脳卒中後の慢性期失語症において、第7頸神経(C7)の神経切離術+3週間の集中的言語療法(SLT)は3週間のSLT単独と比較して、6ヵ月間の試験期間中、言語機能がより大きく改善し、重篤な有害事象および長期にわたる煩わしさを伴う症状や機能喪失は報告されなかった。中国・復旦大学のJuntao Feng氏らが、多施設共同評価者盲検無作為化試験の結果を報告した。脳卒中後の慢性期失語症の治療は困難で、SLTが主な治療法だが有効性の改善が求められている。また、SLTをベースとした付加的かつ持続的効果をもたらす新たな治療技術は提案されていなかった。BMJ誌2025年6月25日号掲載の報告。
集中的言語療法単独と比較した無作為化試験を中国4施設で実施
脳卒中後の慢性期失語症患者におけるC7神経切離術+SLTとSLT単独を比較した試験は、中国大陸の4施設で、左半球の脳卒中後1年以上失語症を有する40~65歳を対象に行われた。
被験者は、右側C7神経切離術+SLT群(併用治療群)またはSLT単独群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けられ、治療施設による層別化も行われた。併用治療群では、右側C7神経切離術の1週間後に3週間のSLTが開始された。対照群では1週間の待機後に3週間のSLTが開始された。
主要アウトカムは、ベースラインから治療終了(無作為化後1ヵ月)時点の60項目Boston Naming Test(BNT)スコア(範囲:0~60、高スコアほど語想起機能が良好であることを示す)の変化であった。
副次アウトカムは、Western Aphasia Battery(WAB)を用いて算出した失語症指数(AQ)に基づく失語症重症度の変化、脳卒中後のQOLとうつ病に関する患者報告アウトカムなどであった。
1ヵ月時点のBNTスコアの平均変化、併用治療群11.16 vs.対照群2.72
2022年7月25日~2023年7月31日に、脳卒中後失語症と診断された1,086例のうち322例が適格性のスクリーニングを受け、50例の適格患者が併用治療群と対照群に無作為化された(各群25例)。
50例の神経損傷から試験組み入れまでの期間中央値は、併用治療群28.8ヵ月(四分位範囲:21.2~45.0)、対照群25.3ヵ月(17.7~37.6)。中国版WABの分類基準に基づき、45例が非流暢性失語症(Broca失語症37例を含む)、5例が流暢性失語症であった。50例のうち42例が上肢の痙性麻痺を有し平均痙性度は1度(軽度痙性)であった。
ベースラインから1ヵ月時点までのBNTスコアの平均変化は、併用治療群11.16ポイント、対照群2.72ポイントであった(群間差:8.51ポイント[95%信頼区間[CI]:5.31~11.71]、p<0.001)。BNTスコアの群間差は、6ヵ月時点でも安定して維持されていた(群間差:8.26ポイント[95%CI:4.16~12.35]、p<0.001)。
AQも併用治療群が対照群と比較して有意に改善した(1ヵ月時点の群間差:7.06ポイント[95%CI:4.41~9.72]、p<0.001)。また、患者報告に基づく日常生活動作(ADL、バーセルインデックスで評価、1ヵ月時点の群間差:4.12[95%CI:0.23~8.00]、p=0.04)、脳卒中後うつ(6ヵ月時点の群間差:-1.28[95%CI:-2.01~-0.54]、p=0.001)も同様であった。
治療に関連した重篤な有害事象は報告されなかった。
(ケアネット)