男性の肥満は褐色脂肪組織の活性低下が関係

提供元:ケアネット

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公開日:2009/04/22

 



褐色脂肪組織が体重の調節にとって重要であることが動物実験などによって明らかになったが、褐色脂肪組織の成人にとっての生理的意義は?
 Nutrition and Toxicology Research Institute Maastricht(オランダ)のWouter D. van Marken Lichtenbelt氏らのグループは、つい最近まで小型哺乳類と乳児だけに関係する話とされていた褐色脂肪組織について、寒冷環境下での肥満および非肥満男性の違い(褐色脂肪組織の有無、分布、活性)について系統的調査を行った。NEJM誌2009年4月9日号より。

非肥満男性10例と肥満男性14例の、褐色脂肪組織の活性を調査




調査は計24例の健常な男性[BMI 25未満の非肥満型10例(20~32歳)と、BMI 25以上の過体重・肥満型14例(18~30歳)]を、通常の気温環境(22℃)と寒冷環境(16℃)の両方に曝露し、褐色脂肪組織の活性(身体組成とエネルギー代謝との関連を調査)を調べる方法で行われた。褐色脂肪組織の活性は、PET/CT断層撮影にて判定。身体組成とエネルギー消費は、二重エネルギーX線吸光光度測定法と間接熱量測定法を用いて測定した。

肥満男性の多くで活性低下が見られた




結果、寒冷環境への曝露では被験者24例中23例(96%)で、褐色脂肪組織の活性化が観察された。一方、通常の気温環境では観察されなかった。

また活性は、過体重・肥満被験者のほうが、非肥満被験者より有意に低かった(P = 0.007)。BMIと体脂肪率はいずれも、褐色脂肪組織と有意に負の相関がみられた一方で、安静時代謝率とは有意に正の相関を示した。

これらの結果からLichtenbelt氏は、若年男性は褐色脂肪組織を持つ割合は高いこと、過体重・肥満男性の褐色脂肪組織の活性は低下しており、褐色脂肪組織は男性の代謝にとって重要であることがわかったと結論している。また、褐色脂肪組織は肥満治療のターゲットとなり得る可能性についても示唆した。

(朝田哲明:医療ライター)