医療一般|page:1

「かぜ」への抗菌薬処方、原則算定不可へ/社会保険診療報酬支払基金

 社会保険診療報酬支払基金は8月29日付けの「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)において、一般に「風邪」と表現される「感冒」や「感冒性胃腸炎」などへの内服の抗生物質製剤・合成抗菌薬を処方した場合の算定は、“原則認められない”とする方針を示した。  支払基金・国保統一事例は以下のとおり。  次の傷病名に対する抗生物質製剤【内服薬】又は合成抗菌薬【内服薬】※の算定は、原則として認められない。 ※ペニシリン系、セフェム系、キノロン系、マクロライド系の内服薬で効能・効果に次の傷病名の記載がないものに限る。

がん患者への早期緩和ケア、終末期の救急受診を減少

 がん患者を中心に、早期からの緩和ケア介入の重要性が示唆されているが、実際の患者アウトカムにはどのような影響があるのか。緩和ケア受診後の救急外来受診のタイミングと回数について調査した、韓国・ソウル大学病院で行われた単施設後ろ向きコホート研究の結果がJAMA Network Open誌2025年7月15日号に掲載された。  ソウル大学病院のYe Sul Jeung氏らは、2018~22年に、ソウル大学病院で緩和ケア外来に紹介され、2023年6月25日までに転帰が確定した成人の進行がん患者3,560例(年齢中央値68歳、男性60.2%)を解析した。主要評価項目は全期間と終末期(死亡前30日内)の救急外来受診数だった。

双極症に対する気分安定薬使用が認知機能に及ぼす影響〜メタ解析

 気分安定薬は、双極症に一般的に用いられる薬剤である。中国・四川大学のChang Qi氏らは、双極症患者に対する気分安定薬の使用が認知機能に及ぼす影響を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年7月26日号の報告。  PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane library、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。データ抽出はPRISMAガイドラインに従い、品質評価はCochrane Handbookに準拠し、実施した。メタ解析には、RevMan 5.4ソフトウェアを用いた。

日本女性、出産意欲の向上に関連する要素は?/神奈川県立保健福祉大学

 少子化が進む日本では、合計特殊出生率が2024年に1.15と過去最低を記録し、社会保障制度や労働力維持への影響が深刻化している。女性の就労率は上昇しているものの、長時間労働や不十分な育児支援のため、キャリアと出産・育児の両立は依然として課題である。こうした中、東京・丸の内エリアの企業に勤務する女性を対象に、キャリア志向と妊娠意欲の関連を明らかにする大規模調査が行われ、その結果がBMC Women’s Health誌2025年9月2日号に掲載された。

AIによる診療記録作成で医師のバーンアウトが減少

 診察室での医師と患者の会話を自動的に記録して解析し、診療記録を生成する技術をAmbient Documentation Technology(ADT)という。新たな研究で、ADTの使用は臨床医のバーンアウト(燃え尽き症候群)の減少やウェルビーイングの向上と関連していることが示された。米マス・ジェネラル・ブリガム(MGB)のRebecca Mishuris氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に8月21日掲載された。  この研究の背景情報によると、診療記録の負担は臨床医のバーンアウトの一因とされている。今回の研究でMishuris氏らは、ADTを試験的に導入しているマサチューセッツ州のMGBとジョージア州のエモリーヘルスケアにおけるADTの使用状況を調べ、ADTの使用が臨床医の記録業務負担の感じ方およびバーンアウトに与える影響を検討した。

肺切除後の肺瘻リスク、低侵襲開胸手術で軽減の可能性

 肺切除術は肺がん治療の要となるが、術後早期に肺瘻(空気漏れ)が生じることも少なくない。今回、手術アプローチの違いが肺瘻の発生率や転帰に影響する可能性があるとする研究結果が報告された。ILO1805試験の事後解析で、胸腔鏡手術(TS)の方が低侵襲開胸手術(MIOS)よりも肺瘻の発生率が有意に高く、その持続期間やドレーン留置期間も長くなる傾向が示されたという。研究は山形大学医学部附属病院第二外科の渡辺光氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に7月21日掲載された。

9月20日・21日、産業保健の最新動向を学ぶ!日本産業保健法学会【ご案内】

 2025年9月20日(土)~21日(日)、北里大学(東京・港区)を会場に、日本産業保健法学会第5回学術大会が行われる。全体テーマは、「AIと産業保健法:DX時代の多様化した産業保健と法」。AIのビジネスへの本格的な普及を鑑み、健康診断やストレスチェックシステムの一元化、健康情報の効率的管理・可視化等による業務効率向上などをテーマに、さまざまなシンポジウムが開催される。産業医、産業医志望者にとって、最新の事例や研究にふれるチャンスとなる。  開催概要は以下のとおり。

