日本発エビデンス

2年間のフレマネズマブ治療の有効性および継続性〜国内単一施設観察研究

 フレマネズマブの12週間に1回675mgを皮下投与した場合の長期的なアドヒアランスや有効性に関するリアルワールドデータは、依然として不足している。静岡赤十字病院の吉田 昌平氏らは、反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)に対する2年にわたるフレマネズマブ675mgの有効性およびアドヒアランスを評価し、治療中止理由の分析を行った。The Journal of Headache and Pain誌2025年3月11日号の報告。  対象は、静岡赤十字病院の頭痛センターに通院している患者のうち、2021年11月〜2022年6月にフレマネズマブの12週間に1回675mgを皮下投与する治療を行った15歳以上の患者。頭痛の頻度および重症度は、頭痛日誌を用いて記録した。観察期間は、治療開始後24ヵ月間までとした。治療中止理由は、フォローアップ時のカルテ記録より収集した。

低ホスファターゼ症の新たな歯科症状が明らかに―全国歯科調査

 子どもの歯は6歳前後で永久歯へと生え変わる。もしそれより早く乳歯が抜け落ちたとしたら、そこに別の病気が隠れているかもしれない。  低ホスファターゼ症(HPP)は、無治療では死に至ることもある遺伝性の骨系統疾患であり、乳歯の早期脱落といった歯科的問題を伴うことが多い。この度、日本人におけるHPPの歯科的所見の調査を目的とした全国調査が行われ、この疾患に関する新たな歯科所見が認められたという。本調査は大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学講座の大川玲奈氏、仲野和彦氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月25日掲載された。

アリピプラゾールによるドパミン受容体シグナル伝達調整が抗うつ効果に及ぼす影響

 即効性抗うつ薬であるケタミンは、解離作用を含む好ましくない精神異常作用を有する。現在、抗うつ効果を維持しながら、これらの副作用を抑制する効果的な戦略は存在しない。京都大学のDaiki Nakatsuka氏らは、マウスとヒトにおけるケタミンの精神異常作用と抗うつ作用に対するドパミンD2/D3受容体拮抗薬とパーシャルアゴニストの影響を調査した。Translational Psychiatry誌2025年3月8日号の報告。  主な内容は以下のとおり。 ・パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールにより、精神異常作用を減弱し、強制水泳試験においてケタミンの抗うつ作用の維持、増強が認められた。 ・一方、拮抗薬であるracloprideは、マウスにおいていずれの作用も抑制した。

花粉症時のアイウォッシュ、その使用傾向が調査で明らかに

 アイウォッシュ(洗眼)は花粉症シーズンの目のトラブル対策として有効な手段だが、洗眼剤の使用傾向は年齢、既往歴、生活習慣などの違いによって異なる、とする研究結果が報告された。若年層、精神疾患の既往、コンタクトレンズ(CL)利用者などが洗眼剤使用に関連する因子であったという。研究は順天堂大学医学部眼科学講座の猪俣武範氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月10日掲載された。  洗眼剤の使用はアレルギー性結膜炎の初期症状の軽減に効果的であるとされるが、現在、花粉症患者における洗眼剤使用の疫学的特徴に関しては知識のギャップが存在している。このギャップを埋めることは、花粉症管理において包括的でエビデンスに基づいた洗眼剤のガイドラインを作成するために不可欠である。そのような背景から、研究グループは花粉症患者における洗眼剤使用者と非使用者を総合的にプロファイリングし、花粉症とセルフケアの習慣に関連するパターンと特徴を特定することを目的とした大規模疫学研究を実施した。

指の動きを測定することで認知症の重症度が評価可能な可能性あり

 藤田医科大学の鈴村 彰太氏らは、アルツハイマー病患者の手の指の動きと認知機能との関連を推定するため、本研究を実施した。Brain and Behavior誌2025年3月号の報告。  国立長寿医療研究センターのもの忘れセンター外来でアルツハイマー病と診断された患者を対象に、15秒間の両手交互タップ課題を行い、手の指の動きを測定した。その後、アルツハイマー病の重症度により軽度または中等度に分類し、手の指の動きを比較した。両群間のパラメーターの比較には、マンホイットニーU検定およびエフェクトサイズを用い、算出されたp値をボンフェローニ法で補正した。手の指の動きと認知機能との関連を評価するため、スピアマン順位相関係数を用いた。認知機能は、ミニメンタルステート検査(MMSE)により評価した。

