日本発エビデンス

日本のがん患者のカウンセリングニーズは?1万件超の電話相談を分析

 日本のがんサバイバーらのアンメットニーズを、電話相談の主訴から、男女差を主眼に解析し、その特徴をあぶりだした神奈川県立がんセンター 臨床研究所 片山佳代子氏らの研究が、Patient Education and Counseling誌2020年5月16日に掲載された。  分析されたがん患者の電話相談は10,534件。男女別相談者別にデータのコーディングを行い、複数の関連コードをまとめ主要な19のカテゴリーを生成した。

CKD患者ではBMI低値が感染症や全死亡と関連

 慢性腎臓病(CKD)患者ではBMIが低いことが感染症による死亡や全死亡のリスクの高さと関連するとの報告が、「BMC Nephrology」6月30日オンライン版に掲載された。仙台市立病院内科の山本多恵氏(研究時点の所属は東北大学大学院医学研究科腎・高血圧・内分泌科)らが、CKD患者を対象とした前向き観察コホート研究「艮陵研究」のデータを解析した結果、明らかになった。  BMIが高いことは、一般的には心血管疾患や腎疾患の発症率の高さと関連している。しかし、CKD患者ではむしろBMIが高いほうが死亡リスクは低いとする報告があり、BMI低値は予後不良のリスクと捉えられている。また、CKD患者の死因として心血管死以外では感染症関連死が多いことが知られている。ただし、感染症関連死とBMIの関連は明らかでなかった。

血管攣縮性狭心症患者のイベント抑止に抗血小板薬は無効?

 血管攣縮性狭心症に対する抗血小板薬の有用性を検討した、国内多施設共同研究の結果が報告された。抗血小板薬が処方されていなかった群との比較において、主要心血管イベントの発生率に有意差は認められなかったという。昭和大学藤が丘病院循環器内科の森敬善氏らの論文が、「International Journal of Cardiology Heart & Vasculature」6月9日オンライン版に掲載された。  狭心症の発作が起きる原因は、冠動脈の動脈硬化と血管攣縮(血管が痙攣して細くなること)の、大きく二つに分けられる。動脈硬化に対しては、動脈内に血栓ができるのを防ぐ抗血小板薬が処方され、前者のタイプの狭心症の治療や心筋梗塞の予防などに広く用いられている。一方、後者の血管攣縮によって起きる狭心症の予後に対する抗血小板薬の影響は、これまで明確にされていなかった。

認知症関連の行方不明発生とその後の死亡の関連因子

 認知症患者の増加に伴い、認知症に関連する行方不明やその後の死亡が深刻な問題となっている。しかし、認知症関連の行方不明発生率、その後の死亡率、リスク因子についてはよくわかっていない。国立循環器病研究センター研究所の村田 峻輔氏らは、日本の都道府県別に集計されたデータを用いて、生態学的研究を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年6月27日号の報告。  2018年の警察庁の統計より、認知症関連の行方不明とその後の死亡に関するデータを抽出し、これらに影響を及ぼす候補変数として、高齢者の特性、ケア、安全性に関する変数を抽出した。候補変数と行方不明発生率および死亡率との関連は、交絡因子で調整した後、一般化線形モデルを用いて分析した。

花の画像を数秒見るだけでストレスは軽減される

 花の“癒し効果”が科学的に証明された。ディスプレイに表示された花の画像を見るだけでも効果があるという。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の望月寛子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Environmental Psychology」6月号オンライン版に掲載された。  花を見ると気分が癒されることは多くの人が経験的に理解しているし、プレゼントやお見舞いに花を届けるという習慣も社会に定着している。しかし、花の鑑賞によってストレス反応が本当に軽減されるのかどうかは十分に検証されていない。望月氏らは、その実証を試みた。

