相同組み換え修復遺伝子に変異を有する転移のあるアンドロゲン経路修飾感受性(APMS)前立腺がんの治療において、タラゾパリブ(PARP阻害薬)+エンザルタミドはプラセボ+エンザルタミドと比較して、画像評価に基づく3年無増悪生存率(PFS)が有意に優れ、その一方で重篤な有害事象が多く発現することが、米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏らが実施した「TALAPRO-3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年5月30日号で発表された。
27ヵ国の第III相無作為化プラセボ対照比較試験
TALAPRO-3試験は、日本を含む27ヵ国266施設で進行中の第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Pfizerの助成を受けた)。
2021年6月~2023年5月に、年齢18歳以上(日本は20歳以上)で、1つ以上の相同組み換え修復遺伝子に変異を有するAPMS前立腺がん患者599例を登録した。
被験者を、タラゾパリブ+エンザルタミドの投与を受ける群(300例、年齢中央値70歳[範囲:45~89])、またはプラセボ+エンザルタミドの投与を受ける群(299例、69歳[範囲:44~86])に無作為に割り付けた。試験薬はすべて1日1回、経口投与した。
主要評価項目は、試験責任医師が画像診断に基づいて評価したPFS。重要な副次評価項目は全生存期間(OS)であった。
ベースラインで、患者の35%が
BRCA1または
BRCA2遺伝子の変異を有していた。最も頻度の高い相同組み換え修復遺伝子変異は
BRCA2(30%)で、次いで
ATM(28%)、
CDK12(19%)、
CHEK2(15%)の順であった。
3年OS率には差がない
追跡期間中央値は、タラゾパリブ群が37.6ヵ月、プラセボ群は37.7ヵ月であった。画像評価に基づく3年PFSは、プラセボ群が56%であったのに対し、タラゾパリブ群は77%と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.65、p<0.001)。PFS中央値は、タラゾパリブ群が算出不能(NC)、プラセボ群は45.8ヵ月(95%CI:37.7~NC)であった。
また、今回の中間解析における3年OS率は、タラゾパリブ群が78%、プラセボ群は72%であった(HR:0.77、95%CI:0.56~1.04)。
3年時にPSA値が上昇していない患者の割合は、タラゾパリブ群78%、プラセボ群63%(HR:0.51、95%CI:0.37~0.71)、後治療を開始していない患者の割合はそれぞれ79%および62%(HR:0.51、95%CI:0.38~0.70)であり、客観的奏効率(完全奏効+部分奏効)は75%および67%であった。
貧血の頻度が高い、重篤な有害事象は42%で
治療関連有害事象は、タラゾパリブ群の93%、プラセボ群の72%で発現した。重篤な有害事象は、それぞれ42%および32%で報告された。
タラゾパリブ群ではベースラインで43%にGrade1または2の貧血がみられ、治療期間中に40%で赤血球輸血を要した(プラセボ群は2%)。
タラゾパリブ群で最も頻度の高い有害事象は、貧血(71%)、疲労(28%)、好中球数の減少(27%)であった。Grade3以上の有害事象で最も頻度が高かったのは貧血(51%)および好中球数の減少(11%)だった。また、治療関連死が2例(汎血球減少、特発性肺線維症の悪化)で発生した。
著者は、「本症におけるタラゾパリブとエンザルタミドの併用療法の有効性が示された。OSに及ぼす効果を明らかにするために、追跡調査を継続中である」としている。
また、「先行研究と本試験の結果から、転移のあるAPMS前立腺がん男性における分子検査の重要性が明らかとなった。これにより、転移性疾患の経過のより早い段階で、バイオマーカーに基づく治療戦略を採用することが可能になると考えられる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)