転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒調査を5年間行った。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが示唆された。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。

iPS細胞移植、パーキンソン病患者の脳内でドパミン産生を確認/京大

 京都大学医学部附属病院と京都大学iPS細胞研究所とが連携して実施した、パーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植する第I/II相臨床試験において、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞は生着し、ドパミンを産生することが確認され、腫瘍形成などの重篤な有害事象は認められなかった。本結果により、パーキンソン病に対する安全性と臨床的有益性が示唆された。本結果はNature誌オンライン版2025年4月16日号に掲載された。

セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。

日本の男性乳がんの生存率、女性乳がんと比較~12府県のがん登録データ

 男性乳がんと女性乳がんの予後を比較した研究の結果は一貫しておらず、わが国において男性乳がんと女性乳がんの予後を大規模集団で比較した研究はほとんどない。今回、愛知県がんセンターのDaisy Sibale Mojoo氏らが12府県のがん登録データを用いて検討した結果、男女の乳がんの純生存率が同程度であることが示された。Cancer Science誌オンライン版2025年3月3日号に掲載。

65歳未満の市中肺炎、GL推奨の短期治療の実施率~日本人約2万5千例の解析

 肺炎診療ガイドライン2024では、市中肺炎治療において、初期治療が有効な場合には1週間以内の短期抗菌薬治療を実施することが弱く推奨されている。しかし、その実施率は高くないことが示された。酒井 幹康氏(名城大学/豊田厚生病院)らの研究グループが、65歳未満の成人市中肺炎における短期治療の実施状況について、大規模レセプトデータベースを用いて検討した結果をJournal of Infection and Chemotherapy誌2025年5月号で報告した。

食道がんリスクが平均赤血球容積でわかる?

 健康診断などでよく見る平均赤血球容積(MCV)は貧血の種類を判別する指標だが、食道がんの予測因子としても使えるようになるかもしれない。静岡県立総合病院消化器外科の佐藤真輔氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らの研究によるもので、食道がんの発症リスクが高血圧の既往や生活習慣などとともにMCVでも予測できる可能性があるという。研究の詳細は「PLOS One」に2月11日掲載された。  食道がんは予後不良のがんであり、2020年には世界で54万人が食道がんで死亡している。症例の多くは扁平上皮がんであり、日本や中国を含む東アジアでの発症率が特に高くなっている。食道の扁平上皮がんのリスク因子は飲酒と喫煙であることが報告されている。

女性の体型は膣内の微生物叢で変わるか/北里大

 腸内の微生物叢がさまざまな疾患などに関連することが、近年の研究で判明している。では、女性の膣内の微生物叢は、健康な女性では、その体型に関連するのであろうか。この課題に対し、北里大学薬学部の伊藤 雅洋氏らの研究グループは、日本人の健康な女性24人の膣液を採取、分析し、菌種を特定するとともにBMIが生菌総数および膣内pHに影響を及ぼすことを明らかにした。この結果は、Frontiers in Cellular and Infection Microbiology誌2025年2月4日号に公開された。

AIサポートにより前眼部疾患の診断精度が向上か

 AI活用が医療現場にもたらす効果についての研究が活発化している。そのような中、白内障や角膜疾患の診断用に設計されたディープラーニングモデル「CorneAI」のサポートにより、角膜炎などの前眼部疾患に対する眼科医の診断精度が向上したという研究結果が報告された。CorneAI自体の診断精度は86%だったが、そのサポートにより、眼科医の精度がCorneAIのベースを超えて向上したという。福島県立医科大学附属病院眼科学講座の前原紘基氏、筑波大学附属病院眼科の上野勇太氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月11日掲載された。  人工知能(AI)は画像診断(CT、MRI、病理画像など)と親和性が高く、研究開発が活発化している分野の一つだ。眼の画像診断は、様々な前眼部疾患の診断と管理に重要な役割を果たしている。研究グループは、前眼部のカラー写真5,270枚を教師データとして、AIベースの分類ツールであるCorneAIを開発した。教師データには、細隙灯顕微鏡で撮影された、正常、感染性浸潤、非感染性浸潤、瘢痕、沈着/ジストロフィー、水疱性角膜症、水晶体混濁、腫瘍性病変、緑内障発作の9つのカテゴリーの画像が含まれた。

子供も食事の早食いは肥満に関係する/大阪大

 「早食い」は太る原因といわれている。この食べる早さと肥満の相関は、子供にも当てはまるのだろうか。この課題に対し、大阪大学有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の高阪 貴之氏らの研究グループは、わが国の小学生1,403人の咀嚼能力および咀嚼習慣と肥満との関連を検討した。その結果、早食いや咀嚼能力の低下は、男子で肥満と関連していた。この結果は、Journal of Dentistry誌2025年3月8日号のオンライン版に掲載された。  研究グループは、大阪市の9~10歳の児童1,403人を対象に、咀嚼習慣を質問紙で評価し、咀嚼能力は色変化するチューインガムを用いて測定した。肥満は、身長と体重に基づく過体重の割合で判定し、多変量ロジスティック回帰分析を行い、咀嚼習慣と咀嚼能力を説明変数とし、性別、DMFT指数、ヘルマン歯発育段階を調整した肥満のオッズ比を算出した。

