腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

cN0乳がんのセンチネルリンパ節生検省略、リアルワールドで見逃されるpN+の割合は?

 INSEMA試験やSOUND試験の結果から、乳房温存術を受けるHR+/HER2-の臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)早期乳がんの一部の患者では、センチネルリンパ節生検(SNB)は安全に省略可能であるとされつつある。しかし、リンパ節転移の有無は術後治療の選択に極めて大きな影響を及ぼすため、SNB省略のde-escalation戦略の妥当性については依然として議論の余地がある。そこで、Nikolas Tauber氏(ドイツ・University Hospital Schleswig-Holstein)らは、INSEMA試験の基準を満たす患者にSNBを行い、その病理学的結果や術後治療への影響を解析することで、SNB省略時の影響をリアルワールドで推計した。その結果がEuropean Journal of Surgical Oncology誌2025年8月14日号に掲載された。

白血病治療薬が高リスク骨髄異形成症候群にも効果を発揮

 最近承認された白血病治療薬が、致命的な骨髄疾患と診断された一部の患者にも有効である可能性が、パイロット試験で示された。骨髄異形成症候群(MDS)患者の約5人に3人が、米食品医薬品局(FDA)が2022年に、急性骨髄性白血病(AML)患者向けに承認したオルタシデニブ(商品名レズリディア)による治療に反応を示したという。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンター白血病部門主任のJustin Watts氏らによるこの研究結果は、「Blood Advances」に7月16日掲載された。  オルタシデニブは、腫瘍の発生に関与する変異型イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)を選択的に阻害する薬である。FDAは、IDH1遺伝子変異陽性の再発または難治性AML成人患者に対してオルタシデニブを承認している。Watts氏らによると、AML患者の約10%にIDH1遺伝子変異が見られるという。しかし、この変異はMDS患者の約3〜5%にも見られるため、同氏らは、オルタシデニブがこの疾患の治療においても有効なのではないかと考えた。

若年者の大腸がん検診受診率を上げる方法は?(解説:上村 直実 氏)

わが国における2023年の部位別がん死亡数は、男性では肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんの順に多く、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がんの順となっている。同年の大腸がん罹患者数は推定14万8,000例で死亡者数が5万3,000例とされており、罹患者のうち3例に1例が死亡すると推測される。大腸がんの場合、早期がんの完治率は90%以上であり、早期発見とくに検診ないしはスクリーニングの整備が喫緊の課題となっている。西欧諸国では免疫学的便潜血検査(FIT)、便中の多標的RNA検査、直接の大腸内視鏡検査などさまざまな検診方法の有効性を比較する臨床研究が盛んに報告されている。しかし、いずれの検診方法を行っても、大腸がんの死亡率低下には検診の受診率がキーポイントとなっている。今回、大腸がんの著明な増加が報告されているものの検診受診率がきわめて低い若年者(45~49歳)を対象として、最も効果的なリクルート法を模索した臨床研究が施行された結果、電子媒体を用いてFITのみまたは大腸内視鏡検査のみの推奨に対して受諾または拒否を選択する方法に比べて、FITと大腸内視鏡検査2種類を送付したものから患者が能動的に選択する方法の検診受診率が有意に高く、さらにFITのキットを直接郵送して患者に受諾または拒否を選択してもらう方法が最も有効であることが2025年8月のJAMA誌に報告された。

T-DXd、化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

 第一三共は2025年8月25日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、日本において「ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は超低発現の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本適応は、2024年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現またはHER2超低発現の転移再発乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもので、化学療法未治療のHER2低発現またはHER2超低発現の乳がんを対象に承認された日本で初めての抗HER2療法となる。

アカラブルチニブ、マントル細胞リンパ腫に承認取得/AZ

 アストラゼネカは、アカラブルチニブマレイン酸塩水和物(商品名:カルケンス錠100mg)について、「マントル細胞リンパ腫」を効能又は効果として、2025年8月25日付で厚生労働省より承認を取得したことを発表した。本承認は国際共同第III相ECHO試験の結果などに基づくもので、米国、EU、ほか数ヵ国でマントル細胞リンパ腫(MCL)に承認されている。