前向きな気持ちがアレルギーを改善するメカニズム

 アレルギー疾患の症状は、気持ちが前向きなときは軽快することが、その詳しいメカニズムとともに明らかになった。脳内の「ドパミン報酬系」が活性化すると、アレルギー反応が抑制されるのだという。山梨大学医学部免疫学講座の中尾篤人氏らの研究によるもので、詳細は「Allergy」6月13日オンライン版に掲載された。  花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、精神的なストレスにより症状が悪化することが知られている。その一方で、アレルギー疾患に対する新薬の臨床試験では、プラセボ効果(有効成分のない薬剤であってもそうと知らずに飲んだ際に、暗示などで生じる効果)が強く現れて、新薬の評価が困難になることも少なくない。

大豆食品で膵臓がんのリスクが上昇か―JPHC研究

 大豆食品は、心血管疾患や一部のがんのリスクを下げることが報告されているが、膵臓がんに関しては別かもしれない。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究から、大豆食品の中でも非発酵性の食品は、膵臓がんのリスクを高める可能性のあることが報告された。詳細は「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」6月号に掲載された。  がんの治療が進歩し、早期診断と早期治療により根治に至ることが増えている。しかし、膵臓がんは早期診断が難しく、診断後の予後はいまだに不良。そのため、発症予防につながる研究の必要性が高い。これまでの研究で、大豆食品が、乳がんなど一部のがんの発症リスクの低下と関連する可能性が報告されている。しかし、大豆食品と膵臓がんとの関連については報告が少なく、よく分かっていない。

バロキサビル、インフルエンザの家族間感染予防に有効/NEJM

 インフルエンザの家族間感染予防に、バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ、以下バロキサビル)の単回投与が顕著な効果を示したことが報告された。リチェルカクリニカの池松 秀之氏らによる多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年7月8日号で発表された。バロキサビルは、ポリメラーゼ酸性タンパク質(PA)エンドヌクレアーゼ阻害作用を有し、合併症リスクの高い外来患者などを含む合併症のないインフルエンザの治療効果が認められている。しかし、バロキサビルの家庭内での曝露後予防効果については、明らかになっていなかった。

双極性障害の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、双極I型障害および双極II型障害の精神薬理学的治療に関する日本臨床精神神経薬理学会が認定する専門医によるコンセンサスガイドラインを作成することを目的に本研究を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年6月17日号の報告。  日本臨床精神神経薬理学会が認定する専門医を対象に、双極性障害治療における19の臨床状況について、9段階のリッカート尺度(同意しない「1」~同意する「9」)を用いて、治療オプションの評価を依頼した。119件の回答が得られた。治療オプションを、1次、2次、3次治療に分類した。

COVID-19対策が行き届いている企業ほど、社員の仕事能率が高い

 企業の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を検討した研究から、企業規模や業種によって対策の実施状況に明らかな差があり、対策をしっかり行っている企業ほど社員が効率よく仕事に取り組めていることが明らかになった。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の佐々木那津氏、川上憲人氏らが行ったオンライン調査の結果で、詳細は「Journal of Occupational Health」6月11日オンライン版、「Environmental and Occupational Health Practice」6月15日オンライン版に掲載された。  川上氏らは、緊急事態宣言発出前の3月19日~22日に、国内企業の正社員を対象とする横断調査をオンラインで実施。回答者が勤務している企業のCOVID-19対策実施状況や心理的なストレス、仕事のパフォーマンスなどに関し、自記式アンケートによる回答を求めた。回答者1,448人から内容に不備があったものを除き、1,379人の回答を解析した。その平均年齢は41.2±10.5歳、男性50.6%で、所属する企業規模(従業員数)は、1,000人以上が33.1%、300~999人が16.6%、50~299人が27.3%、50人未満が23.0%。