高感度CRP、心不全の悪化予測に有用か/日本循環器学会

 日本人の高齢化に伴い、国内での心血管疾患(CVD)の発生が増加傾向にある。このCVD発生には全身性の炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)の上昇が関連しており、これが将来の心血管イベントの発症予測にも有用とされている。しかし、その関連性は主に西洋人集団で研究されており、日本人でのデータは乏しい状況にある。そこで今回、小室 一成氏(国際医療福祉大学 副学長/東京大学大学院医学系研究科 先端循環器医科学講座 特任教授)が日本人集団における全身性炎症と心血管リスクの関係を評価し、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies1において発表した。

乳がんサバイバーは多くの非がん疾患リスクが上昇/筑波大

 日本の乳がんサバイバーと年齢をマッチさせた一般集団における、がん以外の疾患の発症リスクを調査した結果、乳がんサバイバーは心不全、心房細動、骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、不安・うつの発症リスクが高く、それらの疾患の多くは乳がんの診断から1年以内に発症するリスクが高いことを、筑波大学の河村 千登星氏らが明らかにした。Lancet Regional Health-Western Pacific誌2025年3月号掲載の報告。  近年、乳がんの生存率は向上しており、乳がんサバイバーの数も世界的に増加している。乳がんそのものの治療や経過観察に加え、乳がん以外の全般的な健康状態に対する関心も高まっており、欧米の研究では、乳がんサバイバーは心不全や骨折、不安・うつなどを発症するリスクが高いことが報告されている。しかし、日本を含むアジアからの研究は少なく、消化管出血や感染症などの頻度が比較的高くて生命に関連する疾患については世界的にも研究されていない。そこで研究グループは、日本の乳がんサバイバーと一般集団を比較して、がん以外の12種類の代表的な疾患の発症リスクを調査した。

神経発達障害を併発する強迫症に関与する免疫学的メカニズム

 強迫症(OCD)は、有病率が2〜3%といわれている精神疾患である。OCD治療では、セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬の有効性が示されているが、病因は依然としてよくわかっていない。最近の研究では、とくに自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、トゥレット症などの神経発達障害を併発したOCD患者では、免疫学的メカニズムの関与が示唆されている。兵庫医科大学の櫻井 正彦氏らは、これらのメカニズムを明らかにするため、神経発達障害を併発したOCD患者と併発していないOCD患者における免疫学的因子を調査した。Psychiatric Research誌2025年4月号の報告。

食物繊維の摂取による肥満リスク低下、男性でより顕著?

 2型糖尿病患者で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d'Avila Ferreira氏、曽根博仁氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に2月4日掲載された。  肥満の予防と管理においては、食物繊維が重要な役割を果たすことは示されているが、性別で層別化した場合に相反する結果が報告されるなど、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景からFerreira氏らは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート

 セフトリアキソンは、日本感染症学会/日本化学療法学会の感染症治療ガイドラインにおいて市中肺炎入院患者におけるエンピリック治療の第1選択薬の1つに挙げられている。投与方法は1g1日2回点滴静注または2g1日1回点滴静注が推奨されているが、これらを比較した前向き研究は限られている。今回、倉敷中央病院の中西 陽祐氏らが、これらの投与方法の有効性と安全性を前向きコホート研究で比較し、報告した。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年1月号に掲載。

普通車と軽自動車、どちらが安全?

 人はそれぞれ、価格、燃費、デザイン、安全性などを基準に車を選ぶが、軽自動車は普通車と比べ、交通事故後の院内死亡率が上昇するという研究結果が報告された。また軽自動車では、頭頸部、胸部、腹部、骨盤および四肢に重度の外傷、重傷を負うリスクが高かったという。神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の大野雄康氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に2月5日掲載された。  軽自動車は「ミニカー」とも呼ばれ、日本だけでなく海外での人気も高まっている。人気の理由の1つとして、車体のコンパクトさが挙げられるが、それは車内空間が狭まることも意味する。車内空間が狭くなると、衝突時の衝撃による変形に対して乗員がダイレクトに危険に晒されることになる。しかしながら、車内空間の狭さが生存率の低下や、重度の外傷にあたえる影響については十分に検証されてこなかった。こうした背景から、大野氏らは過去に自動車事故で負傷・入院した患者を対象とした単施設の後ろ向きコホート研究を行った。主要評価項目は事故後の院内死亡率とした。