精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

アトピー性皮膚炎は小児の学習・記憶に影響するか?

 米国で行われた横断研究において、アトピー性皮膚炎を有する小児は、学習障害と記憶障害が報告される割合が高いことが示唆された。ただし、その関連性は、主に注意欠如・多動症(ADHD)や限局性学習症といった神経発達症を併存する子供に限定されることも示された。米国・メリーランド大学医学校のEmily Z. Ma氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年3月6日号で報告した。先行研究でアトピー性皮膚炎は小児の認知機能障害と関連することが示唆されているが、それらの研究では認知機能の評価を、症状ではなく神経発達の診断で代用している。したがって、アトピー性皮膚炎の小児が、認知機能障害のリスクが高いかは不明であった。著者は、「今回の結果から、アトピー性皮膚炎を有する小児の認知機能障害に関するリスク分類を改善できる可能性があり、アトピー性皮膚炎と神経発達症がある小児では認知機能障害の評価を優先すべきであることが示唆された」と述べている。

85歳以上のアルツハイマー病患者の認知機能に関連する因子と脳画像の特徴

 85歳以上の超高齢者のアルツハイマー病における認知機能低下の根底にある病態生理学は、これまで明らかになっていない。総合東京病院 認知症疾患研究センターの羽生 春夫氏らは、超高齢者のアルツハイマー病における認知機能に関連する因子と脳画像の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of the Neurological Sciences誌2024年3月15日号の報告。  対象は、アルツハイマー病の可能性のある連続した外来患者456例(男性:145例、女性:311例、年齢範囲:51~95歳)。対象者は、74歳以下、75~84歳、85歳以上のサブグループに分類した。人口統計学的要因(教育レベル、初診時の罹病罹患、BMI、併存疾患、フレイル、余暇活動など)、画像検査の特徴(内側側頭葉の萎縮、白質病変、梗塞の重症度、脳低灌流の頻度など)の違いをサブグループ間で比較した。

統合失調症における幻聴の状態と特性のネットワーク局在化

 統合失調症における幻聴の神経回路を調査した神経画像研究では、さまざまな結果が得られているが、ネットワーク局在化により調整される可能性が示唆されている。中国・安徽医科大学のFan Mo氏らは、統合失調症における幻聴の状態および特徴的な脳変化が共通のネットワークに局在化するか否かを調査した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2024年2月24日号の報告。  統合失調症における幻聴の状態、および特徴的な脳変化を報告した48の研究を特定した。影響を受けた脳のデータを、安静状態の大規模な発見と検証の機能的磁気共鳴機能画像法(fMRI)データベースと統合し、次に機能的結合ネットワークマッピングを活用して、幻聴の状態および特徴の機能不全ネットワークを構築した。

空間ナビゲーション機能の障害はアルツハイマー病の初期兆候か

 バーチャル空間でのナビゲーションが困難な中高年は、将来、アルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)認知神経科学研究所のCoco Newton氏らによるこの研究の詳細は、「Alzheimer's & Dementia: The Journal of the Alzheimer's Association」に2月29日掲載された。  嗅内皮質はADで最初に神経変性が現れる皮質領域であり、その変性は嗅内皮質のグリッド細胞の機能不全と関連することが知られている。グリッド細胞は、経路統合(path integration;PI)能力をベースにした空間行動に関与している。PI能力とはナビゲーション機能の一形態で、自分の運動を手がかりに環境での位置を推定する能力のことである。

コロナ後遺症は月経異常、QOLやメンタルヘルスに影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。  コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。

うつ病に対する17種類の抗うつ薬の治療反応比較

 うつ病に対する抗うつ薬の治療反応を比較した長期的研究は不足している。デンマーク・Psychiatric Center CopenhagenのLars Vedel Kessing氏らは、うつ病患者に対する6つの抗うつ薬クラス17薬剤における2年間の治療反応を比較するため、システマティック人口ベース全国レジストリデータを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年2月20日号の報告。  対象は、1995~2018年にデンマークの精神科病院で初めてうつ病と診断され、その後抗うつ薬治療を行った入院患者または外来患者10万6,920例。2年間の研究期間において、最初の抗うつ薬治療に反応しなかった患者の定義は、他の抗うつ薬への切り替え、抗精神病薬・リチウムへの切り替えまたは追加、入院とした。分析では、年齢、性別、社会経済的地位、精神症状・身体症状の併存に従って標準化された集団を対象とした試験を参照した。

幼少期に食べ物に強く反応する子は摂食障害のリスクが高い

 幼少期の食べ物に対する関心の強さと、その子どもが10代前半になった時の摂食障害のリスクとの関連性を示すデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学・ヘルスケア研究所のIvonne Derks氏らによる、英国とオランダでの縦断的コホート研究の結果であり、詳細は「The Lancet Child & Adolescent Health」に2月20日掲載された。  この研究では、4~5歳の幼児の親に対して、子どもの食欲や摂食行動に関するアンケートを実施して食欲特性を評価。その約10年後の子どもが12〜14歳になった時点で、自己申告により摂食障害の症状の有無を把握した。追跡調査の時点で、対象の約10%が過食性障害の症状を報告し、その半数が一つ以上の代償行動(食事を抜いたり絶食したり、過度の運動をするなど)を報告した。

睡眠中でも心を落ち着かせる言葉は届いている

 眠っているときに他人から心を落ち着かせる言葉をかけられると、それに心が敏感に反応して心拍が遅くなることが、新たな研究で明らかになった。リエージュ大学(ベルギー)GIGAサイクロトロン研究センターのAthena Demertzi氏らによるこの研究は「Journal of Sleep Research」に2月14日掲載された。  Demertzi氏らは2021年に発表した脳波を使った研究で、睡眠中の人に心を落ち着かせる言葉をかけると、深い眠りの時間が増えて睡眠の質が向上することから、重要な意味や価値を持つ言葉が睡眠に良い影響を与えることができる可能性を示唆していた。このような結果から研究グループは、心を落ち着かせる言葉を聞くと、睡眠中でも脳は感覚情報を解釈して体をリラックスさせることができるとの仮説を立てていた。

新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。

初発統合失調症の脳ネットワークに対するアリピプラゾールの影響

 アリピプラゾールは、初発統合失調症患者のいくつかの脳内ネットワーク間の機能接続を調節し、臨床症状の改善に影響を及ぼす。しかし、統合失調症患者の広範な脳内ネットワーク間の異常接続に対するアリピプラゾールの作用は、依然として不明である。中国・首都医科大学のSitong Feng氏らは、大規模な脳内ネットワークの機能接続に対するアリピプラゾール12週間投与の影響を調査するため、縦断的研究を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2024年3月号の報告。