循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:135

降圧薬のイベント防止効果は1次および2次予防や心血管疾患既往の有無で異なるか?(解説:江口和男氏)-1405

血圧は下げれば下げるほど将来の脳心血管発症リスクが減少する。わが国およびその他の国際的な高血圧ガイドラインでは、降圧薬による降圧治療の適応は、生活習慣修正により十分な降圧効果が得られない場合や、血圧レベルが高くない場合でもリスク表により高リスクと判断される場合である。一般的に降圧薬開始の基準となるのは、外来血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上の場合であり、それ以下の血圧の場合、降圧薬治療開始の適応とはならない。高血圧のリスク表(JSH2019ガイドライン表3-2)については、糖尿病や尿蛋白の有無、心血管疾患の既往のありなしで血圧目標が異なり、日常診療で応用するにはやや複雑である。たとえば、心血管疾患既往があれば、高値血圧(130~139/80~89mmHg)の範囲であっても、リスク第三層「高リスク」に分類される。しかし、心血管疾患既往の有無やベースラインの血圧レベルで、どの程度イベント抑制効果が異なるかということについて結論が出ていなかった。

多剤併用の高齢者、他の薬剤継続もスタチン中止で心血管リスク増

 高齢者の多剤併用(ポリピル)は主要な健康問題に発展するため、近年問題になっている。処方薬を中止すれば薬の使用を減らすことができる一方、臨床転帰への影響は不確かなままである。そこで、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らがスタチン中止によるリスク増大の影響について調査を行った。その結果、多剤併用療法を受けている高齢者において、ほかの薬物療法を維持しつつもスタチンを中止すると、致命的および非致命的な心血管疾患発生の長期リスクの増加と関連していたことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年6月14日号掲載の報告。

スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。

統合失調症患者における重度心血管疾患の有病率

 フランス・ロレーヌ大学のJ-C Marche氏らは、統合失調症患者における入院が必要な重度の心血管疾患の有病率について、調査を行った。L'Encephale誌オンライン版2021年5月20日号の報告。  2015年にフランスの精神科病院5施設に入院した統合失調症または精神疾患患者を対象とし、調査を行った。心血管疾患患者の定義は、精神科入院前の5年または入院後の3年に一般病院での入院対応歴(ICD-10コード)を有する患者とした。心血管疾患には、心筋梗塞、脳卒中、心不全、冠動脈疾患、末梢動脈疾患を含めた。高血圧、肥満、糖尿病などのリスク因子についてのデータを収集した。

限界はあるが必要だった研究(解説:野間重孝氏)-1403

アスピリンは世界で初めて人工合成された医薬品で、ドイツ・バイエル社がこの開発に成功したのは1897年にさかのぼる。ところが、低用量アスピリンに血小板凝集抑制作用があることが発見されたのは1967年のことだった。Gruentzigが経皮的冠動脈形成術(PTCA)を初めて行ったのが1977年であることを考えると、不思議な暗合を感じてしまうのは評者だけではないと思う。PTCAは確かに画期的な技術ではあったが、バルーンによる拡張のみでは血管壁の解離、リコイルを防ぐことができず、高頻度に発生する急性冠動脈閉塞や慢性期再狭窄率の高さが問題となっていた。これに解決策を与えるべく開発されたのが冠動脈ステントだった。慢性期に対する効果はSTRESS、BENESTENT両試験により証明されたが、亜急性期ステント血栓症(SAT)にはなかなか解決策が見いだされなかった。当初アスピリンとワルファリンの併用による効果が期待されたが、十分な効果は得られなかった。90年代初めに開発されたチエノピリジン系薬剤であるチクロピジンとアスピリンの併用、つまり抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が初めてこの問題に解決策を与えたのである。

AZ製ワクチン、毛細血管漏出症候群を副反応に追加/欧州医薬品庁

 欧州医薬品庁(EMA)の安全委員会・ファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)はアストラゼネカ製のCOVID-19ワクチン「Vaxzevria:開発名ChAdOx1 nCoV-19(AZ製ワクチン)」に関するレビューをサイト上で発表し、過去に毛細血管漏出症候群を発症した人はAZ製ワクチンを接種すべきではない、と結論付けた。  毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome)は、毛細血管から液体が漏出し、手足のむくみ、低血圧、アルブミン血中濃度の低下などが生じ、全身の浮腫や腎不全などの症状を引き起こす希少疾患。

AZ製ワクチン接種後のVITT、免疫グロブリン療法による治療転帰/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンの、まれな副作用であるワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)の治療として、高用量免疫グロブリン静注(IVIG)療法と抗凝固薬の併用療法が推奨されている。カナダ・マックマスター大学のAlex Bourguignon氏らは、ChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の接種後にカナダで確認されたVITTの、最初の3例におけるIVIG療法について報告した。NEJM誌オンライン版2021年6月9日号掲載の報告。

D-ダイマー高値COVID-19入院患者、治療的 vs.予防的抗凝固療法/Lancet

 D-ダイマー値上昇の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者に対し、リバーロキサバンやエノキサパリンなどによる治療的抗凝固療法は、予防的抗凝固療法に比べ臨床アウトカムを改善せず、一方で出血リスクを増大したことが示された。米国・デューク大学のRenato D. Lopes氏らが、600例超を対象に行った多施設共同非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「ACTION試験」の結果で、著者は「経口抗凝固療法適応のエビデンスがない場合は、リバーロキサバンおよびその他の直接経口抗凝固薬の治療的投与は避けなくてはならない」と警鐘を鳴らした。COVID-19は、有害転帰につながる血栓形成促進との関連が示されているが、これまで治療的抗凝固療法がCOVID-19入院患者の転帰を改善するかどうかは不明だった。Lancet誌2021年6月12日号掲載の報告。

植込み型ループレコーダーの遠隔モニタリングが虚血性脳卒中のAF検出に有効/JAMA

 心房細動(AF)の既往歴のない虚血性脳卒中患者における長期間の心電計によるモニタリング法として、12ヵ月間の植込み型ループレコーダーは30日間の体外式ループレコーダーと比較して、1年間のAF検出率が有意に優れることが、カナダ・アルバータ大学のBrian H. Buck氏らが実施した「PER DIEM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年6月1日号に掲載された。  本研究は、カナダ・アルバータ州の2つの大学病院と1つの地域病院が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2015年5月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(カナダAlberta Innovates Health Solutions Collaborative Research and Innovations Opportunities[AIHS CRIO]などの助成による)。

AZ製ワクチン、血小板減少症を伴う血栓症5例の共通点/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の接種により、まれではあるが重篤な血栓症が発生する。ノルウェー・オスロ大学病院のNina H. Schultz氏らは、ChAdOx1 nCoV-19初回接種後7~10日に血小板減少症を伴う静脈血栓症を発症した5例について詳細な臨床経過を報告した。著者らは、このような症例を「vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia(VITT):ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症」と呼ぶことを提案している。NEJM誌2021年6月3日号掲載の報告。