医療一般|page:1

局所進行膵腺がん、腫瘍治療電場療法(TTフィールド)の上乗せでOS延長(PANOVA-3)/ASCO2025

 切除不能局所進行膵腺がん(LA-PAC)患者において、腫瘍電場治療(TTフィールド)と化学療法の併用が全生存期間(OS)の改善を示した。  LA-PAC患者を対象にTTフィールドとゲムシタビン+nabパクリタキセル(GnP)の有用性を評価する第III相PANOVA-3試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、米国・Virginia Mason Medical CenterのVincent Picozzi氏から発表された。

進行尿路上皮がん維持療法、アベルマブ+SGがPFS改善(JAVELIN Bladder Medley)/ASCO2025

 1次化学療法後に病勢進行のない切除不能の局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の維持療法として、アベルマブ+サシツズマブ ゴビテカン(SG)併用療法はアベルマブ単剤療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善した。米国・Johns Hopkins Greenberg Bladder Cancer InstituteのJeannie Hoffman-Censits氏が、第II相国際共同無作為化非盲検比較試験(JAVELIN Bladder Medley試験)の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、この内容はAnnals of oncology誌オンライン版5月30日号に同時掲載された。

EGFR-TKI既治療のNSCLC、HER3-DXdの第III相試験結果(HERTHENA-Lung02)/ASCO2025

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療歴を有するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)は、無増悪生存期間(PFS)を改善したものの、全生存期間(OS)を改善することはできなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が、国際共同第III相試験「HERTHENA-Lung02試験」の結果を報告した。すでに主要評価項目のPFSが改善したことが報告されており、OSの結果が期待されていた。

ESR1変異のER+/HER2-進行乳がん、vepdegestrantがフルベストラントよりPFS改善(VERITAC-2)/ASCO2025

 CDK4/6阻害薬と内分泌療法で病勢が進行したエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者を対象に、vepdegestrantとフルベストラントの有効性と安全性を比較した第III相VERITAC-2試験の結果、ESR1変異を有する患者においてvepdegestrant群の無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究は、2025年5月31日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。

抗精神病薬の減量、D2受容体親和性と再発との関連

 抗精神病薬維持療法は、初回エピソード精神疾患の再発予防に有効であるが、抗精神病薬使用患者の多くは、寛解後に副作用、長期的な健康上の懸念、スティグマ、自立への希望から、抗精神病薬の減量または中止を望むことは少なくない。現在のガイドラインでは、抗精神病薬の漸減が推奨されているが、とくに初発エピソードから寛解した患者における最適な漸減スピードは依然として不明である。また、抗精神病薬のD2受容体親和性によっても再発リスクに影響を及ぼす可能性がある。オランダ・University of GroningenのShiral S. Gangadin氏らは、初回エピソード精神疾患患者における寛解後の抗精神病薬減量と再発リスクとの関係およびD2受容体親和性の影響を評価した。World Psychiatry誌2025年6月号の報告。

口唇ヘルペスウイルスがアルツハイマー病リスクと関連か

 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染がアルツハイマー病(AD)発症リスクと関連しており、抗ヘルペス薬の使用がそのリスクを低減する可能性が、米国の大規模リアルワールドデータを用いた後ろ向き症例対照研究で示された。本研究は、米国・ギリアド・サイエンシズのYunhao Liu氏らにより実施された。BMJ Open誌2025年5月20日号に掲載。  本研究では、米国の大規模民間保険請求データベース「IQVIA PharMetrics Plus」を用い、2006~21年の間にADと診断された50歳以上の患者34万4,628例を特定し、年齢、性別、地域、データベース登録年、医療機関受診回数でマッチングした同数の対照者を1対1の割合で抽出し、後ろ向きマッチング症例対照研究を実施した。

ED-SCLCへのアテゾリズマブ+化学療法、維持療法にlurbinectedin上乗せでPFS・OS改善(IMforte)/ASCO2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬であり、維持療法としてPD-L1阻害薬単剤での投与を継続する。カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブによる治療の維持療法に、lurbinectedinを上乗せすることで、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善することが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Luis Paz-ares氏(スペイン・Hospital Universitario 12 de Octubre)が、海外第III相無作為化比較試験「IMforte試験」のOSの中間解析およびPFSの主解析の結果を報告した。本結果は、Lancet誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。

DLBCLの予後予測、1次治療後のPhasED-Seqを用いたctDNAによるMRDが有用~前向き多施設共同研究/ASCO2025

 1次治療を受けるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の予後予測に、治療終了時におけるPhasED-seq(phased variant enrichment and detection sequencing)を用いた循環腫瘍DNAによる測定可能残存病変(ctDNA-MRD)検出が有用であることが、全国規模の前向き多施設共同研究で示された。オランダ・Amsterdam UMC Location Vrije UniversiteitのSteven Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

