HER2変異陽性NSCLCの1次治療、sevabertinibの奏効率71%(SOHO-01)/ESMO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/28

 

 HER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、sevabertinibは奏効率(ORR)71%と有望な治療成績を示した。また、既治療の集団でも有望な治療成績が示された。Xiuning Le⽒(米国・テキサス⼤学MDアンダーソンがんセンター)が、国際共同第I/II相試験「SOHO-01試験」の第II相の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。なお、本結果は、NEJM誌オンライン2025年10月17日号に同時掲載された1)

 現在開発が進んでいるHER2チロシンキナーゼ阻害薬の違いとして、ゾンゲルチニブは野生型EGFRを阻害せずHER2を選択的に阻害するのに対し、sevabertinibはEGFRとHER2の両者に対する阻害活性を有し(野生型EGFRに対する活性は弱い)、多様なHER2変異体に対しても阻害活性を示すことが挙げられる。また、ゾンゲルチニブが共有結合による不可逆的な阻害様式であるのに対し、sevabertinibは可逆的な阻害様式を有する。

 本試験は第I相と第II相で構成され、第I相の結果から20mgを1日2回の用量が選択された。今回は、用量拡大・継続パートの3つのコホートの結果が報告された。対象のコホートは、既治療かつHER2標的薬未治療(コホートD、81例)、HER標的薬既治療(コホートE、55例)、未治療(コホートF、73例)であった。用量拡大・継続パートの主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるORR、副次評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などであった。データカットオフ日は2025年6月27日であった。

 主な結果は以下のとおり。

・各コホートの有効性に関する結果は以下のとおりであった(いずれもBICR評価)。
【コホートD(既治療かつHER2標的薬未治療)】
 ORR 64%(CR 2%)
 病勢コントロール率(DCR) 81%
 脳転移例のORR 61%(11/18例)
 DOR 9.2ヵ月
 1年DOR率42%
 PFS中央値8.3ヵ月
 1年PFS率44%
【コホートDのチロシンキナーゼドメインの変異陽性非扁平上皮NSCLC(70例)】
 ORR 71%(CR 3%)
 PFS中央値9.6ヵ月
【コホートE(HER標的薬既治療)】
 ORR 38%(CR 5%)
 DCR 71%
 脳転移例のORR 27%(4/15例)
 DOR 8.5ヵ月
 1年DOR率29%
 PFS中央値5.5ヵ月
 1年PFS率28%
【コホートF(未治療)】
 ORR 71%(CR 4%)
 DCR 89%
 脳転移例のORR 78%(7/9例)
 DOR 11.0ヵ月
 PFS中央値未到達
 1年PFS率55%

・Grade3以上の有害事象は、コホートD、E、Fでそれぞれ36%、31%、21%に発現した。
・主な有害事象(コホートD、E、Fを統合)は、下痢(87%)、発疹(49%)、爪囲炎(26%)などであった。
・間質性肺疾患/肺臓炎の発現はなかった。

 本結果について、Le氏は「HER2遺伝子変異陽性のNSCLC患者に対し、sevabertinibは既治療および未治療のいずれの集団においても、頑健かつ持続的な奏効を示した。この結果は、sevabertinibがHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する新たな分子標的治療薬となり得ることを支持するものである」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療におけるsevabertinibの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「SOHO-02試験」が進行中である。

(ケアネット 佐藤 亮)