耳鼻咽喉科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

脳卒中後の慢性期失語症、C7神経切離術+集中的言語療法が言語機能改善/BMJ

 脳卒中後の慢性期失語症において、第7頸神経(C7)の神経切離術+3週間の集中的言語療法(SLT)は3週間のSLT単独と比較して、6ヵ月間の試験期間中、言語機能がより大きく改善し、重篤な有害事象および長期にわたる煩わしさを伴う症状や機能喪失は報告されなかった。中国・復旦大学のJuntao Feng氏らが、多施設共同評価者盲検無作為化試験の結果を報告した。脳卒中後の慢性期失語症の治療は困難で、SLTが主な治療法だが有効性の改善が求められている。また、SLTをベースとした付加的かつ持続的効果をもたらす新たな治療技術は提案されていなかった。BMJ誌2025年6月25日号掲載の報告。

難聴への早期介入には難聴者への啓発が重要/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、本年11月15~26日にわが国で初めてデフ(きこえない・きこえにくい)アスリートのための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が開催されることを記念し、都内でスポーツから難聴を考えるメディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴のアスリートである医師の軌跡、高齢者と聴力と健康、難聴への早期介入の重要性などが講演された。  東京2025デフリンピックは、上記12日間の日程で都内を中心に、約80ヵ国のアスリート3,000人を迎え、21競技で開催される。

がんサバイバーの脳卒中・心血管死リスク、大規模コホート研究で明らかに

 がんと診断された人(がんサバイバー)は、そうでない人と比較して心血管系疾患(CVD)を発症するリスクが高いことが報告されている。今回、がんサバイバーの虚血性心疾患・脳卒中による死亡リスクは、一般集団と比較して高いとする研究結果が報告された。大阪大学大学院医学系研究科神経内科学講座の権泰史氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association;JAHA」に5月15日掲載された。  近年、医療の進歩により、がん患者の生存率は大幅に向上している。しかし、その一方で、CVDが新たながんサバイバーの懸念事項として浮上している。CVDはがんサバイバーでがんに次ぐ死因であることが明らかになっており、疫学研究では、CVDによる死亡リスクが一般集団の約2倍であることも報告されている。従来の研究では、CVD全体による死亡リスクが調査されてきたが、特定のCVDに焦点を当てた研究は限られていた。そのような背景を踏まえ、筆者らは「全国がん登録(NCR)」データベースを用いて、国内のがん患者におけるCVDによる死亡リスクを調査するコホート研究を実施した。CVD全体のリスク評価に加え、虚血性心疾患、心不全、大動脈解離・大動脈瘤、虚血性脳卒中、出血性脳卒中といった特定のCVDについても解析を行った。

低リスク分化型甲状腺がん、全摘後のアブレーションは回避できるか/Lancet

 低リスクの分化型甲状腺がん患者の治療において、甲状腺全摘後に放射性ヨウ素治療(アブレーション)を行った場合と比較して、アブレーションを行わない場合でも5年無再発生存期間(RFS)は非劣性であり、有害事象の発現は両群で同程度であることから、この治療は安全に回避可能であることが、英国・Freeman HospitalのUjjal Mallick氏らが実施した「IoN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月18日号で報告された。  IoN試験は、英国の33のがん治療施設で行われた第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2012年6月~2020年3月に参加者を登録した(Cancer Research UKの助成を受けた)。

局所進行頭頸部がん、周術期ペムブロリズマブ上乗せが有効(KEYNOTE-689)/NEJM

 未治療の局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)に対し、標準治療へのペムブロリズマブ術前および術後補助療法の追加は、標準治療のみと比較し無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。ペムブロリズマブの術前補助療法は、手術施行に影響を与えず、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のRavindra Uppaluri氏らKEYNOTE-689 Investigatorsが、日本を含むアジア、北米、欧州などの192施設で実施した第III相無作為化非盲検比較試験「KEYNOTE-689試験」の結果を報告した。局所進行HNSCC患者に対する手術と術後補助療法の標準治療に対し、周術期のペムブロリズマブ追加の有用性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年6月18日号掲載の報告。

