日本発エビデンス|page:30

高強度運動中は眼圧が低下する

 高強度の運動を行っている最中は眼圧が有意に低下するというデータが報告された。東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科の河江敏広氏らの研究によるもので、詳細は「Healthcare」に6月26日掲載された。低~中強度運動では有意な変化はなく、また高強度運動でも、負荷終了後の回復期間中の眼圧は負荷前と有意差がないという。  血管新生緑内障や増殖糖尿病網膜症では、血圧や眼圧の変化が病状に影響を及ぼす可能性が指摘されている。一方、運動の習慣的な継続は血圧を下げるように働くが、運動の最中の血圧は上昇することが知られており、網膜の状態が不安定な場合、激しい運動を控えた方が良い場合もある。

パンデミック中に糖尿病患者の受診頻度が有意に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴い、定期的に受診していた糖尿病患者の受診や処方頻度が有意に減少したことが明らかになった。特に女性患者に、より大きな変化が認められるという。福岡大学医学部衛生・公衆衛生学教室の前田俊樹氏らの研究によるもので、詳細は「Medicine」に7月22日掲載された。  COVID-19パンデミック発生後に外来受診者数が減少したことについては、既に複数の報告がある。ただしそれらの研究の多くは、パンデミック前後での受診者数を比較したものであり、パンデミック以前から定期的に受診をしていた患者の受療行動の変化を検討した研究は少ない。糖尿病は受診中断が疾患コントロールの悪化につながり、合併症リスクを押し上げるという疾患特性があるため、患者の受療行動の変化の把握が重要と言える。そこで前田氏らは、糖尿病診療にかかわる医療費請求データを縦断的に解析して、この点を検討した。

NSCLC術後補助療法 ペメトレキセド+シスプラチンはビノレルビン+シスプラチンと同様のOS(JIPANG)/ESMO2022

 完全切除を受けた非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後化学療法として、ペメトレキセド+シスプラチン療法とビノレルビン+シスプラチン療法の無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)に関する最終結果を、国立がん研究センター東病院の葉清隆氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。  これは日本で実施された第III相試験であるJIPANG試験の最終解析報告であり、すでにRFSと忍容性については報告がなされている。

ホタテ養殖への従事が納豆アレルギーの潜在的リスクの可能性―道北での調査

 北海道の漁業従事者を対象に行った調査研究から、ホタテガイ(ホタテ)の養殖で使う網などを素手で取り扱うことが、納豆アレルギーのリスクを高める可能性が浮かび上がった。北海道大学大学院医学院社会医学講座公衆衛生学教室の黒鳥偉作氏らの研究によるもので、詳細は「Allergology International」に7月8日掲載された。ただし黒鳥氏は、「一般の人がホタテを食べたり触ったりすることは納豆アレルギーと関係がなく、漁業従事者もリスクにはならない。また養殖に携わる人でも、網の修繕などの作業時に手袋をするといった対策により予防可能」として、誤解しないよう呼びかけている。

覚醒剤使用受刑者の4人に3人は小児期に逆境体験があり、希死念慮と関連

 国内の覚醒剤使用による受刑者600人以上を対象とする調査から、小児期に逆境を体験している者の割合が高く、そのことが希死念慮や非自殺性の自傷行為のリスクの高さと関連していることが明らかになった。お茶の水女子大学生活科学部心理学科の高橋哲氏らの研究によるもので、詳細は「Child Abuse & Neglect」9月号に掲載された。  小児期の逆境体験(adverse childhood experience;ACE)が、成人後の薬物使用リスクに関連のあることが報告されている。あらゆる犯罪の中で薬物使用は最も再犯率が高く、受刑者に対する治療介入に改善の余地がある可能性が指摘されている。一方、ACEは成人後の希死念慮や非自殺性の自傷行為(non-suicidal self-injury;NSSI)のリスクとも関連があり、また受刑者が釈放された後の主要な死因の一つが自殺であることも知られている。ただし、これらの関連は主として海外での研究から報告されたもので、国内での実態は不明点が多い。