HER2陽性胃がん2次治療、T-DXdがラムシルマブ+パクリタキセルを上回る(DESTINY-Gastric04)/ASCO2025

 切除不能または転移のあるHER2陽性胃がんに対する標準的な1次治療は、トラスツズマブ+化学療法の併用である。最近のKEYNOTE-811試験の結果に基づき、CPS 1以上であればペムブロリズマブ併⽤も推奨される。その後の2次治療の標準治療はラムシルマブ+パクリタキセルまたはペムブロリズマブだが、ペムブロリズマブは今後1次治療で使われることが見込まれ、ラムシルマブ+パクリタキセルが実質的な標準治療の位置付けとなる。  DESTINY-Gastric04試験は、現在は切除不能HER2陽性胃がんの3次治療以降に承認されているADC・トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)を、2次治療としてラムシルマブ+パクリタキセル併用療法と直接比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が本試験の結果を発表し、この内容はNEJM誌オンライン版2025年5月31日号に同時掲載された。

AI+CDK4/6i療法中にESR1変異検出、camizestrantへの切り替えでPFS改善(SERENA-6)/ASCO2025

 ER+/HER2-の進行または転移を有する乳がんと診断され、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬の併用療法中にESR1変異が検出された患者を対象に、camizestrant+CDK4/6阻害薬への切り替えまたはAI+CDK4/6阻害薬の継続の有用性を検討した第III相SERENA-6試験の中間解析の結果、camizestrant+CDK4/6阻害薬への切り替えによって無増悪生存期間(PFS)が統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究は、2025年6月1日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。

労働時間ではなく仕事の種類がうつ病リスクに影響

 労働時間や労働形態が中高年のうつ病リスクに及ぼす影響を検討した研究は、比較的少ない。中国・Hangzhou Normal UniversityのYu Zhu氏らは、とくに報告の少ない中国における労働時間や労働形態とうつ病リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2025年8月1日号の報告。  本研究は、2011〜20年のChina Health and Retirement Longitudinal Survey(CHARLS)のデータを用いて検討を行った。うつ病の測定には、10項目からなるCESD-10尺度を用いた。潜在成長曲線モデル(LGCM)を用いて労働時間がうつ病リスクに及ぼす影響を分析し、マルチレベル一般化推定方程式を用いて労働形態(職種および雇用形態を含む)とうつ病リスクとの関連を調査した。

日本人中年女性、歩数を増やしても心血管リスクは同じ?

 毎日の歩数と心血管イベントの関連の研究において、中年世代の男女別のデータは少ない。今回、金沢大学の竹治 泰明氏らが7万人以上のコホート研究で解析した結果、男性では歩数が最も多い群(1万歩/日以上)は最も少ない群(4,000歩/日未満)と比べて心血管疾患リスクが大幅に低かったが、女性では関連がみられなかった。この結果は中年男性の心血管疾患リスク軽減のためには毎日1万歩歩くべきという推奨を支持しているが、男女における最適な歩数目標を確立するには大規模な男女別のデータ分析が必要と述べている。Journal of the American Heart Association誌オンライン版2025年5月23日号に掲載。

小細胞肺がん2次治療、タルラタマブがOS・PFS改善(DeLLPhi-304)/ASCO2025

 2ライン以上の治療歴を有する小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」において、タルラタマブが良好な成績を示したことを受け、本邦では「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応で2025年4月16日に発売された。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが記載されている。より早期におけるタルラタマブの有用性を検討する試験として、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有用性を化学療法との比較により検証する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Charles M. Rudin氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験の第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善することが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。

HER2+進行乳がん1次治療のT-DXd+ペルツズマブ、進行/死亡リスクを44%減(DESTINY-Breast09)/ASCO2025

 HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブ併用療法の有用性を評価した第III相DESTINY-Breast09試験の中間解析の結果、現在の標準治療よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。  DESTINY-Breast09試験は、HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、T-DXd単独またはT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性と安全性を、標準治療であるタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)と比較評価することを目的として実施された。対象は、HER2+(IHC 3+またはISH+)の進行または転移を有する乳がんと診断され、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない、または内分泌療法歴が1ラインのみの患者であった。術前または術後補助療法として化学療法またはHER2標的療法の治療歴があっても、転移までの期間が6ヵ月を超える場合は対象となった。

真性多血症へのrusfertideの第III相試験、32週までの結果(VERIFY)/ASCO2025

 標準治療を受けている真性多血症(PV)患者で頻回の瀉血を必要とする患者に対するrusfertideの上乗せのベネフィットを評価する現在進行中の国際共同第III相VERIFY試験のパート1aにおいて、臨床的奏効割合、瀉血回数、ヘマトクリット値および症状の改善が示された。米国・Moffitt Cancer CenterのAndrew Tucker Kuykendall氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションで発表した。  PVは赤血球の過剰産生を特徴とし、心血管・血栓イベントリスクを増加させる。rusfertideは鉄恒常性における主な調節因子であるヘプシジンのペプチド模倣薬である。この国際共同無作為化プラセボ対照第III相試験は、パート1a(用量漸増、二重盲検)、パート1b(非盲検)、パート2(非盲検、長期安全性評価)から成り、パート1a(0~32週)を完了した患者がパート1b(32~52週)に移行し、パート1bを完了した患者がパート2に進む。今回はパート1aの結果が報告された。

