日本発エビデンス

重度腹膜転移を伴う進行胃がん、mFOLFOX6は選択肢か

腹腔全体に及ぶ大量腹水や輸液補助を要する経口摂取不良を伴う重度腹膜転移を有する進行胃がん患者は、主要な臨床試験から除外されてきた。そこで、愛知県がんセンター薬物療法部の舛石 俊樹氏らは、重度腹膜転移を有するHER2陰性・化学療法未治療の進行胃がん患者を対象に、mFOLFOX6療法を評価する第II相試験「WJOG10517G」を実施した。その結果、mFOLFOX6療法は忍容可能で、治療選択肢となりうることが示された。本研究結果は、Gastric Cancer誌オンライン版2026年8月27日号に掲載された。

エチゾラムとゾピクロンの投与期間30日上限以降、処方傾向はどう変わったか?

 2016年10月、日本においてベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)であるエチゾラムおよびゾピクロンは第3種向精神薬に指定され、両剤の投与期間の上限が30日に制限された。横浜市立大学の立岡 幸大氏らは、エチゾラムおよびゾピクロンの投与期間上限の設定が両薬剤の処方に及ぼした影響を評価した。Therapeutic Innovation & Regulatory Science誌オンライン版2026年8月8日号の報告。  本研究は、2012〜20年の日本の全国医療保険レセプトデータからランダムに抽出されたデータに基づいて実施した。2016年に向精神薬に指定されたBZDであるエチゾラムおよびゾピクロンについて、年齢層別の処方動向を分析した。向精神薬指定が処方動向に及ぼす影響は、中断時系列分析を用いて評価した。

犬を飼うことで認知症予防は可能か?〜日本人対象研究

 国立環境研究所の谷口 優氏らは、犬の飼育者の身体的、社会的、心理的特性に基づいた傾向スコア重み付け法を用い、犬の飼育と要介護認知症の発症および死亡との関連を調査した。さらに、操作変数モデルを用いて、この関係における因果関係の可能性を検討した。加えて、費用対効果分析を用いて、犬の飼育に伴う費用と効果についても検討を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2026年7月22日号の報告。  犬の飼育状況は、「現在飼育中」、「過去に飼育経験あり」、「飼育経験なし」の3つに分類した。要介護認知症は、日本の介護保険制度における医師の判定に基づき定義し、死亡については約7.5年間のフォローアップ期間中に日本の人口動態統計を用いて確認した。

T-DXd関連ILD、日本人の胃がん・乳がん患者で死亡例に多い所見は?

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)に関連する間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は、治療継続や生命予後に関わる重要な有害事象である。そこで、愛知県がんセンター呼吸器内科の藤原 豊氏らは、日本人の乳がんおよび胃がん患者を対象とした市販後全例調査のデータを用いて、独立したILD判定委員会により判定されたT-DXd関連ILDの臨床的・画像的特徴を検討した。その結果、多くは軽度~中等度で副腎皮質ステロイドに反応した一方、びまん性肺胞傷害(DAD)パターンは死亡例に多くみられた。本研究結果は、The Oncologist誌オンライン版2026年9月7日号に掲載された。

MASHへのセマグルチド、日本人でも有効性示す/ESSENCE試験サブグループ解析

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)では、肝線維化の進展抑制や脂肪肝炎の改善を目指した薬物治療の確立が課題となっている。そこで、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏らは、第III相ESSENCE試験のサブグループ解析として、MASHを有する日本人参加者におけるセマグルチドの有効性と安全性を検討した。その結果、日本人集団において、セマグルチドは肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失などの達成割合をプラセボより高め、全体集団と方向性が一致した有効性と安全性を示した。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年8月28日号に掲載された。

ピロリ菌感染、胆道がんや膵がんリスクとの関連は/愛知県がんセンターほか

胃がんの確立したリスク因子であるHelicobacter pylori(H. pylori)感染は、胆道がん(BTC)や膵がん(PC)にも関与する可能性が指摘されているが、これまでのエビデンスは一貫していない。また、生殖細胞系列病的バリアントがH. pylori感染と胃がんリスクとの関連を修飾する可能性がある一方、BTCやPCでの役割は明らかではない。そこで、愛知県がんセンター研究所の山本 清花氏らは、日本人集団を対象に、遺伝的感受性や生活習慣因子を考慮してH. pylori感染とBTCおよびPCリスクとの関連を検討した。その結果、BTCリスクとの有意な関連は認められなかったが、PCではH. pylori感染指標とリスクの関連が、発生部位によって異なる可能性が示された。本研究結果は、International Journal of Cancer誌オンライン版2026年7月14日号に掲載された。

