小児脱水への急速補液、標準補液以上の臨床ベネフィット認められず

提供元:ケアネット

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公開日:2011/12/23

 



小児胃腸炎に伴う脱水への点滴による水分補給について、急速補液(60mL/kg)が標準補液(20mL/kg)よりも臨床ベネフィットがあるとは認められないことが報告された。急速補液は、エビデンスは不十分だが有効だとして臨床診療に組み込まれており、救急医学の主要な教科書で推奨されている。しかし、リスクが伴う処置であり、最近のアフリカの発熱を呈した小児を対象としたボーラス救急蘇生試験では死亡増大のため試験が早期中止となった。またリスク回避のため事前に電解質測定の必要性が示唆されているが、米国小児救急医療の現場で同測定をルーチンに行っている医師は30%と報告されている。こうしたことから、カナダ・トロント小児科病院のStephen B Freedman氏らは、急速補液が標準補液と比べて臨床的に意義あるアウトカム改善児の増大に寄与するのか評価を行った。BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月17日号)掲載報告より。

226例を無作為に割り付け、補液開始後2時間時点での再水和を評価




Freedman氏らは、2006年12月~2010年4月の間に、トロントの3次救急小児医療センター単一施設で被験者を募り、2群間平行無作為化プラグマティック試験を行った。試験適格とされたのは、生後90日以上、胃腸炎に伴う脱水症状と診断され、経口補水療法不可で点滴療法が処方された小児で、以下の場合は除外された。体重5kg未満または33kg以上、給水制限、外傷の疑い、非常に困難な言葉の障壁あり、また慢性全身性疾患、腹部手術、胆汁性嘔吐、吐血、低血圧症、低血糖症、高血糖症の病歴がある場合も除外された。

小児785例がスクリーニングを受け、226例(3ヵ月~11歳児)が、0.9%生理食塩水を1時間にわたって、急速補液(60mL/kg)される群(114例)と、標準補液(20mL/kg)される群(112例)に無作為に割り付けられ、intention to treat解析にて評価が行われた。

主要評価アウトカムは、補液開始後2時間時点での再水和確認(スケールが≦1)達成だった。副次評価項目には、治療の延長、試験時間4時間中の脱水スコア平均値、退院までの時間、ER再受診、十分な経口補水、退院による医師の安寧が含まれた。
再水和達成格差のエビデンス得られず




結果、主要アウトカム達成が確認されたのは、急速補液群36%(41/114例)、標準補液群30%(33/112例)で、格差は6.5%(95%信頼区間:-5.7~18.7、P=0.32)と両群間に差があるとのエビデンスは得られなかった。この結果は、体重、基線での脱水スコアおよびpH値で補正後も変わらなかった(オッズ比:1.8、95%信頼区間:0.90~3.5、P=0.10)。

治療延長児の割合は、急速補液群52%、標準補液群43%で、格差は8.9%(同:21~-5、P=0.19)と同程度であった。

試験時間4時間中の脱水スコアは同等であったが(P=0.96)、退院までの時間は急速補液群のほうが有意に長かった(6.3時間vs. 5.0時間、P=0.03)。