日本発エビデンス

パンデミックで日本でも大学生の自殺が増加

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で、日本国内の大学生の自殺者が増加しているとする、国立大学保健管理施設協議会のデータが報告された。茨城大学保健管理センターの布施泰子氏らが、国内の全国立大学を対象に行った調査の結果であり、「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に8月6日、レターとして掲載された。  これまでに、COVID-19パンデミック下で自殺率が増加しているとする報告が、国内外から発表されている。また海外からの報告には、大学生の間で、うつ、不安、希死念慮を抱く学生や、自殺既遂に至る学生が増えたとするものもある。

嗅覚の刺激で視覚が変化―レモンでは動きが遅くなり、バニラでは速くなる

 嗅覚を刺激することで、動く物のスピード感覚が変わることが明らかになった。レモンの香りを嗅ぐと物の動きが遅く見え、バニラの香りでは速く見えるという。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の對馬淑亮氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Neuroscience」に8月2日掲載された。  ヒトは視覚、聴覚、嗅覚などの、いわゆる五感を通して外界の情報を得ている。例えば、映画を見ているときは視覚と聴覚、料理をしているときは嗅覚と味覚などを同時に使っている。それら複数の感覚器からの情報は、互いに影響を及ぼし合うことが知られており、「クロスモーダル現象」と呼ばれている。

非糖尿病者の低血糖リスク因子が明らかに―特定健診データの解析

 糖尿病でない人の低血糖の頻度やリスク因子に関するデータが報告された。やせている人、喫煙者、そして高齢男性は低血糖リスクが有意に高いという。神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科の田中琴音氏(研究時点ではヘルスイノベーション科)、中島啓氏らが、特定健診データを解析した結果であり、詳細は「World Journal of Diabetes」に7月15日掲載された。  低血糖は血糖値が下がり過ぎた状態のことで、多くの場合、糖尿病用薬の副作用として発生する。糖尿病患者の低血糖は、心血管イベントや認知症リスクの上昇と関連していることが近年明らかになり、低血糖をできるだけ回避することの重要性が認識されるようになった。一方、糖尿病でない人にも低血糖が起きることが知られている。しかしその実態はほとんど分かっていない。中島氏らは厚生労働省より提供されたレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のデータを用いた解析により、非糖尿病者の低血糖の頻度とリスク因子の解明を試みた。

分娩様式と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、母親の自殺などを含む健康への悪影響と関連している。分娩様式は、産後うつ病のリスク因子といわれているが、この関連を調査した大規模コホート研究は、あまり行われていなかった。大阪大学の馬場 幸子氏らは、出産1ヵ月後および6ヵ月後における分娩様式と産後うつ病リスクとの関連を調査した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年7月31日号の報告。  単生児出産の母親8万9,954人を対象とした全国調査のデータを用いて、出産方法と産後うつ病との関連を調査した。産後うつ病の評価は、出産1ヵ月後および6ヵ月後にエジンバラ産後うつ病評価尺度(13点以上)を用いて測定した。産後うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、出産前の身体的、社会経済的、精神的要因で調整した後、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

プライマリケアで使用可能な認知症予測モデル―久山町研究のデータから開発

 久山町研究のデータを基に、プライマリケアで使用可能な認知症リスク予測モデルが開発された。神経学的検査などの専門的な検査を含まない、9項目の一般的な指標のみで構成されており、C統計量0.755と優れた予測能を有するという。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らの論文が、「Alzheimer's & Dementia : Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」に7月28日掲載された。  認知症の発症を予測するツールやスコアリングモデルはこれまでに複数開発されている。しかしそれらの多くは、リスク判定に神経学的検査や遺伝子検査を要し、汎用性が低くプライマリケアでは施行が難しい。また、開発に当たって認知症の発症を介護保険の申請などで判断しているため、一部の患者が見落とされている可能性がある。

小児のコロナ入院の多くが軽症例/国立成育医療研究センター・国立国際医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した。  これは、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19入院患者のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、本レジストリを使用した小児患者における分析は今回が初めてとなる。分析の結果、分析対象期間に登録された小児のCOVID-19入院患者の多くは、無症状または軽症であり、酸素投与を必要とした患者は15例、症状のあった患者全体の2.1%だった。また、ほとんどが無症状、または軽症であるにもかかわらず、入院期間の中央値は8日で、2歳未満や13歳以上の患者、基礎疾患のある患者は、何らかの症状が出やすい傾向にあることがわかった。そのほか、38℃以上の熱が出た患者は、症状のあった患者(730例)のうち10.3%(75例)、13~17歳の患者(300例)の約20%に、味覚・嗅覚異常がみられたことが示唆された。

