不整脈原性右室心筋症の新しい診断検査法

提供元:ケアネット

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公開日:2009/03/25

 



不整脈や突然死との関連が深い不整脈原性右室心筋症(ARVC)の新しい診断検査法について、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター病理学部門のAngeliki Asimaki氏らが、免疫組織化学的分析法を検討した。ARVCは臨床症状が極めて多様な一方、遺伝的浸透度が低く、また通常の心内膜筋生検標本ではARVCの構造変化の関係から病理学的所見による診断を得ることは難しい。Asimaki氏らは、心筋の細胞質蛋白であるデスモソーム蛋白の一つプラコグロビン(別名:γ-カテニン)の分布が、ARVC患者の稀な1型であるNaxos病やカルバハル症候群の患者で激減していたことや、デスモソーム蛋白遺伝子と一般的なARVCとの関連を検討するスタディでプラコグロビン減少を見いだしていたことをもとに本試験を行った。NEJM誌2009年3月12日号より。

ARVC標本全例でプラコグロビンの著しい低下を確認




Asimaki氏らは、デスモソーム蛋白の分布の変化が、ARVCに対する感度および特異度が高く、診断検査法として利用可能かを検討することを目的とし、ヒト心筋標本の免疫組織化学的分析を行った。標本数は11例。なおARVCではデスモソーム蛋白遺伝子の変異が約40%とされているが、本試験標本では8例で認められた。また対照標本として剖検心筋標本10例が用意された。

結果、ARVC標本のすべてでプラコグロビンの著しい低下が見られた。対照標本では見られなかった。

デスモソーム蛋白にはプラコグロビン以外にも複数あり、本試験ではそれらの様々な変化が見られたが、非デスモソーム蛋白(N-カドヘリン)については全例正常で変化は見られなかった。

感度91%、特異度82%




プラコグロビンの低下がARVCに特異的かどうかを調べるため、肥大型、拡張型、虚血性の心筋症患者15例の心筋標本を分析したが、ARVC標本を含む全標本で、接合部におけるプラコグロビンとN-カドヘリンとの見分けがつかなかった。

試験では、ジョンズ・ホプキンスARVC登録の心生検標本を用いて盲検下での免疫組織化学的分析も行われた。

それらの結果、臨床的な診断でARVCと確定していた11例のうち10例で正確な診断ができ、ARVCではなかった11例のうち10例について正しく除外ができた。感度は91%、特異度は82%、陽性適中率は83%、陰性適中率は90%。ARVC標本でのプラコグロビンの低下は左室と心室中隔を含め広範にわたって認められた。

Asimaki氏らは「通常の心内膜心筋生検標本を用いたルーチンの免疫組織化学的分析は、非常に感度、特異度に優れたARVC診断検査と言えるだろう」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)