最低賃金上昇へは診療報酬の期中改定対応を要望/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、8月20日に定例記者会見を開催した。会見では、「最低賃金の上昇を受けた期中改定の必要性」と、10月に開催される「女性のがん」に関するシンポジウムの概要が説明された。  はじめに会長の松本氏が「賃上げに関する指標が軒並み高水準で上がってきている中で、人員配置の制約もあり、医療職1人当たりの労働生産性を上げて、全体の員数を減らすといったような対応は難しく、人員を確保し続ける必要がある。また、診療報酬は固定価格であり、医療機関は賃上げにはとても対応できるような経営状況にはない。

医師の終末期の選択、95%が延命治療を拒否

 医師が進行がんや末期アルツハイマー病になった場合、どのような終末期医療を希望するのか? ベルギー・ブリュッセルのEnd-of-Life Care Research GroupのSarah Mroz氏らによる研究結果が、Journal of Medical Ethics誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。  研究チームは2022年5月~2023年2月に一般開業医、緩和ケア専門医、その他臨床医の1,157人を対象に横断的調査を実施した。ベルギー、イタリア、カナダ、米国(オレゴン州、ウィスコンシン州、ジョージア州)、オーストラリア(ビクトリア州、クイーンズランド州)の8エリアで、参加した医師に進行がんと末期アルツハイマー病という2つの仮想の臨床シナリオを提示し、終末期医療の意向に関する情報を収集した。

転移乳がんへのT-DXd後治療、アウトカムを比較

 転移乳がん(MBC)に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)投与後の治療選択について十分なデータはない。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPaolo Tarantino氏らによる、電子カルテ由来のデータベースを用いた後ろ向き解析の結果、T-DXd投与後の追加治療(後治療)によるアウトカムは、MBCのサブタイプおよび投与された治療レジメンによって有意に異なることが明らかになった。また、T-DXd直後にサシツズマブ ゴビテカン(SG)を使用した場合、すべてのサブタイプで実臨床での無増悪生存期間(rwPFS)が比較的短く、T-DXdとの一定程度の交差耐性の可能性が示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版8月14日号掲載の報告。

低グレード前立腺がん、想定よりリスクが高い場合も

 生検でグレードグループ1(GG1)に分類された前立腺がん患者は、転移リスクが低いため、治療はせずに経過観察のみでよいとされることが多い。しかし新たな研究で、GG1前立腺がん患者のおよそ6人に1人は中〜高リスクのがんであることが示された。米ワイル・コーネル・メディスン泌尿器科・人口健康科学科のBashir Al Hussein氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に7月31日掲載された。  前立腺生検の結果は、非がん性から高リスクで治療が必要ながんまでさまざまである。現在、生検でGG1と判定された場合、治療は行わずに定期的に腫瘍の評価を行って進行の兆候がないか確認する「積極的監視」の方法が取られることが多い。Al Hussein氏らによると、積極的な監視では、前立腺で生成されるがん関連タンパク質である前立腺特異抗原(PSA)値をモニターするための血液検査、生検、MRI検査などが行われる可能性があるという。しかし同氏らは、前立腺生検は前立腺全体の組織を採取するわけではないため、1回の生検では悪性のがん細胞を見逃す可能性もあると強調する。

既治療KRAS G12C変異陽性NSCLC、adagrasib vs.ドセタキセル/Lancet

 既治療のKRASG12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、adagrasibはドセタキセルと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長し、新たな安全性上の懸念は認められなかった。フランス・パリ・サクレー大学のFabrice Barlesi氏らKRYSTAL-12 Investigatorsが、22ヵ国230施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「KRYSTAL-12試験」の結果を報告した。adagrasibはKRASG12C阻害薬で、KRASG12C変異を有する進行NSCLC患者を対象とした第II相試験において有望な結果が示されていた。Lancet誌2025年8月9日号掲載の報告。 化学療法と免疫療法の前治療歴があるNSCLC患者を対象、主要評価項目はPFS KRYSTAL-12試験の対象は、KRASG12C変異を有する局所進行または転移のあるNSCLCで、プラチナ製剤を含む化学療法および抗PD-1または抗PD-L1抗体による前治療歴があり、ECOG PSが0または1の成人患者であった。