アルツハイマー病スクリーニングのための網膜アミロイドイメージング

 アルツハイマー病のスクリーニングでは、アミロイド沈着のin vivoイメージングを行うための費用対効果に優れた非侵襲的な方法が求められる。網膜アミロイドは、アルツハイマー病の診断マーカーとなりうる可能性があるが、in vivoにおける網膜アミロイドイメージングに関する研究はほとんどない。岡山大学の田所 功氏らは、アルツハイマー病患者における網膜アミロイドのin vivoイメージングの有用性について調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年8月5日号の報告。

40代日本人女性、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波の上乗せ効果

 現在、わが国における乳がん検診は、40歳以上に対する2年に1度の乳房X線検査(マンモグラフィ)が推奨されているが、高濃度乳房ではマンモグラフィによる精度低下が指摘されている。一方、超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されるが、有効性評価に関する研究は報告されていない。今回、40代の日本人女性を対象に、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波検査併用による発見率・感度・特異度等を調べた大規模無作為化試験(J-START)の二次解析結果が報告された。東北大学の原田 成美氏らによるJAMA Network Open誌8月18日号への報告より。

禁煙のメリットは体重が増えても相殺されない―JPHC研究

 禁煙後に体重が増えたとしてもその増加幅が5kg以内なら、喫煙を続けた人よりも循環器疾患の発症リスクが有意に低下することを示唆するデータが報告された。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Heart」に6月2日掲載された。なるべく若いうちに禁煙した方が、より大きなメリットを得られることを示すデータも得られた。  禁煙が循環器疾患の予防にとって重要であることは、多くの研究から明らかになっている。一方で、禁煙によって体重が増えてしまうことがある。体重の増加は循環器疾患のリスク因子の一つであり、せっかくの禁煙の効果を相殺してしまうことも考えられる。しかし、禁煙後の体重増加が、実際に禁煙のメリットを弱めるのかどうかは、よく分かっていなかった。

認知症のBPSDに対するタンドスピロンの有効性

 愛媛大学の越智 紳一郎氏らは、認知症の周辺症状(BPSD)に対するタンドスピロン(buspironeを改良したazapirone系抗不安薬)の有効性について、とくに超高齢者をターゲットとして検討を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2021年8月31日号の報告。  2013年8月~2018年8月に特別養護老人ホームでBPSDを有する高齢者を対象として、オープンラベル観察研究を行った。認知症の重症度の評価には臨床的認知症尺度(CDR)、BPSDの重症度の評価には臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)を用いた。主要アウトカムは、ベースラインからタンドスピロン維持療法到達4週間後のBPSD重症度の変化とした。タンドスピロンは、30mg/日から開始し、1日3回に分けて投与した。2週間後に看護記録に基づき有効性が十分であると確認された場合、タンドスピロンの投与を継続し、有効性が不十分な場合、タンドスピロンを40~60mg/日へ増量した。

麻酔を用いた出産と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、出産後の女性が経験する最も一般的な精神疾患の1つであり、多くは1年以内に発症する。名古屋市立大学の鈴森 伸宏氏らは、日本において麻酔を用いた分娩が産後うつ病リスクの減少に影響を及ぼすかについて、検討を行った。BMC Pregnancy and Childbirth誌2021年7月23日号の報告。  麻酔を用いた分娩には、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下硬膜外麻酔、傍頸管ブロックを含めた。日本におけるプロスペクティブコホート研究であるJECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に登録された日本全国15地域の胎児記録データ10万4,065件を用いて検討を行った。麻酔の有無にかかわらず分娩様式と出産後1、6、12ヵ月の産後うつ病との関連について調整オッズ比(aOR)を算出するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。

慢性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 慢性片頭痛に利用可能な予防的治療は、さまざまな有効性および安全性の問題により制限されている。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、効果および忍容性の高さが確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌オンライン版2021年7月29日号の報告。

血漿量の変化が全死亡やがん死リスクと関連―特定健診データの解析

 血漿量の変化が、全死亡、心血管死、非心血管死(主としてがん死)のリスクと有意に関連するとの研究報告が、「PLOS ONE」に7月13日掲載された。山形大学医学部内科学第一講座の大瀧陽一郎氏、渡邉哲氏らが、特定健診のデータを解析して明らかになった。  血漿量は従来、主に心不全との関連で重視されているが、血漿量の正確な測定には侵襲を伴う煩雑な手技が必要なため、臨床ではあまり測定されていない。代わりに、ヘモグロビン値とヘマトクリット値、体重から血漿量を推算する方法が提案され、研究が行われるようになった。大瀧氏らも既に、この計算式から推算した血漿量と、理想血漿量との乖離の大きさが、死亡リスクと相関することを報告している。計算式による一時点の評価には、正確な血漿量との誤差が大きいとの指摘がある一方で、侵襲がわずかで繰り返し測定できるという利点がある。

