医療一般|page:1

SGLT2阻害薬がCKD患者の入院リスクを総合的に低減

 SGLT2阻害薬が慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管イベントを抑える効果はこれまでに報告されているが、あらゆる原因による予定外の入院リスクの低減効果については体系的に評価されていない。今回、大島 恵氏(オーストラリア・シドニー大学/金沢大学)らの研究により、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無、腎機能やアルブミン尿の程度にかかわらず、CKD患者の予定外の入院リスクを低減したことが明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年7月14日号掲載の報告。

血液病理認定医が直面している難渋するリンパ腫診断/日本リンパ腫学会

 2025年7月3~5日に第65回日本リンパ腫学会学術集会・総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。  7月5日、竹内 賢吾(公益財団法人がん研究会 がん研究所)を座長に行われた学術・企画委員会セミナーでは、「How I diagnose lymphoma」と題して、5名の病理認定医より、日常診療で直面している具体的な診断の揺らぎや分類の曖昧さに対する自身の対応や見解について共有および議論がなされた。  診断の揺らぎは、解析データの不足、診断者の力量に起因することもあるが、WHO分類におけるさまざまな病型定義や診断基準の曖昧さによる影響が大きいと考えられる。

統合失調症患者の認知機能改善に対するメトホルミンのメカニズム

 認知機能低下は、統合失調症の長期予後に悪影響を及ぼす病態であるが、効果的な臨床治療戦略は依然として限られている。トリカルボン酸(TCA)回路の破綻と海馬における脳機能異常が認知機能低下の根底にある可能性が示唆されているが、これらの本質的な因果関係は十分に解明されていない。とくに、ビグアナイド系糖尿病薬であるメトホルミンは、統合失調症患者のさまざまな認知機能領域を改善することが示されており、TCA回路を調節する可能性がある。中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのJingda Cai氏らは、以前、研究において、メトホルミン追加投与が統合失調症患者の認知機能を改善することを報告した。本研究では、認知機能改善とTCA回路代謝物および脳機能との関連を調査した。BMC Medicine誌2025年7月1日号の報告。

帯状疱疹、発生率が高まる時期は?/MDV

 帯状疱疹ワクチンの65歳以上への定期接種が2025年4月よりスタートした。同年3月に「帯状疱疹診療ガイドライン2025」の初版が発刊されたほか、海外での新たな研究では、帯状疱疹ワクチン接種による認知症リスクの低下や心血管疾患リスク抑制も示唆されており、今注目されている疾患領域である。  その帯状疱疹の国内患者推移について、メディカル・データ・ビジョンは自社の保有する国内最大規模の診療データベースから抽出した317施設の2019年1月~2025年3月のデータを対象に調査を行い、7月15日にプレスリリースを公表した。

米国での麻疹症例数、過去25年間で最多に

 米ジョンズ・ホプキンス大学により設立されたCenter for Outbreak Response Innovation(CORI)のデータによると、米国では7月時点で1,270例以上の麻疹症例が確認され(注:2025年7月15日時点で1,309例)、過去25年間で最多となっている。この数字は2019年に記録された1,274件を上回っている。  専門家は、報告されていない症例も多いことから、実際の症例数はこの数字よりもはるかに多い可能性があると見ている。現時点で、すでにテキサス州で小児2人、ニューメキシコ州で成人1人の計3人が麻疹により死亡している。CNNは、これらの3人はいずれもワクチンを接種していなかったと報じている。

肺がんに対する免疫療法、ステロイド薬の使用で効果減か

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対しては、がんに関連した症状の軽減目的でステロイド薬が処方されることが多い。しかし新たな研究で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療開始時にステロイド薬を使用していると、ICIの治療効果が低下する可能性のあることが示された。米南カリフォルニア大学(USC)ケック・メディシンの腫瘍内科医であり免疫学者でもある伊藤史人氏らによるこの研究の詳細は、「Cancer Research Communications」に7月7日掲載された。伊藤氏は、「がんの病期や進行度といった複数の要因を考慮しても、ステロイド薬の使用は特定の免疫療法で効果が得られないことの最も強い予測因子であった」と話している。

