汚染ヘパリン問題を裏付ける全米疫学調査報告

提供元:ケアネット

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公開日:2009/01/14

 



全米で昨年大きな問題となったいわゆる汚染ヘパリン問題に関して、米国疾病対策予防センター(CDC)の感染情報サービスプログラムに所属するDavid B. Blossom氏らが行った疫学調査報告が、NEJM誌2008年12月18日号(オンライン版2008年12月3日号)で公表された。

この問題は、ミズーリ州の1小児病院で集団発生した透析受療患児の重度の有害反応(顔面浮腫、頻脈、低血圧症、蕁麻疹、悪心)の発生が、2008年1月7日にCDCに報告されたことに端を発する。すぐに調査を開始したCDCは、類似報告が全米で起きていること、いずれもバクスターヘルスケア社のヘパリンを用いた患者であったことから、同17日に同製品の自主回収開始、2月には全面回収措置が取られ、3月に入ると米食品医薬品局(FDA)から、有害反応は同社製ヘパリンが過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)によって汚染されていることが原因であると発表された。

2ヵ月半で152件の有害反応が起きていた




 本報告は、2007年11月1日以降、ミズーリ州で集団発生したアレルギー反応と一致する徴候および症状を呈した患者の臨床情報を集約したもので、施設レベルでの危険因子を同定するため、有害反応が報告された21施設と、報告がなかった23施設から情報が集められた。併せて、有害反応報告施設から未開封のヘパリンバイアルを入手し、汚染物質検査も実施された。

2007年11月19日~2008年1月31日に、ヘパリンと関連する有害反応が確認されたのは13州にわたる患者113人、152件(血液透析患者100人130件、心臓病受療患者6人8件、フォトフェレシス受療患者7人14件)。血液透析患者の有害反応までの時間は平均5.1分、低血圧症(50.0%)の頻度が最も高く、悪心(48.7%)、呼吸困難(37.5%)と続いた。顔面腫脹は23.7%、最初の施設で報告された蕁麻疹は全体では3.3%と稀だった。

問題ヘパリンと重度の有害反応との関連は100%




有害反応との関連因子について、ヘパリン液ほか透析機器やダイアライザーなどを含め、製造会社別に調べた結果、最も強い関連因子は「バクスターヘルスケア社製ヘパリン使用」だった(有害反応報告施設で100%使用 vs. 未報告施設では4.3%使用、P<0.001)。

また有害反応報告施設から提供された未開封ヘパリンバイアルからは、OSCSが検出され、分析の結果、OSCS汚染ヘパリンの有害反応は、投与後30分以内の低血圧症、悪心、呼吸困難を特徴とすることが確認された。

ヘパリンロット情報が入手できた130件のうち128件(98.5%)は、OSCS汚染ヘパリンを保有施設で発生していること、投与されたヘパリンロット番号が判明している54件のうち52件(96.3%)で、OSCS汚染ヘパリン投与後に有害反応が生じたことも確認された。

これらから報告をまとめたBlossom氏は、「全国的に発生した今回の有害反応とOSCS汚染ヘパリンは疫学的に関連していた。報告された臨床所見は、OSCSによって汚染されたヘパリンが集団有害反応の原因であることをさらに裏付けるものである」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)

関連:「中国製原料使用のヘパリンが毒ヘパリンであるEBM」2008/6/18号