日本発エビデンス

飲酒中のチェイサーは二日酔いの症状を軽減しない/大分大

 多量の飲酒のあとに起こるいわゆる「二日酔い」を一度は経験したことがある人は多いはず。二日酔いでは、頭痛や倦怠感などの身体症状だけでなく、自動車の運転や就業中の判断力に影響を及ぼすことはよく知られている。症状の軽減策としては、飲酒中の水(いわゆる「チェイサー」)の摂取が知られているが、その効果はどのくらいあるのだろう。このテーマに関して、大分大学の今井 浩光氏(大分大学医学部医学生物学講座および医療倫理学講座 教授)らの研究グループは、チェイサーが体内のエタノールおよびアセトアルデヒドの動態に影響を与えるかどうか、また、翌日の精神運動機能検査や自覚症状において二日酔いの症状を軽減するかどうかを検討した。

高齢入院患者の睡眠薬継続使用、院内転倒リスク上昇と関連

 高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下につながり得るため、医療現場で重要な課題となっている。日本の急性期病院に入院した高齢患者6万人超を対象とした研究で、睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連することが示された。一方、ベンゾジアゼピン系・Z薬とオレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオンとの間で、転倒リスクに有意な差は認められなかった。研究は、日本医科大学医療管理学の西野拓也氏らによるもので、詳細は6月8日付の「PLoS One」に掲載された。

HER2+局所進行/転移乳がんへの二重HER2阻害療法と併用の1次化学療法、エリブリンvs.タキサンの最終OS解析(JBCRG-M06/EMERALD)/ESMO Open

 HER2陽性(HER2+)局所進行/転移乳がんに対して、二重HER2阻害療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ)と併用する1次化学療法として、エリブリンと医師選択のタキサンを比較した第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の最終解析の結果、全生存期間(OS)中央値が6年を超え、2群間に有意差は認められなかったことが示された。福島県立医科大学の佐治 重衡氏らがESMO Open誌8月号に報告した。本試験ではすでに、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてエリブリンがタキサンに非劣性を示したことが報告されている。

夜間頻尿の背景に“夜間多尿”――排尿日誌データから見えた加齢の影響

 夜間頻尿は高齢者に多い症状であり、その背景には膀胱機能低下だけでなく夜間多尿など尿量分布の変化が関与すると考えられている。今回、日本の17施設で夜間頻尿患者875例を対象に、排尿日誌を用いて夜間多尿の実態が解析された。その結果、夜間多尿の割合は加齢とともに増加し、特に80歳以上で顕著であった。夜間頻尿は年齢や尿量分布など複数の要因が関与する多因子性の病態と考えられた。研究は、岐阜大学大学院医学系研究科泌尿器科の川瀬紘太氏、古家琢也氏らによるもので、詳細は6月12日付の「Neurourology and Urodynamics」に掲載された。

AF合併PCI患者の2剤抗血栓療法、1ヵ月vs.12ヵ月(OPTIMA-AF試験)/Lancet

 心房細動を合併した主に慢性冠症候群を有する患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に2剤併用抗血栓療法を1ヵ月行い、その後に直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)単剤療法を行った群は、2剤併用抗血栓療法を12ヵ月行った群と比較し、12ヵ月時の死亡または血栓塞栓性イベントに関して非劣性であることが示され、大出血または臨床的に問題となる非大出血(CRNM)は有意に減少した。大阪大学の外海 洋平氏らOPTIMA-AF Investigatorsが、国内75施設で実施した無作為化非盲検実薬対照並行群間試験「OPTIMA-AF試験」の結果を報告した。心房細動患者におけるPCI後の2剤併用抗血栓療法の至適期間は、依然として不明であった。

アレルギーや喘息で、がんリスクは上がる?下がる?〜JPHC研究

 アレルギーや喘息に伴う過敏な免疫反応や慢性炎症が、がん発症に防御的に働くのか、あるいは促進するのかについては、依然として議論されている。今回、国立がん研究センターの平林 万葉氏らが、日本人の多目的コホート研究(JPHC Study)から得られたデータを用いて前向き観察研究を実施したところ、アレルギーや喘息の既往はがん全体のリスクとは関連しないものの、喫煙男性では大腸がん、非喫煙女性では子宮頸がんのリスク上昇と関連することが示された。Cancer Medicine誌2026年7月号に掲載。

日本の骨髄線維症患者における貧血および輸血依存の関係

日本の骨髄線維症(MF)患者において、貧血および輸血が罹患率、死亡率、医療費の増加と関連していることが後方視的コホート研究で示された。同研究結果はPLOS One誌(2026年5月8日付オンライン版)で発表された。 同研究は、日本の大規模診療データベース(Medical Data Vision)を使用し、MF患者全体およびJAK阻害薬治療を受けたサブグループにおける、治療パターン、輸血負担などを調査することを目的に実施された。対象は2015年4月1日~2022年6月30日に特定されたMF患者で、全体コホートは836例、そのうちJAK阻害薬投与サブグループは281例であった。

