CheckMate 8HW試験は、全身療法歴のない高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の転移大腸がん患者に対する、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有用性を検討した試験である。すでに併用療法が化学療法を無増悪生存期間(PFS)で上回ったことが報告されており、新たな標準治療の候補となっていた。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)においてイタリア・Veneto Institute of Oncology のSara Lonardi氏が、本試験のPFSの最終解析、および初の報告となる全生存期間(OS)を発表した。
・試験デザイン:多施設共同ランダム化非盲検第III相試験
・対象:MSI-H/dMMR未治療の切除不能または転移大腸がん(mCRC)
・試験群:
1)ニボルマブ(240mgを2週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと):NIVO+IPI群
2)ニボルマブ単剤:NIVO群
3)化学療法(医師選択による化学療法±標的療法):化学療法群
患者は2:2:1の割合で無作為に割り付けられ、治療は疾患進行または容認できない毒性が認められるまで(全群)、最長2年間(NIVO+IPI群)継続された。
・評価項目:
[主要評価項目]二重エンドポイント
1)1次治療コホート:NIVO+IPI群と化学療法群のPFS
2)全治療コホート(1次+2次治療以降):NIVO+IPI群とNIVO群のPFS
[副次評価項目]1次および全治療コホートにおけるOS、奏効率(ORR)、安全性など
・データカットオフ:2025年4月30日
今回は1次治療コホートにおけるNIVO+IPI群とNIVO群のPFSの最終解析、全治療コホートにおけるNIVO+IPI群とNIVO群のOSが発表された。
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中央値は55.1ヵ月であった。1次治療コホートにおけるNIVO+IPI群(n=171)はNIVO群(n=170)と比較してPFSの改善傾向を示したものの、事前に設定された有意水準(0.0383)には達せず、統計学的有意差は認められなかった(未達vs.60.8ヵ月、ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.48~0.99、p=0.0413)。
・1次治療コホートにおけるORRはNIVO+IPI群(73%)がNIVO群(61%)と比較して高かった。
・全治療コホートにおけるOSは両群とも未達であったが、NIVO+IPI群がNIVO群と比較して改善傾向を示しており(HR:0.61、95%CI:0.45~0.83)、PFSおよびORRもNIVO+IPI群がNIVO群と比較して引き続き良好であった。
・全患者におけるGrade3以上の治療関連有害事象の発現率はNIVO+IPI群で24%、NIVO群で17%であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。
研究者らは「NIVO+IPIは、MSI-H/dMMRのmCRC患者において、長期追跡後も1次治療および全治療ラインにおいてNIVO単剤と比較して臨床的に意義のある有効性の改善を示し、NIVO+IPIが1次治療の標準治療であることのさらなる裏付けとなった」とした。
ディスカッサントを務めたSharlene Gill氏(ブリティッシュコロンビア大学・カナダ)は「1次治療におけるNIVO+IPIはNIVO単剤と比較してPFSの有意差は示せなかったものの、これは副次評価項目であり、改善傾向は明らかであることからも、大きな問題ではないと考える。NIVO+IPIは今後のMSI-H/dMMR mCRC患者の標準治療となる一方で、単剤で効果を得られる患者の層別化も必要となるだろう」とまとめた。
(ケアネット 杉崎 真名)