20歳未満のコロナ死亡例、基礎疾患やワクチン接種状況は?/国立感染症研究所

 国立感染症研究所は9月14日、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)の結果を発表した。オミクロン株の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し、重症例や死亡例発生も報告されている。厚生労働省および同研究所は、日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会とともに、急性期以降の死亡例も含めて、積極的疫学調査を実施した。その結果、基礎疾患の有無がほぼ同数であり、ワクチン接種対象年齢でも87%が未接種で、発症から死亡まで1週間未満が73%(中央値4日)を占めていることなどが明らかになった。  本結果は、2022年1月1日~8月31日に報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告となる。調査対象となったのは、急性期の死亡例、加えて、死因を新型コロナとは別原因とした症例で、発症からの日数は問わないとする急性期以降に死亡した症例の計41例。そのうち32例について8月31日までに実地調査を行うことができ、明らかな内因性死亡と考えられたのは29例であった。調査項目は、年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等となっている。小児の死亡例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週28週目(7月11~17日)から増加していた。

メタボ構成因子該当数とがん死リスクに有意な関連―J-MICC研究

 日本人のメタボリックシンドローム(MetS)とがん死との関係を解析した研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部医科学部門社会医学系予防医学分野の有澤孝吉氏らの研究によるもので、日本の診断基準でのMetS該当者はがん死リスクが高く、またMetSの構成因子を多く有している人ほどそのリスクが高いことが分かった。詳細は「PLOS ONE」に7月8日掲載された。  MetSは心血管疾患ハイリスク状態を早期に検出するために定義された症候群だが、がんリスク上昇とも関係のあることが示唆されている。ただし、MetSと日本人のがん死との関連についてのこれまでの研究結果は一貫性がない。有澤氏らは、国内多施設共同コホート研究「J-MICC研究」のデータを用いてこの点を検討した。

低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。 . 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。

BA.2.75「ケンタウロス」に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 2022年6月よりインドを中心に感染拡大したオミクロン株BA.2.75(別名:ケンタウロス)は、日本を含め、米国、シンガポール、カナダ、英国、オーストラリアなど、少なくとも25ヵ国で確認されている。河岡 義裕氏、高下 恵美氏らによる東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、BA.2.75に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、一部の抗体薬とすべての抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年9月7日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

薬剤誘発性QT延長とトルサードドポアント~日本のリアルワールドデータ分析

 新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。

新型コロナの重症度と予後を予測するバイオマーカーを発見/横浜市大、神奈川県立がんセンター

 血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、COVID-19の重症度と生命予後予測の指標となることを、横浜市立大学大学院医学研究科の原 悠氏らと神奈川県立がんセンターの築地 淳氏らの研究グループが発見した。PLOS ONE誌オンライン版2022年8月24日掲載の報告。  HO-1は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)を産生する。sCD163は、COVID-19の生命予後の予測性能において有用性が期待されている。研究グループは、血清HO-1がCOVID-19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになりうると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証した。  解析対象は、入院治療を必要としたCOVID-19患者64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)であった。入院時に血清HO-1とsCD163の血清濃度を測定し、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析した。

日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。

慢性腎臓病+睡眠時無呼吸で死亡リスク上昇―国内医療費請求データの解析

 慢性腎臓病(CKD)に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発している場合、死亡や心血管疾患などのリスクが有意に高いことを示すデータが報告された。名古屋大学医学部附属病院腎臓内科の田中章仁氏らが、国内医療機関の医療費請求データを解析した結果であり、詳細は「Frontiers in Medicine」に5月31日掲載された。SASに対して持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行っているCKD患者では、リスク上昇が見られないことも分かった。  CKD患者はSAS有病率が高いことが知られているが、両者の併発が予後へどの程度の影響を及ぼすかは明らかでなく、またSASに対してCPAP治療を行った場合に予後が改善するのか否かも不明。そこで田中氏らは、国内449病院の医療費請求データベースを用いて、この点の解析を行った。