米国では30年でアルコール関連がんの死亡が倍増/ASCO2025

 米国では、1990年から2021年までの30年間でアルコール摂取に関連するがん(以下、アルコール関連がん)による死亡数がほぼ倍増しており、男性の死亡数がこの急増の主な原因であることが、新たな研究で明らかになった。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのChinmay Jani氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO25、5月30日~6月3日、米シカゴ)で発表された。  米国公衆衛生局(PHS)長官は2025年初頭に勧告を発出し、飲酒ががんのリスクを高めることに関する強力な科学的エビデンスがあると米国民に警告した。米国立がん研究所(NCI)によると、アルコールは1987年以来、国際がん研究機関(IARC)によって発がん物質に分類されている。また、米国立毒性学プログラム(NTP)も2000年以来、アルコールはヒトに対する既知の発がん物質とする認識を示している。

果物やコーヒーが耳鳴りを減らす可能性

 果物、食物繊維、カフェイン、乳製品の摂取といった特定の食事因子が、耳鳴りの発生率低下と関連するというレビューが「BMJ Open」に3月18日掲載された。  成都中医薬大学附属医院(中国)のMengni Zhang氏らは、観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施し、耳鳴り発現と日常の食習慣との関連を検討した。10件の後ろ向き研究が解析対象となり、そのうち8件がメタ解析に含まれた。  15の食事因子について評価した結果、果物、食物繊維、カフェイン、乳製品の摂取が耳鳴りの発生率と負の相関を示した(オッズ比はそれぞれ0.649、0.918、0.898、0.827)。感度解析により、この結果の頑健性が確認された。

高リスク頭頸部がん、CRT+ニボルマブの術後補助療法が20年振りの新たな標準治療に(NIVOPOSTOP)/ASCO2025

 高リスクの局所進行(LA)頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)に対する術後の標準治療は、長らく補助療法としての化学放射線療法(CRT)であった。しかし、これらの治療にもかかわらず40%以上の患者で再発が認められ、より効果的な治療法が必要とされている。NIVOPOSTOP試験は、術後CRTにニボルマブを追加した群とCRT単独群を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、Le Centre hospitalier universitaire vaudois(スイス)のJean Bourhis氏が本試験の結果を発表した。

中耳炎の治療、将来は抗菌ゲルの単回投与で済むかも?

 中耳炎に罹患した幼児の面倒を見た経験のある親なら、症状の治りにくさや再発のしやすさを知っているだろう。小児の中耳炎では、通常は数日間に及ぶ経口抗菌薬を用いた治療が行われるが、耐性菌が発生しやすく、再発リスクも高い。こうした中、ゲル状の外用抗菌薬の単回投与により中耳炎を効果的に治療できる可能性のあることが動物実験で明らかになった。米コーネル大学R.F.スミス化学・生体分子工学科のRong Yang氏らによるこの研究結果は、「ACS Nano」4月8日号に掲載された。

希少がん患者、新たな放射線治療で副作用なくがんを克服

 米ミシガン州レッドフォード在住のTiffiney Beardさん(46歳)は、2024年4月に唾液腺の希少がんと診断されて以来、困難な道のりが待ち受けていることを覚悟していた。Beardさんが罹患した腺様嚢胞がんは神経に浸潤する傾向があるため、治療の副作用として、倦怠感、顎の痛み、食事や嚥下の困難、味覚の喪失、頭痛、記憶障害などを伴うのが常だからだ。Beardさんの場合、がんが脳につながる神経にまで浸潤していたことが事態をさらに悪化させていた。  Beardさんの担当医は、頭頸部がんに使用するのは米国で初めてとなる高度な放射線治療(陽子線治療)を行った。その結果、治療中にBeardさんに副作用が出ることはなかったという。Beardさんは、「ガムボールほどの大きさの腫瘍の摘出後、合計33回の陽子線治療を受けたが、副作用は全くなく、仕事を休むこともなかった」とニュースリリースで述べている。米コアウェル・ヘルス・ウィリアム・ボーモント大学病院のRohan Deraniyagala氏らが報告したこの治療成功症例の詳細は、「International Journal of Particle Therapy」6月号に掲載された。