PCI実施の急性冠症候群患者、LDL-C40未満でMACEリスク最小化/CVIT

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した急性冠症候群(ACS)患者において、PCI後早期におけるLDL-C40 mg/dL未満の達成は、長期的な主要心血管イベント(MACE)リスクの最小化に直結し、慢性冠症候群(CCS)患者と比較してもはるかに大きな臨床的恩恵をもたらすことが明らかになった。本結果は片岡 有氏(国立循環器病研究センター 循環器内科)が2026年7月16~18日に開催された第34回日本心血管インターベンション治療学会のLate Breaking Clinical Trials 1にて発表し、JACC Asia誌オンライン版2026年7月17日号に同時掲載された。

不規則な食事時間が老化を早める!?

 国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らの研究グループは、地域在住高齢者を対象に、食事時間の不規則性と生物学的老化の潜在的バイオマーカーGrowth Differentiation Factor-15(GDF-15)との関連、およびそれに対する食事の質の媒介効果を評価した。その結果、食事時間が不規則な高齢者は、規則的な高齢者と比較して年齢が有意に若いにもかかわらず、血清GDF-15が高く、食事の質が低いことが明らかになった 。本研究結果は、European Geriatric Medicine誌2026年6月16日号オンライン版掲載の報告。

チルゼパチドvs.セマグルチド、日本における肥満症患者の体重減少効果は?(SURMOUNT-5サブ解析)

 日本における肥満症の薬物療法適応基準を満たす集団において、チルゼパチドはセマグルチドと比較して72週時点での体重変化率が有意に大きく、体重、BMI、腹囲のいずれにおいても減少幅が有意に大きいことが示された。千葉大学大学院医学研究院の北本 匠氏らによるこの研究成果は、Current Medical Research and Opinion誌2026年7月11日号に掲載された。  本研究は、国際共同試験であるSURMOUNT-5のサブ解析として実施された。日本における肥満症の薬物療法適応基準を満たす参加者(BMI 27~34.9、高血圧、脂質異常症のいずれかを有し、さらに肥満関連健康障害[ORHD]を2つ以上有する、またはBMI ≧35かつORHDを 1つ以上有する)を対象とした。

潰瘍性大腸炎の粘膜治癒、歯みがき頻度と関連

 潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸粘膜に慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患(IBD)の一つである。今回、日本人のUC患者275人を対象とした研究で、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒(内視鏡で大腸粘膜の炎症が認められない状態)の達成と関連することが示された。一方、残存歯数との関連は認められなかった。研究は、済生会今治病院内科の八木専氏、愛媛大学総合健康センターの古川慎哉氏らによるもので、詳細は5月28日付の「Digestive Diseases and Sciences」に掲載された。

アルツハイマー病検出に有望な血液バイオマーカー、認知機能が正常なアジア人での精度は?

 血液バイオマーカーは、アルツハイマー病を検出する有望なツールと考えられる。しかし、認知機能が正常なアジア人集団において、血液バイオマーカーの性能は依然として不明であった。認知機能が正常なアジア人を対象に、血液バイオマーカーの識別性能を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析が実施された。Ageing Research Reviews誌2026年7月号の報告。認知機能が正常なアジア人集団を対象に、血漿中のp-tau217、Aβ42/40および複合バイオマーカーがアミロイドβ(Aβ)PET陽性を識別する能力を評価するため、システマティックレビューおよび変量効果モデルを用いたメタ解析を実施した。CENTRAL、PubMed、CINAHLより、システマティックに文献検索を行った。主要解析では、AβPET陽性の識別能力を評価するため、p-tau217およびAβ42/40それぞれの曲線下面積(AUC)を統合した。副次的解析では、AβPET陽性群と陰性群におけるp-tau217およびAβ42/40のバイオマーカー濃度の標準化平均差(SMD)を検討した。さらに、p-tau217/Aβ42やp-tau217とAβ42/40の組み合わせモデルを含む複合バイオマーカーのAUCを統合した。

Burnt-out MASLD、肝癌切除後予後を左右する新たな高リスク表現型か

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)では、病態の進行に伴って肝脂肪が消失する「Burnt-out MASLD」と呼ばれる状態に至ることがある。今回、肝細胞癌(HCC)患者931例を対象とした研究で、Burnt-out MASLDを有する患者では肝切除後の再発および生存予後の悪化と独立して関連することが示された。術後のリスク層別化に役立つ新たな高リスク表現型として注目される。研究は、埼玉医科大学国際医療センター消化器外科(肝胆膵外科)の渡邉幸博氏らによるもので、詳細は5月29日付の「Liver International」に掲載された。