心房細動と動脈硬化、MRIで異なる脳血管病変示す/ESC2025

 心房細動(AF)とアテローム性動脈硬化症(以下、動脈硬化)は、一般集団と比較して脳血管病変の発生率を高める。今回、AF患者は動脈硬化患者と比較して、非ラクナ型脳梗塞、多発脳梗塞、重度の脳室周囲白質病変の発生頻度が高いことが明らかになった。本研究結果はカナダ・マクマスター大学のTina Stegmann氏らが8月29日~9月1日にスペイン・マドリードで開催されたEuropean Society of Cardiology 2025(ESC2025、欧州心臓病学会)の心房細動のセッションで発表し、European Heart Journal誌オンライン版2025年8月29日号に同時掲載された。

うつ病治療において有酸素運動と組み合わせるべき最適な治療は

 非薬理学的介入としての有酸素運動は、これまでのうつ病治療における有効な補助療法であるといわれている。しかし、有酸素運動による介入に関する包括的な評価は依然として不十分である。中国・海南師範大学のLei Chen氏らは、うつ病患者における有酸素運動と併用したさまざまな治療介入の有効性をシステマティックに評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年7月25日号の報告。  PICOSフレームワークに基づき、2024年6月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Web of Science、Cochrane Library、Embase、Scopus、CNKI、Wanfang、CBMより検索した。スクリーニングおよびデータ抽出は、独立して実施した。ネットワークメタ解析はStata 15.0およびR 4.4.1、バイアスリスクはCochrane Risk of Biasツール、エビデンスの質はCINeMAを用いて評価した。

DPP-4阻害薬でコントロール不十分な2型糖尿病にイメグリミン追加が有効~FAMILIAR試験

 食事療法・運動療法・DPP-4阻害薬投与で血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者に対して、イメグリミンの追加で24週までにHbA1c値が有意に低下したことが、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(FAMILIAR試験)の中間解析で示された。川崎医科大学の加来 浩平氏らがDiabetes, Obesity and Metabolism誌2025年6月号で報告した。

高齢者への不適切処方で全死亡リスク1.3倍、処方漏れで1.8倍

 高齢者に対する薬剤治療においては、ポリファーマシーや処方漏れなどの問題点が指摘されている。イスラエルの研究グループによる長期前向きコホート研究によると、高齢者の80%以上が不適切な処方を受けており、不適切な薬剤を処方された群では死亡リスクが上昇した一方で、必要な薬剤の処方漏れも死亡リスクの上昇と関連していたという。本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年8月11日号に掲載された。  研究者らは、イスラエルの縦断前向きコホート研究の第3回追跡調査(1999~2007年)で収集されたデータを使用し、地域に住む高齢者1,210例(平均年齢72.9歳、女性53%)を対象に、不適切処方と長期死亡率との関連性を評価した。不適切な処方には「不要あるいは有害になり得る薬剤の処方(Potentially Inappropriate Medications:PIM)」と「必要処方の省略(Prescribing Omissions:PPO)」が含まれており、それらの識別には米国の2023年版Beers基準と欧州のSTOPP/START基準(v3)が用いられた。死亡は診断コードで特定され、主要アウトカムは全死亡率と非がん死亡率だった。参加者は死亡または2022年3月まで追跡され、追跡期間の中央値は13年だった。

オメガ3脂肪酸が小児の近視抑制に有効?

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸(以下、オメガ3脂肪酸)には、心臓病、認知症、一部のがんのリスク低下など、健康に対するさまざまな潜在的効果のあることが示されているが、小児の近視の発症を防ぐのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。香港中文大学(中国)眼科学分野教授のJason Yam氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Ophthalmology」に8月19日掲載された。  近視は、目の形状により、入射光線が目の奥にある光を感じる視細胞の壁である網膜に到達できないときに発生する。近視の罹患率は世界的に上昇傾向にあり、予防戦略を策定するためには食事などの修正可能なリスク因子を特定する必要がある。これまでの動物実験では、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が、脈絡膜の血流と強膜の低酸素状態を調節することで近視の進行を抑制する可能性のあることが示唆されている。脈絡膜は網膜の外側の血管が豊富な膜のことであり、強膜は眼球の白目の部分のこと。オメガ3脂肪酸は、主に油の多い魚に含まれているが、一部の種子やナッツにも含まれている。

厳格な血圧コントロールは心臓の健康だけでなく費用対効果も改善

 厳格な血圧コントロールは心血管疾患のリスクが高い患者の健康だけでなく、医療費の費用対効果にも良い影響をもたらすことが、新たな研究で示された。収縮期血圧(SBP)の目標値を120mmHg未満に設定することは、それよりも高い目標値を設定する場合と比べて、より多くの心筋梗塞や脳卒中、心不全、そのほかの心疾患の予防につながるほか、費用対効果もより優れていることが明らかになったという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のKaren Smith氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月19日掲載された。

慢性咳嗽のカギ「咳過敏症」、改訂ガイドラインで注目/杏林

 8週間以上咳嗽が持続する慢性咳嗽は、推定患者数が250〜300万例とされる。慢性咳嗽は生活へ悪影響を及ぼし、患者のQOLを低下させるが、医師への相談割合は44%にとどまっているという報告もある。そこで、杏林製薬は慢性咳嗽の啓発を目的に、2025年8月29日にプレスセミナーを開催した。松本 久子氏(近畿大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学教室 主任教授)と丸毛 聡氏(公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 呼吸器内科 主任部長)が登壇し、慢性咳嗽における「咳過敏症」の重要性や2025年4月に改訂された『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025』に基づく治療方針などを解説した。

