循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:135

PCI後チカグレロルvs.クロピドグレル、NACEリスク差は?/JAMA

 日常臨床で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者の抗血小板療法において、チカグレロルとクロピドグレルには、1年後の純臨床有害事象(NACE、虚血性イベント+出血性イベント)のリスクに差はないことが、韓国・亜洲大学校のSeng Chan You氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。欧米の現行のガイドラインは、主に単一の大規模な無作為化臨床試験(PLATO試験)に基づき、ACS患者への優先的なP2Y12阻害薬としてチカグレロルを推奨しているが、PLATO試験では北米やアジアの患者におけるチカグレロルの有益性は明確ではなく、薬剤誘発性の呼吸困難や出血イベントなどの問題が残されている。また、最近の観察研究の結果からは、日常臨床においてチカグレロルはクロピドグレルに比べ良好な転帰をもたらすとの見解に疑問が投げ掛けられているという。

消化性潰瘍の予防法が明確に-『消化性潰瘍診療ガイドライン2020』

 消化性潰瘍全般の国内有病率は減少傾向を示す。しかし、NSAIDs服用患者や抗凝固薬、抗血小板薬服用患者の潰瘍罹患率は増加の一途をたどるため、非専門医による予防対策も求められる。これらの背景を踏まえ、今年6月に発刊された『消化性潰瘍診療ガイドライン2020』(改訂第3版)では、「疫学」と「残胃潰瘍」の章などが追加。また、NSAIDs潰瘍と低用量アスピリン(LDA:low-dose aspirin)潰瘍の予防に対するフローチャートが新たに作成されたり、NSAIDsの心血管イベントに関する項目が盛り込まれたりしたことから、ガイドライン作成委員長を務めた佐藤 貴一氏(国際医療福祉大学病院消化器内科 教授)に、おさえておきたい改訂ポイントについてインタビューを行った(zoomによるリモート取材)。

praliciguat、HFpEF患者の最高酸素摂取量を改善せず/JAMA

 左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)患者の治療において、経口可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬praliciguatはプラセボに比べ、全身持久力の指標である最高酸素摂取量(peak VO2)を改善せず、6分間歩行検査(6-MWT)距離や換気効率にも有意な差はないことが、米国・タフツ医療センターのJames E. Udelson氏らが行った「CAPACITY HFpEF試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月20日号で報告された。HFpEFは、一般に一酸化窒素(NO)の欠乏で特徴付けられ、NO-sGC-サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)のシグナル伝達経路の増強は、HFpEFの治療標的となる可能性があるという。

CAPACITY HFpEF試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1312

左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)181例を対象に、可溶型グアニリル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬であるpraliciguatの運動耐容能に及ぼす効果を無作為化比較試験によって検証したCAPACITY HFpEF試験(Phase II)の結果が2020年10月20日、JAMA誌に公開された。結果として、praliciguatの12週間にわたる投与は、最大酸素摂取量をはじめとした運動耐容能を改善するには至らなかった1)。HFpEFにおいて多くみられる糖尿病、高血圧、肥満患者や高齢者においては、酸化ストレスの増大によって血管内皮機能障害が生じ、一酸化窒素(NO)の生物学的利用能低下から内皮細胞に接する血管平滑筋細胞や心筋細胞などにおける環状グアノシン3’,5’-1リン酸(cGMP)の産生が減少する。これによりプロテインキナーゼG(PKG)の活性は低下し、血管弛緩反応の低下、心筋肥大・線維化などが生じる2)。HFpEF患者の心筋生検標本を用いた検討においては、cGMPならびにPKG活性の低下が報告されていることからも3)、HFpEFの治療標的としてNO-cGMP-PKG経路が注目されてきた。

vericiguat、HFpEF患者の身体機能制限を改善せず/JAMA

 左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)で、代償不全がみられる患者の治療において、新規の経口可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬vericiguatはプラセボと比較して、身体機能制限を改善せず、6分間歩行距離(6MWD)の延長にも有意な差はないことが、カナダ・アルバータ大学のPaul W. Armstrong氏らが実施した「VITALITY-HFpEF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月20日号に掲載された。HFpEF患者は、死亡や入院のリスクとともに、運動耐容能や生活の質(QOL)の低下のリスクが高い。vericiguatは、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)を直接的に産生させ、内因性一酸化窒素に対する可溶性グアニル酸シクラーゼの感受性を回復させるという。