体力のある人は加齢に伴う腎機能低下が緩やか/筑波大学

 腎機能が保たれている一般集団において、全身持久力や心肺機能を反映する有酸素性運動能力と、加齢に伴う推算糸球体濾過量の経時的変化(eGFR slope)との関連を調査した結果、有酸素性運動能力が高い人ほど加齢に伴うeGFRの低下速度が緩やかであり、有酸素性運動能力が腎臓に対して保護的な役割を果たす可能性があることを、筑波大学の吉越 駿氏らが示した。Medicine & Science in Sports & Exercise誌オンライン版2026年7月3日号掲載の報告。  慢性腎臓病(CKD)患者では、腎機能低下に伴い有酸素性運動能力も低下することが知られている。

禁煙成功には“自信”が重要?働く世代対象の禁煙支援研究

 禁煙支援では、ニコチン依存の強さが禁煙成功に影響するとされているが、本人の「禁煙できる」という自信も重要かもしれない。今回、日本の企業向け禁煙プログラム参加者を対象とした研究で、禁煙への自信の高さが、加熱式たばこ利用者を含め禁煙成功と関連する可能性が示された。研究は北里大学大学院医療系研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は5月19日付の「Journal of Medical Internet Research(JMIR)」に掲載された。  スマートフォンアプリやニコチンガム・パッチを用いた禁煙支援が広がる中、禁煙成功に関わる要因への関心が高まっている。

救急搬送後の自殺再企図、若年と過量服薬がリスク因子に

 自殺企図で救急搬送された患者の自殺再企図は、初期対応時に予測できるのだろうか。今回、国内3施設で救急入院患者を追跡した研究により、若年であることと過量服薬(オーバードーズ)が、自殺再企図のリスク因子となる可能性が示された。初回自殺企図時に過量服薬を行った患者では、再企図リスクが約2.5倍高かったという。研究は獨協医科大学精神神経医学講座の佐々木太郎氏、古郡規雄氏らによるもので、詳細は4月29日付の「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。  自殺企図歴は、その後の自殺再企図や自殺死亡の強い予測因子とされる。これまで若年者では再企図が多く、性別による自殺行動の違いも報告されてきたが、その背景には自殺手段の違いが関与する可能性が指摘されている。

ピロリ除菌後の胃がん、喫煙が独立したリスク因子

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌に成功した後も胃がんが発症するリスクは残存し、喫煙が独立したリスク因子であることが、日本の全国規模コホート研究で示された。現在喫煙者における毎日の飲酒は、非喫煙・非飲酒者と比較して胃がんリスクのさらなる上昇と関連していた。朝日生命成人病研究所 附属病院の新井 絢也氏らによる本研究はHelicobacter誌2026年5・6月号に掲載された。

地域活動への参加、ワーク・エンゲージメントと関連――労働者1.4万人を追跡

 ボランティアや地域活動、趣味・学習活動などに参加している人は、仕事にも前向きに取り組めるのだろうか。今回、日本の労働者約1万4,500人を追跡した研究で、地域活動への参加とワーク・エンゲージメント(仕事に関連したポジティブで充実した心理状態)の高さとの関連が示された。特に地域貢献活動(ボランティアや地域活動)では、年数回程度の参加でも関連が認められ、参加頻度が高いほど、ワーク・エンゲージメントが高い傾向が示唆された。研究は産業医科大学産業保健経営学の植月三咲子氏、永田智久氏らによるもので、詳細は5月14日付の「Journal of Occupational Health」に掲載された。

コーヒーはなぜ脂肪肝を抑制するのか

 コーヒーは脂肪肝などの代謝性疾患リスクを減らすことがメタ解析で示唆されている。遊離脂肪酸や炭水化物を豊富に含む門脈血は脂肪肝の一因となるが、コーヒー摂取により上腸間膜動脈(SMA)とそれに続く門脈の血流が減少することが脂肪肝リスク抑制の一因となっている可能性がある。しかしながら、これまでコーヒー摂取でこれらの血流が減少するかどうか成人で検討した研究は見当たらない。今回、杏林大学の研究グループが若年男性の腹部血流を超音波検査で調べた結果、コーヒー摂取でSMAおよび門脈の血流が減少したことがわかった。Pharmacology research & perspectives誌2026年8月号に掲載。

日本人が「うつ病」と一緒に最も検索する臨床症状は?

 うつ病患者は、自殺や就労障害のリスクが高いため、発症後できるだけ早期に適切な治療を提供することがきわめて重要である。これまでのオンライン検索動向に基づくうつ病への関心に関する研究は、時間的変化や地域差に焦点を当てたものがほとんどで、検索クエリの内容に焦点を当てた分析は限られていた。横浜市立大学のRikako Shimizu氏らは、日本におけるうつ病に関するオンライン検索動向を明らかにし、うつ病に対する社会的な認識と臨床診断における症状構成概念との関連性を調査することを目的とし、本研究を実施した。PloS One誌2026年5月12日号の報告。