精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

週1回のチーズ摂取で日本人高齢者の認知症リスクが低下

 認知症は、急速に高齢化が進む日本において、公衆衛生上の懸念事項として深刻化している。乳製品を含む食生活要因は、認知機能の健康に影響を及ぼす因子であり、修正可能な因子であるとされているが、これまでの研究結果は一貫していなかった。新見公立大学の鄭 丞媛氏らは、習慣的なチーズ摂取と認知症発症との関連性を検証し、ベースラインの乳製品摂取量が少ない人におけるチーズの潜在的な予防効果に関する疫学的エビデンスを明らかにするため、大規模な地域住民ベースの日本人高齢者コホートを用いて評価した。Nutrients誌2025年10月25日号の報告。

統合失調症におけるブレクスピプラゾール切り替え、その有用性は?

 統合失調症は、長期の薬物治療を必要とする慢性疾患である。十分な治療反応が得られず、副作用を経験する患者が少なくないため、服薬アドヒアランスの低下を招き、抗精神病薬の切り替えや多剤併用療法が必要となることもある。このような状況において、良好な忍容性プロファイルを有する非定型抗精神病薬であるブレクスピプラゾールは、これまでの治療が奏効しなかった、または不耐容であった患者に臨床的ベネフィットをもたらす可能性がある。しかし、ブレクスピプラゾール切り替え後のリアルワールドにおけるエビデンスは依然として限られている。イタリア・Universita Cattolica del Sacro CuoreのMarco Di Nicola氏らは、ブレクスピプラゾールへの切り替えを行った統合失調症患者における精神病理学的、機能的、身体的健康状態への影響を評価した。Journal of Personalized Medicine誌2025年10月22日号の報告。

認知症に伴う食欲不振やアパシーに対する人参養栄湯の有用性

 現在、認知症に伴う食欲不振やアパシーに対する有効な薬物療法は明らかになっていない。筑波大学の田村 昌士氏らは、アルツハイマー型認知症(AD)およびレビー小体型認知症(DLB)における食欲不振やアパシーに対する人参養栄湯の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験を実施した。Psychogeriatrics誌2026年1月号の報告。  本研究には、日本の病院およびクリニック16施設が参加した。対象患者は、人参養栄湯群24例または対照群25例にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)のサブカテゴリー「摂食行動」における食欲不振スコアの12週間後の変化とした。副次的アウトカムは、食物摂取量、NPI-12スコア、Zarit介護負担尺度日本語版、意欲の指標(Vitality Index)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、前頭葉機能検査(FAB)、体重、赤血球数、ヘモグロビン、アルブミン、CONUTスコアの変化とした。

麻雀で統合失調症患者の認知機能は改善するか

 麻雀は、認知機能の向上と密接に関連していることが広く報告されている。しかし、統合失調症患者の認知機能に対する麻雀の影響については、これまで研究されていなかった。中国・重慶医学大学のRenqin Hu氏らは、統合失調症患者の認知機能改善を目的とした麻雀介入の有効性を評価するため、パイロット単盲検ランダム化比較試験を実施した。BMC Psychiatry誌2025年11月7日号の報告。  本パイロット研究では、統合失調症患者49例を対象に、介入群(麻雀と標準治療の併用)と対照群(標準治療)にランダムに割り付けた。介入群は、麻雀による認知トレーニングを1日2時間、週4日、12週間にわたり行った。主要認知アウトカムは、ケンブリッジ神経心理学的検査自動化バッテリー(CANTAB)を用いて評価した。副次的アウトカムには、生活の質(QOL)、臨床症状、無快感症、副作用、個人的および社会的機能を含めた。評価は、ベースライン時および4週目、8週目、12週目に実施された。

ベンゾジアゼピンの使用は認知症リスクにどの程度影響するのか?

 ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は、不眠症や不安症の治療に幅広く使用されている。しかし、BZDの長期使用は、認知機能低下を加速させる可能性がある。認知症の前駆症状がBZD使用のきっかけとなり、逆因果バイアスが生じている可能性もあるため、エビデンスに一貫性が認められていない。カナダ・Universite de SherbrookeのDiego Legrand氏らは、BZDの使用量、投与期間、消失半減期が認知症発症と独立して関連しているかどうかを検証し、前駆期による交絡因子について検討を行った。Journal of the Neurological Sciences誌2025年12月15日号の報告。