地域活動への参加、オーラルフレイルリスク低下と関連――3万人超の縦断研究

 日本の地域在住高齢者約3万人を3年間追跡した研究で、地域活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連することが示された。さらに、その関連は社会経済的地位(SES)が低い高齢者でより強く認められ、社会参加がオーラルフレイルの健康格差の縮小と関連する可能性が示唆された。研究は、北海道大学大学院保健科学研究院地域看護学/公衆衛生看護学教室の富岡那奈子研究員、田高悦子教授らによるもので、詳細は7月24日付の「PLOS One」に掲載された。

骨盤リンパ節郭清のAI支援、医師の認識能を向上/国立がん研究センター、Jmees

 骨盤リンパ節郭清においてAIによる支援は外科医の重要な解剖学的構造の認識を向上させることがわかった。  骨盤リンパ節郭清は、大腸がんや子宮頸がん、前立腺がん、膀胱がんなどの手術において、がんのリンパ節転移の確認とともに、転移のあるリンパ節を切除し再発を防ぐ重要な手術手技である。しかし、骨盤内には血管、神経、尿管などの重要な臓器および組織が存在しており、これらを損傷すると重大な合併症につながる可能性がある。そのため、手術には高度な解剖学的知識と技術が求められる。

乳幼児期の睡眠不足、3歳時の発達遅延と関連――日本の出生コホート研究

 睡眠は、子どもの健やかな発達に欠かせない重要な要素である。今回、日本の全国出生コホート研究のデータを用いた解析から、乳幼児期の短い睡眠時間が3歳時の発達遅延と関連することが示された。また、睡眠場所が睡眠時間に関連する可能性も示された。研究は、鳥取大学医学部社会医学講座健康政策医学分野の増本年男氏らによるもので、詳細は7月8日付の「Frontiers in Public Health」に掲載された。  これまでの研究で、子どもの短い睡眠時間は、肥満や不安・抑うつなどの精神的健康問題、感情調整の困難さと関連することが報告されている。

PCI施行STEMI患者、アスピリン投与は省略できるか/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、プライマリPCI施行前に開始した低用量プラスグレル単剤療法は、アスピリン+プラスグレルの抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に対して、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合に関して非劣性を示さなかった。近畿大学の高橋 邦彰氏らPREMIUM Trial Investigatorsが、国内69病院で実施した多施設共同非盲検無作為化試験「PREMIUM試験」の結果を報告した。欧米のガイドラインでは、出血リスクが高くない急性冠症候群患者には、虚血性イベントの2次予防としてPCI後少なくとも12ヵ月のDAPTが標準治療として推奨されている。

ストロング系チューハイが最も飲まれていた~日本のアルコール依存症患者分析

 日本において、アルコール使用障害(AUD)の治療目標として節酒が近年受け入れられるようになっている。その一方で、AUD患者の臨床的特徴や飲酒パターンに関する知見は依然として限られている。神奈川・久里浜医療センターの新田 千枝氏らは、全国15施設で実施された多施設共同コホート研究であるAlcohol Longitudinal Prognosis Study in Japan(ALPS-J)のベースラインデータを用い、治療を求めたAUD患者の臨床的特徴および飲酒パターンを、男女別に解析した。PCN Reports誌2026年8月号の報告。

「消化性潰瘍診療GL2026」、ボノプラザンの位置付けを強化/J Gastroenterol

消化性潰瘍では、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用が主要因である一方、除菌治療の普及や強力な酸分泌抑制薬の登場により、有病率や死亡率は低下している。しかし、特発性潰瘍や非H. pylori性ヘリコバクター(NHPH)感染による潰瘍の増加傾向が注目されている。日本消化器病学会(JSGE)は2026年4月に「消化性潰瘍診療ガイドライン2026(第4版)」を改訂、治療アルゴリズムの骨格は大きく変えず、H. pylori除菌治療について状況に応じた選択肢を整理するとともに、薬物療法ではボノプラザンの位置付けを強化した。本改訂内容は、ガイドライン作成・評価委員会の杉本 光繁氏らより論文化され、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年8月24日号に掲載された。

日本人入院患者のせん妄、その特徴とリスク因子は?

