ファモチジンが、低用量アスピリン潰瘍の新たな予防治療に

提供元:ケアネット

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公開日:2009/07/23

 



低用量アスピリン使用中の患者にみられる消化管潰瘍の予防に、ファモチジン(商品名:ガスター、など)が高い効果を示すことが、イギリスGlasgow大学Crosshouse病院のAli S Taha氏らが行った第III相試験(FAMOUS試験)で明らかとなった。低用量アスピリンは世界的に最も広範に使用されている薬剤のひとつであり、心血管疾患、脳血管疾患、糖尿病に対する抗血栓療法のOTC薬および処方箋薬として使用量が増大しているという。一方、消化性潰瘍による出血、穿孔などの上部消化管合併症やときに死亡例もみられるなどの問題をかかえており、有効な予防治療の確立が切望されている。Lancet誌2009年7月11日号(オンライン版2009年7月6日号)掲載の報告。

3か月後の新規の胃・十二指腸潰瘍、びらん性食道炎の発症状況を評価




ファモチジンは耐用性に優れるとされるヒスタミンH2受容体拮抗薬。FAMOUS(Famotidine for the Prevention of Peptic Ulcers in Users of Low-dose Aspirin)試験の研究グループは、血管保護の目的で低用量アスピリンを使用中の患者において、消化性潰瘍およびびらん性食道炎の予防治療としてのファモチジンの効果を評価するために二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。

Crosshouse病院(Kilmarnock)の心血管・脳血管・糖尿病クリニックから、他の心保護薬の使用の有無にかかわらず低用量アスピリン(75~325mg/日)投薬中の成人患者(18歳以上)が登録された。ベースライン時の内視鏡検査にて潰瘍あるいはびらん性食道炎の存在が否定された患者が、ファモチジン20mg×2回/日を投与する群(204例)あるいはプラセボ群(200例)に無作為に割り付けられた。

無作為割り付け後12週目に最終的な内視鏡検査が行われた。1次エンドポイントは、12週目における新規の胃・十二指腸潰瘍あるいはびらん性食道炎の発症とした。両群とも、少なくとも1回の投与を受けた全症例が解析の対象となった。

消化管障害が80~95%も低下、上部消化管出血は認めず




すべての割り付け例が1回以上の投与を受けITT解析の対象となった。82例(ファモチジン群:33例、プラセボ群:49例)が最終の内視鏡検査を受けなかったが、正常所見として解析された。投与中止のおもな理由は患者による継続拒否であった。

12週目における胃潰瘍の発症率は、ファモチジン群が3.4%(7/204例)と、プラセボ群の15.0%(30/200例)に比べ有意に低下した(オッズ比:0.20、95%信頼区間:0.09~0.47、p=0.0002)。十二指腸潰瘍は、ファモチジン群0.5%(1/204例)、プラセボ群8.5%(17/200例)(オッズ比:0.05、95%信頼区間:0.01~0.40、p=0.0045)、びらん性食道炎はそれぞれ4.4%(9/204例)、19.0%(38/200例)(オッズ比:0.20、95%信頼区間:0.09~0.42、p<0.0001)と、いずれもファモチジン群で有意な低減効果を認めた。

有害事象の発現例数も、ファモチジン群(9例)がプラセボ群(15例)よりも少なかった。入院を要する上部消化管出血は、プラセボ群で4例に認めたが、ファモチジン群では見られなかった。狭心症がファモチジン群で2例に、プラセボ群では4例に認められた。

著者は、「ファモチジンは、低用量アスピリン使用中の患者における胃・十二指腸潰瘍およびびらん性食道炎の予防治療として有効である」と結論したうえで、「ファモチジンは、血管保護を要する患者における消化管障害の予防治療の新たな選択肢である。過剰処方や使用期間の長さが指摘されるプロトンポンプ阻害薬に代わる可能性もある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)