高リスク早期子宮内膜癌に対する術後放射線外部照射にベネフィットはあるか?:ASTEC/EN.5試験

提供元:ケアネット

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公開日:2009/01/22

 



中等度~高リスクの早期子宮内膜癌では、生存率の改善を目的に術後放射線外部照射をルーチンに行う治療法は推奨されないことが、ASTEC試験およびEN.5試験の系統的レビューとメタ解析によって明らかとなった。ASTEC試験はイギリス医療審議会(MRC)が、EN.5試験はカナダ国立がん研究所(NCIC)が別個に実施した国際的な大規模臨床試験である。Lancet誌2009年1月10日号(オンライン版2008年12月13日号)掲載の報告。

経過観察群と放射線外部照射群を比較




病理学的に低リスクの早期子宮内膜癌は手術のみで十分な治療が可能である。これまでおもに再発リスクが中等度の患者において、手術に加えて骨盤内への放射線の外部照射を施行するアプローチを評価する小規模な臨床試験が実施されてきた。これらの試験では、局所再発リスクの低減効果が示されているが、無再発生存率や全生存率の改善効果を示すエビデンスはまだない。

ASTEC試験とEN.5試験の研究グループは、死亡および再発のリスクが中等度~高度の早期子宮内膜癌女性における術後放射線外部照射の有用性を評価する無作為化試験を実施した。

1996年7月~2005年3月までに、7ヵ国112施設から中等度~高リスクの早期子宮内膜癌905例(ASTEC試験789例、EN.5試験116例)が登録され、術後に経過観察する群(453例)あるいは放射線外部照射を施行する群(452例)に無作為に割り付けられた。

骨盤内への目標照射線量は合計40~46Gy(EN.5試験は45Gy)とし、1日1回の割合で20~25回(EN.5試験は25回)に分けて週5回の治療を行った。主要評価項目は全生存率とした。

メタ解析でもベネフィット確認できず




フォローアップ期間中央値58ヵ月の時点における死亡例数は、経過観察群68例(15%)、外部照射群67例(15%)と両群で同等であり、全生存率における外部照射の優位性は示されなかった(ハザード比:1.05、p=0.77)。5年生存率は両群とも84%であった。

ASTEC試験とEN.5試験の複合データのメタ解析では、全生存率に関する外部照射のベネフィットは認められなかった(ハザード比:1.04、95%信頼区間:0.84~1.29)。5年の時点で外部照射のベネフィットは絶対値で3%以上に達していたが、これも十分に除外しうるものであった。

小線源照射が施行された症例(53%)では、対象が中等度~高リスク例にもかかわらず経過観察群の5年局所再発率は6.1%(外部照射群は3.2%)にすぎず、低リスク例を対象とした他の試験よりも低値であった。

研究グループは、「中等度~高リスクの早期子宮内膜癌では、生存率の改善を目的に術後放射線外部照射をルーチンに行う治療法は推奨されない」と結論し、「局所再発の予防における外部照射のベネフィットは小さく、有害事象の問題もある」と付言している。

(菅野守:医学ライター)