DAA治療後の肝がんリスクはIFN治療後と同等―国内勤労世代の患者での検討

 C型肝炎に対して直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療によって持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成した患者の肝細胞がん(HCC)リスクは、インターフェロン(IFN)ベースの治療でSVRを達成した患者と同レベルに抑制されることが明らかになった。関西労災病院消化器内科の萩原秀紀氏らが、勤労世代の患者の医療記録を後方視的に解析した結果であり、詳細は「JGH Open」に5月18日掲載された。SVR達成後のHCC発症に、糖尿病やアルブミン低値などが有意に関連していることも分かった。

HEPAフィルター空気清浄機により新型コロナウイルス除去に成功/東大

 東京大学医科学研究所と国立国際医療研究センターは、8月23日付のプレスリリースで、河岡 義裕氏らの研究により、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を用いることで、エアロゾル中に存在する感染性の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経時的に除去できることが実証されたことを発表した。なお本結果は、mSphere誌オンライン版8月10日号に掲載された。  本研究は、東京大学と進和テックの共同で行われた。本研究に用いられたHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターは、米国環境科学技術研究所の規格(IEST-RP-CC001)で、0.3μmの試験粒子を99.97%以上捕集可能なフィルターとして定義されている。HEPAフィルターのろ過効果を検証するため、コンプレッサーネブライザーでSARS-CoV-2エアロゾルを試験チャンバー内に噴霧して満たした後、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を毎時12回換気の風量で5分間、10分間、35.5分間稼働させた。所定の稼働時間後、チャンバー内のSARS-CoV-2エアロゾルをエアサンプラーで採取し、プラークアッセイを用いて、サンプル中の感染性ウイルス力価を測定した。さらに、1価の銅化合物を主成分とし、活性酸素を発生させてフィルター面に付着したウイルスを不活性化することができる抗ウイルス剤のCufitec(R)を塗布したHEPAフィルターを用いた場合でも、同様の条件で感染性ウイルス力価を測定した。

浴槽入浴が糖尿病患者の治療を後押し?

 湯に漬かる入浴(浴槽入浴)の頻度が高い糖尿病患者は、血糖コントロールの指標であるHbA1cが良好であるというデータが報告された。国立国際医療研究センター国府台病院糖尿病・内分泌代謝内科の勝山修行氏らの研究によるもので、詳細は「Cardiology Research」6月発行号に掲載された。HbA1c以外に体格指数(BMI)や拡張期血圧も、浴槽入浴の頻度が高い患者の方が良好だという。  サウナや浴槽入浴の頻度が、心血管イベント発生率と逆相関することが既に報告されている。ただし、これまでに国内で行われた研究は解析対象者数が少なく、また、心血管イベントの既知のリスク因子を網羅的に解析した研究は見られない。勝山氏らは、同院の外来糖尿病患者約1,300人を対象とする横断研究を実施し、この点を検討した。  2018年10月~2019年3月に同院を受診し、入浴の習慣に関するアンケートに回答した糖尿病患者のうち、2型以外の糖尿病、および必要なデータが欠落している患者を除外して、1,297人を解析対象とした。解析対象者の主な特徴は、平均年齢66.9±13.6歳、男性55%、BMI25.9±5.3、HbA1c7.17±1.14%で、冠動脈疾患の既往者が6.6%、脳卒中の既往者が5.5%含まれていた。また、99.9%は自宅に浴槽付きの風呂を有していた。なお、季節による入浴頻度への影響を抑えるため、アンケート実施期間を冬季に限定した。