アトピーのそう痒、nemolizumab+外用薬で改善/NEJM

 アトピー性皮膚炎の治療において、nemolizumabと外用薬の併用は、プラセボと外用薬の併用に比べそう痒が大幅に減少し、湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアや皮膚科学的生活の質指数(DLQI)も良好であるが、注射部位反応の発現率はnemolizumabで高いことが、京都大学の椛島 健治氏らが実施した「Nemolizumab-JP01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月9日号に掲載された。nemolizumabは、アトピー性皮膚炎のそう痒と炎症に関与するインターロイキン(IL)-31受容体Aのヒト化モノクローナル抗体であり、投与は皮下注射で行われる。本薬は、第II相試験でアトピー性皮膚炎の重症度を軽減すると報告されている。  本研究は、アトピー性皮膚炎と中等度~重度のそう痒がみられ、外用薬に対する反応が不十分な日本人患者を対象とする16週間の二重盲検無作為化第III相試験で、2017年10月に開始され、2019年2月にデータ解析が行われた(マルホの助成による)。

コーヒー・緑茶をよく飲む中年期女性はBMIが低く血管年齢が若い

 コーヒーや緑茶の摂取量が多い中年期の女性は、BMIや体脂肪率が低く、血管の柔軟性が保たれていることを示す結果が報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座の寺内公一氏らの論文が、「Nutrients」5月11日オンライン版に掲載された。  コーヒーや緑茶の摂取量と心血管疾患のリスクが逆相関することは既に報告されている。一方、女性は更年期以降、動脈硬化の進行が速くなるが、その進行がコーヒーや緑茶の摂取によって抑制されるかどうかは明らかになっていない。そこで寺内氏らは、東京医科歯科大学病院の更年期外来を受診した患者のデータを用い、以下の横断研究を行った。

魚のエキスが糖尿病網膜症の治療薬に?

 魚のエキスが糖尿病網膜症の治療薬となる可能性が報告された。網膜の新生血管という異常な血管の発生が、魚エキスにより抑制されることが動物実験で認められたという。慶應義塾大学医学部眼科学教室、静岡県水産・海洋技術研究所、日本大学医学部視覚科学系眼科学分野の共同研究によるもので、「Nutrients」4月10日オンライン版に掲載された。  糖尿病網膜症は、糖尿病の治療が不十分な状態が続くことで発症する網膜の病気で、国内の失明原因の上位に位置する。網膜に発生する病的な新生血管が病気の進行に大きく関わる。この新生血管に対し、血管の増殖を促す因子である「VEGF」の働きを抑制する治療薬が使われる。しかしこの治療薬は、眼球への繰り返し投与が必要で医療費が高くなり、副作用のリスクや効果が不十分なこともあるなどの課題が残されている。

フレイルとBMIにU字型の関係―亀岡スタディ

 フレイルの有症率はBMIが低くても高くても上昇することが、日本人対象の研究から明らかになった。国立健康・栄養研究所身体活動研究部の渡邉大輝氏らが「Journal of Clinical Medicine」5月6日オンライン版に報告した。  フレイルとは、さまざまなストレスへの耐性が低下した「要介護予備群」の状態で、死亡リスクの上昇とも関連する。フレイルの有症率は加齢に伴い上昇するが、BMIとはU字型の関係があるとのデータが海外から報告されている。ただしBMIの分布は人種や民族によって異なり、日本人でもそのような関係があるかどうかは明らかでなかった。

アビガン、ウイルス消失傾向も有意差示せず/多施設無作為化試験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状および軽症患者に対するファビピラビル(商品名:アビガン)のウイルス量低減効果を検討した多施設非盲検ランダム化臨床試験の最終結果の暫定的な解析から、通常投与群(1日目から投与)は遅延投与群(6日目から投与)に比べて6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかったことを、7月10日、藤田医科大学が発表した。本研究の詳細なデータを速やかに論文発表できるよう準備を進めるという。