REM睡眠中の無呼吸は記憶固定化と関連する脳領域に影響を及ぼす可能性

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に関連した低酸素血症は、前頭頭頂葉脳血管病変と関連し、この病変は内側側頭葉(MTL)の統合性低下や睡眠による記憶固定化の低下と関連するという研究結果が、「Neurology」6月10日号に掲載された。  米カリフォルニア大学アーバイン校のDestiny E. Berisha氏らは、認知機能に障害のない高齢者を対象に、実験室内での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)および睡眠前後の感情記憶識別能力を実施し、それらを評価する観察研究を行った。PSGから導出したOSAの変数には、無呼吸低呼吸指数、総覚醒反応指数、最低酸素飽和度が含まれた。研究の早期時点で、MRIを用いて脳全体および脳葉の白質高信号域(WMH)の体積とMTLの構造(海馬体積、嗅内皮質〔ERC〕の厚さ)を評価した。

非HIVニューモシスチス肺炎、全身性ステロイドの有用性は?

 非HIV患者におけるニューモシスチス肺炎は、死亡率が30~50%と高く予後不良である。HIV患者のニューモシスチス肺炎では、全身性ステロイドが有効とされるが、非HIV患者における有用性は明らかになっていない。そこで、フランス・Hopital Saint-LouisのVirginie Lemiale氏らの研究グループは、非HIVニューモシスチス肺炎に対する早期の全身性ステロイド追加の有用性を検討する無作為化比較試験を実施した。その結果、主要評価項目である28日死亡率に有意な改善はみられなかったものの、90日死亡率や侵襲的機械換気の使用率が低下した。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年7月10日号に掲載された。

リンパ腫Expertsが語る、診断・治療のTips/日本リンパ腫学会

 2025年7月3~5日に第65回日本リンパ腫学会学術集会・総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。  7月5日、三好 寛明氏(久留米大学医学部 病理学講座)、丸山 大氏(がん研究会有明病院 血液腫瘍科)を座長に行われた教育委員会企画セミナーでは、「Expertsに聞く!リンパ腫診断と治療のTips」と題して、低悪性度B細胞リンパ腫(LGBL)の鑑別診断を高田 尚良氏(富山大学学術研究部 医学系病態・病理学講座)、T濾胞ヘルパー細胞(TFH)リンパ腫の診断と変遷について佐藤 啓氏(名古屋大学医学部附属病院 病理部)、悩ましいシチュエーションにおけるFL治療の考え方を宮崎 香奈氏(三重大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)、二重特異性抗体療法の合理的な副作用マネジメントについては蒔田 真一氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)から講演が行われた。

コーヒーに認知症予防効果を期待してよいのか

 コーヒーおよびカフェインの摂取が高齢者の認知機能に及ぼす影響について、中国・Inner Mongolia Medical UniversityのJinrui Li氏らは、とくにアルカリホスファターゼ(ALP)の潜在的な役割に焦点を当て、調査を行った。Nutrition Journal誌2025年7月1日号の報告。  2011〜14年の米国国民健康栄養調査(NHANES)データより抽出した60歳以上の2,254人を対象に分析を行った。認知機能の評価には、老人斑の病理診断のCERADテスト、言語の流暢性を評価するAnimal Fluency test、神経心理検査であるDSSTを用いた。コーヒー摂取、カフェイン摂取、ALPレベルと認知機能との関連を明らかにするため、メンデルランダム化(MR)、タンパク質量的形質遺伝子座解析、タンパク質間相互作用ネットワークなどの手法を用いて評価した。

腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進むのか~現状と課題/日本乳癌学会

 乳がん治療においては、近年、術前化学療法(NAC)の高い完全奏効率から手術のde-escalationが期待されるようになり、なかでも腋窩リンパ節郭清(ALND)省略はQOLを改善する。第33回日本乳癌学会学術総会で企画されたパネルディスカッション「腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進む?」において、昭和医科大学の林 直輝氏が腋窩リンパ節郭清省略の現状と課題について講演した。  ALNDのde-escalationは、リンパ浮腫などの合併症を減らすメリットと、不十分な局所コントロールが予後を悪化させるリスクがあるため、そのバランスが非常に大事である。その対応は、手術先行かNAC実施か、臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)か陽性(cN+)か、さらにそれが消失したかどうかによって変わるため、非常に複雑である。

クールな人に共通する6つの特徴とは?