日本の精神科外来における頭痛患者の特徴とそのマネジメントの現状

 頭痛は、精神科診療において最も頻繁に訴えられる身体的愁訴の1つであり、しばしば根底にある精神疾患に起因するものと考えられている。1次性頭痛、とくに片頭痛と緊張型頭痛は、精神疾患と併存することが少なくない。しかし、精神科外来診療におけるこれらのエビデンスは依然として限られていた。兵庫県・加古川中央市民病院の大谷 恭平氏らは、日本の総合病院の精神科外来患者における頭痛の特徴とそのマネジメントの現状を明らかにするため、レトロスペクティブに解析を行った。PCN Reports誌2025年10月30日号の報告。  2023年4月〜2024年3月に、600床の地域総合病院を受診したすべての精神科外来患者を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。全対象患者2,525例のうち、頭痛関連の保険診断を受けた360例(14.3%)を特定し、頭痛のラベル、治療科、処方薬に関するデータを抽出した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体について、追加の処方を含む探索的症例集積を行うため、観察期間を2025年3月まで延長した。

日本におけるアルツハイマー病診断の時間短縮フロー〜東京大学

 アルツハイマー病の診断において、血液バイオマーカーによる検査が注目されており、日本でも保険適用が待ち望まれている。東京大学の五十嵐 中氏らは、日本でのレカネマブ治療について、異なるワークフローにおける現在の診断検査の状況を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10月7日号の報告。  ダイナミックシミュレーションを用いて、4つのシナリオ(現在の診断ワークフロー、トリアージツールとしての血液バイオマーカー[BBM]検査、確認診断のためのBBM検査およびこれらの併用)に関して、待ち時間と治療対象患者数を推定した。検査の需要を推定するため、オンライン調査により支払意思額(WTP)と無形費用を評価した。

治療抵抗性うつ病の認知機能維持に最適な薬物治療戦略は?

 高齢者における治療抵抗性うつ病に対するさまざまな抗うつ薬治療戦略が認知機能にどのような影響を及ぼすかは、これまで明らかになっていなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のHanadi A. Oughli氏らは、高齢の治療抵抗性うつ病に対する薬物療法が認知機能に及ぼす影響を評価した。The Lancet Healthy Longevity誌2025年10月号の報告。  OPTIMUM試験の事前に規定された2次解析を行った。OPTIMUM試験は、さまざまな薬物療法の増強または切り替え戦略を比較した実践的なランダム化有効性比較試験であり、60歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に実施された試験である。対象患者は、5つの大学医療センター(米国:4施設、カナダ:1施設)から募集された。ステップ1では、治療抵抗性うつ病患者391例をアリピプラゾール増強群(1日最大15mgまで)、bupropion増強群(1日最大450mgまで)、bupropion切り替え群(1日最大450mgまで)に1:1:1の割合でランダムに割り付け分析した。ステップ2では、ステップ1の適応外患者またはこのステップ1で寛解に達しなかった患者182例をリチウム増強群(目標血漿中濃度:0.4~0.8mEq/L)またはノルトリプチリンへの切り替え群(目標血漿中濃度:80~120ng/mL)に1:1でランダムに割り付け分析した。各ステップは10週間継続した。ステップ1またはステップ2の完了後、12ヵ月間のフォローアップ調査を行った。主要アウトカムは、ステップ1およびステップ2終了時の認知機能とし、米国国立衛生研究所(NIH)ツールボックス認知バッテリーの一部であるNIHツールボックス流動性認知複合スコアを用いて評価し、ITT集団において解析した。ITT集団とプロトコール適合集団の両方において実施された探索的事後解析では、流動性認知複合スコアを構成する個々の認知課題の変化を評価した。

多くの若者がAIチャットボットにメンタルヘルスの問題を相談

 米国では、12〜21歳の若者の約8人に1人が、メンタルヘルスに関する助言を求めて人工知能(AI)チャットボットを利用していることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、これは、AIチャットボットが若者の不安や悩み、苦しみを、プライバシーを保ちながら安価かつ即座に聞き出す存在となっていることを反映している可能性が高いとの見方を示している。米国の非営利の研究機関であるランド研究所のJonathan Cantor氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月7日掲載された。

日本人小児におけるADHDサブタイプと肥満との関係

 福島県立医科大学の川崎 幸彦氏らは、日本人小児における注意欠如多動症(ADHD)サブタイプの特徴とBMI-SDスコアに基づく肥満との関連を明らかにするため、ADHDの小児患者を対象とした臨床調査を実施した。Brain & Development誌オンライン版2025年10月29日号の報告。  対象は、ADHDと診断された日本人小児115例。患者は、ADHDのサブタイプ別に次の3群に分類された。グループ1は不注意優勢型ADHD(ADHD-I)、グループ2は多動性・衝動性優勢型ADHD(ADHD-HI)、グループ3はこれらの複合サブタイプ(ADHD-C)。各群の臨床的特徴を分析した。