循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:123

冠動脈ステントのポリマー論争に決着か?(解説:中川義久氏)-1196

PCIに用いる金属製の薬物溶出性ステントの比較試験の結果がNEJM誌に掲載された。Onyx ONE試験の結果で、すでにケアネットのジャーナル四天王でも紹介されている(高出血リスクへのPCIステント、ポリマーベースvs.ポリマーフリー/NEJM)。その概要は、耐久性ポリマーを使用したステントと、ポリマーフリーのステントを比較して、安全性および有効性の複合アウトカムにおいて非劣性であったという内容である。第1世代の薬物溶出性ステントのCypherで遅発性・超遅発性ステント血栓症が問題となった。その原因として、薬剤の放出をコントロールするためのポリマーが、過敏性反応から炎症惹起性があることが原因とされた。ポリマー性悪説が掲げられ、生体吸収性ポリマーや生分解性ポリマーなどの、消えてなくなるポリマーのステントが開発された。さらにポリマーを用いることなく薬剤放出をコントロールする、ポリマーフリーのステントが開発されるに至った。一方で、ポリマーの生体適合性が向上し、抗血栓性を内在するポリマーなど、ポリマー性善説も登場してきた。このように、薬物溶出性ステントを巡るポリマー論争は長い歴史がある。耐久性ポリマーvs.生分解性ポリマーの比較試験もいくつも施行された。そして、耐久性ポリマーvs.ポリマーフリーの比較試験が今回の論文である。いずれの試験も非劣性試験のデザインが大半で、わずかの差異を声高に誇る研究もあるが、結果を総括すれば「ほぼ同等」である。つまり新世代の金属製の薬物溶出性ステントはポリマーの有無にかかわらず成熟が進み完成形に近づいていることを示している。

無症状でも重症ASは放っておいてはダメ(解説:上妻謙氏)-1192

昔から失神や胸痛を来した重症大動脈弁狭窄症(AS)は、急いで手術しないと急死しやすいことは経験的に認められてきた。TAVRが出てくる前から手術ができる患者は準緊急で手術に送ったものだったが、TAVRが出てから市場が大きく掘り起こされ、超高齢社会も相まって、無症候のASが多く見つかるようになった。これは、そういった無症候の重症ASを手術せずに経過をみたらどうなるかということをはっきりさせた重要な論文である。早期に手術をする群に比べコンサーバティブに経過観察した群は明らかに死亡率が高く、早期手術群では手術死亡もなかった。単純明快な論文であるが、いくつかlimitationも存在する。まずは145例と症例数の少ない点、そして患者の6割以上が二尖弁で平均年齢が62歳と若い点である。これは最近増加している高齢者のdegenerative ASの患者像とは異なり、手術リスクも異なるため、同様には扱いにくい。しかしTAVRが一般化した現在では高齢者にも当てはめてよいと考えられる。

多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)のリスク評価モデルpooled cohort equations(PCE)と多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)を組み合わせることで、CAD発症の予測精度がわずかではあるが統計学的に有意に改善し、一部の個人集団においてリスク分類を改善することが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJoshua Elliott氏らが、観察研究の結果を報告した。著者は、「PCEでの遺伝情報の使用は、臨床で実施される前にさらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。

世界のCKD患者、27年間で3割増/Lancet

 2017年の世界の慢性腎臓病(CKD)の推定有病率は9.1%で、1990年から29.3%増大していたことが明らかにされた。また、同年の全世界のCKDによる推定死亡者数は120万人に上ることも示され、CKDの疾病負荷は、社会人口指数(SDI)五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中しているという。イタリア・Mario Negri研究所のBoris Bikbov氏ら「GBD Chronic Kidney Disease Collaboration」研究グループが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ヘルスシステムの計画策定には、CKDを注意深く評価する必要があるが、CKDに関する罹患率や死亡率といったデータは乏しく、多くの国で存在すらしていないという。研究グループは、世界的、および地域、国ごとのCKDの疾病負荷の状況、さらには腎機能障害に起因した心血管疾患および痛風の疾病負荷を調べるGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017を行った。Lancet誌オンライン版2020年2月13日号掲載の報告。

