静脈血栓塞栓症予防に対するapixaban対エノキサパリン

提供元:ケアネット

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公開日:2011/12/21

 



うっ血性心不全、急性呼吸不全、急性関節リウマチなど内科疾患で入院した患者に対し、退院後も静脈血栓塞栓症の予防を目的にapixaban投与を延長して行っても、入院中のみに行うエノキサパリン(商品名:クレキサン)投与と比べて優位性は示されなかったことが報告された。apixaban投与群では、重大出血イベントがエノキサパリン投与群よりも有意に認められたという。米国・ブリガム&ウイメンズ病院のSamuel Z. Goldhaber氏らADOPT試験グループが行った二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)で発表された。

apixabanの30日間経口投与群と、入院中エノキサパリン皮下注投与群とを比較




本試験は、急性内科疾患で入院した患者について、退院後も静脈血栓症予防のための治療を行うことの有効性と安全性について、apixabanを退院後も延長して投与する長期投与コース群が、エノキサパリンを入院中のみ投与する短期投与コース群と比べて優れていると仮定して行われた。

被験者適格は、うっ血性心不全や呼吸不全、その他の内科疾患で緊急入院となった患者で、3日以上の入院が予定され、静脈血栓塞栓症リスク因子(75歳以上、静脈血栓症で6週間以上の抗凝固療法の既往、がん、BMI 30以上など)を1つ以上有した6,528例だった。

被験者は無作為に、apixaban 2.5mgを1日2回30日間(入院期間含む)経口投与する群と、入院6~14日にエノキサパリン40mgを1日1回皮下注投与する群に割り付けられた。

apixaban長期投与コースの優位性示されず




主要有効性アウトカム(30日時点の以下の発生複合:静脈血栓塞栓症関連死、肺塞栓症、症候性の深部静脈血栓症、30日目に計画的に実施された両側圧迫超音波検査で無症候性の近位下肢深部静脈血栓症を検出)は、4,495例(apixaban群2,211例、エノキサパリン群2,284例)について評価された。

そのうち、apixaban群での発生は2.71%(60例)、エノキサパリン群では3.06%(70例)で、apixaban群の相対リスクは0.87(95%信頼区間:0.62~1.23、P=0.44)だった。

一方、主要安全性アウトカム(出血イベント発生)について、30日までの重大出血イベント発生は、apixaban群0.47%(15/3,184例)、エノキサパリン群0.19%(6/3,217例)で、apixaban群の相対リスクは2.58(同:1.02~7.24、P=0.04)だった。

(武藤まき:医療ライター)