認知症患者の家族介護者の就労状況が明らかに―厚労省調査データの解析

 認知症患者を家族内で介護している人の就労実態が明らかになった。現役世代に該当する65歳以下の介護者のうち、有給の仕事に就いている人は6割に満たなかった。獨協医科大学精神神経医学講座の菅原典夫氏らの研究によるもので、「PLOS ONE」5月29日オンライン版に掲載された。  国内では、認知症の増加と就労人口の減少が同時に進行している。これに世帯人数の減少傾向も加わり、就労を続けながら家族内介護を担う人が増加しているが、その詳しい実態は明らかでない。菅原氏らは、2013年に厚生労働省が行った介護や健康状態に関する全国調査のデータから、認知症患者を家族内で介護しており、介護者の年齢が65歳以下であった452世帯を抽出。介護者の就労状況を調べるとともに、就労に関連する因子を検討した。

糖尿病黄斑浮腫が透析で改善する

 糖尿病黄斑浮腫のために低下している視力が、透析を始めると改善する可能性のあることが報告された。国内多施設共同研究の結果で、福井大学医学部眼科の高村佳弘氏らによる論文が、「Scientific Reports」5月8日オンライン版に掲載された。  糖尿病黄斑浮腫は、眼底の中央にあり視力を司る「黄斑」に浮腫(むくみ)が起き、視力が大きく低下してしまう糖尿病の合併症。同じように糖尿病の眼合併症の一つである網膜症は、治療の進歩により失明頻度が低下した一方で、黄斑浮腫に関しては効率の良い治療法の模索が続いている。

アトピーの「痒み」に対するnemolizumabの有効性、第III相試験で確認/マルホ

 マルホ株式会社(大阪市、代表取締役社長:高木 幸一)は7月9日、中等度~重度のアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を対象に、国内で実施したnemolizumabの第III相臨床試験の結果、主要評価項目である投与開始16週後のそう痒VAS変化率が、プラセボ群と比べ有意に低下させたことを発表した。本結果はThe New England Journal of Medicine誌オンライン版2020年7月9日号に掲載された。  nemolizumabは、中外製薬が創薬した抗IL-31レセプターAヒト化モノクローナル抗体。IL-31は、そう痒誘発性サイトカインで、アトピー性皮膚炎、結節性痒疹および透析患者におけるそう痒発生に関与していることが報告されているほか、アトピー性皮膚炎の炎症惹起および皮膚バリア機能の破綻についても関与が示唆されている。

進行胃がんに対するレンバチニブ+ペムブロリズマブの効果(EPOC1706)/Lancet Oncol

 進行胃がん患者における、レンバチニブ・ペムブロリズマブ併用療法の有効性および安全性を評価する、単施設での第II相試験「EPOC1706試験」の結果が論文発表された。国立がん研究センター東病院の川添彬人氏らによる検討で、良好な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍効果が認められたことを報告した。先行研究で、PD-L1陽性(CPS≧1以上)の進行胃がん患者において、抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブは約15%の奏効率を示すことが報告されている。一方で、VEGF受容体および他の受容体チロシンキナーゼのマルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブは、腫瘍関連マクロファージの顕著な減少とCD8 T細胞浸潤の増加によりPD-1阻害薬の抗腫瘍活性を高めることが、in-vivo研究で示されていた。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月23日号掲載の報告。

糖尿病性腎症重症化予防で医療費も削減される―呉市からの報告

 糖尿病性腎症の「疾病管理(ディジーズ・マネジメント)」には、重症化予防効果に加え医療コスト削減効果もあることが分かった。全国に先駆け公的保険制度の下で、糖尿病性腎症へのシステマティックな適正介入を進めてきた広島県呉市のデータを、成城大学経済学部の河口洋行氏らが解析した結果で、詳細は「BMC Health Services Research」5月11日オンライン版に掲載された。  疾病管理による糖尿病の医療コスト削減効果については、英国および米国から1例ずつ報告がある。ただし医療費削減に寄与する詳しい経路は明らかにされていない。理論的には、介入によって医療サービスの不足や重複が整理される「整理効果」、および、良好な管理により疾患の進行が抑制される「健康改善効果」を介してその後に発生する医療費が抑制されるという二つのメカニズムが考えられる。河口氏らは、この二つの効果を別々に把握できる分析手法を採用して定量的な評価を試みた。