糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

1日7,000歩で死亡リスクが半減!?

 ウォーキングが健康に良いことが知られているが、具体的な歩数についてはさまざまな報告があり、明確な目標値は定まっていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のDing Ding氏らの研究グループは、成人の1日の歩数と死亡や疾患の発症、健康アウトカムとの関連を検討することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、1日7,000歩でも死亡リスクが低下し、心血管疾患や認知症などの疾患の発症リスクも低下することが示された。本研究結果は、Lancet Public Health誌2025年8月号で報告された。

米国で肥満関連がんによる死亡が20年で3倍以上に

 米国では過去20年間で、肥満に関連するがんによる死亡が3倍以上に増加したとする研究結果が、米国内分泌学会(ENDO2025、7月12~15日、サンフランシスコ)で発表された。米ハッケンサック・メリディアン・ジャージーショア大学医療センターのFaizan Ahmed氏らが報告した。  Ahmed氏らの研究によって、肥満関連の13種類のがんによる米国での死亡率が、1999年から2020年の間に、100万人当り3.7人から13.5人に増加したことが明らかにされた。主任研究者である同氏は、「肥満は多くのがんの重大な危険因子であり、死亡率の上昇に寄与している」と解説。また、「われわれの研究から、特に農村部や医療サービスが行き届いていない地域で、肥満に関連するがんによる死亡のリスクが高いことも示された」としている。

早い時間に寝ると翌日の運動量が増える

 古くから「早寝早起き」は健康や気分、さらには運気にも良いとされているが、運動量を増やすというメリットもあることが報告された。モナッシュ大学(オーストラリア)のElise Facer-Childs氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に6月30日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「睡眠と身体活動はどちらも健康にとって非常に重要だが、それら両者がいかに複雑に絡み合っているかを、われわれは今まで十分に理解していなかった」と述べている。

ネットワークメタアナリシスを用いた断続的断食の利点と今後の課題(解説:島田俊夫氏)

米国・ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のZhila Semnani-Azad氏らの研究グループが、2025年6月18日付のBMJ誌に掲載された論文で、きわめて重要な問題を提起しています。この論文は、断続的断食(IF)戦略、継続的なエネルギー制限(CER)食、そして自由摂取(AL)食が、体重および心血管代謝リスク因子に与える影響を、ランダム化比較試験(RCT)99件、合計6,582例の成人データを統合したネットワークメタアナリシスを用いて評価したものです。肥満が増加の一途をたどる現代において、IFがCER食の代替として注目されるなか、その効果を包括的に比較することを目的としています。本稿では、この重要な論文の要点をわかりやすく解説します。

日本人の肥満基準、BMI 25以上は適切?

 現在の日本における肥満の定義はBMI 25kg/m2以上とされているが、これは約30年前の横断研究の結果に基づくものである。そのため、現在における妥当性については議論の余地がある。そこで、京都府立医科大学大学院の笠原 健矢氏らの研究グループは、大規模な長期コホート研究のデータを用いて、現在の日本人における最適な肥満の基準値を検討した。その結果、BMI 22kg/m2を対照とした場合、2型糖尿病や慢性腎臓病(CKD)はBMI 25kg/m2付近でハザード比(HR)が2を超える一方で、冠動脈疾患(CAD)や脳卒中などのHRが2を超えるのは、BMI 30kg/m2超であった。本研究結果は、Metabolism誌オンライン版2025年7月15日号に掲載された。

糖尿病患者では血清脂質レベルと黄斑体積が相関か

 糖尿病(DM)の深刻な合併症として、糖尿病網膜症(DR)が挙げられるが、今回、糖尿病患者で血清中の脂質レベルと網膜黄斑体積が関連するという研究結果が報告された。DMがあるとDRがなくても網膜黄斑体積が減少し、また、DMがなくても血清脂質が高いと体積は減少することが示された。さらに、DRがあり、かつ血清脂質が高いと網膜黄斑体積が病的に増加する可能性が示唆されたという。研究は慶應義塾大学医学部眼科の虫賀庸朗氏、永井紀博博士、および同眼科にも籍を置く藤田医科大学東京先端医療研究センターの小沢洋子教授らによるもので、詳細は「PLOS One」に6月4日掲載された。

2型糖尿病に対する週1回インスリン製剤の検討 (解説:小川大輔氏)

週1回投与のインスリン製剤インスリン イコデクが2025年1月に発売され、現在日本で使用されている。これとは別の週1回注射のinsulin efsitora alfa(efsitora)の2型糖尿病患者を対象とした第III相試験の結果が発表された。これまでにインスリン治療を行ったことのない2型糖尿病患者において、1日1回投与のインスリン グラルギンと比較し、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の改善について非劣性であることが確認された。インスリン治療歴のない成人2型糖尿病患者795例を、efsitoraを週1回投与する群とインスリン グラルギンを1日1回投与する群に無作為に割り付け、52週間投与した。その結果、ベースラインから52週目までのHbA1cの変化量は両群に差がなく、efsitoraのグラルギンに対する非劣性が確認されたが、優越性は認められなかった。

揚げ物はやはり糖尿病や高血圧リスクに~兄弟比較の前向き試験

 揚げ物は健康に悪影響を与える可能性があるが、腸内細菌叢との関連や、それが心代謝性疾患に及ぼす影響は十分に明らかになっていない。中国・浙江大学のYiting Duan氏らは、2つの大規模前向きコホートを用いた解析により、揚げ物の摂取に関連する腸内細菌叢は糖尿病や高血圧リスクの増大と関連し、その関連は遺伝的・環境的背景を共有する兄弟姉妹間の比較においても同様の関連性が確認されたことを報告した。American Journal of Clinical Nutrition誌2025年7月2日号掲載の報告。  研究グループは、WELL-Chinaコホート(ベースライン:2016~19年、6,637人)と蘭渓コホート(ベースライン:2017~19年、3,466人)を分析し、揚げ物の摂取と腸内細菌叢の組成に関係があるかどうか、揚げ物に関連する腸内細菌叢は肥満や体脂肪の分布および心代謝性疾患の発症率と関連しているかどうかを調査した。

SGLT2阻害薬がCKD患者の入院リスクを総合的に低減

 SGLT2阻害薬が慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管イベントを抑える効果はこれまでに報告されているが、あらゆる原因による予定外の入院リスクの低減効果については体系的に評価されていない。今回、大島 恵氏(オーストラリア・シドニー大学/金沢大学)らの研究により、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無、腎機能やアルブミン尿の程度にかかわらず、CKD患者の予定外の入院リスクを低減したことが明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年7月14日号掲載の報告。