アルコール消費量と自殺リスクとの関係~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/29

 

 アルコール使用は、個人レベルにおける確立された自殺のリスク因子であるが、これが人口レベルで反映されているかは不明である。アルコールの有害な使用の削減について進捗状況を測る国際的な枠組みで用いられている、人口レベルの総アルコール消費量の指標である1人当たりアルコール消費量(APC)が自殺と関連しているとすれば、自殺予防の取り組みにおいて、アルコールは有用な目標となる可能性がある。カナダ・トロント大学のKatherine Guo氏らは、APCと自殺死亡率の間に関連があるかどうか、また関連がある場合には性別によって違いがあるかどうかを評価するため、メタ解析を実施した。JAMA Network Open誌2025年9月2日号の報告。

 2025年2月24日までに公表されたAPCと自殺の関連を測定した独自の定量的研究をEmbase、Medline、PsycINFO、Web of Scienceより検索した。対象研究は、前後比較デザインを含む縦断的観察研究または横断的生態学的デザインによるオリジナルの定量的研究、関連性の尺度を示した研究とした。最終的に合計304件の研究が特定された。データ抽出は、1人のレビューアーで行い、2人目のレビューアーによりクロスチェックを行った。バイアスリスクは、Risk of Bias in Nonrandomized Studies of Exposure tool、エビデンスの質は、GRADEを用いて評価した。システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMAに従い実施した。APCと自殺死亡率の関連性のプール推定値を算出するため、ランダム効果メタ解析を実施した。性差の有無は、ランダム効果メタ回帰を用いて評価した。主要アウトカムは、1人当たりのアルコール消費量(リットル)として測定したAPCと自殺死亡率との関連とした。

 主な結果は以下のとおり。

・主要解析には合計13件の研究を含めた。
・人口レベルでは、APCが1リットル増加するごとに自殺死亡率が3.59%(95%信頼区間:2.38~4.79)増加することが明らかとなった。
・性差を示すエビデンスは、認められなかった。

 著者らは「本システマティックレビューおよびメタ解析において、APCの増加は人口レベルでの自殺死亡率の上昇と関連しており、この関連は男女間で同様であった。したがって、APCは包括的な国家自殺予防戦略において検討すべき有用な目標となる可能性がある」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)