糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

2型糖尿病合併慢性腎臓病におけるフィネレノン+エンパグリフロジン併用療法:アルブミン尿の著明な改善―CONFIDENCE研究は腎アウトカムの予測にも“CONFIDENT”といえるか?(解説:栗山哲氏)

CONFIDENCE研究では、2型糖尿病(T2DM)に合併する慢性腎臓病(CKD)の初期治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)であるフィネレノンと、SGLT2阻害薬(SGLT2i)であるエンパグリフロジンの併用療法が、それぞれの単独療法と比較して尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下させることが示された。これまで、フィネレノンとSGLT2iの併用療法をT2DMに伴うCKDの初期段階で評価したエビデンスは限られており、この点において本研究は新規性を有する。

脂肪性肝疾患の診療のポイントと今後の展望/糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第68回年次学術集会(会長:金藤 秀明氏[川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授])が、5月29~31日の日程で、ホテルグランヴィア岡山をメイン会場に開催された。  今回の学術集会は「臨床と研究の架け橋 ~translational research~」をテーマに、41のシンポジウム、173の口演、ポスターセッション、特別企画シンポジウム「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。  近年登場する糖尿病治療薬は、血糖降下、体重減少作用だけでなく、心臓、腎臓、そして、肝臓にも改善を促す効果が報告されているものがある。

就学前までのBMIの変化で将来の肥満リスクを予測可能

 幼少期のBMIの変化の軌跡から、その後の肥満リスクを予測できるとする、米ワシントン州立大学のChang Liu氏らの研究結果が、「JAMA Network Open」に5月22日掲載された。1~6歳の間にBMIが低下しない場合、9歳時点で小児肥満となっている可能性が高く、米国の子どもの約1割がこれに該当するという。  この研究では、米国立衛生研究所(NIH)がサポートしている、小児の健康に関する大規模コホート研究(Environmental influences on Child Health Outcomes;ECHO)の1997年1月~2024年6月のデータが縦断的に解析された。この期間に体重と身長の測定が4回以上行われた1~9歳の子ども9,483人(男児51.9%)を対象として、BMIの変動パターンを検討。その結果、典型的なパターンとそうでない非典型的なパターンの2種類に、明確に分類可能であることが分かった。

カロリー制限食は抑うつ気分を高める?

 カロリー計算は単に気が滅入る作業であるだけでなく、実際にうつ病のリスクを高める可能性があるようだ。新たな研究で、カロリー制限食を実践している人では、特定の食事法を実践していない人と比べて抑うつ症状のスコアが高かったことが示された。トロント大学(カナダ)精神医学准教授のVenkat Bhat氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Nutrition Prevention & Health」に6月3日掲載された。  Bhat氏らは今回、2007年から2018年にかけての米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万8,525人の健康状態を追跡した。参加者は抑うつ症状を評価する質問票であるPatient Health Questionnaire-9(PHQ-9)に回答していたほか、実践している食事療法の有無についても調査が行われていた。

経口セマグルチドはASCVDかつ/またはCKDを合併した肥満2型糖尿病患者の心血管イベントを減らす(解説:原田和昌氏)

GLP-1受容体作動薬の注射剤は、さまざまな異なる患者像において心血管系の有効性が確立しており、メタ解析でも同様の結果が得られている。しかし、経口セマグルチドはPIONEER 6試験にて2型糖尿病(T2DM)かつ心血管リスクの高い患者における安全性は確立されたが、主要有害心血管イベント(MACE)に対する有効性は示されなかった。米国のDarren K. McGuire氏らはSOUL試験により、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)かつ/または慢性腎臓病(CKD)を有する平均BMI 31のT2DM患者において、経口セマグルチドがプラセボと比較してMACEのリスクを有意に減少させることを示した。