今夏は高齢者、子供だけでなく職場の熱中症対策も重要に/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、5月28日に定例の記者会見を開催した。会見では、先の「3党合意による『11万床削減』の報道について松本氏がコメントし、「病床の削減は、方法論を間違えると、地域住民、患者やその家族、そして、医療現場で懸命に命や健康を守っている医療従事者、さらには医療に関わる業種の皆さんに、大変な不安や混乱を与えかねない」と強調し、「今後、関係者の理解と納得が得られる政策となることに期待を寄せる」と語った。

術後ctDNA陽性StageIII結腸がんへの治療強化、RFS改善は得られず(DYNAMIC-III)/ASCO2025

 術後にctDNAが検出されると再発リスクが高いことは多くの研究で報告されている。DYNAMIC-IIIはStageIIIの結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検出に基づいた補助化学療法と標準治療を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア)のJeanne Tie氏が、本試験の1次解析結果を報告した。ctDNA陽性であれば治療強化、陰性であれば減弱し、それぞれを標準治療と比較する試験デザインで、今回はctDNA陽性例の解析が発表された。 ・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験 ・対象:切除可能なステージIIIの結腸がん患者 ・試験群:治療強化ストラテジー(化学療法なし→5FU/カペシタビン、5FU/カペシタビン→6ヵ月のオキサリプラチンベースの2剤療法、3ヵ月の2剤療法→6ヵ月の2剤療法または3ヵ月内のFOLFOXIRI、6ヵ月の2剤療法→3ヵ月内のFOLFOXIRIをリスクに応じて選択:ctDNA情報提供群)129例 ・対照群:ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療(標準療法群)130例 ・評価項目: [主要評価項目]2年無再発生存期間(RFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など

日本人ASD、ADHDの自殺予防のために必要な幼少期の体験

 弘前大学の足立 匡基氏らは、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如多動症(ADHD)の特性と幼少期のポジティブな経験が自殺関連行動に及ぼす複合的な影響を調査するため、日本人の青年および若年成人の大規模かつ代表的なサンプルを用いて、調査を行った。さらに、幼少期のポジティブな経験が神経多様性特性に関連するリスク軽減に役立つかについても、検討を行った。Frontiers in Psychiatry誌2025年4月30日号の報告。  対象は、16〜25歳の日本人5,000人。検証済みの尺度を用いて、ASD およびADHD特性、幼少期のポジティブな経験、自殺念慮および自殺企図を含む自殺関連行動を測定し、データを収集した。これらの変数の影響を評価するため、階層的回帰分析を複数回実施した。幼少期のポジティブな経験と神経多様性特性との間の相互作用効果を検討し、潜在的な緩和効果を検証した。

コーヒーの1日摂取量と死亡率の関係、砂糖入りでは?

 コーヒー摂取がさまざまな健康上のベネフィットと関連することが示されているが、砂糖や飽和脂肪(saturated fat)の添加がどのような影響を及ぼすかは明確ではない。米国・タフツ大学のBingjie Zhou氏らによる大規模前向きコホート研究の結果、コーヒー摂取が全死亡リスクの低下と関連することが確認されたが、その関連はブラックコーヒーおよび添加された砂糖や飽和脂肪量が少ないコーヒーでのみ認められた。The Journal of Nutrition誌オンライン版2025年5月12日号掲載の報告。  本研究では、1999~2018年までの米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータと、国民死亡記録(National Death Index)の死亡データをリンクさせて解析が行われた。24時間思い出し法による有効な食事調査結果を有する20歳以上の4万6,332人が対象となった。

どのように多発性骨髄腫治療の長い道のりを乗り越えるか/日本骨髄腫学会

 多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げている。その一方で、高齢化や治療の長期化に伴う課題も顕在化している。第50回日本骨髄腫学会学術集会では、多発性骨髄腫診療における地域連携と多職種連携について議論された。  兵庫医科大学の吉原 享子氏は、地域の中核病院の立場から多発性骨髄腫治療について述べた。多発性骨髄腫の治療は、中核病院で患者を安定させ、地域連携病院や在宅診療へと移行するのが通常である。長期に渡る治療においては合併症のフォローアップが重要であり、地域医療機関との連携は不可欠である。とくに、CAR-T療法などの高度治療では、紹介元病院との連携を密にして円滑に治療を提供できる体制づくりが求められる。