ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:250

強化スタチン治療中患者に対するナイアシン併用の付加効果は?:AIM-HIGH

アテローム硬化性心血管疾患を有するLDLコレステロール値が70mg/dL未満の患者に対して、スタチン治療に加えてナイアシンを併用投与した結果、HDLコレステロール値とトリグリセリド値は有意に改善されたが、臨床的ベネフィットの増加は認められなかったことが明らかにされた。心血管疾患を有する患者は、スタチン療法でLDL目標値が達成されても心血管リスクは残存する。一方で、シンバスタチンと拡張徐放性ナイアシン併用との検討で、シンバスタチン単独よりも併用投与のほうがHDL値を上げるのに優れることは知られるが、そのような残存リスク低減に優れるかどうかは明らかになっていなかった。報告は、米国・バッファロー大学のWilliam E. Boden氏ら「AIM-HIGH」試験グループの検討によるもので、NEJM誌2011年12月15日号(オンライン版2011年11月15日)にて掲載された。

40歳以上は2.4倍、血液型AB型は2倍など、死産リスクが明らかに:米国SCRN調査

米国で、妊娠診断時に入手した情報と死産との関連を調べた結果、母親が40歳以上だと同リスクは2.4倍、血液型がAB型だとO型に比べ2.0倍であることなどが明らかにされた。人種との関連では、黒人は白人と比べ死産リスクが2.1倍であることなども明らかになった。米国立小児保健発育研究所(NICHD)が死産という重大な公衆衛生問題に取り組むため組織した「The Stillbirth Collaborative Research Network」(SCRN)が、死産を経験した女性約600人についてケースコントロール研究を行い報告したもので、JAMA誌2011年12月14日号で発表した。

死産の原因、人種間差異が明らかに:米国SCRN調査

米国で、妊娠20週以降の死産の原因について調べたところ、産科的合併症が最も多く約29%、次いで胎盤異常が約24%に上ることなどが明らかにされた。米国立小児保健発育研究所(NICHD)が死産という重大な公衆衛生問題に取り組むため組織した「The Stillbirth Collaborative Research Network」(SCRN)が、死産を経験した女性約600人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月14日号で発表した。米国では、死産が妊娠160件につき1件の割合で発生しており、その総数は1年間の乳児死亡数にほぼ匹敵し、死産率は先進諸国と比べると高率で、過去10年間ほぼ横ばいで推移しているという。

影響力のある医学雑誌の名誉著者とゴースト著者の出現率は21%

JAMA(米国医師会雑誌)サーベイ調査専門家のJoseph S Wislar氏らが2008年刊行の主要な医学専門誌6誌の掲載論文について調査した結果、21%で名誉著者およびゴースト著者の存在が認められたことを報告した。名誉著者、ゴースト著者の存在、関連した透明性やアカウンタビリティの欠如は、サイエンス誌、研究者、教育研究機関にとって大きな課題となっている。本論はWislar氏らが、1996年当時と現状とを比較することを目的に行った調査の結果で、BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年10月25日号)に掲載された。

小児脱水への急速補液、標準補液以上の臨床ベネフィット認められず

小児胃腸炎に伴う脱水への点滴による水分補給について、急速補液(60mL/kg)が標準補液(20mL/kg)よりも臨床ベネフィットがあるとは認められないことが報告された。急速補液は、エビデンスは不十分だが有効だとして臨床診療に組み込まれており、救急医学の主要な教科書で推奨されている。しかし、リスクが伴う処置であり、最近のアフリカの発熱を呈した小児を対象としたボーラス救急蘇生試験では死亡増大のため試験が早期中止となった。またリスク回避のため事前に電解質測定の必要性が示唆されているが、米国小児救急医療の現場で同測定をルーチンに行っている医師は30%と報告されている。こうしたことから、カナダ・トロント小児科病院のStephen B Freedman氏らは、急速補液が標準補液と比べて臨床的に意義あるアウトカム改善児の増大に寄与するのか評価を行った。BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月17日号)掲載報告より。

スタチンは治療終了後も長期に効果が持続:HPSの長期追跡結果

長期(5年)のシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療によるLDLコレステロール低下療法は、血管イベントの絶対低下率を改善し、そのベネフィットは治療終了後も少なくとも5年間は新たなリスクをもたらすことなく持続することが、イギリスで実施されたHeart Protection Study(HPS)の長期追跡の結果から明らかとなった。HPSや他の大規模臨床試験の結果により、スタチンは5年間の治療でLDLコレステロールを1mmol/L低下させ、高齢患者や低脂質値患者を含む広範な集団の血管死、血管疾患を約25%低減することが示されている。一方、疫学試験の長期的観察では特定のがんや非血管死、非血管疾患の罹患率が上昇することが指摘され、5年以上のスタチン治療により発がんや他の有害事象が増加する可能性が示唆されている。Lancet誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月23日号)掲載の報告。