不適切な医療行為は一部の医師に集中~日本のプライマリケア

 日本のプライマリケアにおける「Low-Value Care(LVC:医療的価値の低い診療行為)」の実態を明らかにした大規模研究が、JAMA Health Forum誌オンライン版2025年6月6日号に掲載された。筑波大学の宮脇 敦士氏らによる本研究によると、抗菌薬や骨粗鬆症への骨密度検査などのLVCを約10人に1人の患者が年1回以上受けており、その提供は一部の医師に集中していたという。  LVCとは、特定の臨床状況において、科学的根拠が乏しく、患者にとって有益性がほとんどない、あるいは害を及ぼす可能性のある医療行為を指す。過剰診断・過剰治療につながりやすく、医療資源の浪費や有害事象のリスク増加の原因にもなる。本研究で分析されたLVCは既存のガイドラインや先行研究を基に定義され、以下をはじめ10種類が含まれた。 ●急性上気道炎に対する去痰薬、抗菌薬、コデインの処方 ●腰痛に対するプレガバリン処方 ●腰痛に対する注射

糖尿病と高血圧の併発が命を脅かす

 米国では2型糖尿病と高血圧を併発している患者が過去20年間で倍増し、そのような患者は全死亡リスクが約2.5倍、心血管死のリスクは約3倍に上ることが明らかになった。これは米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のNour Makarem氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes Care」に5月21日掲載された。  この研究には、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した4万8,727人の成人のデータが用いられた。参加者全体を、2型糖尿病も高血圧もない群(50.5%)、2型糖尿病のみの群(2.4%)、高血圧のみの群(38.4%)、両方に罹患している群(8.7%)という4群に分類して、全死亡(あらゆる原因による死亡)と心血管死のリスクを比較した。なお、2型糖尿病と高血圧を併発している患者の割合は、前記の期間中に6%から12%へと倍増していた。

減量・心代謝リスク因子に対し、最も効果的な断食戦略は?/BMJ

 米国・Harvard TH Chan School of Public HealthのZhila Semnani-Azad氏らは、無作為化比較試験99報についてネットワークメタ解析を行い、断続的断食および連続的エネルギー制限食は自由食と比較して体重を減少させ、断続的断食の中でも隔日断食は連続的エネルギー制限食と比較して体重減少に有益であることを報告した。体重減少は心代謝リスク因子を低下させ、結果として2型糖尿病や心血管疾患などの疾病負担を減らすことを可能とするが、減量戦略としてよく行われている断続的断食が、カロリー制限食や自由食と比較して健康にどのような効果があるかは明らかになっていなかった。BMJ誌2025年6月18日号掲載の報告。

過体重・肥満者の変形性膝関節症による痛みをメトホルミンが緩和

 経口血糖降下薬の一種であるメトホルミンが、変形性膝関節症による痛みを抑制するとする研究結果が、世界変形性関節症研究会議(OARSI2025、4月24~27日、韓国・仁川)で報告された。モナッシュ大学(オーストラリア)のFeng Pan氏らの研究によるもので、24日の発表に合わせて「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に論文が掲載された。  前臨床試験およびヒト対象の予備的な研究から、メトホルミンには炎症抑制や軟骨保護作用があり、変形性膝関節症患者の疼痛を改善する可能性が示唆されている。Pan氏らはこの効果を、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験によって検討した。

腹部脂肪は乾癬リスクを高める?

 乾癬患者の多くは過体重であり、体脂肪レベルの増加が乾癬リスクを高めると考えられているが、新たな研究で、体全体の脂肪よりも腹部の脂肪の方が乾癬発症のより強い警告サインである可能性が示された。この傾向は男性よりも女性で顕著だったという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)セント・ジョンズ皮膚科学研究所の皮膚科医であるRavi Ramessur氏らによるこの研究結果は、「Journal of Investigative Dermatology」に5月27日掲載された。  Ramessur氏は、「乾癬の発症には、体幹部の脂肪、特にウエスト周りの脂肪が重要な役割を果たしているようだ。この結果は、乾癬を発症しやすい人や乾癬が重症化しやすい人の特定方法や乾癬の予防・治療戦略の立て方に重要な示唆を与える」と話している。