 どこの国の人であれ、「クール(イケてる)」と見なされる人には共通の特徴があるようだ。チリや米国などの国際研究グループによる新たな研究で、クールと思われる人には、6つの重要な特徴が共通していることが示された。アドルフォイ・バニェス大学(チリ)マーケティング分野のTodd Pezzuti氏らによるこの研究結果は、「Journal of Experimental Psychology」に6月30日掲載された。  Pezzuti氏は、「中国、韓国、チリ、米国など国を問わず、人々は限界を押し広げ、変化を起こす人を好ましく感じる。誰かを『クール』と形容するとき、それは『クール』という表面的なラベルの意味を超えた、より根本的な価値を表していると言えるだろう」と述べている。

乳製品や甘いものを食べて寝ると悪夢を見る?

 寝る前にアイスクリームやチーズなどの乳製品を食べて悪夢を見たことがあるだろうか。1,000人以上を対象に、食生活と睡眠習慣を調査した新たな研究により、乳糖不耐症の症状が重い人は悪夢をより頻繁に見る傾向のあることが明らかになった。モントリオール大学(カナダ)精神医学教授のTore Nielsen氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Psychology」に7月1日掲載された。  この研究は、2015年に実施された食事と夢の関係に関する研究の続編であるという。Nielsen氏は、「以前の研究では、被験者は悪夢の原因を常にチーズのせいにしていた。今回の研究では、その点についてより良い答えが得られたと思う」と話している。

家畜の糞尿は薬剤耐性遺伝子の主要なリザーバー

 基本的な抗菌薬が効かない細菌が増える中、薬剤耐性の問題は世界的に喫緊の公衆衛生上の脅威となっている。こうした中、家畜の糞尿が、人間の健康を脅かす可能性のある薬剤耐性遺伝子の主要なリザーバー(貯蔵庫)となっていることが、新たな研究で明らかになった。米ミシガン州立大学微生物学教授のJames Tiedje氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に6月27日掲載された。  農業での抗菌薬の過剰な使用が薬剤耐性菌の拡大を招く一因となっている可能性に対する懸念が広がりつつある。研究の背景情報によると、毎年9万3,000トン以上の抗菌薬が家畜に使用されている。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌への感染例は毎年280万件以上発生しており、3万5,000人以上が死亡している。しかし、薬剤耐性菌の農場から人間への感染経路については不明点が多い。

アリピプラゾールLAIの長期結果〜10年間ミラーイメージ研究

 統合失調症などの精神疾患では、再発が頻繁に発生する。長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、入院予防や服薬アドヒアランス、患者アウトカムの改善に有効であるにもかかわらず、依然として十分に活用されているとはいえない。さらに、新規製剤や縦断的研究によるエビデンスは、一般的に長期投与されているにもかかわらず、限られたままである。このようなデータ不足を解消するため、英国・West London NHS TrustのJoshua Barnett氏らは、長時間作用型製剤として入手可能な唯一の第3世代抗精神病薬アリピプラゾールLAIの月1回投与の長期的な有効性および受容性を評価するため10年間のミラーイメージ研究を実施した。Schizophrenia誌2025年6月23日号の報告。

手術時、視力低下で困っている外科医の割合は?/医師1,000人アンケート

 医師の日常業務は診察や画像読影、手術など目を酷使する内容ばかりである。また、眼科領域の手術として、2000年代から屈折矯正手術(レーシック、眼内コンタクトレンズ[Implantable Contact Lens:ICL])が日本でも認められるようになり、現時点での医師、とくに眼科医の施術率が気になるところである。そこで今回、医師の眼の健康問題に関するアンケートを実施し、日常診療で困っていることや心がけていること、医師のレーシックやICLをはじめとする眼科手術の施術率などについて、会員医師1,024人(30代以上)にアンケート調査を行った。