患者幹細胞を播種した人工気道の移植に成功

患者の自己幹細胞を播種したナノ複合材料で組織工学的にテーラーメードされた人工気道の移植に、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPhilipp Jungebluth氏らが成功した。気管腫瘍患者の多くが診断時には切除不能な大きさに達しており、5年生存率は約5%と予後不良だが、安全な気管の再建は困難なため切除可能な場合でも腫瘍の完全切除率は60%に満たないという。同氏らは、2008年に患者の幹細胞を播種したドナー気管の移植を行っているが、サイズが合わないなどの限界があったという。Lancet誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月24日号)掲載の報告。

腎細胞がんに対するセカンドライン治療の第III相試験、axitinib対ソラフェニブ

新規の分子標的薬であるaxitinibは、進行腎細胞がんに対するセカンドライン治療の標準的治療薬であるソラフェニブに比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな選択肢となる可能性があることが、米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのBrian I Rini氏らが行ったAXIS試験で示された。毎年、世界で約17万人が腎細胞がんと診断され、7万2,000人が死亡している。多くが切除不能な進行病変として発見され、局所病変の多くは再発し、化学療法薬やサイトカイン製剤に抵抗性を示す頻度も高い。進行腎細胞がんの治療は分子標的薬の登場によって激変したが、現在まで分子標的薬同士の効果を比較した第III相試験の報告はされていなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月4日号)掲載の報告。

静脈血栓塞栓症予防に対するapixaban対エノキサパリン

うっ血性心不全、急性呼吸不全、急性関節リウマチなど内科疾患で入院した患者に対し、退院後も静脈血栓塞栓症の予防を目的にapixaban投与を延長して行っても、入院中のみに行うエノキサパリン(商品名:クレキサン)投与と比べて優位性は示されなかったことが報告された。apixaban投与群では、重大出血イベントがエノキサパリン投与群よりも有意に認められたという。米国・ブリガム&ウイメンズ病院のSamuel Z. Goldhaber氏らADOPT試験グループが行った二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)で発表された。

結核に対するrifapentine+イソニアジド、イソニアジド単独と予防効果同等

潜在性結核感染症に対するrifapentine+イソニアジド(商品名:イスコチンほか)の3ヵ月投与は、イソニアジド単独の9ヵ月投与と予防効果は同程度で、治療完遂率はより高いことが、オープンラベル無作為化非劣性試験の結果、報告された。現在有効とされる標準療法はイソニアジド単独9ヵ月投与だが、毒性作用(特に肝臓における)や、治癒完遂率が低い(30~64%)ことが懸念されていた。試験は米国CDCが資金提供し、米国・ヴァンダービルト医科大学のTimothy R. Sterling氏らPREVENT TB試験チームにより行われた。NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)掲載報告より。

出生前母体ステロイド投与、在胎23~25週の早産児の死亡・神経発達障害リスクを低減

 在胎23~25週の早産児について、出生前副腎皮質ステロイド投与により、生後18~22ヵ月の死亡または神経発達障害の発生リスクを低下することが明らかにされた。1995年に発表された最新ガイドラインでは、在胎24~34週での早期分娩に関して母体への出産前ステロイド投与が推奨されているが、24週以前の早産についてはデータが不足していた。一方でそれら早産児の多くが集中治療を受けていた。米国・アラバマ大学のWaldemar A. Carlo氏らが、早産児約1万児について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月7日号で発表した。

JIA患者に対するエタネルセプト、より早期使用ほど治療反応良好

若年性特発性関節炎(JIA)患児に対するエタネルセプト(商品名:エンブレル)の治療反応が良好なのは、治療開始時点での障害スコアが低く、抗リウマチ薬(DMARD)の使用量が少なく、発症年齢が若い傾向があることが明らかになった。一方で反応不良は、全身性JIAや女児に認められたという。オランダ・エラスムスメディカルセンター・ソフィア小児病院のMarieke H. Otten氏らが、JIA患者262人について行った前向き観察研究の結果、報告したもので、JAMA誌2011年12月7日号(オンライン版2011年11月6日号)で発表した。

心血管バイオマーカーは本当に有望視できるのか?

心血管バイオマーカーについて、観察的研究からの結果報告と比べて、無作為化試験からの報告ではしばしば有望視できない結果が報告されることが、ギリシャ・Ioannina大学医学校のIoanna Tzoulaki氏らによるメタ疫学研究の結果、報告された。非常に多くの心血管アウトカム予測因子としてのバイオマーカーが開発されているが、一方で効果サイズやバイアスのつり上げに関する疑念が呈されている。Tzoulaki氏らは、開発報告では予後関連のデータ検証に、主として伝統的な観察疫学研究の母集団が利用されていることに着目。そのエビデンス検証は、無作為化試験の被験者を母集団として利用することも可能であり、その場合に観察疫学研究母集団から得られたものと同様の結果が得られるのかを検証した。BMJ誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月7日号)掲載報告より。

