味料入り飲料によく含まれている添加物の混合物(添加物の組み合わせ)は2型糖尿病のリスクを13%増加させ、同様にスナックなどの超加工食品に含まれている添加物の混合物は、リスクを8%増加させることが明らかになった。de la Garanderie氏は、「多くの製品に含まれているいくつかの添加物はしばしば同時に摂取されるが、そのような同時摂取が2型糖尿病のより高いリスクと関連していることが示唆される」と解説。「これらの添加物は修正可能なリスク因子といえ、2型糖尿病予防の新たな戦略への道を開く可能性がある」と付け加えている。

炭水化物を減らすと2型糖尿病患者の予後が改善/順天堂大

 2型糖尿病患者では、心血管イベントや死亡のリスクが高いことが知られている。今回、2型糖尿病患者における食事の栄養素と予後との関連性を調査した結果、炭水化物の摂取割合が高いほど心血管イベントや死亡のリスクが増大し、炭水化物を減らして動物性のタンパク質や脂質の摂取を増加させるとそれらのリスクが低減することが、順天堂大学の三田 智也氏らによって明らかになった。Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2025年3月21日号掲載の報告。  炭水化物制限は2型糖尿病患者の血糖コントロールに有用である可能性が報告されている。しかし、炭水化物の摂取割合が心血管イベントや死亡リスクに与える影響や、炭水化物の摂取量を減らしてタンパク質や脂質を増やすことによる影響など、依然として不明な点は多い。そこで研究グループは、2型糖尿病患者を対象に、食事の栄養素を含むさまざまな生活習慣と心血管イベントや死亡リスクとの関連性を、最大10年間にわたって前向きに調査した。

2型糖尿病患者においてもインスリン自動投与システム AIDは有効である(解説:住谷哲氏)

インスリン自動投与システムautomated insulin delivery(AID)の有効性は1型糖尿病患者においては確立されている。AIDにはいくつかの種類があるが、本試験で使用されたのはTandem Diabetes CareのControl-IQ+である。Control-IQ+は、基礎インスリン分泌に加えて高血糖時の補正インスリンcorrection bolusも自動化した新しいclosed-loop systemである。本試験は、すでに米国食品医薬品局(FDA)から1型糖尿病患者に対して承認されているControl-IQ+の、2型糖尿病患者への承認を目指しての臨床試験と思われる。

週3の摂取エネルギー減、毎日のカロリー制限より効果大

 週7日のうち3日の摂取エネルギー量を8割減らし、残りの4日間は自由に摂取する「4:3断続的断食」という方法は、毎日の摂取エネルギー量を少しずつ減らすよりも、減量効果が大きいとする研究結果が報告された。米テネシー大学ノックスビル校のDanielle Ostendorf氏らの研究であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。  Ostendorf氏は本研究の背景を、「毎日のカロリー制限を長期間続けるのは、多くの人にとって困難である」と説明。得られた結果を基に、「身体活動を組み込んだ総合的な減量プログラムの一環としての4:3断続的断食は、毎日のカロリー制限に比較して優れた減量効果をもたらし、新たな減量戦略となり得る」としている。

スマートウォッチが運動療法を後押しして糖尿病コントロールを改善

 糖尿病患者にとってスマートウォッチが、運動療法のための力強いサポートツールとなり得ることを示すデータが報告された。英ランカスター大学のCeu Mateus氏らが、診断から間もない2型糖尿病患者を対象に行ったランダム化比較試験の結果であり、詳細は「BMJ Open」に3月26日掲載された。  この研究により、スマートウォッチを介して運動を奨励したり、患者が実際に行った運動についてフィードバックしたりすることで、運動療法を開始・継続しやすくなることが明らかになった。さらに、血糖値や血圧の管理も良好になる可能性が示唆された。Mateus氏は、「糖尿病の治療にとって重要な非薬物療法を継続できていない2型糖尿病患者が少なくないが、われわれの研究結果はスマートウォッチを用いることで、そのような臨床課題を改善できる可能性を示している」と述べている。

アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か

 インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。

人工甘味料スクラロースの摂取は空腹感を高める

 スプレンダのようなカロリーなしの人工甘味料の使用により食事のカロリーが増えることはないが、体重増加につながる可能性はあるようだ。新たな研究で、砂糖の代替品は食欲と空腹感を刺激し、食べ過ぎにつながる可能性のあることが明らかになった。米南カリフォルニア大学(USC)糖尿病・肥満研究センター所長のKathleen Page氏らによるこの研究結果は、「Nature Metabolism」に3月26日掲載された。  Page氏は、「スプレンダの主成分であるスクラロースは、摂取してもその甘さから予想されるカロリーを伴わないため脳を混乱させるようだ。体が、摂取した甘さに見合うカロリーを期待しているのにそれを得られない場合、時間の経過とともに、脳がそれらの物質を求める仕組みに変化が生じる可能性がある」とUSCのニュースリリースの中で述べている。

肥満や脂質異常症がCKDリスクを増大か/東大

 日本のメタボリックシンドロームの基準値を外れる内臓脂肪蓄積や脂質異常症、肥満は尿蛋白の発現リスクが高く、HDLコレステロール低値は腎機能低下と関連していることを、東京大学の吉田 唯氏らが明らかにした。Internal Medicine誌オンライン版2025年4月12日号掲載の報告。  高血圧や高血糖と慢性腎臓病(CKD)との関連は多く報告されているが、肥満や内臓脂肪蓄積、脂質異常症とCKDの関連に関しては見解の一致が得られていない。そこで研究グループは、大規模な職域健診データを解析し、日本のメタボリックシンドロームの基準値(ウエスト周囲径[男性≧85cm、女性≧90cm]、トリグリセライド値≧150mg/dL、HDLコレステロール値<40mg/dL)およびBMI値25以上とCKDの発症・進行との関連を調査した。