腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:11

術後ctDNA陽性StageIII結腸がんへの治療強化、RFS改善は得られず(DYNAMIC-III)/ASCO2025

 術後にctDNAが検出されると再発リスクが高いことは多くの研究で報告されている。DYNAMIC-IIIはStageIIIの結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検出に基づいた補助化学療法と標準治療を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア)のJeanne Tie氏が、本試験の1次解析結果を報告した。ctDNA陽性であれば治療強化、陰性であれば減弱し、それぞれを標準治療と比較する試験デザインで、今回はctDNA陽性例の解析が発表された。 ・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験 ・対象:切除可能なステージIIIの結腸がん患者 ・試験群:治療強化ストラテジー(化学療法なし→5FU/カペシタビン、5FU/カペシタビン→6ヵ月のオキサリプラチンベースの2剤療法、3ヵ月の2剤療法→6ヵ月の2剤療法または3ヵ月内のFOLFOXIRI、6ヵ月の2剤療法→3ヵ月内のFOLFOXIRIをリスクに応じて選択:ctDNA情報提供群)129例 ・対照群:ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療(標準療法群)130例 ・評価項目: [主要評価項目]2年無再発生存期間(RFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など

末梢肺結節の診断、ナビゲーショナル気管支鏡検査は針生検に非劣性/NEJM

 直径10~30mmの末梢肺結節の悪性・良性を鑑別するための生検において、ナビゲーショナル気管支鏡検査は経胸壁針生検に対し、診断精度に関して非劣性であり、気胸の発生が有意に少ないことが、米国・Vanderbilt University Medical CenterのRobert J. Lentz氏らInterventional Pulmonary Outcomes Groupが実施した「VERITAS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月18日号で報告された。  VERITAS試験は、医師主導型の非盲検無作為化並行群間非劣性試験であり、2020年9月~2023年6月に米国の7施設で参加者を登録した(Medtronicなどの助成を受けた)。  肺がんの事前確率が10%以上で、直径10~30mmの末梢肺結節を有する成人患者を対象とした。被験者を、ナビゲーショナル気管支鏡検査を受ける群または経胸壁針生検を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。  主要アウトカムは診断精度とし、生検で特定の診断(悪性腫瘍または特定の良性病変)を受けた患者のうち、12ヵ月間の臨床的経過観察によりその診断が正確であることが確認された患者の割合と定義した(非劣性マージンは10%ポイント)。副次アウトカムには、気胸の発生などの手技に関連する合併症が含まれた。

どのように多発性骨髄腫治療の長い道のりを乗り越えるか/日本骨髄腫学会

 多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げている。その一方で、高齢化や治療の長期化に伴う課題も顕在化している。第50回日本骨髄腫学会学術集会では、多発性骨髄腫診療における地域連携と多職種連携について議論された。  兵庫医科大学の吉原 享子氏は、地域の中核病院の立場から多発性骨髄腫治療について述べた。多発性骨髄腫の治療は、中核病院で患者を安定させ、地域連携病院や在宅診療へと移行するのが通常である。長期に渡る治療においては合併症のフォローアップが重要であり、地域医療機関との連携は不可欠である。とくに、CAR-T療法などの高度治療では、紹介元病院との連携を密にして円滑に治療を提供できる体制づくりが求められる。

PD-L1陽性の未治療進行TN乳がん、SG+ペムブロリズマブがPFSを改善(ASCENT-04/KEYNOTE-D19)/ASCO2025

 PD-L1を発現する未治療で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価した第III相ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果、SG+ペムブロリズマブは化学療法+ペムブロリズマブよりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

日本人大腸がんの半数に腸内細菌が関与か、50歳未満で顕著/国がんほか

 日本を含む11ヵ国の大腸がん症例の全ゲノム解析によって発がん要因を検討した結果、日本人症例の50%に一部の腸内細菌から分泌されるコリバクチン毒素による変異シグネチャーが認められた。これらの変異シグネチャーは50歳未満の若年者において高頻度に認められ、高齢者と比較して3.3倍多かった。この報告は、国立がん研究センターを含む国際共同研究チームによるもので、Nature誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。  本研究は、世界のさまざまな地域におけるがんの全ゲノム解析を行うことで、人種や生活習慣の異なる地域でがんの発症頻度に差がある原因を解明し、地球規模で新たな予防戦略を進めることを目的としている。今回は、大腸がん症例の全ゲノム解析データから突然変異を検出し、複数の解析ツールを用いて変異シグネチャーを同定した。その後、地域ごと、臨床背景ごとに変異シグネチャーの分布に有意差があるかどうかを検討した。