3mm未満の冠動脈病変へのDCB vs.DES、3年追跡結果/Lancet

 小径の新規冠動脈疾患の治療において、薬剤溶出性ステント(DES)に対する薬剤コーティングバルーン(DCB)の有効性/安全性は3年間維持されていた。スイス・バーゼル大学のRaban V. Jeger氏らが、多施設共同非盲検無作為化非劣性試験「BASKET-SMALL 2試験」の3年追跡結果を報告した。BASKET-SMALL 2試験の主要評価項目である12ヵ月後の主要心血管イベント(MACE)について、DESに対するDCBの非劣性が検証されており、DCBは新規小冠動脈疾患に対する治療として1年までは確立されていたが、1年を超えるデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年10月19日号掲載の報告。

第二アンジオテンシン変換酵素(ACE2)は、ヒトの運命をつかさどる『X因子』か?(解説:石上友章氏)-1309

米国・ニューヨークのマクマスター大学のSukrit Narulaらは、PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)試験のサブ解析から、血漿ACE2濃度が心血管疾患の新規バイオマーカーになることを報告した1)。周知のようにACE2は、古典的なレニン・アンジオテンシン系の降圧系のcounterpartとされるkey enzymeである。新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2が、標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2を受容体として、ウイルス表面のスパイクタンパクと結合することが知られている。降って湧いたようなCOVID-19のパンデミックにより、にわかに注目を浴びているACE2であるが、本研究によりますます注目を浴びることになるのではないか。

血漿ACE2は生命予後・心血管疾患イベントのリスクマーカーとなりうるのか?(解説:甲斐久史氏)-1307

2020年は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発見20周年である。その記念すべき年に、期せずして、人類の日々の営みさえ大きく変えようとしているCOVID-19パンデミックの原因ウイルスSARS-CoV-2感染における細胞受容体であることが同定され、ACE2に大きな注目が集まることとなった。ともすればネガティブな悪玉イメージが定着しそうな雲行きのACE2であったが、ここに来て本来の領域でポジティブなニュースが飛び込んできた。そもそも、ACE2は細胞膜メタロプロテアーゼで、古典的レニン・アンジオテンシン(RA)系における中心的な調節因子アンジオテンシン変換酵素(ACE)のホモローグである。言うまでもなくACEは、アンジオテンシン(ang)IからangIIを産生し、angII1型受容体(AT1R)を介する細胞増殖・肥大、酸化ストレス、血管収縮といった生理学的あるいは病態生理的作用に関与する。それに対して、ACE2はangIおよびangIIをそれぞれang 1-9およびang 1-7に分解、すなわち、angII産生を減少させる。さらに、ang 1-7はmas受容体を活性化してAT1Rの作用を抑制する。すなわち、ACE2は過剰に活性化したRA系に対する内因性抑制機構で、臓器保護的に作用するkey moleculeである。

糖尿病患者の残薬1位は?-COVID-19対策で医師が心得ておきたいこと

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の実態が解明されるなか、重症化しやすい疾患の1つとして糖尿病が挙げられる。糖尿病患者は感染対策を行うのはもちろん、日頃の血糖コントロール管理がやはり重要となる。しかし、薬物治療を行っている2型糖尿病患者の血糖コントロール不良はコロナ流行以前から問題となっていた。今回、その原因の1つである残薬問題について、亀井 美和子氏(帝京平成大学薬学部薬学科 教授)らが調査し、その結果、医療者による患者への寄り添いが重要であることが明らかになった。

最適な血行再建術を選択する新SYNTAXスコアを開発・検証/Lancet

 10年死亡ならびに5年主要心血管イベントを予測するSYNTAXスコアII 2020は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の恩恵を得られる個人の特定に役立ち、心臓チーム、患者およびその家族が最適な血行再建術を選択するのを支援可能であることが示された。オランダ・アムステルダム大学のKuniaki Takahashi氏らが「SYNTAXES試験」の副次解析結果を報告した。無作為化比較試験は新たな治療法の有効性を検証するゴールドスタンダードで、一般的には平均的な治療効果を示すものであるが、治療効果は患者によって異なる可能性があり、個々の患者の治療を平均的な治療効果に基づいて決定することは最適ではない可能性がある。そこで著者らは、複雑な冠動脈疾患患者において最適な血行再建術を選択する個別意思決定ツールとしてSYNTAXスコアII 2020を開発し検証した。Lancet誌オンライン版2020年10月8日号掲載の報告。