統合失調症と双極性障害を鑑別する多遺伝子リスクスコアと病前知能との関連

 統合失調症と双極性障害は、臨床的および遺伝的に類似している疾患であるにもかかわらず、統合失調症患者の知能障害は、双極性障害患者よりも重篤である。統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝子座(つまり統合失調症に特異的なリスク)は特定されている。統合失調症に特異的なリスクに対する多遺伝子リスクスコア(PRS)は、健康対照者よりも統合失調症患者で高くなるが、知能障害に対する遺伝的リスクの影響は、よくわかってない。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症に特異的なリスクが、統合失調症および健康対照者の知能障害を予測するかについて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2021年7月23日号の報告。

サルコペニア予防に筋トレ+必須アミノ酸+茶カテキンを

 高齢者のサルコペニアの予防に筋力トレーニングが推奨されているが、必須アミノ酸と茶カテキンの摂取を追加すると、より大きなメリットを得られる可能性を示唆するデータが報告された。骨格筋量の増大に加えてバランス力も向上できる可能性が示唆されたという。徳島大学先端酵素学研究所の森博康氏らの研究によるもので、詳細は「Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition」6月号に掲載された。  加齢や疾患などで筋肉量減少や筋力低下が生じる「サルコペニア」は、要介護状態につながりやすく、効果的な予防・改善策の模索が続けられている。これまでのところ、筋力トレーニングに一定の効果があることが示されているが、栄養介入の有効性を示すエビデンスは十分でない。

妊娠前の睡眠時間と産後うつ病~日本での多施設共同研究

 産後うつ病は、世界における主要な公衆衛生上の問題であり、臨床的優先事項として挙げられている。名古屋大学の松尾 聖子氏らは、妊娠前の睡眠時間と産後うつ病との関連について、調査を行った。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2021年7月13日号の報告。  日本の産婦人科病院12施設より収集した2014~18年に出産した女性の臨床データを用いて、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。対象女性1万5,314人を妊娠前の睡眠時間に応じて5群に分類した(6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上)。妊娠前の睡眠時間が産後1ヵ月間のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)のスコアに影響を及ぼすかを判断するため、単変量および多変量回帰分析を行った。また、産後うつ病リスクが、妊娠前の睡眠時間に応じて分類された女性において、以前の出産経験の有無により異なるかについても評価した。

糖尿病薬物治療で最初に処方される薬は/国立国際医療研究センター

 糖尿病の治療薬は、さまざまな種類が登場し、患者の態様に合わせて治療現場で処方されている。実際、2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬はどのような治療薬が多いのだろうか。  国立国際医療研究センターの坊内 良太郎氏らのグループは、横浜市立大学、東京大学、虎の門病院の協力のもとこの実態について全国規模の実態調査を実施した。調査の結果、最初の治療薬としてDPP-4阻害薬を選択された患者が最も多く、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬がそれに続いた。

日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。  首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。

日本人の社会経済的状況と身体不活動との関連―NIPPON DATA2010

 就労の有無や学歴、収入などから把握される社会経済的状況と、身体不活動との関連が明らかになった。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の柳田昌彦氏らが、国内の大規模疫学研究「NIPPON DATA2010」のデータを解析した結果であり、詳細は「PLOS ONE」に7月15日掲載された。  近年、社会経済的状況と健康リスクとの関連が注目されるようになり、リスク因子の一つである身体活動・運動不足についても社会経済的状況との関連を示す複数の研究結果が海外から報告されている。ただし日本人対象の研究は少なく、また結果に一貫性が見られない。結果に一貫性がない理由として、研究対象の属性に偏りがあり、悉皆性に欠けていることが一因と考えられる。

悪性胸膜中皮腫に対するmiRNA製剤を開発/広島大学

 広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学研究室の田原 栄俊氏、 同大学原爆放射線医科学研究所・腫瘍外科の岡田 守人氏らの研究グループは、スリーディマトリックスと共同で、悪性胸膜中皮腫に対して顕著な治療効果の可能性がある核酸医薬の抗がん剤の開発に成功した。  共同開発した抗がん剤「MIRX002」は、天然型マイクロRNAを薬効成分とするもので、 岡田氏による悪性胸膜中皮腫を対象とする医師主導治験(第I相試験)の治験届がPMDAに受理され、治験開始準備が整った。