CHD予測モデルにおける多遺伝子リスクスコアの価値とは/JAMA

 多遺伝子リスクスコアは、冠動脈疾患(CHD)のイベント発生を予測するが、2013年米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)による動脈硬化性疾患のリスク予測モデル(pooled cohort equations:PCE)と比べて、識別能、キャリブレーション(較正)、リスク再分類を有意に改善しないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のJonathan D. Mosley氏らが、被験者数合計7,000例超の2つの米国成人コホートからを後ろ向きに解析し明らかにした。多遺伝子リスクスコアは、何百万もの一塩基遺伝子多型(SNP)の情報を含むため、幅広い集団のCHDスクリーニングに役立つ可能性が示唆されていた。著者は「今回の結果は、多遺伝子リスクスコアは、一般白人中高年の集団においてはリスク予測能を強化しないことを示唆するものである」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。

TAVRの術後は抗血小板療法?抗凝固療法?(解説:上妻謙氏)-1191

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、重症大動脈弁狭窄症に対する治療として標準治療となったが、術後の抗血栓療法についての十分なエビデンスが存在しない。今までTAVR後の抗血栓療法としては3~6ヵ月のアスピリンとクロピドグレルによる2剤併用抗血小板療法(DAPT)が標準とされてきたが、この抗血小板療法についての大規模研究は少なく、とくにランダマイズトライアルは皆無である。TAVR後に抗血小板療法が良いのか抗凝固療法が良いのかが疑問であったため、低用量アスピリンに加えてリバーロキサバン10mgとクロピドグレル投与を無作為で比較するGALILEO試験が行われ、結果はすでに発表された。

高齢ICU患者、低血圧許容で死亡は改善するか/JAMA

 血管拡張性の低血圧で昇圧薬の投与を受けている65歳以上の集中治療室(ICU)患者では、低血圧の許容(permissive hypotension)は通常治療と比較して、昇圧薬の曝露量を減少させるものの、90日死亡率は改善しないことが、カナダ・シャーブルック大学のFrancois Lamontagne氏らが行った無作為化試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年2月12日号に掲載された。ICU患者では、心筋や腎臓の障害、死亡と関連する低血圧を回避するために、昇圧薬が一般的に使用されるが、収縮した血管床では血流が低下する可能性があり、心臓や代謝、微生物叢、免疫の機能に影響を及ぼすという。そのため、とくに高齢患者では、低血圧のリスクと昇圧薬のリスクの均衡を図ることが課題となっている。

降圧薬使用と認知機能との関連~メタ解析

 高血圧は、修正可能な認知症のリスク因子の1つである。しかし、認知機能を最適化するために、降圧薬のクラスエフェクトが存在するかは、よくわかっていない。オーストラリア・Neuroscience ResearchのRuth Peters氏らは、これまでの参加者データを含む包括的なメタ解析を用いて、特定の降圧薬クラスが認知機能低下や認知症リスクの低下と関連するかについて検討を行った。Neurology誌2020年1月21日号の報告。  適切な研究を特定するため、MEDLINE、Embase、PsycINFO、preexisting study consortiaより、2017年12月までの研究を検索した。プロスペクティブ縦断的ヒト対象研究または降圧薬試験の著者に対し、データ共有および協力の連絡を行った。アウトカム測定は、認知症発症または認知機能低下の発現とした。

心原性ショックのAMI、軸流ポンプLVAD vs.IABP/JAMA

 2015~17年に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施した心原性ショックの急性心筋梗塞(AMI)患者において、軸流ポンプ左心補助人工心臓(LVAD)(Impellaデバイス)の使用は大動脈バルーンパンピング(IABP)と比較し、院内死亡および大出血合併症のリスクを増大することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSanket S. Dhruva氏らが、機械的循環補助(MCS)デバイスによる治療を受けた、心原性ショックを伴うAMIでPCIを実施した患者のアウトカムを検討した後ろ向きコホート研究の結果を報告した。AMIの心原性ショックは、その後の後遺症や死亡と関連する。軸流ポンプLVADはIABPより良好な血行動態補助を提供するが、臨床アウトカムについてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2020年2月10日号掲載の報告。

高出血リスクへのPCIステント、ポリマーベースvs.ポリマーフリー/NEJM

 出血リスクが高い、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に1ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法を行った患者において、ポリマーベース・ゾタロリムス溶出ステントの使用は、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステントの使用に対し、安全性および有効性の複合アウトカムについて非劣性であったことが示された。スイス・ベルン大学のStephan Windecker氏らが、約2,000例を対象に行った無作為化単盲検試験で明らかにした。これまで同患者において、ポリマーフリー・薬剤被覆ステントの使用は優れた臨床的アウトカムを示すことが報告されていたが、ポリマーベース・薬剤溶出ステントとの比較データは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年2月12日号掲載の報告。