非専門家による母親への直接介入で、子どもの発達が改善

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/05/15

 



社会経済的に劣悪な状態にある母子に対して、訓練を受けた非専門的な一般人が家庭において介入することで、母親としての対応や子どもの情緒的発達にベネフィットがもたらされることが、イギリスReading大学心理学科のPeter J Cooper氏らが南アフリカで実施した無作為化試験で明らかとなった。母-幼児関係は、社会経済的条件の悪化や母親のうつ病によって有害な影響を受け、その結果として子どもの発育に心理的、社会的、身体的な悪影響を及ぼす。欧米では、母子関係への直接的な介入によって関係そのものばかりでなく子どもの成長が改善されるとのエビデンスが示されているという。BMJ誌2009年4月25日号(オンライン版2009年4月14日号)掲載の報告。

ケープタウン市郊外の貧困地区の妊婦を対象とした無作為化対照比較試験




研究グループは、南アフリカの社会経済的環境が極めて劣悪な状態にある都市周辺部地域において、母-幼児関係および子どもの母親に対する愛着心の保持が改善されるようデザインされた介入法の有効性を評価するために、無作為化対照比較試験を行った。対象は、ケープタウン市近郊のカエリチャ(Khayelitsha)地区に居住する449人の妊婦であった。

介入は妊娠後期から産後6ヵ月まで行われた。初めて訓練を受けた非専門的な地域行政職員が妊婦の家庭を訪問し、親としての役割について支援、指導した。介入は、繊細で思いやり豊かな親としての機能を促進すること、および子どもの母親に対する愛着心の保持を目的とするものであった。対照群の妊婦は研究チームによる治療的な情報の提供は受けなかった。

主要評価項目は、産後6ヵ月、12ヵ月における母子関係の質および18ヵ月における子どもの愛着心の保持とした。副次評価項目は、産後6ヵ月、12ヵ月における母親のうつ病の発症とした。

母子関係の質、子どもの母親への愛着心の保持ともに改善




介入によって母子関係が有意に改善された。産後6ヵ月、12ヵ月のいずれにおいても、母親が子どもと接する際、対照群に比べ介入群において繊細な対応が有意に多く(6ヵ月:p<0.05、12ヵ月:p<0.05)、押しつけ的な対応は有意に少なかった(6ヵ月:p<0.05、12ヵ月:p<0.05)。

産後18ヵ月における子どもの母親への愛着心の保持率も、対照群の63%に対し介入群は74%に達しており、介入による有意な改善効果が認められた(オッズ比:1.70、p<0.05)。

母親のうつ病の発症率には介入による有意な低減効果はみられなかったが、産後6ヵ月における抑うつ気分についてはベネフィットを認めた(p=0.04、Edinburgh産後うつ病スケールによる)。

著者は、「地域の非専門家女性による家庭での介入は、子どもの良好な成長の予測因子として知られる『母子関係の質』および『子どもの母親への愛着心の保持』について有意な改善効果をもたらした」と結論し、「このアプローチは低コストであるため、開発途上国における現行の一般人口レベルの保健システムに、母親と子どもへの介入を統合することも可能であろう」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)