高齢者宅へのIH調理器導入のタイミングが遅すぎる可能性/東北大学

 高齢者世帯の火災予防のために、調理用コンロをIH調理器に交換するよう勧められることがあるが、その交換のタイミングが総じて遅すぎるのではないかとする論文が発表された。認知機能が低下している高齢者では、マニュアルを見ながらでもIH調理器をほとんど操作できず、認知機能が正常の高齢者でも困難だという。東北大学未来科学技術共同研究センター/高齢者高次脳医学研究プロジェクトの目黒謙一氏らの研究によるもので、詳細は「Dementia & Neuropsychologia」に4月11日掲載された。  2018年の消防庁の統計によると、全火災事故の約13.9%がコンロの取り扱いに関連している。また、高齢者では鍋を焦がしてしまうという体験と、記憶力や判断力、実行機能の低下が有意に関連していることが報告されている。このような高齢者のコンロの取り扱いミスによる火災リスクを抑制する対策として、自治体によってはIH調理器への交換を推奨している。しかし、認知機能の低下した高齢者でもIH調理器を使用可能かどうか明らかでない。目黒氏らは、宮城県涌谷町の高齢者を対象として、この点を検討した。  研究参加者は、75歳以上の地域在住高齢者166人。臨床的認知症尺度(CDR)により、66人はスコア0で「健康」、79人はスコア0.5で「認知症の疑い」、21人はスコア1以上で「認知症」と判定された。また、本人と家族へのインタビューから、過去の火災につながるような体験(鍋を焦がす、タバコやストーブの消し忘れ、畳を焦がすなど)の有無を把握し、その頻度と重大性から、火災を引き起こすリスクを判定。その結果、98人は該当する経験がなく「安全」、39人は「低リスク」、29人は「高リスク」と分類された。  研究参加者に、「IH調理器を使って、インスタント麺を作るのに必要な水をできるだけ速く沸騰させるように」との課題を与え、実行可能かを判定した。なお、調理器のマニュアルは自由に読んでよいこととし、読みやすいように拡大したものを手渡した。また、手順が分からず先に進めない場合は、研究スタッフが作成した説明書を参照してもらったり、スタッフが助言をした。

毎日コーヒーを飲む高血圧患者は血管の機能が良好

 コーヒー摂取習慣のある高血圧患者は、血管の内皮と平滑筋の機能が良好であることを示すデータが報告された。広島大学病院未来医療センターの東幸仁氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に6月29日掲載された。  適量のコーヒー摂取には健康上のさまざまなメリットのあることが報告されているが、高血圧の治療に対する有益性の研究結果は一貫性がない。東氏らはこの点について、血管内皮機能と血管平滑筋機能の面から検討を加えた。  動脈血管の最も内側の層に当たる内膜の内皮細胞は、血管を拡張する一酸化窒素(NO)を産生するなどの役割を担い、中膜の平滑筋は血管のしなやかさに関与している。動脈硬化の初期段階では内皮機能が低下し、続いて平滑筋機能が低下してくる。これらを測定することで、血管が狭くなるなどの形態学的な変化や臓器障害が現れる前に、動脈硬化のリスクを把握でき早期介入が可能となる。  一般に内皮機能は、上腕(二の腕)の血流を一時的に駆血(遮断)し、それを開放した時に血流の刺激を受けた内皮細胞がNOを産生することで起こる血管拡張反応(flow-mediated vasodilation;FMD)で評価する。測定結果は、ベースライン(駆血前)の血管径を基準に開放後の血管径を比較してパーセントで表す。一方の平滑筋機能は、ニトログリセリン投与による血管拡張反応(nitroglycerine-induced vasodilation;NID)で評価し、やはりベースラインからの血管径の変化の割合で結果を表す。いずれも数値が大きい方が、内皮や平滑筋の機能が良好と判定される。

クレアチニン/シスタチンC比で糖尿病患者の動脈硬化を評価可能

 血清クレアチニンとシスタチンCの比が、2型糖尿病患者の無症候性アテローム性動脈硬化の存在と有意な関連があるとする論文が報告された。松下記念病院糖尿病・内分泌内科の橋本善隆氏、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の福井道明氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care」に6月23日掲載された。  糖尿病が動脈硬化の強力なリスク因子であることは古くから知られており、心血管イベントの発症前に動脈硬化進展レベルを評価した上での適切な治療介入が求められる。