呼吸機能は健康の重要な指標であるが、生涯を通じた呼吸機能の経過に関する知見は、年齢範囲が断片的なデータに基づいている。そこで、スペイン・バルセロナ国際保健研究所のJudith Garcia-Aymerich氏らの研究グループは、複数の大規模コホート研究のデータを統合し、4~80歳の呼吸機能の経過を解析した。その結果、1秒量(FEV1)および努力肺活量(FVC)は2段階の増加を示し、20代前半でピークに達した後、プラトーになることなく、ただちに低下し始めることが示された。また、1秒率(FEV1/FVC)は4歳から生涯を通じて低下し続けた。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌2025年7月号に掲載された。
本研究は、欧州とオーストラリアの一般住民を対象としたコホート研究8件のデータを統合した加速コホート研究である。呼吸機能、喫煙状況、BMI、喘息診断に関する2回以上の記録がある3万438例(女性1万5,703例、男性1万4,735例)を対象として、4~80歳のFEV1、FVC、FEV1/FVCの経過を調べた。
主な結果は以下のとおり。
・FEV1とFVCはいずれも2段階の増加を示し、女性は20歳、男性は23歳でピークに達した。男女別のまとめは以下のとおり。
【FEV1】
女性:13歳まで234mL/年、その後20歳でピークに達するまで99mL/年の速さで増加し、以降は26mL/年の速さで低下した。
男性:16歳まで271mL/年、その後23歳でピークに達するまで108mL/年の速さで増加し、以降は38mL/年の速さで低下した。
【FVC】
女性:14歳まで232mL/年、その後20歳でピークに達するまで77mL/年の速さで増加し、以降は26mL/年の速さで低下した。
男性:16歳まで326mL/年、その後23歳でピークに達するまで156mL/年の速さで増加し、以降は42歳まで22mL/年、その後は36mL/年の速さで低下した。
【FEV1/FVC】
FEV1/FVC比は、男女共に4歳から生涯を通じて低下した。
・喘息が持続している集団は、喘息歴のない集団と比較して、男女共にFEV1のピークが早期化した(女性:17歳vs.20歳、男性:19歳vs.23歳)。また、喘息が持続している集団は成人期を通じてFEV1が低く、生涯にわたりFEV1/FVCが低かった。喘息が持続している集団におけるFVCのピークの早期化は、女性のみで観察された(18歳vs.25歳)。
・喫煙を継続する集団は、喫煙歴のない集団と比較して、男女共に30代半ば~後半からFEV1およびFEV1/FVCの低下が加速した。
(ケアネット 佐藤 亮)