左右の肺がんで死亡リスクに差~日本のがん登録データ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/07/07

 

 肺がん罹患率は、解剖学的、遺伝的、環境的要因の影響により右肺と左肺で異なる可能性がこれまでの研究で示唆されている。今回、千葉県がんセンターの道端 伸明氏らが日本のがん登録データで調べたところ、右側肺がんが左側肺がんより多く、死亡リスクは男性では右側肺がんが高かったが、女性では差がなかったという。Cancer Epidemiology誌オンライン版2025年6月24日号に掲載。

 本コホート研究では、千葉県がん登録(2013~20年)のデータを用いて、原発性肺がん3万6,502例を対象とし、患者特性を右側肺がんと左側肺がんで比較した。年齢、性別、病期、組織型、その他の共変量で調整した死亡率の左右差を、カプランマイヤー生存曲線、ログランク検定、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・右側肺がん(60%)は左側肺がん(40%)よりも多かった。
・右側肺がんの死亡率は左側肺がんよりわずかに高かった(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:1.02~1.08、p=0.003)。
・男女別に分析すると、男性では右側肺がんの死亡リスクが高かったが(HR:1.08、95%CI:1.04~1.12、p<0.001)、女性では左右差は有意ではなかった。

 著者らは「右側肺がんの有病率が高いのは、解剖学的な違いやL858R変異の割合が高いなどの遺伝的要因によるのかもしれない」と考察し、「左右差による臨床的な影響は小さいものの、これらの結果は肺がんの病態に関する見識を提供し、個別化医療の進展に寄与する可能性がある」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)