研究論文の質を高め、インパクトあるものにするには?

提供元:ケアネット

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公開日:2011/12/09

 



STROBE(疫学で観察研究の報告を強化する)やCONSORT(試験報告の標準を強化)のようなレポートガイドラインに基づく付加的レビューを行えば、原稿の質を高めることができることが報告された。ただし、その質的向上はわずかで、明確に立証することはできなかったという。スペイン・Elsevier-Barcelona社Medicina ClinicaのE Cobo氏らが盲検無作為化試験を行い報告した。BMJ誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載報告より。

従来レビュー単独群と、付加的レビューを加味した群に無作為化し、原稿改善を評価




試験は、2008年5月~2009年4月にMedicina Clinica学術誌に提出され、刊行にふさわしいとみなされたオリジナルリサーチ研究343例を対象とした。そのうち従来法レビューを受けている126例を、対照群(従来法のピアレビュー単独)と介入群(従来法レビューに加えて、レポートガイドラインから見つからない項目を探す付加的レビューを行う)に無作為化し、著者に戻したのち、レビューに基づき改稿された原稿の質を、5ポイント制のリカート尺度で評価するという方法で検討が行われた。

主要アウトカムは、原稿の質とし、副次的アウトカムは、論文中の特異的な項目(ガイドラインでのチェックポイント)についての平均的な質とされた。

主要解析は、基線因子の補正後、無作為化群全体で比較をした(共分散分析)。感度解析はレビュー群間で比較され、レビュアー示唆に対する厳守はリカート尺度で評価した。

付加的レビュー実施群のほうが原稿の質は改善、しかし著者が耳を傾けるのは……




一連の論文126例のうち34例は刊行にふさわしくないものだったため、残りの92例が、従来法レビュー単独群(41例)と付加的レビュー実施群(51例)に割り付けられた。また従来法レビュー群に割り付けられた論文のうち4例は、プロトコルから逸脱しており、それらは、レポートガイドラインに基づく付加的レビューを受けた。

解析から、付加的レビューを受けた原稿のほうが改善していることがうかがえた(無作為化群間比較:0.25、95%信頼区間:0.05~0.54、レビュー群間比較:0.33、同:0.03~0.63)。

基線から改善した原稿は、従来法レビュー単独群よりも付加的レビュー実施群のほうが多かった[22(43%)vs. 8(20%)、格差:23.6%(同:3.2~44.0%)、NNT:4.2(同:2.3~31.2)、相対リスク:2.21(同:1.10~4.44)]。

一方で、付加的レビュー群の著者は、付加的レビューからのサジェスチョンよりも、従来法レビューからのサジェスチョンのほうを優先していた(リカート平均上昇値:0.43、同:0.19~0.67)。

上記を踏まえて著者は、「レポートガイドラインに基づく付加的レビューは、原稿の質を改善する。しかし、観察された影響はわずかで、明確に立証することはできなかった」と報告。また、「各論文執筆者は、付加的レビューからのサジェスチョンより従来法レビューからのサジェスチョンに従っていた。このことは、調査方法論の高水準を厳守することが難しいことを示すものである。質の高い影響力のある論文とするには、著者は、研究をまさに始める段階で、レポートガイドラインが求める要件を知っておかなくてはならない」と結論している。