BRAF V600E変異mCRC、エンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6は新たな1次治療に(BREAKWATER)/ASCO2025

 BREAKWATERは、BRAF V600E変異転移大腸がん(mCRC)における、1次治療としてのエンコラフェニブ+セツキシマブ+化学療法と標準治療を比較評価する試験である。2025年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)では、主要評価項目の1つである奏効率(ORR)の主解析結果、全生存期間(OS)の中間解析結果の報告が行われ、ORRはEC+mFOLFOX6群が有意に高く(60.9%vs.40.0%)、OSのハザード比(HR)も0.47と大きな差が付いたことに注目が集まっていた。これまでの本試験の報告に基づき、本レジメンはBRAF V600E変異mCRCに対し、米国食品医薬品局(FDA)から1次治療を含む早期承認を取得している。

全医師が遭遇しうる薬剤性肺障害、診断・治療の手引き改訂/日本呼吸器学会

 がん薬物療法の領域は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場し、目覚ましい進歩を遂げている。しかし、これらのなかには薬剤性肺障害を惹起することが知られる薬剤もあり、薬剤性肺障害が注目を集めている。そのような背景から、2025年4月に『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き第3版2025』が発刊された。本手引きは、2018年以来の改訂となる。本手引きの改訂のポイントについて、花岡 正幸氏(信州大学病院長/信州大学学術研究院医学系医学部内科学第一教室 教授)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。

尿検査で腎臓がん手術後の再発を検出

 尿中グリコサミノグリカンプロファイル(GAGome)は遠隔転移のない淡明細胞型腎細胞がん(M0ccRCC)の手術後の再発に高い感度を示すことが確認されたとする研究結果が、欧州泌尿器科学会議(EAU 25、3月21〜24日、スペイン・マドリード開催)で発表された。  ルンド大学(スウェーデン)のSaeed Dabestani氏らは、Leibovichスコアが5以上のM0ccRCC患者を対象に多施設共同前向きコホート研究を実施し、手術後の再発検出におけるGAGomeの有用性を評価した。スクリーニングを受けた393人の患者のうち、134人が適格基準を満たした。対象者は、手術後の標準的な画像検査により最長18カ月まで放射線学的再発の評価を受け、尿中GAGomeも3カ月ごとに測定された。

乳がん家族歴のある女性の検診、3D vs.2D/JAMA Oncol

 乳がんの家族歴のある女性を対象とした大規模コホート研究において、デジタル乳房トモシンセシス(DBT)を用いた乳がん検診が、従来のデジタルマンモグラフィ(DM)と比べ再検査率が大幅に低下し、特異度が向上したことをオーストラリア・シドニー大学のTong Li氏らが報告した。とくに、第1度近親者に乳がん患者がいる女性や乳腺散在乳房の女性でその効果が顕著で、きわめて高濃度乳房の女性では進行がん率を低下させることが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2025年5月22日号に掲載。

高リスク前立腺がんにおいてテストステロン濃度回復は全生存率と関連

 放射線治療と長期アンドロゲン除去療法(ADT)を受けている高リスク前立腺がん患者において、血清テストステロン(T)濃度が正常レベルまで回復することは、全生存率の有意な改善と関連するという研究結果が、米国臨床腫瘍学会年次泌尿生殖器がんシンポジウム(ASCO GU25、2月13〜15日、米サンフランシスコ/オンライン開催)で報告された。  シェルブルック大学病院センター(カナダ)のAbdenour Nabid氏らは、高リスク前立腺がん患者630人を、骨盤放射線治療に加えて36カ月間のADTを行う群と18カ月間のADTを行う群にランダムに割り付けた(それぞれ310人、320人)。血清T濃度は、ベースライン時とその後も定期的に測定された。T濃度の回復は、各試験実施医療機関で正常範囲とされる範囲内に対象者のT濃度が戻ることと定義した。解析対象として、22年間(追跡期間中央値17.4年間)に測定された、515人の患者の6,587のT濃度データが利用可能であった。