再発/難治性多発性骨髄腫のBVd療法、DVd療法よりOS延長(DREAMM-7)/Lancet Oncol

 1ライン以上の治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫患者において、ベランタマブ マホドチン+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(BVd)併用療法はダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DVd)併用療法と比較して、全生存期間(OS)でも有意かつ臨床的に意味のあるベネフィットが得られたことが、第III相DREAMM-7試験の第2回中間解析で示された。ブラジル・Clinica Sao GermanoのVania Hungria氏らがLancet Oncology誌オンライン版2025年7月15日号で報告した。  DREAMM-7試験は、北米・南米・欧州・アジア太平洋地域の20ヵ国142施設で進行中の国際非盲検無作為化第III相試験である。1ライン以上の治療歴のある18歳以上かつECOG PS 0~2の多発性骨髄腫患者を対象に、BVd併用療法の有効性と安全性をDVd併用療法と直接比較している。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、重要な副次評価項目はOS、完全奏効以上の奏効を示した患者における微小残存病変(MRD)陰性率、奏効期間、安全性。本試験の初回解析(第1回中間解析、追跡期間中央値:28.2ヵ月)では、BVdがDVdと比べ、有意かつ臨床的に意味のあるPFSのベネフィットを示した。今回、追跡期間を延長した第2回中間解析におけるOSの結果を報告した。

アトピー性皮膚炎患者、「治療で症状が良くなると思う」と回答したのは3割のみ/リリー

 日本イーライリリーは7月8日、「アトピー性皮膚炎に関する最新事情~中等症以上の患者さんの治療実態を調査結果から読み解く~」と題したメディアセミナーを開催。同社が実施した中等症以上のアトピー性皮膚炎患者1,015例を対象としたインターネット調査結果を中心に、大塚 篤司氏(近畿大学医学部皮膚科学教室)、俳優の岸谷 五朗氏が講演とトークセッションを行った。  2018年にアトピー性皮膚炎に対する治療薬としては10年ぶりに生物学的製剤が発売されて以降、続々と新薬が登場し治療選択肢が増えている。大塚氏は、「これまでステロイド外用薬だけでは治療がうまくいかなかった患者さんに対して、これらの薬剤をうまく活用することでかゆみのない状態・肌がきれいな状態にもっていくことができるようになっている」と話す。

食物繊維の豊富な食事は動脈硬化リスクを抑制する

 野菜、穀物、豆類、その他の高繊維食品を多く摂取することが、腸だけでなく心臓の健康にも役立つことが、新たな研究で明らかになった。食物繊維の少ない食事を摂取している人では、プラークの蓄積によって動脈が狭くなる可能性の高いことが示されたという。ルンド大学(スウェーデン)心臓病学教授のIsabel Goncalves氏らによるこの研究結果は、「Cardiovascular Research」に6月16日掲載された。  Goncalves氏は、「人々の冠動脈CT血管造影法(冠動脈CTA)の画像と食事パターンを照合したところ、食事パターンは冠動脈プラークの存在だけでなく、高リスクとされるプラークの特徴にも関連していることが明らかになった」と同大学のニュースリリースで述べている。

糖尿病の新たな食事療法「DASH4D」で血圧も低下

 高血圧予防のための食事スタイルとして歴史のある「DASH」を糖尿病患者向けにアレンジした、「DASH4D(Dietary Approaches to Stop Hypertension for Diabetes)」の有効性が報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学のLawrence Appel氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に6月9日掲載された。  Appel氏は、「血圧は、コントロールすべき最も重要な検査値の一つだ。数値が高いほど脳卒中や心臓病のリスクが高まる」と解説。そして、「この研究の参加者の多くは既に複数の降圧薬を服用していたが、それにもかかわらず食事スタイルを変更することで、さらに血圧が低下した」と述べている。