男女間におけるレビー小体とアルツハイマーにおける認知機能低下の違い

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのMadeline Wood Alexander氏らは、アルツハイマー型認知症(AD)とレビー小体型認知症(LBD)の神経病理および認知機能低下に対する性別や閉経年齢の影響を調査した。Annals of Neurology誌オンライン版2025年7月11日号の報告。  Rush Alzheimer's Disease Centerの3つのコホート(Religious Orders研究、Rush Memory and Aging Project、Minority Aging Research研究)およびNational Alzheimer's Coordinating Centerの神経病理データセットを用いて、分析を行った。LBD(大脳新皮質/辺縁系型vs.非大脳新皮質型)とADの神経病理学的評価には、神経斑(ジストロフィー性神経突起により囲まれているβアミロイド斑)と神経原線維変化を含めた。各データセットにおいて、LBDと性別が神経斑、神経原線維変化、認知機能低下に及ぼす相互の影響を検証した。さらに、Rushデータセットを用いて、女性の自然閉経年齢がLBDと神経斑、神経原線維変化、認知機能低下との関連を変化させるかを検証した。

HR+/HER2+転移乳がんへのパルボシクリブ+トラスツズマブのOS(PATRICIA)/ESMO Open

 HR+/HER2+転移乳がんに内分泌療法を併用または非併用でパルボシクリブ+トラスツズマブの有効性を検討した第II相PATRICIA試験の結果、最終的な全生存期間(OS)中央値は29.8ヵ月であったことを、スペイン・SOLTI Cancer Research GroupのTomas Pascual氏らが報告した。また、バイオマーカー分析の結果についても報告した。ESMO Open誌2025年9月1日号に掲載。  本試験は、2015年7月~2018年11月に患者を登録し、スペインの17施設で実施された研究者主導の多施設共同非盲検第II相試験である。対象は、トラスツズマブ治療歴があり、2~4レジメンの治療後に病勢進行が認められた閉経後HER2+転移乳がん患者で、ER-症例はコホートA(パルボシクリブ+トラスツズマブ)、ER+症例はコホートB1(追加治療なし)またはコホートB2(レトロゾール)に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師による6ヵ月時点の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はOSと長期PFSであった。

全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(以下、JSH2025)を8月29日に発刊した。6年ぶりとなる今回の改訂にあたり、大屋 祐輔氏(琉球大学名誉教授/高血圧管理・治療ガイドライン2025作成委員長)と苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が降圧目標や治療薬の位置付けと選択方法などについて、7月25日に開催されたプレスセミナーで解説した。

中年期の高コルチゾール値は閉経後のアルツハイマー病発症リスクと関連

 中年期にコルチゾール値が高い閉経後の女性では、アルツハイマー病(AD)のリスクが高まるという研究結果が、「Alzheimer’s & Dementia」に4月24日掲載された。  米テキサス大学サンアントニオ校グレン・ビッグス・アルツハイマー病・神経変性疾患研究所のArash Salardini氏らは、中年期のコルチゾール値が15年後のADバイオマーカー検査の結果を予測できるかを検討するために、縦断的データを用いた後ろ向き研究を実施した。解析対象となったのは、フラミンガム心臓研究に参加した認知機能障害のない成人305人のデータであった。

心不全入院へのダパグリフロジンの効果~DAPA ACT HF-TIMI 68試験/ESC2025

 SGLT2阻害薬は、外来での心不全治療において心血管死または心不全増悪のリスク低減に寄与するが、心不全による入院での投与開始データは限定的である。今回、ダパグリフロジンによるさまざまな臨床研究を行っているTIMI Study GroupがDAPA ACT HF-TIMI 68試験を実施。その結果、ダパグリフロジンを入院中に開始してもプラセボと比較して2ヵ月にわたる心血管死または心不全悪化リスクを有意に低下させなかった。ただし、3試験のメタ解析からSGLT2阻害薬が心血管死または心不全悪化の早期リスクと全死亡リスクを有意に低下させることが明らかになった。

日本人双極症患者の労働生産性に対する抑うつ症状、認知機能低下の影響

 琉球大学の高江洲 義和氏らは、日本人双極症患者における労働生産性低下と抑うつ症状および認知機能低下との関連性、また双極症の症状と労働生産性低下との関連性を評価するため、48週間の縦断的研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。  就労中または病気療養中の日本人双極症成人患者を対象に、48週間のプロスペクティブ縦断的ウェブベースコホート研究を実施した。認知機能低下、労働生産性低下、生活の質(QOL)、抑うつ症状の重症度、睡眠障害を評価する検証済みの自記式評価尺度を含む質問票調査を用いて、ベースラインから48週目まで12週ごとに調査した。主要エンドポイントは、48週時点の認知機能のベースラインからの変化と労働生産性低下との相関とした。副次的エンドポイントは、各症状スコアのベースラインからの変化、認知機能低下、労働生産性低下、抑うつ症状、QOL、睡眠障害とした。