2型糖尿病患者への強化血糖コントロール、全死因死亡の低下を証明できず

2型糖尿病患者への強化血糖コントロールは、従来血糖コントロールと比べて、全死因死亡を低下するとは証明できなかったことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のBianca Hemmingsen氏らが検討した、システマティックレビューによる無作為化試験のメタ解析および系列分析の結果、報告された。心血管死亡、非致死的心筋梗塞、微小血管合併症の複合、網膜症についても、10%リスク減少を証明、論破するだけのデータを示すことはできなかった。一方で、強化血糖コントロールは、重度低血糖を30%増大することが実証されたという。BMJ誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月24日号)掲載報告より。

インフルエンザウイルスによる小児の急性下気道感染が世界的な疾病負担に

インフルエンザウイルスは、急性下気道感染(ALRI)罹患小児で同定される最も一般的な病原体であり、世界的な医療サービスの実質的な負担となっていることが、英国・エジンバラ大学のHarish Nair氏らの調査で明らかとなった。肺炎や気管支炎などのALRIは小児の罹病や死亡の主な原因であり、ALRIの新規罹患者は毎年、世界で約1億5,600万人に上り、2008年には約156万人の小児が感染の結果として死亡している。一方、小児における季節性インフルエンザウイルスに起因する世界疾病負担は明らかでなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月11日号)掲載の報告。

冠動脈疾患に対するアトルバスタチン、ロスバスタチン高用量投与の効果

冠動脈疾患患者に対しアトルバスタチン(商品名:リピトールなど)80mg/日、またはロスバスタチン(同:クレストール)40mg/日を104週間投与する強化スタチン療法は、いずれも病変部の冠動脈硬化を有意に退縮することが示された。アテローム容積率(PAV)の減少幅が両群で同等だった。米国・クリーブランドクリニックのStephen J. Nicholls氏らが、1,000人超について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2011年12月1月号(オンライン版2011年11月15日)で発表した。スタチン治療の低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させる能力に比例して、有害な心血管転帰が減少し冠動脈硬化の進展が抑制されることは知られている。しかしこれまで、強化スタチン療法による病変の退縮効果を検討した試験や、最大投与量同士を直接比較する試験は、ほとんど行われていなかった。

慢性移植片対宿主病(GVHD)、低用量IL-2投与でTreg細胞数増大

グルココルチコイド治療抵抗性の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対し、低用量インターロイキン2(IL-2)を投与することで制御性T(Treg)細胞数を増大することが報告された。IL-2投与に反応したグルココルチコイド投与量の減少にもつながる可能性があることが明らかにされた。米国・ダナファーバーがん研究所のJohn Koreth氏らによる報告で、NEJM誌2011年12月1日号で発表した。

新しい冠動脈疾患診断法CCTA、手術や医療費を増大、アウトカム効果はわずか

 冠動脈疾患診断の新しい非侵襲的診断検査法である冠動脈CT血管造影法(CCTA)について、米国メディケア受給者を対象に、ストレステストとの利用状況の比較および検査後の医療費支払いについての比較が行われた。結果、CCTAを受けた人のほうが、その後に侵襲的な手技を受けている割合が高く、冠動脈疾患関連の医療費支払いが高い傾向にあることが報告された。米国・スタンフォード大学のJacqueline Baras Shreibati氏らが2005~2008年の66歳以上メディケア受給者28万人超のデータを解析した結果、報告した。JAMA誌2011年11月16日号掲載報告より。  Shreibati氏らは、メディケア受給者を対象に、非侵襲的心臓検査を機能的検査(ストレステスト:心筋血流シンチグラフィー、負荷心エコー、運動負荷心電図)で受けた人と解剖学的検査(CCTA)で受けた人との利用状況およびその後の医療費支払いについて比較する後ろ向き観察コホート研究を行った。

冠動脈内への骨髄細胞移植、心筋梗塞後2~3週に施行では効果認められず

 心筋梗塞後の冠動脈内への骨髄単核球細胞(BMCs)移植について、プライマリ経皮的冠動脈介入(PCI)後2~3週での実施では、全体的にも局所的にも左室機能の改善はみられなかったことが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。米国・アボット・ノースウェスタン病院のJay H. Traverse氏ら心血管細胞療法研究ネットワーク(CCTRN)らが、米国NHLBIから研究委託を受け、本手技の至適施行時期を明らかとするために行った。本報告はLate TIME試験の結果で、先に行ったTIME試験(ST上昇型心筋梗塞後1週間以内、3日後施行と7日後施行を比較)では左室機能改善の可能性が示されたが、早期に細胞移植を行える患者が少ないことから、実施時期を遅らせた場合の有効性を検討するために行われた。JAMA誌2011年11月16日(オンライン版2011年11月14日号)掲載報告より。

研究論文の質を高め、インパクトあるものにするには?

STROBE(疫学で観察研究の報告を強化する)やCONSORT(試験報告の標準を強化)のようなレポートガイドラインに基づく付加的レビューを行えば、原稿の質を高めることができることが報告された。ただし、その質的向上はわずかで、明確に立証することはできなかったという。スペイン・Elsevier-Barcelona社Medicina ClinicaのE Cobo氏らが盲検無作為化試験を行い報告した。BMJ誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載報告より。