 せん妄は、入院中に生じる重篤な精神神経症状であり、単なる急性イベントというよりは、背景にある神経認知機能の脆弱性が顕在化したものであると考えられる。日本では、入院患者を対象に、あらかじめ定められたリスク因子を評価する「せん妄リスクの早期スクリーニング」を病院全体で実施することが、国の医療政策として義務付けられている。奈良県立医科大学附属病院のMegumi Matsuda氏らは、専門医へのコンサルテーションを経て確定診断されたせん妄と独立して関連する、患者の属性および臨床的因子の特定を試みた。PCN Reports誌2026年7月30日号の報告。

高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。

アルコール依存症患者の飲酒関連がん、遺伝的体質でリスクに差

 飲酒は頭頸部がんや食道がんなどの飲酒関連がんの重要なリスク因子として知られている。今回、日本人のアルコール依存症患者を対象とした研究で、アルコール代謝に関わる遺伝的体質によって、こうしたがんのリスクが異なることが明らかになった。研究は、国立病院機構久里浜医療センターアルコール内科の横山顕氏、国立保健医療科学院生涯健康研究部の横山徹爾氏によるもので、詳細は7月7日付の「Cancer Medicine」に掲載された。  飲酒は頭頸部がんや食道がん、肝がん、大腸がん、胃がんなどのリスク因子として知られている。

降圧薬による認知症リスクの低下、ARB vs.Ca拮抗薬~日本人大規模データ

 降圧薬の「種類」の違いが、血圧低下とは独立して認知症リスクに影響するかについては、十分に明らかになっていなかった。今回、統計数理研究所/総合研究大学院大学の野間 久史氏らが実施した65歳以上を対象とした標的試験エミュレーションの結果、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の新規開始はカルシウム拮抗薬(CCB)の新規開始に比べて、認知症、とくに血管性認知症のリスクが低いことが示された。Alzheimer’s & Dementia誌2026年8月号に掲載。  本研究では、19自治体の医療・健診情報を統合した約505万人の大規模医療データベースであるLIFE Studyの2014年4月~2024年9月のデータから、新規にARBまたはCCBによる高血圧治療を開始した65歳以上の認知症ではない成人を対象に、標的試験エミュレーションによりARB開始群とCCB開始群の認知症リスクを比較した。

胚移植の成功率を高めるための3つの手法、その効果は?

 体外受精(IVF)での胚移植は治療の最終段階であり、成功率を高めるためにさまざまな方法が試みられている。例えば、移植時の子宮の角度を改善する目的で膀胱を充満させる方法、移植前に子宮頸管粘液を除去する方法、カテーテル留置後に胚を装填する方法(アフターローディング法)などである。しかし、加藤レディスクリニックの産婦人科医である秋野亮介氏らが8月6日付で「Cochrane Database of Systematic Reviews」に発表した研究で、これらの3つの手法の有効性を裏付ける確実性の高いエビデンスは得られていないことが示された。秋野氏は、「ある意味では、エビデンスよりも慣習が診療を動かしている例と言える。

食事のタイミングと日本人の認知症リスクとの関係~LIFE研究

 食事のタイミングと認知症についてのエビデンスは限られている。九州大学の川口 健悟氏らは、深夜の夕食および朝食抜きと、認知症の発症との関連を検討した。GeroScience誌オンライン版2026年7月28日号の報告。  本研究には、2016年4月~2021年3月の19自治体におけるレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータが用いられた。深夜の夕食(就寝前2時間以内の夕食を週3回以上)および朝食抜き(週3回以上)については、健康診断時に評価し、「あり」または「なし」として解析した。

胃がん手術、低CXIは予後不良・再発リスクと関連

 「がん悪液質」は、筋肉量の減少や低栄養、全身性炎症などを特徴とし、患者の予後に影響を及ぼすことが知られている。今回、これらを統合的に評価するCachexia Index(CXI)が、胃がん手術患者の予後や再発リスクを予測する指標として有用である可能性が示された。研究は、東京大学医学部附属病院胃食道外科の小島晴樹氏、菅原弘太郎氏らによるもので、詳細は7月13日付の「Surgery Today」に掲載された。  胃がんの予後は病期が最も重要な決定因子とされる一方、患者の全身状態も術後の生存に影響することが知られている。

マラソン中の心停止、スタート時の気温が低いほどリスク上昇か

 マラソン中の心停止はまれではあるものの、生命を脅かす重大なアクシデントだ。今回、日本全国のフルマラソン約453万人の参加データを解析した研究で、スタート時の気温が低いほど心停止リスクが高い可能性が示された。一方、大気汚染物質との有意な関連は認められなかった。研究は、霞ヶ浦医療センター循環器内科の加藤穣氏らによるもので、詳細は6月30日付の「JACC:Advances」に掲載された。  マラソン中の心停止は、冠動脈疾患などランナー側の心血管疾患が主な原因と考えられている。一方、これまでの研究はランナー個人の特徴や基礎疾患に焦点を当てたものが中心で、レース当日の気象条件や大気汚染などの環境要因が心停止リスクに与える影響については十分に明らかになっていなかった。